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第5章 17歳の愛し子
6
「マルシャお姉さまがソラお義兄さまにお会いになられたんですか?」
二週間後に迫ったソラとアリシラローズの歓迎の舞踏会に向けてパートナーとダンスを練習していたクリスは、様子を見に来ていたソラに昨日マルシャローズと会ったことを告げられて、驚きの声をあげた。
昨日の夜は姉夫婦はそろって王女夫妻との晩餐に呼ばれてクリスとは会わなかったのだ。
昨日、ルロワ公爵家に帰ってきたクリスのパートナーも驚きの声をあげた。
「マルシャ姉上は、『東の島国だなんて野蛮』とか言い出しかねませんが、何もご無礼はなかったでしょうか?」
そう問いかけたのはシルバーブロンドにブルーグレイの瞳の少年だ。ルロワ公爵に似た冴えた美貌の持ち主で、背丈は14歳にしてクリスよりやや高い。夏季休暇となり、聖カリスト学園からルロワ公爵家へと帰ってきているクリスの同母の弟、ウィリアム・ルロワだ。
まだ社交デビューする年齢ではないのだが、今回の来賓が実の姉であることから招待を受け、クリスのエスコートをしてくれる。ずっとすれ違って生活してきたので、ほぼ初対面であるから、こうしてダンスの練習をしているわけだ。
ちなみに二人の母も近日中に王都へやってくる。クリスにとっては弟以上にどう接していいのかわからないのが母だ。まあ、この話は置いておこう。
「ああ。そこまでのことは言われなかったが、逆に『アリシラには苦労をさせてかわいそうだから、私が代わりたい』というようなことを言っていた。」
「「「え??」」」
三人目の「え??」は控えているヤスミンからである。
「お義兄さま、とってもかっこいいから、もしかしてマルシャお姉さま…。」
「姉上、怖いことは言わないでください。」
「ごめん、ウィル。」
お願いだからもう問題行動は起こさないでほしいと願うクリスであった。
ー---
弟が夏季休暇に入ったということは、クリスのかつての同級生たちも夏季休暇に入ったということである。クリスの友人であるニコレット・ロジャーズ伯爵令嬢とイザベル・フォンテーヌ辺境伯令嬢をルロワ公爵家に招待し、久々に再会した。
「ああ、クリス!元気そうで嬉しいわ!なんだかとっても綺麗になったみたい!」
着いて早々に鮮やかな黄色のワンピースを着たニコレットはクリスのことを抱きしめた。ハグ魔なのは以前と変わらない。
「ニコレット、元気そうで嬉しい。イザベルも。」
「フォンテーヌ領にいらっしゃる時もあったのに、会えなくて残念でしたわ。」
ぷんすこと怒っているように見えながらも、伝わってくる感情は全く怒ってはいないイザベル、これも以前のままだ。
ヤスミンが指揮を取って用意してくれたガゼボの茶会の席に二人を案内してお茶会を始める。「さすが、公爵家の料理人」「とてもおいしいわ」と喜んでくれた。
「じゃあ、二人もお義兄さまとお姉さまの歓迎の舞踏会に出席するのね。エスコートは?」
「私は婚約者と。」
ニコレットは幼少期に長く滞在していた隣国エスパルの幼馴染とめでたく一年前に婚約した。学園の高等部を卒業後にはエスパルの婚約者の家で花嫁修業をすることになっている。
「ニコレットの婚約者に会えるのね!楽しみだわ!」
「クリス、公爵令嬢としての礼儀作法を忘れてはいけませんよ。」
「わかってるわよ、イザベル。あなたは誰と?」
「私は兄がエスコートしてくれることになっています。」
イザベルには三人の兄がいる。長男は次期辺境伯としてフォンテーヌ騎士団を率い、二年ほどまえの隣国ルクレツェンとの戦闘では黒騎士団に援軍を送ってくれていた。確か既婚で子供もいたはずだ。次男も北の辺境伯の令嬢に婿入りしたと聞いたので、一番下の兄だろう。
「イザベルの婚約はどうなりそうなの?フォンテーヌ辺境伯が吟味しているとのことだったけれど。」
「ええ。いくつか候補の家があるようだけれど、今、高位貴族の縁組は様子見であまり進んでいないの。」
「そうなの?なぜ?」
不思議そうなクリスにイザベルは困ったものを見るような目を向けた。
「クリスとクリスの弟君の婚約が成立していないから、ですよ。」
「ええ!?私!?それにウィルも!?」
「南と西の辺境伯家には年の近いご嫡男がいて、私の嫁入り候補ですけれど、もしクリスが嫁いできてくれるならこれほど心強いことはありませんもの。中央の貴族たちだってルロワ公爵家とつながりを持ちたいでしょうし。
まあ、辺境の二家に関してはクリスは大聖女に戻ることになるだろうと確信を持ったようで、私にも見合いの話がきていますわ。」
イザベルは「そのうち決まるでしょう」とやや他人事だ。
でも、そうか、そのような影響があることは今初めて知った。結婚、クリスには縁のないものだろうが、するとしたら…、クリスの頭に黒髪の幼馴染の顔がボンと浮かんで慌てて頭を振った。
そんなクリスの様子を二人は不思議そうに見つめていた。
「クリス姉上!ご友人にご挨拶させてくださ…、うわあ。」
