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一人での逃避行だと思ったのに、3人の仲間が出来ました
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私は追っ手がいないのを確認して、隠れ家に向かった。
隠れ家は町外れの住宅街の中にあった。
ドンドン!
私はドアを思いっきり叩いた。
「誰だ、こんな夜分に!」
不機嫌な声が聞こえた。
「私よ」
「姫様!」
慌てて隠れ家の主のトムが扉を開けた。
「いかがされたのです? そんな格好で」
考えたら私のドレスが爆発でボロボロになっていた。
「シュタインの暗部とやり合ったのよ」
私が答えると、
「な、なんかですと! シュタインの暗部が関わっているということは王室が絡んでいるということですな。奴らは我がインスブルク王国に戦争をふっかけようとしているのですな」
トムがいきり立っていた。
「トム、戦争をふっかけようとしているなど、大げさよ」
私が注意すると、
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか! 姫様を襲ってきたということはそういうことです」
「まあ、トム、私がエイベルに婚約破棄されただけだから」
「なんですって。姫様との婚約を破棄するなど、それこそ宣戦布告とおんなじですぞ」
「まあ、そういきり立たずに私の話を聞いて」
私がエイベルに婚約破棄されて、エイベルを張り倒したこと。追いかけてきた暗部を殲滅したことなどをかいつまんで説明した。
「だからエイベルを張り倒したからシュタインの者らもしゃかりきになっているんだと思うわ」
「自ら求めてきて姫様と婚約して、姫様に我慢を強いたくせに、婚約破棄するなど姫様が王太子を張り倒すのも当然のことです。姫様はここまでよく我慢なされましたな」
トムが珍しく褒めてくれた。
「そうでしょう。まあ、私がエイベルを張り倒したから暗部が攻撃してきたんだと思うけれど」
「婚約者に不義理された上に婚約破棄されたから張り倒すのと、暗部に姫様を襲わせるのは別です。一国の王女を問答無用で攻撃してきたのです。これはシュタイン王国が我が国に宣戦布告してきたのと同じと考えて良いかと」
「まあ、トム、シュタイン王国の奴らもちょっと気が立っていただけよ」
私はトムの考えを押さえようとした。大国のシュタイン王国と戦争するのはさすがにまずい。
「姫様は本当に昔から甘いところは変わりませんな。そんなん風に甘いからシュタイン前国王にケーキで釣られて酷い目に遭わされるのです」
トムが言うことに反論したかったが、事実だからあまり何も言えなかった。それに反論するとまた、長引きそうだった。
それよりも私はすぐに本国に帰らないといけない。トムの反応を見てもこれを知ったらインスブルクの騎士団が暴走しそうだ。そうならないうちに帰らないといけない。
私は旅装に着替えると直ちにインスブルクに向かったのだ。
夜行だけど仕方がない。
私はできる限り馬を急がせて、帰ろうとしたのだ。
でも、脇道から郊外に出ようとしたら追いかけてくる馬の足音がしたのだ。
「3騎か」
私はどうしようかと考えた。
追っ手の可能性は十分にあった。連れて行くよりもここで対処した方が良いだろう。
私が待っていると3騎の馬に乗った者が駆けてきた。
「えっ?」
それはよく見知った連中だった。
「ちょっとあんた達。何しに来たのよ」
私が3人を見据えていった。
「いや、俺は国に帰る途中だ」
真っ先にレックスが言ってくれた。
「俺も領地に帰るところです」
ハワードも平然と言ってくれた。
「アーチ、あなたの家は王都よね」
私が王都に住んでいるアーチに言うと
「それはそうなんだが……」
アーチが口ごもる
「アーチは俺の家に遊びに来るんです。そうでしょ。アーチ」
ハワードが横から言い出した。
「そう、そうなんだよ。ハワードの家に呼ばれていて」
いかにも今思いついたとしか思えない苦しい言い訳をアーチはしてくれたんだけど。
「貴方たちね。私はシュタイン王国に追われているのよ」
「しかし、リディは俺達の仲間じゃないか。仲間を見捨てるわけにはいかないよ」
アーチが言ってくれた。
「私も仲間を見捨てたら親から勘当されますから」
