聖女として召喚されたのに王宮を追放されて我儘貴公子の奴隷にされました。でも、いつの間にか溺愛されるシンデレラ物語

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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宮殿から迎えが来て王都に向かいました

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驚いたことに、翌朝、公爵邸の前にいきなり皇室からの迎えの馬車が到着したのだ。
それも八頭立てのとても立派な馬車だった。

「お迎えにあがりました、殿下」
そこにはがっちりした体格のイケメンのオジ様がいた。

「伯父上!」
クリフが嫌そうな顔をした。
「また勝手に宮殿を抜け出してくれて。グレイスが怒っていたぞ」
苦笑いをしてイケオジが言ってくれた。

「母上が」
クリフは嫌そうな顔をする。

そして、イケオジは私を一瞥して、驚愕した顔をする。

それは貧相な娘が皇子殿下の横にいて驚いたんだろうけれど、何もそこまで驚いた顔をしなくてもいいのに! そんなに変な顔を私はしているんだろうか?
今の私はクララ様に無理やりドレスを着させられているから、そこまで変な格好はしていないはずなんだけど……

「ちょっと、クリフ」
イケオジはそう言うとクリフを引っ張って行って端で何やら話している。

時たま私の方を二人は見てくる。
「異世界から」とか「聖女」とかいう単語が聞こえてくるんだけど。
そして、話しが付くとイケオジは私の前に来てくれて、

「アオイ様、近衛騎士団、副騎士団長を務めているラッセルと申します」
私に頭を下げてくれたんだけど、こんな偉い人に頭を下げてもらう必要は無いはずだ。

「いえ、あの私は平民ですので、そんな丁寧なあいさつして頂かなくてもいいかと」
私は慌てて言う。

「いえ、今殿下からお伺いしましたが、ティラゴンに襲われた殿下やサフォーク村の黒死病を治して頂いたとか。粗末な扱いなどできません」
そう言うと、クリフと二人でその立派な馬車まで案内されたんだけど。

「いえ、私こんな立派な馬車に乗るわけには」
さすがの私も遠慮しようとしたのだ。平民の私がこんな馬車に乗るなんて事したらろくなことになるわけはない。絶対に遠慮したかった。

「何言っている、小娘、既に儂の馬車に乗ったではないか」
「いえ、あのあれは勢いというか」
公爵邸の馬車と皇室の馬車に乗るのは、まあ平民の私からしたらどちらも夢のまた夢かもしれないけれど、違うのだ。
「あなたなら大丈夫よ。私が応援してあげるわ」
最後は公爵夫人にそう言われて強引に馬車に乗らされてしまった。

その後からクリフが私の横に乗ってくる。
「あ、座る位置を間違えた」
私は進行方向奥に座ってしまっていたので、慌てて移ろうとしたが、
「そのままでいい」
と押し止められたんだけど。

「じゃあ、アオイさん、姪によろしくね」
「はい、色々お世話になりました」
私が頭を下げると馬車がゆっくりと駆け出した。
後でよく考えたらクララ様の言っていた銘って皇后様だというのを忘れていた。
皇后様に宜しくなんて絶対に伝えられない……


馬車の中ではクリフが皇室の説明を色々してくれた。

今の皇帝がリチャード・モンターギュ皇帝でクリフは帝国の第一皇子だそうだ。

「えっ、じゃあ、皇太子殿下なんですか?」
私が思わず敬語になって聞くと、
「違う、というか、なぜ敬語になっている? 奴隷の時も敬語じゃなかったのに」
クリフが文句を言ってくれるんだけど、

「だって皇子様だって知らなかったし」
「知った後もタメ口だっただろう」
「それはクセが直らなくて」
「二人の時はタメ口でいい」
「でも……」
私は言い訳しつつもまたタメ口に戻っていた。その方が話しやすいし。