その後、お茶会の後半で二人に挨拶にきた弟のウィリアムがルロワ公爵似の冴えた美貌をイザベルの前で真っ赤にしていたのがやけに印象的だった。
二週間後に迫ったソラとアリシラローズの歓迎の舞踏会に向けてパートナーとダンスを練習していたクリスは、様子を見に来ていたソラに昨日マルシャローズと会ったことを告げられて、驚きの声をあげた。
昨日の夜は姉夫婦はそろって王女夫妻との晩餐に呼ばれてクリスとは会わなかったのだ。
昨日、ルロワ公爵家に帰ってきたクリスのパートナーも驚きの声をあげた。
「マルシャ姉上は、『東の島国だなんて野蛮』とか言い出しかねませんが、何もご無礼はなかったでしょうか?」
そう問いかけたのはシルバーブロンドにブルーグレイの瞳の少年だ。ルロワ公爵に似た冴えた美貌の持ち主で、背丈は14歳にしてクリスよりやや高い。夏季休暇となり、聖カリスト学園からルロワ公爵家へと帰ってきているクリスの同母の弟、ウィリアム・ルロワだ。
まだ社交デビューする年齢ではないのだが、今回の来賓が実の姉であることから招待を受け、クリスのエスコートをしてくれる。ずっとすれ違って生活してきたので、ほぼ初対面であるから、こうしてダンスの練習をしているわけだ。
ちなみに二人の母も近日中に王都へやってくる。クリスにとっては弟以上にどう接していいのかわからないのが母だ。まあ、この話は置いておこう。
「ああ。そこまでのことは言われなかったが、逆に『アリシラには苦労をさせてかわいそうだから、私が代わりたい』というようなことを言っていた。」
「「「え??」」」
三人目の「え??」は控えているヤスミンからである。
「お義兄さま、とってもかっこいいから、もしかしてマルシャお姉さま…。」
「姉上、怖いことは言わないでください。」
「ごめん、ウィル。」
お願いだからもう問題行動は起こさないでほしいと願うクリスであった。
ー---
弟が夏季休暇に入ったということは、クリスのかつての同級生たちも夏季休暇に入ったということである。クリスの友人であるニコレット・ロジャーズ伯爵令嬢とイザベル・フォンテーヌ辺境伯令嬢をルロワ公爵家に招待し、久々に再会した。
「ああ、クリス!元気そうで嬉しいわ!なんだかとっても綺麗になったみたい!」
着いて早々に鮮やかな黄色のワンピースを着たニコレットはクリスのことを抱きしめた。ハグ魔なのは以前と変わらない。
「ニコレット、元気そうで嬉しい。イザベルも。」
「フォンテーヌ領にいらっしゃる時もあったのに、会えなくて残念でしたわ。」
ぷんすこと怒っているように見えながらも、伝わってくる感情は全く怒ってはいないイザベル、これも以前のままだ。
ヤスミンが指揮を取って用意してくれたガゼボの茶会の席に二人を案内してお茶会を始める。「さすが、公爵家の料理人」「とてもおいしいわ」と喜んでくれた。
「じゃあ、二人もお義兄さまとお姉さまの歓迎の舞踏会に出席するのね。エスコートは?」
「私は婚約者と。」
ニコレットは幼少期に長く滞在していた隣国エスパルの幼馴染とめでたく一年前に婚約した。学園の高等部を卒業後にはエスパルの婚約者の家で花嫁修業をすることになっている。
「ニコレットの婚約者に会えるのね!楽しみだわ!」
「クリス、公爵令嬢としての礼儀作法を忘れてはいけませんよ。」
「わかってるわよ、イザベル。あなたは誰と?」
「私は兄がエスコートしてくれることになっています。」
イザベルには三人の兄がいる。長男は次期辺境伯としてフォンテーヌ騎士団を率い、二年ほどまえの隣国ルクレツェンとの戦闘では黒騎士団に援軍を送ってくれていた。確か既婚で子供もいたはずだ。次男も北の辺境伯の令嬢に婿入りしたと聞いたので、一番下の兄だろう。
「イザベルの婚約はどうなりそうなの?フォンテーヌ辺境伯が吟味しているとのことだったけれど。」
「ええ。いくつか候補の家があるようだけれど、今、高位貴族の縁組は様子見であまり進んでいないの。」
「そうなの?なぜ?」
不思議そうなクリスにイザベルは困ったものを見るような目を向けた。
「クリスとクリスの弟君の婚約が成立していないから、ですよ。」
「ええ!?私!?それにウィルも!?」
「南と西の辺境伯家には年の近いご嫡男がいて、私の嫁入り候補ですけれど、もしクリスが嫁いできてくれるならこれほど心強いことはありませんもの。中央の貴族たちだってルロワ公爵家とつながりを持ちたいでしょうし。
まあ、辺境の二家に関してはクリスは大聖女に戻ることになるだろうと確信を持ったようで、私にも見合いの話がきていますわ。」
イザベルは「そのうち決まるでしょう」とやや他人事だ。
でも、そうか、そのような影響があることは今初めて知った。結婚、クリスには縁のないものだろうが、するとしたら…、クリスの頭に黒髪の幼馴染の顔がボンと浮かんで慌てて頭を振った。
そんなクリスの様子を二人は不思議そうに見つめていた。
「クリス姉上!ご友人にご挨拶させてくださ…、うわあ。」
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