29 / 44
クリスは魔の山を一閃で消滅させました・・・・
しおりを挟む
翌朝、目を覚ましたクリスは、巨大なテントの中のベッドの上で寝ているのに気付いた。
何故か気分爽快だった。
「あっ目を覚まされましたか」
おっかなびっくりで横にいたモニカが声をかけてくる。
「どうしたんですか。モニカ様。言葉が敬語になってますけど」
不思議そうにクリスが聞く。クリスはシャラザールになった自分がどんな事をしたか全く覚えていないのだ。
「良かった。シャラに戻ってる」
モニカはホッとした。このままシャラザールのままだったらどうしようと、モニカは途方に暮れていたのだ。
あれからモニカとギャオースを連れて城中歩き回ったシャラザールは隠れていた貴族と兵士たちを見つけると問答無用で出陣させた。
あまりにやる気のない兵士は問答無用でカロン砦の真ん前に転移させられていた。
それをそばで見ていた貴族たちは慌てて駆け出した。
そして、残っていた侍女や子供老臣達を集めて兵士の基礎訓練をはじめたのだった。
モニカも散々しごかれた。
徹夜の命がけの訓練で多少は兵士の形になった侍女たちだった。
「ひどいやられようね。ひょっとしてギャオちゃんがやったの」
外の様子は悲惨だった。白い目でクリスはギャオちゃんを見た。
いや、お前だろう。
モニカは余程そう言いたかった。
ギャオちゃんも
「ピーーーーーー」
誤解だと必死に否定している。
「モニカ様。貴族の皆さまや近衛兵の皆様は?」
「夜にカロン砦の奪回に向かった」
「さようですか。私がお酒で酔っている間に皆様、やはり出陣されたのですね。さすがドグリブの勇者の方々ですわ」
感心してクリスが言った。
そのクリスの言葉に何故かモニカは疲れ切った表情をしていた。
「じゃあすぐに我々も追いかけた方が良いのではないですか」
「その前に魔導師部隊を作ったのだけど、シャラ様が見本を見せて頂けると」
「えっ見本ですか。あんまり攻撃魔術を使った覚えがないんですが、どなたが言われたのですか?」
「えっ、しゃ、いや、国王陛下がおっしゃらされんだ」
クリスの疑問に、思わずシャラザール様が言ったと言いそうになって、モニカは父が言ったことに代えた。本人にはシャラザールが憑依していることは内緒にしろとシャラザールが最後に念押ししていたのだ。
練習場では魔力の多いものを急遽50名女子供の中から選び出して訓練が始まっていた。
皆、的に向けてなんとか小さいファイアーボールを作って攻撃できるようになりつつあった。
「皆さん。殿下が見本を見せて頂きます」
教官と思しき女長官が全員に言う。
練習していた子供や女官がモニカを注目した。
モニカは元々女騎士だ。魔術はほとんど使ったことが無かったが、昨日の特訓でなんとかファイアーボールが出せるようになった。
「出でよ。火の玉」
皆よりも大きな火の玉が生成されてそれは標的に命中した。
爆発音がなって標的が消失する。
「おおおお」
皆拍手した。
「では、次はシャラ様に見せて頂きます」
女長官の言葉に皆興味津々でクリスを見詰めた。
何しろ秘密だがシャラザールが憑依しているのだ。すごいことをしてくれるだろう。
クリスは皆の視線が怖くなってきた。
「あのう、モニカ様。本当に陛下が私に見本を見せろとおっしゃったのですか?」
「そうだ。彼女なら素晴らしい見本を見せてくれるだろうと」
本当は本人がそう言ったのだが、意識がなかったのならば仕方があるまい。
モニカもどういうふうになるか興味があった。
シャラザールの見本ってどんな感じだと。
「でも、モニカ様。私、不吉な予感しかしないんですけど」
「大丈夫。シャラなら必ずできるよ」
モニカは太鼓判をおした。
「そうですか?」
クリスは的の前に立った。
「出でよ。火の玉」
クリスは言うが、小さな火の玉ができそうで消えていった。
皆唖然と見ていた。
「あれ、大した事無いよ」
子供の一人が言う。
「しィィィィィィィィ」
横の女官が慌てて子供の口を抑える。相手はシャラザールだ。怒ると今度こそどうなるか判らない。
「あれぇぇ。やっぱり出来ませんよ」
真っ赤になってクリスが言う。
「大丈夫。シャラなら出来るって」
シャラも大した事無いんだとモニカはほっとして思いながら言う。
クリスは気持ちを入れかえて、再度、的の前に立った。
「出でよ! 火の玉」
今度は巨大な火の玉が出来ようとしてその大きさに慌ててクリスは止めた。
「すげえ、めちゃくちゃ大きかった」
今度は子供が喜んで言った。
「モニカ様。ファイアーボールでなくても良いですか」
クリスが聞いた。
「なんか、ファイアーボールはやりにくくて」
「えっ、何でもいいと思うけど」
確かシャラザールも魔術の指定はしていなかったと。
クリスは真剣に構えた。
そして深呼吸をする。
クリスから緊張が消えた。
クリスは無詠唱で手に魔力を集める。
「えっ」
モニカはその魔力の大きさに驚いた。ひょっとしてこれは・・・
モニカが止めるまもなくクリスは巨大衝撃波を放っていた。
それは一瞬で練習場の的を破壊しつくし、城壁を破壊、そのまま遠くに見える魔の山を直撃した。
凄まじい爆発音がする。
皆衝撃で倒れていた。
爆炎が無くなった跡には魔の山は影も形も残っていなかった。