「俺はアリストンの聖女の婚約者だったんだ」
「えっ、じゃあ、凛の婚約者?」
「凛が聖女かどうかは知らないが、俺の婚約者はその前の聖女だ」
「えっ? そんなおばあちゃんの婚約者だったの?」
前聖女が亡くなって私達が召喚されたと聞いたから、前聖女は余程の年だと思っていたのだ。

「な、なんでそうなる。アスカは10歳上なだけだ」
クリフが19なので29だ。まあ、貴族にとって普通なのかも知らないが、結構なおばさんだと思ったのは秘密だ。でも、29と言えばそんな若くして亡くなったんだ。
私と一緒で病気だったんだろうか? でも、聖女なら病気は治せそうだけど。
そう言ったら事故だったそうだ。


元々アリストン王国のトップは異世界から召喚した聖女が努めて、その王配は周りの国が順繰りで出すことになっていたらしい。

今度はモンターギュ帝国の番で、その場合はいつも第一皇子が嫁ぐ事になっていたらしい。

「その聖女が1年前になくなった」
クリフはなんでもないことのように言うがどこか少し悲しそうだった。
私は何も出来ないのでそっと自分の手をクリフの手の上においたのだ。

「えっ」
「泣きたかったら私の胸で泣いてもいいわよ」
「何言ってやがる。そもそもアオイは胸がないじゃないか」
「有るもん。失礼な」
私はせっかく慰めてあげようとしたのに余計なこと言われてムッとした。

「だから俺には今婚約者はいない」
それでみんな、クリフに群がるんだ。
私には構図が見えてきた。

第二皇子のウィルフレツドはクリフがアリストン王国の聖女に婿入りした後に皇太子になる予定だったらしい。ただ、第二皇子のウィルフレッド殿下の母親が隣国のキンロス王国から嫁いできた王女であることが一部貴族の間では問題視されていたそうだ。
だけど、男の兄弟はその二人で二人の間にはクリフの同母妹の第一皇女のキャサリンしかいないので、仕方がないと皆諦めていたらしい。

ただ、その聖女が事故で亡くなってクリフの存在が宙に浮いたらしい。
一部貴族がクリフを皇太子にと言い出したらしい。

「まあ、俺は公爵位でももらってウィルの臣下に下ってのんびりしたいんだが」
クリフが言ってくれた。
「えっ、でも、次の聖女の婚約者になるんじゃないの?」
次の聖女は凛だ。でも、凛にだけは絶対にクリフを渡したくない。

「まあ、それはない。次はアリストン王国の王子が王配になるそうだ。例えそうでなかったら、アオイが聖女になって俺の婚約者になってくれるか?」
クリフがニヤリと笑ってからかってくれるんだけど……

「でも、私は聖女ではないと言われてアリストンの王宮から叩き出されたんだから、聖女になんかなれるわけはないじゃない」
「そうかな、そうは思わないが」
クリフが何か言ってくれたが、私はよく聞いていなかった。

それよりも、クリフの立場が気になった。
クリフの母親は、ブルック公爵家から現皇帝に嫁いだそうで、その叔母がボールドウィン公爵夫人でその妹がミルコーブ辺境伯夫人だというのは判った。そして、父親は現近衛騎士団長でその息子が迎えに来てくれた副騎士団長のラッセルだということも。
なんか頭がこんがりそうだったけれど。
そのあたりがクリフを皇太子にしようとしているんだろう。

そして、婚約者がいないから早急にその婚約者を作らなければならない。それにはクリフが皇太子になる為には強力なバックアップ出来る娘が付くべきだ。
そういう事はよく判った。

それにはこんな貧相で後ろ盾がいない娘が横についていたらよくないに違いない。
何かとても悲しかったけれど、それは仕方のないことだ。
帝都に付いたらどこか病院でも紹介してもらって、そこで癒やし魔術使う職でも紹介してもらおう。

でも、そうなったらもうクリフとこうやって一緒にいることは出来ない。
今だけだ。
私はクリフにベタってくっついてみた。

クリフは一瞬ぎょっとした顔をしてくれたが、何も言わなかったので、そのままくっついていたのだ。服から伝わるクリフの体はとても暖かかった……
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