「俺の国はボルツアーノ王国だからシュタイン王国は関係無い」
ハワードとレックスまで言ってくるんだけど。
「貴方たちね。私は完全にシュタイン王国のお尋ね者になっているのよ。私を助けるとことはシュタイン王国を敵に回すことになるのよ。その覚悟があるの?」
私が呆れて聞いた。遊びではないのだ。アーチとハワードは国を捨てる覚悟が必要になる。私は自分のことに皆を巻き込みたくなかった。
「あのような卑怯なことを王太子が考えていたんだ。この国には俺はいたくない」
「俺もそうです。婚約者がいるにもかかわらず、他の女と仲良くなって、婚約者を罠に嵌めて婚約破棄して断罪しようとする男の下にはいたくありません」
「俺は一生涯リディについて行くつもりだから、問題ない」
アーチにハワード、日頃は冷静なレックスまで言ってくれるんだけど、
「何言っているのよ。貴方たちを我が国が受け入れるかどうかも判らないのよ。勝手なことをして、シュタイン王国から追放されて、行くところがなくなったらどうするつもりよ」
私が言うと
「その時はリディに面倒見てもらうから言い」
アーチの言葉に残された2人も頷いてくれるんだけど、
「アーチ、今の私の言葉を聞いたの?」
「行くところなかったらリディは見捨てないよ。絶対に俺の面倒は見てくれる」
自信を持ってアーチが言ってくれるんだけど、
「そうそう、リディアーヌ様は口では文句を言っても私たちを見捨てられることはありません」
「別に無給で良いから傭兵として側に置いてよ」
レックスまで言ってくれるんだけど……
「もう、知らないからね」
私はそう言うと馬を駆け出させた。
残りの3人もついてくる。
「とりあえず、国境までだからね」
私は後ろを振り返ってそう言い切った。
「よし、そうこなくっちゃ」
アーチ達は喜んでついてくるんだけど。
この3人を国に連れ帰れば又いろいろ言われそうだ。それにこの3人が後で後悔しないかとても心配だった。
でも、私はひとりぼっちの逃避行ではなくなったのだ。
それが私には少し嬉しかった。
*******************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました
お供が3人出来たリディでした
続きは明朝の予定です。
隠れ家は町外れの住宅街の中にあった。
ドンドン!
私はドアを思いっきり叩いた。
「誰だ、こんな夜分に!」
不機嫌な声が聞こえた。
「私よ」
「姫様!」
慌てて隠れ家の主のトムが扉を開けた。
「いかがされたのです? そんな格好で」
考えたら私のドレスが爆発でボロボロになっていた。
「シュタインの暗部とやり合ったのよ」
私が答えると、
「な、なんかですと! シュタインの暗部が関わっているということは王室が絡んでいるということですな。奴らは我がインスブルク王国に戦争をふっかけようとしているのですな」
トムがいきり立っていた。
「トム、戦争をふっかけようとしているなど、大げさよ」
私が注意すると、
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか! 姫様を襲ってきたということはそういうことです」
「まあ、トム、私がエイベルに婚約破棄されただけだから」
「なんですって。姫様との婚約を破棄するなど、それこそ宣戦布告とおんなじですぞ」
「まあ、そういきり立たずに私の話を聞いて」
私がエイベルに婚約破棄されて、エイベルを張り倒したこと。追いかけてきた暗部を殲滅したことなどをかいつまんで説明した。
「だからエイベルを張り倒したからシュタインの者らもしゃかりきになっているんだと思うわ」
「自ら求めてきて姫様と婚約して、姫様に我慢を強いたくせに、婚約破棄するなど姫様が王太子を張り倒すのも当然のことです。姫様はここまでよく我慢なされましたな」
トムが珍しく褒めてくれた。
「そうでしょう。まあ、私がエイベルを張り倒したから暗部が攻撃してきたんだと思うけれど」
「婚約者に不義理された上に婚約破棄されたから張り倒すのと、暗部に姫様を襲わせるのは別です。一国の王女を問答無用で攻撃してきたのです。これはシュタイン王国が我が国に宣戦布告してきたのと同じと考えて良いかと」
「まあ、トム、シュタイン王国の奴らもちょっと気が立っていただけよ」
