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第一章 ダレル反乱
第一魔導師団長はクリスの軍門に下りました
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「どういう事だ。クリス」
場所を会議室に移して、やって来たジャンヌが叫んだ。
中にはこのために極秘に王宮から派遣されていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーや
ジャルカをはじめグリフィズやジョンやブレットもいる。
「どういう事だとお聞きしたいのは私ですが、お姉さま」
クリスがきっとしてジャンヌを見る。
「私をわざと囮にしたのですね。そして問題を起こさせて、城ごと吹っ飛ばすおつもりだったのですね」
「いや、クリスを吹き飛ばすつもりはなかったぞ」
「でも、伯爵はこの地にいる兵士ともども吹き飛ばすつもりだったんでしょう」
「いや、そんな事は……」
クリスの言葉にジャンヌがどもる。
「まあ、良いですわ。色々言いたいこともありますが、取り敢えず、ダレル伯爵は降伏されました」
「そ、そうか、それは殊勝な心がけだな」
クリスの薄ら笑いに戸惑いつつジャンヌが言う。
「まあ、お姉さまが振り上げた手を簡単に下ろせないのも良く判ります。ここはいつものように思いっきりダレル伯爵を殴られたらよろしかろうと思います」
「えっ。降伏した伯爵を殴るのか」
ジャンヌが更に戸惑う。降伏したものに暴力を振るうのは騎士道精神に反するはずだ。
それをクリスが勧めるのは絶対におかしい。
「そうです。どの道、罪いかん問わず、この城ごと爆裂魔法で吹き飛ばすつもりだったんですよね」
「いや、そんな事は思っては」
視線を第一師団長やジャルカ、グリフィズ等に飛ばすが、彼らは無視する。
「いましたよね。先に降伏されたから出来なかっただけですよね」
「殿下。どうか、私を思いっきり殴って下さい。その代わり何卒、兵士たちの命だけはお助け下さい」
ダレルは顔をジャンヌの前に突き出した。
「さあ、お姉さま。伯爵の顔をお姉さまのお母様だと思って、いつもの恨みを込めて思いっきり殴って下さい」
「えっ母だと思ってって」
ジャンヌは更に躊躇した。ジャンヌにとって母の王妃は苦手だった。その母を殴ったりしたら1万倍にもなって返ってきそうだった。謹慎期間も絶対に1ヶ月なんて短い期間で済まない。下手したら1年間閉じ込められて淑女教育という名の拷問が待っている。いくらムカついてもそれだけは嫌だった。
「さあ、早く」
パシッ
クリスが急かすので仕方無しに殴る。
しかし、王妃の怒った顔を思い浮かべたので、全然威力はなかった。
ジャンヌにしたらかすった程度だ。
「パーサ様。今ジャンヌ王女殿下はダレル伯爵を殴られましたよね」
「は、はい」
ニヤリと不敵に笑うクリスをパーサはよく判らず頷いた。
「グリフィズ。見ましたよね」
「はいっ。確かに」
グリフィズは少し震えていた。こんなに恐ろしいクリスは初めてだった。
絶対に何かある。
「いや、待て、クリスがそうしろって言ったんだろ」
ジャンヌが慌てて言う。
「そう、私はその前にお姉様の心の声を聞いたのです。
ノルディンの残虐王について反逆しようとし、奴隷販売に手を染め、横領した事。
許せんと」
「申し訳ありません」
ダレル伯爵は頭を下げていた。
「しかし、残虐王の脅迫に屈したのは、お姉さま方王族がその対抗策を怠った点にもある。
泳がせて、その手に染まる前に手を差し伸べなかった王族の責任でもあると」
「えっ。」
ジャンヌは絶句した。
「クリスティーナ様。そのようなことは王女殿下はお話になっておりませんし、どのような理由があっても反逆に手を貸したダレル伯爵が許されて良いはずもありません」
横で聞いていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーがジャンヌに救いの手を差し伸べた。
「ほう、ザクセン。あなた今言いましたね。どのような理由があっても許されるものはないと。でも、あなたは私が囮にされるのを黙ってみていましたね」
「いや、それはジャルカ様から命じられて」
「黙らっしゃい。黙ってみていたのですよね。それは許されるのですか?」
「いや、何も起こらないように、グリフィズやジャルカ様もいましたし」
「お二人は黙ってみているだけで、全く手を差し伸べてくれませんでした」
「えっ、いやそんな事は」
「私そのお蔭でそこにいる兵士たちにおもちゃにされるところでしたの」
「えっ」
男たちはバツの悪そうな顔をした。
「あなたはそれを黙って見ていたのですよね。ザクセンに黙って見捨てられたので、兵士達におもちゃにされて傷物にされかかったんです」
クリスは泣き出した。
皆の目がうつろになる。クリスに黙って囮にさせたのは事実なのだ。
「良いんです。私なんて所詮皆に見捨てられるた駒なんです」
「いや、クリス様。決してそのようなことは」
ザクセンが必死に言い訳しようとする。
「いいんです。私なんて。一人で取調室に放り込まれて3人の男に襲われました。
グリフィズもジャルカ様も助けてくれなくて、どんなに怖い思いをしたか。
あなたの奥様にお話しして慰めてもらいます」
その一言でザクセンの顔がさあっと真っ青になった。ザクセンの妻はクリスに心酔していた。そんなクリスをおもちゃにされるところを黙って見捨てていたなんて妻にしれた日には……。
「も、申し訳ありません。クリス様。私の勘違いでした。クリス様のおっしゃるとおりです」
ザクセンはクリスの前に平伏していた。
場所を会議室に移して、やって来たジャンヌが叫んだ。
中にはこのために極秘に王宮から派遣されていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーや
ジャルカをはじめグリフィズやジョンやブレットもいる。
「どういう事だとお聞きしたいのは私ですが、お姉さま」
クリスがきっとしてジャンヌを見る。
「私をわざと囮にしたのですね。そして問題を起こさせて、城ごと吹っ飛ばすおつもりだったのですね」
「いや、クリスを吹き飛ばすつもりはなかったぞ」
「でも、伯爵はこの地にいる兵士ともども吹き飛ばすつもりだったんでしょう」
「いや、そんな事は……」
クリスの言葉にジャンヌがどもる。
「まあ、良いですわ。色々言いたいこともありますが、取り敢えず、ダレル伯爵は降伏されました」
「そ、そうか、それは殊勝な心がけだな」
クリスの薄ら笑いに戸惑いつつジャンヌが言う。
「まあ、お姉さまが振り上げた手を簡単に下ろせないのも良く判ります。ここはいつものように思いっきりダレル伯爵を殴られたらよろしかろうと思います」
「えっ。降伏した伯爵を殴るのか」
ジャンヌが更に戸惑う。降伏したものに暴力を振るうのは騎士道精神に反するはずだ。
それをクリスが勧めるのは絶対におかしい。
「そうです。どの道、罪いかん問わず、この城ごと爆裂魔法で吹き飛ばすつもりだったんですよね」
「いや、そんな事は思っては」
視線を第一師団長やジャルカ、グリフィズ等に飛ばすが、彼らは無視する。
「いましたよね。先に降伏されたから出来なかっただけですよね」
「殿下。どうか、私を思いっきり殴って下さい。その代わり何卒、兵士たちの命だけはお助け下さい」
ダレルは顔をジャンヌの前に突き出した。
「さあ、お姉さま。伯爵の顔をお姉さまのお母様だと思って、いつもの恨みを込めて思いっきり殴って下さい」
「えっ母だと思ってって」
ジャンヌは更に躊躇した。ジャンヌにとって母の王妃は苦手だった。その母を殴ったりしたら1万倍にもなって返ってきそうだった。謹慎期間も絶対に1ヶ月なんて短い期間で済まない。下手したら1年間閉じ込められて淑女教育という名の拷問が待っている。いくらムカついてもそれだけは嫌だった。
「さあ、早く」
パシッ
クリスが急かすので仕方無しに殴る。
しかし、王妃の怒った顔を思い浮かべたので、全然威力はなかった。
ジャンヌにしたらかすった程度だ。
「パーサ様。今ジャンヌ王女殿下はダレル伯爵を殴られましたよね」
「は、はい」
ニヤリと不敵に笑うクリスをパーサはよく判らず頷いた。
「グリフィズ。見ましたよね」
「はいっ。確かに」
グリフィズは少し震えていた。こんなに恐ろしいクリスは初めてだった。
絶対に何かある。
「いや、待て、クリスがそうしろって言ったんだろ」
ジャンヌが慌てて言う。
「そう、私はその前にお姉様の心の声を聞いたのです。
ノルディンの残虐王について反逆しようとし、奴隷販売に手を染め、横領した事。
許せんと」
「申し訳ありません」
ダレル伯爵は頭を下げていた。
「しかし、残虐王の脅迫に屈したのは、お姉さま方王族がその対抗策を怠った点にもある。
泳がせて、その手に染まる前に手を差し伸べなかった王族の責任でもあると」
「えっ。」
ジャンヌは絶句した。
「クリスティーナ様。そのようなことは王女殿下はお話になっておりませんし、どのような理由があっても反逆に手を貸したダレル伯爵が許されて良いはずもありません」
横で聞いていた第一魔導師団長のザクセン・コーフナーがジャンヌに救いの手を差し伸べた。
「ほう、ザクセン。あなた今言いましたね。どのような理由があっても許されるものはないと。でも、あなたは私が囮にされるのを黙ってみていましたね」
「いや、それはジャルカ様から命じられて」
「黙らっしゃい。黙ってみていたのですよね。それは許されるのですか?」
「いや、何も起こらないように、グリフィズやジャルカ様もいましたし」
「お二人は黙ってみているだけで、全く手を差し伸べてくれませんでした」
「えっ、いやそんな事は」
「私そのお蔭でそこにいる兵士たちにおもちゃにされるところでしたの」
「えっ」
男たちはバツの悪そうな顔をした。
「あなたはそれを黙って見ていたのですよね。ザクセンに黙って見捨てられたので、兵士達におもちゃにされて傷物にされかかったんです」
クリスは泣き出した。
皆の目がうつろになる。クリスに黙って囮にさせたのは事実なのだ。
「良いんです。私なんて所詮皆に見捨てられるた駒なんです」
「いや、クリス様。決してそのようなことは」
ザクセンが必死に言い訳しようとする。
「いいんです。私なんて。一人で取調室に放り込まれて3人の男に襲われました。
グリフィズもジャルカ様も助けてくれなくて、どんなに怖い思いをしたか。
あなたの奥様にお話しして慰めてもらいます」
その一言でザクセンの顔がさあっと真っ青になった。ザクセンの妻はクリスに心酔していた。そんなクリスをおもちゃにされるところを黙って見捨てていたなんて妻にしれた日には……。
「も、申し訳ありません。クリス様。私の勘違いでした。クリス様のおっしゃるとおりです」
ザクセンはクリスの前に平伏していた。
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