91 / 121
皇弟の娘視点 私を虚仮にしてくれた公爵家令息の妹を亡き者にする計画を立てました
「何ですって!」
私はそれを聞いた時に、飲んでいたカップを地面に叩き連れていた。
ガッシャン!
大きな音とともにコーヒーカップは砕け散ったのだ。
私には到底許せることではなかった。
私はツェツィーリア・ブレーメン、このブレーメン帝国の皇弟の娘で皇女だ。
その大帝国の娘が高々属国の公爵家の嫡男に申し入れた婚約を拒否されたというのだ。
「それは本当なの、エルマー?」
私は私につけられた帝国から付いてきた侍従に聞いていた。
「はい。先程お父上から魔術郵便が届き、その旨が記されておりました」
いつも冷静なエルマーの顔も少しこわばった表情だった。
「公爵家は何と言ってきたの?」
「皇弟殿下の文章によると、この度のお話は公爵家にとっても大変嬉しい事ですが、恐れ多過ぎるのでお断りするとのことだったしと」
淡々とエルマーは説明してくれた。
「恐れ多すぎて断るってどういう事なの? そのような断り方はないわ!」
私は声が思わず大きくなっていた。
「やはり、ユリアーナの存在が大きいのでは」
フローラが横から指摘してくれた。
「あのユリアーナね」
私は歯ぎしりした。
本人に注意したのに、ユリアーナはその日もアルトマイアー様に抱き上げられて帰って行ったのだ。
絶対に皇家から婚約を持ちかけられた本人がするようなことではなかった。
アルトマイアー様としては私との婚約話を受けるつもりはないと、あの態度で示してくれたんだと思う。
帝国の皇女の私が、どこの馬の骨とも判らない、属国の公爵家の養女のせいで振られるなど許されることではなかった。
「フローラ、ユリアーナにアルトマイアー様から身を引くようにちゃんと伝えたの?」
私は怒りの矛先をフローラに向けた。
「はい。ツェツィーリア様の意向は何回もユリアーナには伝えました。聞き分けなさそうなので、聖女様にも協力頂いて、ユリアーナ本人にも色々嫌がらせをしたのですが、本人は鈍感なようでそれほど効果は無かったようです」
呆れてフローラは報告してくれたが、そうだ。あのユリアーナという女は、元々平民だからか、貴族の常識に疎くて、私がやんわりと釘を刺しても理解できなかったのだ。フローラは私よりはストレートに話したと思うが、それでも通じなかったのだろう。
それとも、理解できても、自分のアルトマイアー様からの寵愛の深さにあぐらをかいていたのかもしれない。影で私達を笑っている可能性もあった。
ああ見えて、あの女は学年の主席だった。
属国の養女に笑われることは私としては許せなかった。
そもそも、今回の私の留学は私の意向でアルトマイアー様で私の婚約者が良いかどうか確認する為の留学だった。私さえ良ければ普通は属国の公爵家風情、尻尾を振って大喜びで了承するのが当たり前なのだ。それを帝国からの婚約の申し入れを拒否するなんて普通は許されることではなかった。
というか、帝国の皇女である私の顔に泥を塗ってくれたのだ。許されることではなかった。
でも、私もうまくいきませんでしたと帰る訳にも行かない。
そんなことをお父様が許す訳はなかった。
「こうなれば色々と画策するしかありますまい」
今まで黙って聞いていた帝国の影でお父様からつけられたバルトルトが申し出てくれた。
「どうするというの?」
「公爵家にも我が皇家に逆らったということを思い知らせねばなりません」
「アルトマイアー様に何かするの?」
帝国の影はやると言ったら何でもやるのだ。私は少し不安になって聞いた。
「いや、いくら属国とはいえ、公爵家の嫡男を亡き者にするのはまずかろうと思われます」
「それはそうね」
私はほっとした。
「ツェツィーリア様はまだ、アルトマイアーと婚約したいとお考えということで宜しいですな」
私はバルトルトの問いに頷いた。
公爵家は元々世話になった家だ。その嫡男のアルトマイアー様と結婚できればそれで良い。
「では、ツェツィーリア様に不愉快な思いをさせて今頃ほくそ笑んでいるあのユリアーナとかいう、聖女様が悪役令嬢とか呼んでいる女に思い知らせる必要がございますな」
バルトルトは薄い笑いをした。
「しかし、ユリアーナは結構剣術は使えるそうよ」
「ふんっ、アルトマイアーの意向を恐れた周りのものが忖度した結果ですよ。本人は大したことはないはずです」
バルトルトは断言した。
「でも、カスパルがやられているけれど」
「あれはカスパルが油断したのです。普通はああも簡単にはやられることはありますまい」
バルトルトは私の指摘に首を振ってくれた。
「でも、どうするの? 今は毎日送り迎えはアルトマイアー様がつきっきりよ」
私が疑問を呈すると、
「なあに、もうまもなく、魔物討伐訓練がございます。その時にどさくさに紛れて魔物に襲わせればいいのですよ」
「しかし、それでは他にも犠牲が出るのではなくて?」
私が心配して言うと
「帝国の皇女殿下の行こうに逆らったらから、厄災が襲うのです。多少の犠牲は致し方ありますまい」
バルトルトは首を振ってくれた。
「でも、うまくいくの?」
私が聞いたら
「お任せ下さい。帝国の恐ろしさを公爵家の面々に思い知らせるいい機会ですからな。ユリアーナさえ、いなくなれば、アルトマイアーもツェツィーリア様との婚約を認めざるを得ないでしょう」
バルトルトはそう言うと笑ってくれたのだ。
「魔物に襲われるユリアーナが多少は可哀相だけど」
私が呟くと
「帝国の皇女のツェツィーリア様に恥をかかせたのです。自らの死をもって贖うしかないでしょう」
「そうね。さっさと身を引けば生きて行けたのに、馬鹿な女ね」
私はそう言うと皆で愚かな女の事を笑ったのだった。
私はそれを聞いた時に、飲んでいたカップを地面に叩き連れていた。
ガッシャン!
大きな音とともにコーヒーカップは砕け散ったのだ。
私には到底許せることではなかった。
私はツェツィーリア・ブレーメン、このブレーメン帝国の皇弟の娘で皇女だ。
その大帝国の娘が高々属国の公爵家の嫡男に申し入れた婚約を拒否されたというのだ。
「それは本当なの、エルマー?」
私は私につけられた帝国から付いてきた侍従に聞いていた。
「はい。先程お父上から魔術郵便が届き、その旨が記されておりました」
いつも冷静なエルマーの顔も少しこわばった表情だった。
「公爵家は何と言ってきたの?」
「皇弟殿下の文章によると、この度のお話は公爵家にとっても大変嬉しい事ですが、恐れ多過ぎるのでお断りするとのことだったしと」
淡々とエルマーは説明してくれた。
「恐れ多すぎて断るってどういう事なの? そのような断り方はないわ!」
私は声が思わず大きくなっていた。
「やはり、ユリアーナの存在が大きいのでは」
フローラが横から指摘してくれた。
「あのユリアーナね」
私は歯ぎしりした。
本人に注意したのに、ユリアーナはその日もアルトマイアー様に抱き上げられて帰って行ったのだ。
絶対に皇家から婚約を持ちかけられた本人がするようなことではなかった。
アルトマイアー様としては私との婚約話を受けるつもりはないと、あの態度で示してくれたんだと思う。
帝国の皇女の私が、どこの馬の骨とも判らない、属国の公爵家の養女のせいで振られるなど許されることではなかった。
「フローラ、ユリアーナにアルトマイアー様から身を引くようにちゃんと伝えたの?」
私は怒りの矛先をフローラに向けた。
「はい。ツェツィーリア様の意向は何回もユリアーナには伝えました。聞き分けなさそうなので、聖女様にも協力頂いて、ユリアーナ本人にも色々嫌がらせをしたのですが、本人は鈍感なようでそれほど効果は無かったようです」
呆れてフローラは報告してくれたが、そうだ。あのユリアーナという女は、元々平民だからか、貴族の常識に疎くて、私がやんわりと釘を刺しても理解できなかったのだ。フローラは私よりはストレートに話したと思うが、それでも通じなかったのだろう。
それとも、理解できても、自分のアルトマイアー様からの寵愛の深さにあぐらをかいていたのかもしれない。影で私達を笑っている可能性もあった。
ああ見えて、あの女は学年の主席だった。
属国の養女に笑われることは私としては許せなかった。
そもそも、今回の私の留学は私の意向でアルトマイアー様で私の婚約者が良いかどうか確認する為の留学だった。私さえ良ければ普通は属国の公爵家風情、尻尾を振って大喜びで了承するのが当たり前なのだ。それを帝国からの婚約の申し入れを拒否するなんて普通は許されることではなかった。
というか、帝国の皇女である私の顔に泥を塗ってくれたのだ。許されることではなかった。
でも、私もうまくいきませんでしたと帰る訳にも行かない。
そんなことをお父様が許す訳はなかった。
「こうなれば色々と画策するしかありますまい」
今まで黙って聞いていた帝国の影でお父様からつけられたバルトルトが申し出てくれた。
「どうするというの?」
「公爵家にも我が皇家に逆らったということを思い知らせねばなりません」
「アルトマイアー様に何かするの?」
帝国の影はやると言ったら何でもやるのだ。私は少し不安になって聞いた。
「いや、いくら属国とはいえ、公爵家の嫡男を亡き者にするのはまずかろうと思われます」
「それはそうね」
私はほっとした。
「ツェツィーリア様はまだ、アルトマイアーと婚約したいとお考えということで宜しいですな」
私はバルトルトの問いに頷いた。
公爵家は元々世話になった家だ。その嫡男のアルトマイアー様と結婚できればそれで良い。
「では、ツェツィーリア様に不愉快な思いをさせて今頃ほくそ笑んでいるあのユリアーナとかいう、聖女様が悪役令嬢とか呼んでいる女に思い知らせる必要がございますな」
バルトルトは薄い笑いをした。
「しかし、ユリアーナは結構剣術は使えるそうよ」
「ふんっ、アルトマイアーの意向を恐れた周りのものが忖度した結果ですよ。本人は大したことはないはずです」
バルトルトは断言した。
「でも、カスパルがやられているけれど」
「あれはカスパルが油断したのです。普通はああも簡単にはやられることはありますまい」
バルトルトは私の指摘に首を振ってくれた。
「でも、どうするの? 今は毎日送り迎えはアルトマイアー様がつきっきりよ」
私が疑問を呈すると、
「なあに、もうまもなく、魔物討伐訓練がございます。その時にどさくさに紛れて魔物に襲わせればいいのですよ」
「しかし、それでは他にも犠牲が出るのではなくて?」
私が心配して言うと
「帝国の皇女殿下の行こうに逆らったらから、厄災が襲うのです。多少の犠牲は致し方ありますまい」
バルトルトは首を振ってくれた。
「でも、うまくいくの?」
私が聞いたら
「お任せ下さい。帝国の恐ろしさを公爵家の面々に思い知らせるいい機会ですからな。ユリアーナさえ、いなくなれば、アルトマイアーもツェツィーリア様との婚約を認めざるを得ないでしょう」
バルトルトはそう言うと笑ってくれたのだ。
「魔物に襲われるユリアーナが多少は可哀相だけど」
私が呟くと
「帝国の皇女のツェツィーリア様に恥をかかせたのです。自らの死をもって贖うしかないでしょう」
「そうね。さっさと身を引けば生きて行けたのに、馬鹿な女ね」
私はそう言うと皆で愚かな女の事を笑ったのだった。
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
もちもちほっぺ
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
神殿を追放された「偽」聖女の私、実は真の聖女。隣国の最強神官が「神より君を愛す」と禁欲を捨て、背徳の館で24時間甘々に囲ってくれました
唯崎りいち
恋愛
十年以上、祈りを捧げた。両親の死に目すら奪われた。
それでも「偽物」と蔑まれ、着の身着のままで追放された私。
絶望の中、手作りのミサンガを持って辿り着いた隣国。
そこで私を待っていたのは、最強の神官であり、冷徹な侯爵でもある「代行者様」だった。
「これほどの聖なる力を、隣国は捨てたのですか」
彼は私を「真の聖女」として拾い上げ、甘く、深く、私邸に閉じ込めた。
禁欲を捨て、神を裏切ってまで私を求める彼の瞳は、熱くて——。
居場所を失った少女が、一途すぎる最強ヒーローに救われ、一生を捧げられるお話。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。