43 / 59
第5章 17歳の愛し子
6
しおりを挟む
「マルシャお姉さまがソラお義兄さまにお会いになられたんですか?」
二週間後に迫ったソラとアリシラローズの歓迎の舞踏会に向けてパートナーとダンスを練習していたクリスは、様子を見に来ていたソラに昨日マルシャローズと会ったことを告げられて、驚きの声をあげた。
昨日の夜は姉夫婦はそろって王女夫妻との晩餐に呼ばれてクリスとは会わなかったのだ。
昨日、ルロワ公爵家に帰ってきたクリスのパートナーも驚きの声をあげた。
「マルシャ姉上は、『東の島国だなんて野蛮』とか言い出しかねませんが、何もご無礼はなかったでしょうか?」
そう問いかけたのはシルバーブロンドにブルーグレイの瞳の少年だ。ルロワ公爵に似た冴えた美貌の持ち主で、背丈は14歳にしてクリスよりやや高い。夏季休暇となり、聖カリスト学園からルロワ公爵家へと帰ってきているクリスの同母の弟、ウィリアム・ルロワだ。
まだ社交デビューする年齢ではないのだが、今回の来賓が実の姉であることから招待を受け、クリスのエスコートをしてくれる。ずっとすれ違って生活してきたので、ほぼ初対面であるから、こうしてダンスの練習をしているわけだ。
ちなみに二人の母も近日中に王都へやってくる。クリスにとっては弟以上にどう接していいのかわからないのが母だ。まあ、この話は置いておこう。
「ああ。そこまでのことは言われなかったが、逆に『アリシラには苦労をさせてかわいそうだから、私が代わりたい』というようなことを言っていた。」
「「「え??」」」
三人目の「え??」は控えているヤスミンからである。
「お義兄さま、とってもかっこいいから、もしかしてマルシャお姉さま…。」
「姉上、怖いことは言わないでください。」
「ごめん、ウィル。」
お願いだからもう問題行動は起こさないでほしいと願うクリスであった。
ー---
弟が夏季休暇に入ったということは、クリスのかつての同級生たちも夏季休暇に入ったということである。クリスの友人であるニコレット・ロジャーズ伯爵令嬢とイザベル・フォンテーヌ辺境伯令嬢をルロワ公爵家に招待し、久々に再会した。
「ああ、クリス!元気そうで嬉しいわ!なんだかとっても綺麗になったみたい!」
着いて早々に鮮やかな黄色のワンピースを着たニコレットはクリスのことを抱きしめた。ハグ魔なのは以前と変わらない。
「ニコレット、元気そうで嬉しい。イザベルも。」
「フォンテーヌ領にいらっしゃる時もあったのに、会えなくて残念でしたわ。」
ぷんすこと怒っているように見えながらも、伝わってくる感情は全く怒ってはいないイザベル、これも以前のままだ。
ヤスミンが指揮を取って用意してくれたガゼボの茶会の席に二人を案内してお茶会を始める。「さすが、公爵家の料理人」「とてもおいしいわ」と喜んでくれた。
「じゃあ、二人もお義兄さまとお姉さまの歓迎の舞踏会に出席するのね。エスコートは?」
「私は婚約者と。」
ニコレットは幼少期に長く滞在していた隣国エスパルの幼馴染とめでたく一年前に婚約した。学園の高等部を卒業後にはエスパルの婚約者の家で花嫁修業をすることになっている。
「ニコレットの婚約者に会えるのね!楽しみだわ!」
「クリス、公爵令嬢としての礼儀作法を忘れてはいけませんよ。」
「わかってるわよ、イザベル。あなたは誰と?」
「私は兄がエスコートしてくれることになっています。」
イザベルには三人の兄がいる。長男は次期辺境伯としてフォンテーヌ騎士団を率い、二年ほどまえの隣国ルクレツェンとの戦闘では黒騎士団に援軍を送ってくれていた。確か既婚で子供もいたはずだ。次男も北の辺境伯の令嬢に婿入りしたと聞いたので、一番下の兄だろう。
「イザベルの婚約はどうなりそうなの?フォンテーヌ辺境伯が吟味しているとのことだったけれど。」
「ええ。いくつか候補の家があるようだけれど、今、高位貴族の縁組は様子見であまり進んでいないの。」
「そうなの?なぜ?」
不思議そうなクリスにイザベルは困ったものを見るような目を向けた。
「クリスとクリスの弟君の婚約が成立していないから、ですよ。」
「ええ!?私!?それにウィルも!?」
「南と西の辺境伯家には年の近いご嫡男がいて、私の嫁入り候補ですけれど、もしクリスが嫁いできてくれるならこれほど心強いことはありませんもの。中央の貴族たちだってルロワ公爵家とつながりを持ちたいでしょうし。
まあ、辺境の二家に関してはクリスは大聖女に戻ることになるだろうと確信を持ったようで、私にも見合いの話がきていますわ。」
イザベルは「そのうち決まるでしょう」とやや他人事だ。
でも、そうか、そのような影響があることは今初めて知った。結婚、クリスには縁のないものだろうが、するとしたら…、クリスの頭に黒髪の幼馴染の顔がボンと浮かんで慌てて頭を振った。
そんなクリスの様子を二人は不思議そうに見つめていた。
「クリス姉上!ご友人にご挨拶させてくださ…、うわあ。」
その後、お茶会の後半で二人に挨拶にきた弟のウィリアムがルロワ公爵似の冴えた美貌をイザベルの前で真っ赤にしていたのがやけに印象的だった。
二週間後に迫ったソラとアリシラローズの歓迎の舞踏会に向けてパートナーとダンスを練習していたクリスは、様子を見に来ていたソラに昨日マルシャローズと会ったことを告げられて、驚きの声をあげた。
昨日の夜は姉夫婦はそろって王女夫妻との晩餐に呼ばれてクリスとは会わなかったのだ。
昨日、ルロワ公爵家に帰ってきたクリスのパートナーも驚きの声をあげた。
「マルシャ姉上は、『東の島国だなんて野蛮』とか言い出しかねませんが、何もご無礼はなかったでしょうか?」
そう問いかけたのはシルバーブロンドにブルーグレイの瞳の少年だ。ルロワ公爵に似た冴えた美貌の持ち主で、背丈は14歳にしてクリスよりやや高い。夏季休暇となり、聖カリスト学園からルロワ公爵家へと帰ってきているクリスの同母の弟、ウィリアム・ルロワだ。
まだ社交デビューする年齢ではないのだが、今回の来賓が実の姉であることから招待を受け、クリスのエスコートをしてくれる。ずっとすれ違って生活してきたので、ほぼ初対面であるから、こうしてダンスの練習をしているわけだ。
ちなみに二人の母も近日中に王都へやってくる。クリスにとっては弟以上にどう接していいのかわからないのが母だ。まあ、この話は置いておこう。
「ああ。そこまでのことは言われなかったが、逆に『アリシラには苦労をさせてかわいそうだから、私が代わりたい』というようなことを言っていた。」
「「「え??」」」
三人目の「え??」は控えているヤスミンからである。
「お義兄さま、とってもかっこいいから、もしかしてマルシャお姉さま…。」
「姉上、怖いことは言わないでください。」
「ごめん、ウィル。」
お願いだからもう問題行動は起こさないでほしいと願うクリスであった。
ー---
弟が夏季休暇に入ったということは、クリスのかつての同級生たちも夏季休暇に入ったということである。クリスの友人であるニコレット・ロジャーズ伯爵令嬢とイザベル・フォンテーヌ辺境伯令嬢をルロワ公爵家に招待し、久々に再会した。
「ああ、クリス!元気そうで嬉しいわ!なんだかとっても綺麗になったみたい!」
着いて早々に鮮やかな黄色のワンピースを着たニコレットはクリスのことを抱きしめた。ハグ魔なのは以前と変わらない。
「ニコレット、元気そうで嬉しい。イザベルも。」
「フォンテーヌ領にいらっしゃる時もあったのに、会えなくて残念でしたわ。」
ぷんすこと怒っているように見えながらも、伝わってくる感情は全く怒ってはいないイザベル、これも以前のままだ。
ヤスミンが指揮を取って用意してくれたガゼボの茶会の席に二人を案内してお茶会を始める。「さすが、公爵家の料理人」「とてもおいしいわ」と喜んでくれた。
「じゃあ、二人もお義兄さまとお姉さまの歓迎の舞踏会に出席するのね。エスコートは?」
「私は婚約者と。」
ニコレットは幼少期に長く滞在していた隣国エスパルの幼馴染とめでたく一年前に婚約した。学園の高等部を卒業後にはエスパルの婚約者の家で花嫁修業をすることになっている。
「ニコレットの婚約者に会えるのね!楽しみだわ!」
「クリス、公爵令嬢としての礼儀作法を忘れてはいけませんよ。」
「わかってるわよ、イザベル。あなたは誰と?」
「私は兄がエスコートしてくれることになっています。」
イザベルには三人の兄がいる。長男は次期辺境伯としてフォンテーヌ騎士団を率い、二年ほどまえの隣国ルクレツェンとの戦闘では黒騎士団に援軍を送ってくれていた。確か既婚で子供もいたはずだ。次男も北の辺境伯の令嬢に婿入りしたと聞いたので、一番下の兄だろう。
「イザベルの婚約はどうなりそうなの?フォンテーヌ辺境伯が吟味しているとのことだったけれど。」
「ええ。いくつか候補の家があるようだけれど、今、高位貴族の縁組は様子見であまり進んでいないの。」
「そうなの?なぜ?」
不思議そうなクリスにイザベルは困ったものを見るような目を向けた。
「クリスとクリスの弟君の婚約が成立していないから、ですよ。」
「ええ!?私!?それにウィルも!?」
「南と西の辺境伯家には年の近いご嫡男がいて、私の嫁入り候補ですけれど、もしクリスが嫁いできてくれるならこれほど心強いことはありませんもの。中央の貴族たちだってルロワ公爵家とつながりを持ちたいでしょうし。
まあ、辺境の二家に関してはクリスは大聖女に戻ることになるだろうと確信を持ったようで、私にも見合いの話がきていますわ。」
イザベルは「そのうち決まるでしょう」とやや他人事だ。
でも、そうか、そのような影響があることは今初めて知った。結婚、クリスには縁のないものだろうが、するとしたら…、クリスの頭に黒髪の幼馴染の顔がボンと浮かんで慌てて頭を振った。
そんなクリスの様子を二人は不思議そうに見つめていた。
「クリス姉上!ご友人にご挨拶させてくださ…、うわあ。」
その後、お茶会の後半で二人に挨拶にきた弟のウィリアムがルロワ公爵似の冴えた美貌をイザベルの前で真っ赤にしていたのがやけに印象的だった。
32
あなたにおすすめの小説
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる