娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

第二章 愛娘との幸せな生活を邪魔することは許しません

怒りのあまり放たれたクローディアの雷撃はシャラ並みでした。

「貴様。何をする」
男たちがエルンストに叫んだ。

「何をするとは変な言い草だな。人の土地に無断で入ってきたゴキブリ共が言うことか」
エルンストは剣を構えて言った。

「貴様、我等の手についたのではないのか。貴様の母が殺されても良いのか」
「そうだ。今ならまだ許されるぞ」
男たちは都合のいいことを言う。今更裏切っても許されるものではないだろう。

エルンストは薄ら笑いを浮かべると

「ふんっ。我がミハイル家にも家訓がある。騎士たるもの例え親が殺されても主人を守れとな」
そう言うとエルンストは上段に構えた。

そのすぐ後ろにクローディアが歩み寄る。

「クローディア様。ここはお下がりください。このゴキブリ共は私が始末いたします」
「何言っているのよ。エルンスト。私も魔導師の端くれ。あなた一人を戦わせるわけには行かないわ」
エルンストの言葉にクローディアは反論した。

「しかし・・・・」
いくら魔力があっても魔術が使えないのでは意味がないではないかとエルンストは思ったが、言えなかった。


「ふんっ。エルンスト。貴様にかまっている暇はないわ」
男たちは兵士たちをエルンストに向けて、魔導師たちがクローディアに向かう。

剣を抜いて5人の兵士がエルンストに襲いかかってきた。

エルンストにはクローディアに向かった魔導師たちを相手に出来る余裕はなかった。

一人目の剣を弾くや、二人目を上段から叩き斬る。

3人めを避けて蹴飛ばして4人目を貫く。

そして、それを盾にして5人目が斬りつけるのを受け止める。

味方を斬ってしまって慌てる兵士に、その剣を抜きざま斬りつけていた。


一方クローディアは駆けてくる10人の魔導師に慌てる。

ファイアーボールを発動しようとしたが、その前に2人の魔導師が転移してくる。

その2人はクローディアの腕を掴んだ。

「ちょっと離しなさい」
その腕を振り払おうとしてクローディアは暴れるが、押さえつけようとした一人の魔導師がクローディアの胸をもろに掴んでしまった。

「何するのよ」
ピキピキとクローディアが切れた。

次の瞬間クローディアの躰から雷撃が放たれていた。

その雷撃はクローディアを中心にまわりに飛ぶ。大半の魔導師がその雷撃を浴びて吹っ飛んでいた。

その殺気を感じたエルンストはとっさに伏せていた。

その頭上を凄まじい威力の雷撃が通過した。

まだ残っていた2人の兵士が雷撃の直撃を受けて吹っ飛んでいた。

雷撃をとっさに伏せて躱した唯一生き残った魔導師は唖然とした。娘のクローディアは魔術が使えないのではなかったのか。こんな凄まじい雷撃を魔導師は見たこともなかった。このままではやばいと魔導師は思い転移して逃げようとした。

「おい、少し待て」
その魔導師の後ろに凄まじいオーロを放つものが突如出現した。
魔導師はその一瞬で詰んでしまったことを悟った。この化け物のような者には絶対にかなわない。

「貴様、どこの手のものだ」
「ノ、ノ、の・・・・」
魔導師は答えようとして恐怖のあまり噛んでしまった。

「何をもたもたしておる。すぐに答えよ」
待ちきれなくなってシャラは思わず雷撃を放っていた。
軽く放ったつもりが、怒りのあまり加減を間違えていた。

立ち上がりかけていたエルンストは咄嗟に地に伏せる。

その頭上を先程のクローディアの放った雷撃の数倍凄まじい雷撃が通過していった。

怒りで切れているシャラの前には、生きている者は当然誰一人として残っていなかった。