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ルード視点 母に言われて初恋の女の子に会いに行ったら、その娘が引っ叩かれているところでした

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俺はルード、五歳の時に御家騒動の余波で毒殺されかけた。

慌てた両親によって、帝国の属国にいる母の従妹のいるオイシュタット男爵家に極秘で預けられた。

そこは帝都と違って自然あふれた田舎で、俺にとってはとても珍しかった。
母の従妹のエレオノーレは俺を自由にさせてくれた。
俺は大自然の中を走り回って遊んだのだ。

そして、そこにはちびでやせっぼっちで地味目な銀髪の女の子のクラウがいた。
ただ、目だけは緑の不思議な目で、時たま何かの拍子にその目を大きく見開くと輝いてとてもきれいだった。

クラウはドジでよくこけてくれた。
そのくせ、どこに行くにも俺について来るのだ。
こんな奴と一緒だと、遠くまで走れないではないか?
本当にドジで俺と比べると何もできない。
木にも登れないし、釣りもできない。
でも、山で採れたりんごをやるととてもうれしそうに笑って食べてくれて、川で採った魚を焼いてやると一緒に嬉しそうに食べてくれた。

いつも勉強や礼儀作法マナー、それに父親の御家騒動とギスギスした家の中にいた俺はその笑顔に癒されてしまったのだ。

「お前はちびでやせていて、地味顔だから嫁の貰い手もないだろう」
「そんなことないもん」
ムッとしたクラウも可愛かったが、
「行くところなかったら、俺がもらってやる」
俺は思わず言ってしまったのだ。こんなこと言うなんて何かがおかしかったのだ。
「ええええ! ルードは意地悪だから嫌だ」
俺様がもらってやるって言ったのに、なんと、クラウは断ってくれやがったのだ!
本当に許されない事だった。

「お前生意気」
俺はむっとして、クラウが食べていたリンゴを取り上げたのだ。

「えっ、それ私の!」
クラウが驚いて文句を言って来たが、むしゃくしゃした俺はそのリンゴを全部食べてやったのだ。
「ええええ! 酷いルード」
クラウは怒っていたが、知ったことではない。
なけなしのプライドを投げ捨てて言ってやったのに断ったお前が悪いのだ。

あまりにも煩いので後でリンゴをくれてやったが……

「そうね。ルードがもう少し痩せて、優しくなったら考えてあげても良いわ」
生意気なこのくそクラウはその時にそう言ってくれたのだ。

俺様は当時はストレスからか少し太り気味だった。
その気にしているところをずけずけと言ってくれやがって!
絶対に許さない。
俺はもっと運動して痩せる事を心の底から誓ったのだ。

幸いなことに三ヶ月くらいでお家騒動はかたがついて俺は家に帰ることになった。

「ええええ! ルードが行っちゃうの嫌だ」
その時になって散々クラウは泣いてくれたが、遅いんだよ。
俺はまたいつか遊びに来るからと言ってクラウと別れた。


実家に帰るとまた、堅苦しい生活の始まりだった。
でも、俺様はやせるために必死に努力したのだ。
礼儀作法やいろんな勉強もさせられた。
八歳の時だ。俺が世話になったエレオノーレが流行り病で亡くなったと聞いた。
クラウの事も気になったが、俺の立場ではおいそれと行けるような状況ではなかった。
母の名代が葬儀には参列したそうだが、けなげにふるまっていたとの事だった。
その後は俺は忙しさにかまけてクラウの事は忘れてしまった。


年頃になって、すらりとした体格になった俺様は女にキャーキャー言われるようになった。
皆来なくてもいいのに皆寄ってくるのだ。香水臭いし、鬱陶しい。
そんな女どもは俺は無視した。
そう言えばあの俺様の後をおっていたクラウは元気にしているだろうか?
そんな時にクラウをたまに思い出す程度だった。

俺は家の事も父からいろいろ振られて忙しかった。


そんな忙しくしている時だ。俺は母から呼ばれたのだ。

「お呼びですか? 母上」
俺は不機嫌さを顔に出していた。

「ルード、あなた気分が顔に出ていますよ」
母は注意してくれたが、知ったことでは無い。俺は来るべき学園に入学するために、前倒しでもろもろの仕事をしていて、本当に時間が無かったのだ。

「何ですか? 母上、私は忙しいのですが」
ムッとして母に言うと

「ルード、あなたどんなに忙しくてもそれを顔に出してはいけません」
母が更に注意してくるがほっといてくれ。学園の入学前に入学者の事を色々調べろと言って仕事を増やしたのは母だろうと余程文句を言いたかった。

「まあいいわ」
俺のムッとした顔を見て諦めたのか母が話し出した。

なんと、クラウに今年から学園に入学するように書面を学園が送ったのに、書類の返送がないので、見に行って欲しいと母が言って来たのだ。

「はい?」
俺には信じられなかった。カッセルに行く時間など、この忙しい俺にあるわけはないではないか。

「何言っているのよ。ルード。貴方の一番大変な時にオイシュタット男爵家はあなたを引き取ってくれたのよ。その時にあなたと遊んでくれたのはその娘じゃない。あなた、その子から返事が来ないのよ。心配じゃないの?」
母が怒って俺に言ってきた。

いや、遊んでやったのは俺様だ!
余程言ってやりたかったが、怒った母にそう言ったら何倍も返ってくるのは確実だった。
それに、確かに返事が来ないのはおかしい。

久々にあの娘に会うか。
成長してどんなふうになっただろう?
スマートになった俺様を見てなんか言って来るだろうか?
俺は会えるのが少し楽しみになった。

俺は無理やり仕事を終わらせてカッセルに向かった。
要らないのに転移門のある王宮からはカッセルの外務卿がついてきた。

外務卿が門番と話している間に、俺様はたまたま昔クラウと悪戯した納屋に行ったのだ。

そして、開いている納屋の扉から中を見た時だ。

銀髪の娘が鬼ばばのような形相の女に頬を引っ叩かれたのだ。

俺はとっさにその娘を庇って抱き止めていた。

「えっ?」
俺様の腕の中にはあの緑の目をした女の子がいたのだ。
何故かその子はメイドの着古したお仕着せを着ていた。

何なのだ。この状況は?
この女は誰だ?

俺様のクラウに手を出したこの女は許さん
俺は完全にプッツン切れていた。
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