赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
14 / 56
第一章 ダレル反乱

第一魔導師団長はクリスの軍門に下りました

しおりを挟む
「どういう事だ。クリス」
場所を会議室に移して、やって来たジャンヌが叫んだ。
中にはこのために極秘に王宮から派遣されていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーや
ジャルカをはじめグリフィズやジョンやブレットもいる。

「どういう事だとお聞きしたいのは私ですが、お姉さま」
クリスがきっとしてジャンヌを見る。

「私をわざと囮にしたのですね。そして問題を起こさせて、城ごと吹っ飛ばすおつもりだったのですね」
「いや、クリスを吹き飛ばすつもりはなかったぞ」
「でも、伯爵はこの地にいる兵士ともども吹き飛ばすつもりだったんでしょう」
「いや、そんな事は……」
クリスの言葉にジャンヌがどもる。

「まあ、良いですわ。色々言いたいこともありますが、取り敢えず、ダレル伯爵は降伏されました」
「そ、そうか、それは殊勝な心がけだな」
クリスの薄ら笑いに戸惑いつつジャンヌが言う。

「まあ、お姉さまが振り上げた手を簡単に下ろせないのも良く判ります。ここはいつものように思いっきりダレル伯爵を殴られたらよろしかろうと思います」
「えっ。降伏した伯爵を殴るのか」
ジャンヌが更に戸惑う。降伏したものに暴力を振るうのは騎士道精神に反するはずだ。
それをクリスが勧めるのは絶対におかしい。

「そうです。どの道、罪いかん問わず、この城ごと爆裂魔法で吹き飛ばすつもりだったんですよね」
「いや、そんな事は思っては」
視線を第一師団長やジャルカ、グリフィズ等に飛ばすが、彼らは無視する。
「いましたよね。先に降伏されたから出来なかっただけですよね」
「殿下。どうか、私を思いっきり殴って下さい。その代わり何卒、兵士たちの命だけはお助け下さい」
ダレルは顔をジャンヌの前に突き出した。
「さあ、お姉さま。伯爵の顔をお姉さまのお母様だと思って、いつもの恨みを込めて思いっきり殴って下さい」
「えっ母だと思ってって」
ジャンヌは更に躊躇した。ジャンヌにとって母の王妃は苦手だった。その母を殴ったりしたら1万倍にもなって返ってきそうだった。謹慎期間も絶対に1ヶ月なんて短い期間で済まない。下手したら1年間閉じ込められて淑女教育という名の拷問が待っている。いくらムカついてもそれだけは嫌だった。
「さあ、早く」

パシッ

クリスが急かすので仕方無しに殴る。
しかし、王妃の怒った顔を思い浮かべたので、全然威力はなかった。
ジャンヌにしたらかすった程度だ。

「パーサ様。今ジャンヌ王女殿下はダレル伯爵を殴られましたよね」
「は、はい」
ニヤリと不敵に笑うクリスをパーサはよく判らず頷いた。
「グリフィズ。見ましたよね」
「はいっ。確かに」
グリフィズは少し震えていた。こんなに恐ろしいクリスは初めてだった。
絶対に何かある。

「いや、待て、クリスがそうしろって言ったんだろ」
ジャンヌが慌てて言う。

「そう、私はその前にお姉様の心の声を聞いたのです。
ノルディンの残虐王について反逆しようとし、奴隷販売に手を染め、横領した事。
許せんと」
「申し訳ありません」
ダレル伯爵は頭を下げていた。
「しかし、残虐王の脅迫に屈したのは、お姉さま方王族がその対抗策を怠った点にもある。
泳がせて、その手に染まる前に手を差し伸べなかった王族の責任でもあると」
「えっ。」
ジャンヌは絶句した。
「クリスティーナ様。そのようなことは王女殿下はお話になっておりませんし、どのような理由があっても反逆に手を貸したダレル伯爵が許されて良いはずもありません」
横で聞いていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーがジャンヌに救いの手を差し伸べた。

「ほう、ザクセン。あなた今言いましたね。どのような理由があっても許されるものはないと。でも、あなたは私が囮にされるのを黙ってみていましたね」
「いや、それはジャルカ様から命じられて」
「黙らっしゃい。黙ってみていたのですよね。それは許されるのですか?」
「いや、何も起こらないように、グリフィズやジャルカ様もいましたし」
「お二人は黙ってみているだけで、全く手を差し伸べてくれませんでした」
「えっ、いやそんな事は」
「私そのお蔭でそこにいる兵士たちにおもちゃにされるところでしたの」
「えっ」
男たちはバツの悪そうな顔をした。
「あなたはそれを黙って見ていたのですよね。ザクセンに黙って見捨てられたので、兵士達におもちゃにされて傷物にされかかったんです」
クリスは泣き出した。
皆の目がうつろになる。クリスに黙って囮にさせたのは事実なのだ。
「良いんです。私なんて所詮皆に見捨てられるた駒なんです」
「いや、クリス様。決してそのようなことは」
ザクセンが必死に言い訳しようとする。
「いいんです。私なんて。一人で取調室に放り込まれて3人の男に襲われました。
グリフィズもジャルカ様も助けてくれなくて、どんなに怖い思いをしたか。
あなたの奥様にお話しして慰めてもらいます」

その一言でザクセンの顔がさあっと真っ青になった。ザクセンの妻はクリスに心酔していた。そんなクリスをおもちゃにされるところを黙って見捨てていたなんて妻にしれた日には……。

「も、申し訳ありません。クリス様。私の勘違いでした。クリス様のおっしゃるとおりです」
ザクセンはクリスの前に平伏していた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...