悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
191 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

ならず者視点 エルグランの王都で貴族の令嬢を攫う事にしました

しおりを挟む
俺は『お涙のグレマン』とシュタイン公国では少しは名の知れたならず者だった。

何も涙もろいわけじゃあないし、涙に弱いわけでもない。
初見はとても、親切な人に見えるそうだ。
そう言ったら、
「絶対に嘘だ。兄貴。どう見ても怖いやくざ者ですぜ」
弟分のドニがふざけたことを宣ってくれたので、思いっきり頭をしばいてやった。

「痛いですって兄貴、本当に見た目はいかついヤクザ……
痛て!……
嘘です。兄貴、親切なヤクザに見えます」
馬鹿はいくら言っても馬鹿だ。これ以上石頭を殴るとさすがの俺の指の骨が折れる。
俺は諦めることにした。

そんなの人の良い顔をして、金に困っている者を捕まえては金を貸す、高利貸だった。
何故『お涙のグレマン』かというと、返せなくなったら返済を待ってくれるからだとか、利息を負けてくれるからだとか、そんなわけねえだろうが!

貸す時良い顔して貸すのは当たり前だ。返せなくなったら、その男の身ぐるみはいで、女子供を娼館に売って、なんとその親しい友人まで売ってしまうっていう涙のかけらもないからだとか、俺からむしり取られた奴が涙を枯らしてしまうからだとか、いろいろ言われている。

そんな俺が何でエルグラン王国に入ったかというと、ちょっと知らずに教会関係者に手を出してしまったのだ。
帝国教の司教見習いに。
坊主なんて大したことがないと思った俺が馬鹿だった。

俺が娼館に身売りしてやった借金で首が回らなくなった呉服屋の女房の所に、何をトチ狂ったか、司教見習いが通うようになったのだ。教会関係者を金で縛り上げて手下にするのも何かの足しになるかと考えたのが浅はかだった。
いや、司教見習いを騙すのは簡単だった。女にうつつを抜かす司教見習いをあっという間に借金で首が回らないようにがんじがらめにしたのまでは良かったのだが、その後にあの化け物が出て来たのだ。


俺は黒ずくめの集団に拉致されて洞窟の中に連れ込まれたのだ。

そこにはすさまじい魔力を持った化け物がいたのだ。
俺はその男を見た瞬間逆らう事を諦めたのだ。

「猊下、このようなならず者を宜しいのですか」
「何やらも使いようというではないか」
そう言うと男はニヤリと笑ってくれですかいた。この男だけは逆らってはいけない。俺の本能が叫んでいた。

「グレマン。その方に任務を与える」
「任務ですかい?」
俺は聞くしかなかった。

「そうだ。その方にはここを出てエルグランの王都に行ってもらいたい」
「行ってどうするんで?」
「追って沙汰する。それまでは、今までと同じことをしておれば良かろう」
「しかし、エルグランの王都には縄張りってものがあって、すぐによそ者がやっていくわけにはなかなかいかねえんで」
俺はお偉いさまに何とか思いとどまってもらおうと言い張った。これだけは言わないわけにはいかなかったのだ。

「貴様、猊下に逆らうのか」
「よいよい。グレマン、気にせずともエルグランの王都にはヤクザの縄張りなどほとんどない。お前ならすぐに溶け込めよう」
「本当ですかい?」
俺には信用ならなかった。

しかし、この男に逆らうわけにもいかずに、俺は仕方なしにドニと一緒にエルグランの王都に向かった。


しかし、来てみればなんと王都にはやくざ者の縄張りがまったくなかったのだ。

何でも、少し前に騎士団に一掃されたらしい。

そんなバカな。俺は信じられなかった。

普通はならず者の島がきちんと決まっていて、その親分の傘下に入るか何かしないといけないのに、そのならず者の組織自体が殆どないのだ。

俺はあっという間に、顔役になれた。

そうこうするうちに他のならず者たちも帰ってきたのだか、すわ抗争か、と俺も色々準備しだした時に、また、あっという間にいなくなってしまったのだ。

なんでも化け物が帰ってきたとか何とか……

本当にこいつらは馬鹿だ。化け物なんて、シュタイン公国のあの黒ずくめの男に比べれば大したことは無い。

俺は騎士団に目を付けられるとまずいので、下っ端の何人かにつてを作った。
なあに、一人は女で釣って、もう一人は金に困っていたところへ援助してやったのだ。

ちょろいものだ。

もう少し何とかしたかったが、エルグランの騎士たちはなかなかしっかりしているみたいで、なかなか尻尾を掴ませなかった。

そんな所へ黒ずくめの男から指示が来た。

何でも、王立学園の女を一人攫って、それで貴族の令嬢を誘き出せと言う事だった。
俺はさすがに貴族の令嬢に手を出すのはためらわれた。

その俺の前に金貨の袋がどんと置かれたのだ。

その金額はこの国じゃあなかなか目に入らないほどの額だった。俺が一生かかっても稼ぎ出せないほどの額だった。

「これは前金だ。その女を公国まで連れて来られればさらに同じだけ出す」
そこには魔封じの手錠があった。俺でも見たことのないほどのまがまがしい邪な魔力を感じる物だった。
俺は必死に計算した。これだけの金があれば今回失敗してもまた、どこかでやり直せるだろう。
それに、あの男に逆らうのは避けたかった。

「判りました。そのフランとかいう女を必ず連れて行きます」
俺は金に目がくらんで言っていたのだった

*************************************************************

さて、この男の思惑通りに行くのか?
続きは今夜更新予定です。
しおりを挟む
感想 334

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。