何故か気分爽快だった。
「あっ目を覚まされましたか」
おっかなびっくりで横にいたモニカが声をかけてくる。
「どうしたんですか。モニカ様。言葉が敬語になってますけど」
不思議そうにクリスが聞く。クリスはシャラザールになった自分がどんな事をしたか全く覚えていないのだ。
「良かった。シャラに戻ってる」
モニカはホッとした。このままシャラザールのままだったらどうしようと、モニカは途方に暮れていたのだ。
あれからモニカとギャオースを連れて城中歩き回ったシャラザールは隠れていた貴族と兵士たちを見つけると問答無用で出陣させた。
あまりにやる気のない兵士は問答無用でカロン砦の真ん前に転移させられていた。
それをそばで見ていた貴族たちは慌てて駆け出した。
そして、残っていた侍女や子供老臣達を集めて兵士の基礎訓練をはじめたのだった。
モニカも散々しごかれた。
徹夜の命がけの訓練で多少は兵士の形になった侍女たちだった。
「ひどいやられようね。ひょっとしてギャオちゃんがやったの」
外の様子は悲惨だった。白い目でクリスはギャオちゃんを見た。
いや、お前だろう。
モニカは余程そう言いたかった。
ギャオちゃんも
「ピーーーーーー」
誤解だと必死に否定している。
「モニカ様。貴族の皆さまや近衛兵の皆様は?」
「夜にカロン砦の奪回に向かった」
「さようですか。私がお酒で酔っている間に皆様、やはり出陣されたのですね。さすがドグリブの勇者の方々ですわ」
感心してクリスが言った。
そのクリスの言葉に何故かモニカは疲れ切った表情をしていた。
「じゃあすぐに我々も追いかけた方が良いのではないですか」
「その前に魔導師部隊を作ったのだけど、シャラ様が見本を見せて頂けると」
「えっ見本ですか。あんまり攻撃魔術を使った覚えがないんですが、どなたが言われたのですか?」
「えっ、しゃ、いや、国王陛下がおっしゃらされんだ」
クリスの疑問に、思わずシャラザール様が言ったと言いそうになって、モニカは父が言ったことに代えた。本人にはシャラザールが憑依していることは内緒にしろとシャラザールが最後に念押ししていたのだ。
練習場では魔力の多いものを急遽50名女子供の中から選び出して訓練が始まっていた。
皆、的に向けてなんとか小さいファイアーボールを作って攻撃できるようになりつつあった。
「皆さん。殿下が見本を見せて頂きます」
教官と思しき女長官が全員に言う。
練習していた子供や女官がモニカを注目した。
モニカは元々女騎士だ。魔術はほとんど使ったことが無かったが、昨日の特訓でなんとかファイアーボールが出せるようになった。
「出でよ。火の玉」
皆よりも大きな火の玉が生成されてそれは標的に命中した。
爆発音がなって標的が消失する。
「おおおお」
皆拍手した。
「では、次はシャラ様に見せて頂きます」
女長官の言葉に皆興味津々でクリスを見詰めた。
何しろ秘密だがシャラザールが憑依しているのだ。すごいことをしてくれるだろう。
クリスは皆の視線が怖くなってきた。
「あのう、モニカ様。本当に陛下が私に見本を見せろとおっしゃったのですか?」
「そうだ。彼女なら素晴らしい見本を見せてくれるだろうと」
本当は本人がそう言ったのだが、意識がなかったのならば仕方があるまい。
モニカもどういうふうになるか興味があった。
シャラザールの見本ってどんな感じだと。
「でも、モニカ様。私、不吉な予感しかしないんですけど」
「大丈夫。シャラなら必ずできるよ」
モニカは太鼓判をおした。
「そうですか?」
クリスは的の前に立った。
「出でよ。火の玉」
クリスは言うが、小さな火の玉ができそうで消えていった。
皆唖然と見ていた。
「あれ、大した事無いよ」
子供の一人が言う。
「しィィィィィィィィ」
横の女官が慌てて子供の口を抑える。相手はシャラザールだ。怒ると今度こそどうなるか判らない。
「あれぇぇ。やっぱり出来ませんよ」
真っ赤になってクリスが言う。
「大丈夫。シャラなら出来るって」
シャラも大した事無いんだとモニカはほっとして思いながら言う。
クリスは気持ちを入れかえて、再度、的の前に立った。
「出でよ! 火の玉」
今度は巨大な火の玉が出来ようとしてその大きさに慌ててクリスは止めた。
「すげえ、めちゃくちゃ大きかった」
今度は子供が喜んで言った。
「モニカ様。ファイアーボールでなくても良いですか」
クリスが聞いた。
「なんか、ファイアーボールはやりにくくて」
「えっ、何でもいいと思うけど」
確かシャラザールも魔術の指定はしていなかったと。
クリスは真剣に構えた。
そして深呼吸をする。
クリスから緊張が消えた。
クリスは無詠唱で手に魔力を集める。
「えっ」
モニカはその魔力の大きさに驚いた。ひょっとしてこれは・・・
モニカが止めるまもなくクリスは巨大衝撃波を放っていた。
それは一瞬で練習場の的を破壊しつくし、城壁を破壊、そのまま遠くに見える魔の山を直撃した。
凄まじい爆発音がする。
皆衝撃で倒れていた。
爆炎が無くなった跡には魔の山は影も形も残っていなかった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる