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会議のさなかに攻撃がありました

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下らないことを言い合っていたら会議の時間になってしまった。

名称こそ『最高決定議会』とものものしい名前がついているが、要するにこの小さな国アンネローゼ王国の運営を決定していく会議だ。

今日も会議はギスギスしていた。

ややこしいのは、オースティン王国の貴族子弟の大半は実家との縁を切っているので基本平民だ。
対してスカンディーナ側は、地方貴族とはいえ貴族なのだ。まあ、このちっぽけな国だから貴族と言ってもほとんどが子爵と男爵なのだが。但し男爵とは言え領地を持ち2000人くらいの領民を治めている。子爵ともなると1万人とちょっとした町の支配者になるのだ。まあ、これが国土の広いオースティンになると2倍くらいの人々を治めていることになるのだが。エルダの所の公爵家なんかは100万人くらいの領民がいるそうで、下手したら小さな独立国並みの領民がいるみたいだけど。わがスカンディーナ王国は二つの伯爵領とその周辺を押さえたとはいえ、まだ人口は20万人もいないのと比べても、その大きさが判るというものだ。


スカンディーナ側はこの貴族が、ヴァルドネル伯爵の二クラスとマッケルの父のダール子爵を始めとする子爵5人とミーケルの父を始めとするバーリ男爵ら10人の計16名いる。
一方のオースティン側は元公爵令嬢で大将軍のクリスティーン様、元公爵家で内務官のイェルド様、元侯爵家のクリストフ様、私の補佐官のフィル様、エルダ、イングリッド、いつも寝ている大魔術師のガープリエル様、魔術師団長のヴィルマル様達だ。


「今回のクイバニ伯爵家への攻撃ですが、屋敷が跡形もなく消し飛んでいたとのことですが、アン王女殿下。あまりに見境なく攻撃され過ぎではないですか」
氷の内務官のイェルド様に指摘されて私は返す言葉もなかった。

「おっしゃるとおりです」
私は素直に謝る。

「まあ、そう言う面もあったかとは思いますが、しかし、一緒にいた補佐官が止めなかったのが、原因では無いのですかな」
ダール子爵が指摘してくれたんだけど。それってフィル様のことじゃない。

「まあ、確かに、クイバニ伯爵が王女殿下に不埒な事を仕出かす前に、首を刎ねられなかったのは痛恨の痛みだ。次からはそのようなことが感じられたら即座に首を刎ねよう」
フィル様は言い切ったんだけど。それはそれで問題なんじゃないかと思うんだけど。

「そう言うことを言っているのではないのですが。王女殿下が手を下される前に補佐官がフォローされるのが基本ではないのですか」
「まあ、確かにそれは私の落ち度だ。次からは改めよう」
苦虫を噛みしめたようにフィル様が言う。

「しかし、それを言うのならば、勇者と名乗る、無礼者が殿下を襲った時に、護衛達は何をしていたのだ。侍女が身を挺して殿下を守ろうとしたのにだぞ」
イェルド様が指摘された。

「それは申し訳なかった。私が本来ならば身を挺して守らなければならなかったことだ」
二クラスが珍しく自ら非を認めたのだ。そうよ。そこの心意気よ。一緒になって馬車で怒られて良かったと私が思った時だ。

「イェルド内務官。あなたは今までは公爵令息かも知れないが、今は平民になられたと聞く。ニクラス様は伯爵御本人だぞ。あまりにも無礼なのではないのか」
子爵が言うんだけど。イェルド様はオースティンに帰られたら確実に公爵様だ。一子爵が話していい内容ではないんだけど。
「いや、ダール子爵」
私が注意しようとした時だ。

「これはこれは失礼した。ダール子爵。確かに私はこのスカンディーナの爵位はまだ殿下より拝領していない。しかし、内務官の地位は頂いている。伯爵に意見できる地位だと思うが」
「そんな訳はないでしょう。伯爵といえば国の中枢を担う大切な役職ですぞ。一介の内務官風情がつべこべ言えるお方ではございません。私に対しても呼び捨ては止めて頂きましょう。貴方様が例え、オースティン王国で爵位をお持ちならば違うと思いますが」
「ほううう、子爵は私がオースティンで爵位持ちならばいいというのか」
イェルド様は黒い笑みで言われるんだけど、これは絶対に良くない事だ。
私は子爵に話すのをやめろって目で合図したのに、全く、聞いていない。

「だから私のことは子爵様と呼んでいただきたいですな」
「ほううう、なら私が爵位持ちならば子爵は私の言うことを聞くというのだな」
「そうだ。私以上の爵位をお持ちならば頭も下げましょう」
子爵は余計な事を言った。

「なるほど、私は爵位などはどうでもいいと思うのだが」
「そのようなわけは無い。貴族界では爵位がすべてだ」
「では、子爵は爵位の上の人間のいう事を聞けと言われるのだな」
「当然だ」
子爵が勝ち誇って頷いた。

「そうか、本当に面倒だな。私は確かにオールソン公爵家とは縁を切ってきたが、父から与えられた伯爵位は返上するのを忘れていたのだが・・・・」
「えっ」
ダール子爵は唖然としていた。

「公爵家ならば爵位の2つや3っつ持っていてそれを子供に授けていてもおかしくはあるまい。ちなみにエルダも子爵位を持っているし、クリスティーン様も伯爵位をお持ちなのでは」
「あっ本当だ。返すのをすっかり忘れていた」
「おそらく、この中で5名は伯爵位を持っていると思われるが」
もう、ダール子爵は蒼白になっていた。
完全にイニシアチブをイェルド様が取り戻した瞬間だった。
私としては爵位云々にこだわりは全くなかったけれど、そういう事は能力の高い人に任せていれば良いのだ。


ダーン!

黒い笑みを浮かべてイェルド様が会議を取り仕切ろうとした時だ。
扉がいきなり開けられて兵士が飛び込んで来た。


「大変です」
そこへ伝令が駆け込んできたのだ。
「何事だ」
イェルド様が誰何する。

「パパランダ伯爵が軍千をもってこちらの領内に攻めてきていると報告がありました」
兵士が慌てて報告した。

「よし、全軍防戦用意だ」
クリスティーンの号令で全員直ちに立上った。

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次の更新は明朝予定です。
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