私はトムの考えを押さえようとした。大国のシュタイン王国と戦争するのはさすがにまずい。
「姫様は本当に昔から甘いところは変わりませんな。そんなん風に甘いからシュタイン前国王にケーキで釣られて酷い目に遭わされるのです」
トムが言うことに反論したかったが、事実だからあまり何も言えなかった。それに反論するとまた、長引きそうだった。
それよりも私はすぐに本国に帰らないといけない。トムの反応を見てもこれを知ったらインスブルクの騎士団が暴走しそうだ。そうならないうちに帰らないといけない。
私は旅装に着替えると直ちにインスブルクに向かったのだ。
夜行だけど仕方がない。
私はできる限り馬を急がせて、帰ろうとしたのだ。
でも、脇道から郊外に出ようとしたら追いかけてくる馬の足音がしたのだ。
「3騎か」
私はどうしようかと考えた。
追っ手の可能性は十分にあった。連れて行くよりもここで対処した方が良いだろう。
私が待っていると3騎の馬に乗った者が駆けてきた。
「えっ?」
それはよく見知った連中だった。
「ちょっとあんた達。何しに来たのよ」
私が3人を見据えていった。
「いや、俺は国に帰る途中だ」
真っ先にレックスが言ってくれた。
「俺も領地に帰るところです」
ハワードも平然と言ってくれた。
「アーチ、あなたの家は王都よね」
私が王都に住んでいるアーチに言うと
「それはそうなんだが……」
アーチが口ごもる
「アーチは俺の家に遊びに来るんです。そうでしょ。アーチ」
ハワードが横から言い出した。
「そう、そうなんだよ。ハワードの家に呼ばれていて」
いかにも今思いついたとしか思えない苦しい言い訳をアーチはしてくれたんだけど。
「貴方たちね。私はシュタイン王国に追われているのよ」
「しかし、リディは俺達の仲間じゃないか。仲間を見捨てるわけにはいかないよ」
アーチが言ってくれた。
「私も仲間を見捨てたら親から勘当されますから」
「俺の国はボルツアーノ王国だからシュタイン王国は関係無い」
ハワードとレックスまで言ってくるんだけど。
「貴方たちね。私は完全にシュタイン王国のお尋ね者になっているのよ。私を助けるとことはシュタイン王国を敵に回すことになるのよ。その覚悟があるの?」
私が呆れて聞いた。遊びではないのだ。アーチとハワードは国を捨てる覚悟が必要になる。私は自分のことに皆を巻き込みたくなかった。
「あのような卑怯なことを王太子が考えていたんだ。この国には俺はいたくない」
「俺もそうです。婚約者がいるにもかかわらず、他の女と仲良くなって、婚約者を罠に嵌めて婚約破棄して断罪しようとする男の下にはいたくありません」
「俺は一生涯リディについて行くつもりだから、問題ない」
アーチにハワード、日頃は冷静なレックスまで言ってくれるんだけど、
「何言っているのよ。貴方たちを我が国が受け入れるかどうかも判らないのよ。勝手なことをして、シュタイン王国から追放されて、行くところがなくなったらどうするつもりよ」
私が言うと
「その時はリディに面倒見てもらうから言い」
アーチの言葉に残された2人も頷いてくれるんだけど、
「アーチ、今の私の言葉を聞いたの?」
「行くところなかったらリディは見捨てないよ。絶対に俺の面倒は見てくれる」
自信を持ってアーチが言ってくれるんだけど、
「そうそう、リディアーヌ様は口では文句を言っても私たちを見捨てられることはありません」
「別に無給で良いから傭兵として側に置いてよ」
レックスまで言ってくれるんだけど……
「もう、知らないからね」
私はそう言うと馬を駆け出させた。
残りの3人もついてくる。
「とりあえず、国境までだからね」
私は後ろを振り返ってそう言い切った。
「よし、そうこなくっちゃ」
アーチ達は喜んでついてくるんだけど。
この3人を国に連れ帰れば又いろいろ言われそうだ。それにこの3人が後で後悔しないかとても心配だった。
でも、私はひとりぼっちの逃避行ではなくなったのだ。
それが私には少し嬉しかった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました
お供が3人出来たリディでした
続きは明朝の予定です。
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