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馬車に乗ると別人のように冷たくなったルードに向かって、動く社内で書類を読まされて気分が悪くなった私は盛大に吐いてしまいました

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父は1年間の謹慎処分。継母と義妹は処分は王国に任せるとのことになった。
恐らく1年間の修道院での再教育という感じになるみたいだ。
再教育が出来なかったら、ずうーっと修道院にいれたままにすると外務卿は明言してくれたけれど、本当なんだろうか?
私には信じられなかった。

一応、オイシュタット男爵家は学園を私が卒業すると同時に私が継げるようにしてくれた。
外務卿はそれは絶対に守ると保証してくれた。
守れなかったらその時は国王に言うと、ルードはえらく強気だった。

ルードは帝国内でも結構上の貴族なんだろう。
外務卿がここまで気にするのだ。任しておいて良いだろう。
昔は意地悪ルードだったけれど、大きくなって頼りになる奴に変わったんだ。
私の中でルードの株は急上昇していた。

私はそんなルードと外務卿に全てを任せたのだ。

ルードとしてはもっと厳しい処分にしたかったみたいだが、私も前世の記憶があるので処刑とかはさすがに嫌だったので、こんなところに決まって良かったと思う。

ルードは本当に時間がないみたいで、その足で帰ると言い出した。
私も一緒に来いと。

「でも、ルード、私は学園に着ていく衣装とか全然ないんだけど」
私がルードに言った。
「なんてことだ。前もって学園に入るための必要な物などが記載された資料一式を送っていると言うのに、何もしていなかったんだな」
呆れてルードが言ってくれた。
「だって私はさっき始めて聞いたんだもの」
「本当に男爵もお前らも帝国の意向をここまで無視するのか」
じろりとルードは外務卿を見た。

「えっ、私ですか? しかし、私も本日ルード様がいらっしゃると初めてお伺いして、慌てて全ての予定を無くしてこちらに越させて頂いただけで」
必死に外務卿が理由を述べたが、

「言い訳は良い。このことを俺の母が聞いたらどう思うと思う? 決して外務卿に良いイメージを持たないだろうな」
「そんな、ルード様それは困ります」
ルードの母は帝国内でも力を持っているみたいだ。外務卿が青くなっていた。

「まあ、学園内は制服があるから良い。合うサイズのものをついたら支給してくれるだろう。後は時間外に着る私服だが……ハイデマリー! 私服一式揃えたらいくら位する?」
ルードは唯一の女性のハイデマリーに聞いてくれた。

「私の時は金貨10枚くらいだったかと思いますが」
思い出してハイデマリーが答えてくれた。

「あのう、全部かき集めたら金貨1枚くらいなら持っていますが」
私が横から言うと
「そんなはした金で何が出来る。それは現地の小遣いにでもしろ」
ルードに即座に否定された。

「文具とか諸々のものもいるだろう。金貨20枚くらいか」
そう言うと、ルードは外務卿を見てにこやかに言った。

「外務卿。後のものはハイデマリーに手伝ってもらって帝国で揃える。金貨20枚だ」
「えっ、私が準備するのですか?」
「貴様の国がちゃんと指導しないから、私がここまで来る羽目になったのだぞ。母にどれだけ怒られたか。この出張費用諸々を国王に請求すればよいのか?」
「いえ、滅相もございません。準備いたします」
外務卿は諦めて項垂れた。
「転移門の前で受け取れるようにしてくれ」
「判りました」
外務卿は慌てて立ち上がった。
「外務卿。クラウディアを転移門まで連れて行ってくれるか?」
ルードが聞いていた。
「申し訳ありませんが、私はここの後始末がございます」
外務卿が首を振ってくれた。
「ハイデマリー、クラウを馬に乗せられるか?」
「ルード様。それは難しいでしょう」
私を見てハイデマリーが即座に否定してくれた。

「そうか、あんまり女と二人で馬車に乗りたくはないのだが、仕方ない。クラウ。俺の馬車に乗れ」
ルードは冷たく言ってくれた。
私はその言葉にムッとした。私こそ、独身の男と一緒の馬車に二人は嫌だ。
ここまで上昇していたルードの株が急落した。

「クラウ、行くぞ」
ルードはさっさと一人で馬車に乗ってくれた。

帝国貴族なら普通はエスコートしてくれるのでは……
まあ、私はメイドだったからエスコートなんて慣れていないけれど……
こいつは昔からこんな奴だ。
私は強引に馬車に乗りこんだ。

私が乗り込むと、ルードはハイデマリーから大量の資料を受け取って、それを私に渡してくれた。
「これが学園案内と、課題だ。学園に着いたら明朝、即座に試験だからな。資料を読んで対策をしろ」
そう、冷たくルードは言うと馬車の外から側近に渡された自分の資料を読み始めたのだ。

私に全く解説も何もしてくれる気はないらしい。
私は分厚い資料を前に呆然とした。
この量を今から覚えるの?
私は暗然とした。


「そう、それと学園内だが、俺には、馴れ馴れしく口をきいてくれるなよ」
冷たくズバッと釘を刺されてしまった。
確かにルードは帝国の高位貴族の令息なんだろう。私はしがない属国の男爵家の令嬢だ。
イケメンで皇位貴族のルードは引く手あまたなのだろう。私となんて元々全然釣り合わないのは判っていた。
ここに来たのも母親か誰かに言われて嫌々来たに違いない。

でも、それを今言うことか? 
もう少し学園について教えてくれてもいいじゃない!
今までの対応は何だったのよ!
私の中でルードへの好意はあっという間に無くなってしまった。

私はムッとすると同時に、この先のことが不安になってきた。

前世はたしかに頑張って勉強したけれど、もう何十年も前のことだ。
それに帝国貴族のことなんてほとんど知らない。
果たしてちゃんとやっていけるんだろうか?
私はとても不安になってきた。

渡された資料を慌てて見出したけれど、明日までって絶対に無理だ。
ルードは真剣になにかの資料を読んでいて、到底聞けるような雰囲気ではなかった。

まあ、良い。とりあえず、全部読もう。
私は必死に書類を読もうとした。

でも、馬車は結構揺れる。
馬車の中で書類なんて読めたものではなかった。

そう思ったが、ルードは慣れたものでドンドン資料を読んでいる。
負けるものかと私は資料を読んだのだが……だんだん気分が悪くなってきた。
口元に手をやる。

「おい、どうした?」
口を押さえてフラフラしている私を見てルードは慌てて私を抱えてくれた。
背中をさすってくれる。

「おい、馬車を止めろ!」
ルードが御者に言ってくれたが、でも、間に合わなかった。
私はルードめがけて盛大に吐いてしまったのだ……
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