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降伏する国王の罠に嵌められました
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「辺境伯の率いる中央軍は王都まで十キロの平原に到達しました」
「右翼のモスリム伯爵の軍もあと3時間くらいで到達します」
「左翼のバスター伯爵も今日中には到達予定です」
モスリム伯の別館に次々と情報が報告されてくる。
「結局ここまで戦は無かったわね」
私はがっかりしていた。
「まあ、しかし、後は王都です。国王は最後の決戦を挑んでくるでしょう」
エイブが言ってくれた。
でも、こちらは既に10万の大軍になっていた。
一気に攻撃しても平原なら勝てるはずだ。
「どうするつもりなのかな」
私が聞くと
「さあ、シュタイン王国軍は次々に脱落者が出ているはずです。近衞と言っても半数も残っていないという報告もありますな」
マトライが教えてくれた。
「えっ、そんなに逃げ出したの?」
私は呆れてしまった。
私は最後は盛大な戦いを期待していたのだ。
大陸南部で最大の版図を誇った強大な力を持つシュタイン王国が滅ぶのだ。
最後は一大決戦をしてほしかった。
「本当にやわな奴らのね。戦おうという気概のある奴らはいないの?」
私が不満そうに言うと、
「気概のある奴らは、姫様が既に退治したのではありませんか?」
マトライが呆れて言ってくれた。
「砦の防衛戦で、姫様は10万の敵の大軍を破られましたし」
「王宮を急襲して廃墟にされましたな」
「大聖堂も焼き討ちされまし」
「最後の決戦はこの前済ませられたでしょう」
皆次々に戦いを挙げてくれた。
まあ、確かに4回も戦っていた。
どれも私の完勝だ。
「最後の決戦では姫様は王太子まで人質に取られましたし」
「さすがにそれだけやられると、シュタイン国王も心が折れたのではありませんか」
レナードとマトライが最後に言ってくれた。
「ということは、最後の王宮の決戦も無いということ?」
私がかっかりして言うと
「王宮の決戦と言われますが、既に王宮は姫様が廃墟とされたではありませんか? どこの王が廃墟を拠点に戦おうとするんですか?」
呆れてマトライが言ってくれた。
うーん、やはり最後の戦いを期待する私の希望は報われないかもしれない。
私ががっかりした時だ。
更にがっかりする報告が上って来たのだ。
「リディアーヌ様、シュタイン王国が降伏してきたようです」
喜んでハワードが執務室に飛び込んできたんだけど……最後の華々しい決戦を期待していた私は全然嬉しくなかった。
そして、1週間が経った。
今日は、シュタイン王国が、全面降伏をする日だ。
私達は粛々と王宮に進軍した。
大半の兵は郊外に待機していた。
私は最後の決戦を期待していたのに無くなってがっかりだった。
私は近衞騎士団千騎とともにシュタイン王宮に入場したのだ。
私の横にはマトライとレナード、それとレックス、ハワード、アーチがついていた。
王宮は仮の建物が少しは出来ていたが、大半はまだ焼け野原のままだった。
王宮の再建計画は早速マトライ等によって立てられつつあるが、今は関係無いだろう。
中庭だったところにテントが張られていて、そこにシュタイン王国の国王がいた。
久しぶりに見たシュタイン国王は目に隈を作っていた。
私を見ても挨拶もしてこなかった。
まあ、お互い様だったけれど。
敗軍の将は語らずなのかもしれない。
「シュタイン王国クラーク・シュタイン国王陛下」
係のものが促して国王は前に歩いて出た。
そして、机の上に置かれたマトライが作った降伏調印の書面にシュタイン国王は粛々とサインしてくれた。
サインが終わって万歳とか叫びたそうなハワードには前々から釘を刺しておいた。
滅びる国にも敬意を持って接しないといけないとマトライには言われていた。
まあ、我が軍の大半が元シュタイン王国軍だ。
あまり刺激するのは良くないだろう。
「リディアーヌ、その方にシュタイン王国の国王の印の宝剣を渡したい。後王家に代々伝わる宝物もだ」
国王が言ってくれた。
呼び捨てなど不敬だとハワードが叫びそうだったから私は素早く制した。
「どこにあるのですか?」
「この地下にある」
国王は地下への入り口を指した。そこには焼けただれていたが、確かに地下に入れるような階段があった。
「リディアーヌ様。危険です」
ハワードが言い出した。
「私が一人で案内するのだ。なんなら貴様等もついてくれば良かろう。あまり大人数は困るがな」
国王は言ってくれた。
「しかし……」
「武器も持たぬ私が怖いのか」
国王が馬鹿にしたように言ってくれた。
そう言われるとハワードも何も言えなかった。
「しかし、陛下。地下に何があるか判りません」
今度はレックスが反対してきた。
私は首を振ったのだ。
今更私に何か仕掛けても仕方が無いだろう。
何しろシュタイン王国は降伏したのだから。
私はこの横柄な国王が小細工をするとはとても思えなかった。
「宜しいか」
結局中には国王に続いて私、そして、レックスとハワードアーチがついてきた。
中はすぐに行き止まりになった。
国王は壁に手をかざした。
どんな仕組みになっているのか判らないが、それで扉が開いたのだ。
中は少し広い部屋になっていた。
国王がまっすぐに歩いて行く。
その中央には壇上に銀色に輝く宝剣が掲げられていた。
私はその国王の後についていった。
しかし、国王が壇上に着いた時だ。
「危ない!」
私は後ろから来ていたレックス等を振り向いて叫んでいた。
ガキン!
一番後ろのハワードにゴーレムが剣を打ち込んだところだった。
ハワードが剣で受ける。
「ふんっ、このような手には引っかからん」
ハワードが笑った時だ。
「それはどうかな」
シュタイン国王が笑ってくれたのだ。
「えっ」
次の瞬間私の足下の床が消えてなくなったのだ。
私はあっという間に下に落ちていたのだ。
***************************************
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
罠にはまったリデイの運命や如何に?
続きは今夜です。
『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
「右翼のモスリム伯爵の軍もあと3時間くらいで到達します」
「左翼のバスター伯爵も今日中には到達予定です」
モスリム伯の別館に次々と情報が報告されてくる。
「結局ここまで戦は無かったわね」
私はがっかりしていた。
「まあ、しかし、後は王都です。国王は最後の決戦を挑んでくるでしょう」
エイブが言ってくれた。
でも、こちらは既に10万の大軍になっていた。
一気に攻撃しても平原なら勝てるはずだ。
「どうするつもりなのかな」
私が聞くと
「さあ、シュタイン王国軍は次々に脱落者が出ているはずです。近衞と言っても半数も残っていないという報告もありますな」
マトライが教えてくれた。
「えっ、そんなに逃げ出したの?」
私は呆れてしまった。
私は最後は盛大な戦いを期待していたのだ。
大陸南部で最大の版図を誇った強大な力を持つシュタイン王国が滅ぶのだ。
最後は一大決戦をしてほしかった。
「本当にやわな奴らのね。戦おうという気概のある奴らはいないの?」
私が不満そうに言うと、
「気概のある奴らは、姫様が既に退治したのではありませんか?」
マトライが呆れて言ってくれた。
「砦の防衛戦で、姫様は10万の敵の大軍を破られましたし」
「王宮を急襲して廃墟にされましたな」
「大聖堂も焼き討ちされまし」
「最後の決戦はこの前済ませられたでしょう」
皆次々に戦いを挙げてくれた。
まあ、確かに4回も戦っていた。
どれも私の完勝だ。
「最後の決戦では姫様は王太子まで人質に取られましたし」
「さすがにそれだけやられると、シュタイン国王も心が折れたのではありませんか」
レナードとマトライが最後に言ってくれた。
「ということは、最後の王宮の決戦も無いということ?」
私がかっかりして言うと
「王宮の決戦と言われますが、既に王宮は姫様が廃墟とされたではありませんか? どこの王が廃墟を拠点に戦おうとするんですか?」
呆れてマトライが言ってくれた。
うーん、やはり最後の戦いを期待する私の希望は報われないかもしれない。
私ががっかりした時だ。
更にがっかりする報告が上って来たのだ。
「リディアーヌ様、シュタイン王国が降伏してきたようです」
喜んでハワードが執務室に飛び込んできたんだけど……最後の華々しい決戦を期待していた私は全然嬉しくなかった。
そして、1週間が経った。
今日は、シュタイン王国が、全面降伏をする日だ。
私達は粛々と王宮に進軍した。
大半の兵は郊外に待機していた。
私は最後の決戦を期待していたのに無くなってがっかりだった。
私は近衞騎士団千騎とともにシュタイン王宮に入場したのだ。
私の横にはマトライとレナード、それとレックス、ハワード、アーチがついていた。
王宮は仮の建物が少しは出来ていたが、大半はまだ焼け野原のままだった。
王宮の再建計画は早速マトライ等によって立てられつつあるが、今は関係無いだろう。
中庭だったところにテントが張られていて、そこにシュタイン王国の国王がいた。
久しぶりに見たシュタイン国王は目に隈を作っていた。
私を見ても挨拶もしてこなかった。
まあ、お互い様だったけれど。
敗軍の将は語らずなのかもしれない。
「シュタイン王国クラーク・シュタイン国王陛下」
係のものが促して国王は前に歩いて出た。
そして、机の上に置かれたマトライが作った降伏調印の書面にシュタイン国王は粛々とサインしてくれた。
サインが終わって万歳とか叫びたそうなハワードには前々から釘を刺しておいた。
滅びる国にも敬意を持って接しないといけないとマトライには言われていた。
まあ、我が軍の大半が元シュタイン王国軍だ。
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国王が言ってくれた。
呼び捨てなど不敬だとハワードが叫びそうだったから私は素早く制した。
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「この地下にある」
国王は地下への入り口を指した。そこには焼けただれていたが、確かに地下に入れるような階段があった。
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そう言われるとハワードも何も言えなかった。
「しかし、陛下。地下に何があるか判りません」
今度はレックスが反対してきた。
私は首を振ったのだ。
今更私に何か仕掛けても仕方が無いだろう。
何しろシュタイン王国は降伏したのだから。
私はこの横柄な国王が小細工をするとはとても思えなかった。
「宜しいか」
結局中には国王に続いて私、そして、レックスとハワードアーチがついてきた。
中はすぐに行き止まりになった。
国王は壁に手をかざした。
どんな仕組みになっているのか判らないが、それで扉が開いたのだ。
中は少し広い部屋になっていた。
国王がまっすぐに歩いて行く。
その中央には壇上に銀色に輝く宝剣が掲げられていた。
私はその国王の後についていった。
しかし、国王が壇上に着いた時だ。
「危ない!」
私は後ろから来ていたレックス等を振り向いて叫んでいた。
ガキン!
一番後ろのハワードにゴーレムが剣を打ち込んだところだった。
ハワードが剣で受ける。
「ふんっ、このような手には引っかからん」
ハワードが笑った時だ。
「それはどうかな」
シュタイン国王が笑ってくれたのだ。
「えっ」
次の瞬間私の足下の床が消えてなくなったのだ。
私はあっという間に下に落ちていたのだ。
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