モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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薬屋のエド視点 小さい聖女が泣いていたので裏から手を回すことにしました

 俺はエド、15歳だ。
 王都の有名な薬屋のチェーン店アーロンの店員だ。

 今日はポーションを仕入れる為にこの聖マリアンヌ王国の大聖堂に来ていた。
 さすが、聖マリアンヌ王国の王宮と並ぶ大きさを誇る大聖堂だ。
 高い尖塔に囲まれた大聖堂には城壁で囲まれており、王宮と見間違えるほどの立派さだった。
 聖マリアンヌ王国の大聖堂は世界数千万人の信者のいる女神教の総本山でもあり、王妃様を女神教のトップであるこの国の筆頭聖女様が代々務めている政教一致の国であった。下手したら国王陛下よりも筆頭聖女である王妃様の方が力が強いかもしれないと噂されていた。
 そんな大聖堂に俺はポーションを仕入れに来ていた。

 でも、初めて来た大聖堂は大きくて勝手がわかりにくかった。

「お嬢ちゃん、聖女様のところに案内してくれるかな」 
 俺は丁度目の前にポーションの瓶入りのは箱を持って現れた10才くらいの小さい見習い聖女らしい子供に声をかけていた。
 でも、その子は不機嫌そうに俺を頭の上から足先まで見てくれた。
「筆頭聖女様なら王宮にいらっしゃいますが……」
 不機嫌そうに子供は答えてくれた。
「いや、別に王妃様にお会いしたいわけではないんだが」
 俺が慌てて否定した。一介の薬屋の従業員がそう易々と王妃様には会えないだろう。
「じゃあ、どなたにお会いされたいんですか? 聖女様はこの大聖堂には100人以上いらっしゃいますが」
 そうだった。ここは女神教の総本山。それだけの聖女がいても全然おかしくなかった。

「あっ、ごめんごめん、そうだったね。えええと、そうだな。ポーションを作っているところにいらっしゃる聖女様にお会いしたいんだ。確か名前がパウナーリだったかな」
「パウリーナでしょう」
 ぶすっとした顔のままで、少女が答えてくれた。この子はなかなか態度が悪い。俺は一応ポーションを買うお客様なんだけど。聖女は威張っているという噂だったから、こんな小さい見習いまで偉そうにしているのか?
 こんなので聖女とうまく話せるんだろうか?
 俺はうんざりした。

「そうそう、そのパウリーナ様」
「何のご用ですか?」
 この少女は生意気にも俺に無愛想に聞いてくれた。
「君、一応見習い聖女だろう! いくら何でも薬屋の店員に失礼じないか。それよりさっさとパウリーナ様のところに案内してくれないか?」
 俺は少しむっとして依頼すると、
「誰がお嬢ちゃんで、聖女見習いですって失礼しちゃうわ。私こう見えても聖女なんですれど」
 その子が眉をつり上げて怒ってくれた。
「えっ、あ、ごめん」
 どうやらこの子は新入りの聖女様みたいだった。
 背が低いから絶対にまだ聖女見習だと思ったのだ。
 失敗した。
「ちょっと急いでいて、流行風邪が流行っているだろう。初級ポーションが足りないんだ。100本くらい用立ててもらえないかって頼んで来いって会長に頼まれたんだけど、そのパウリーナ様のところに案内してもらえないかな。その子に頼めばなんとかなるって会長は言っていたんだけど」
 俺が慌てて頼むと。
「あなたね。聖女様にそんな口きいていると怒られるわよ。私だから良いけど」
 その子は呆れたように言ってくれた。
 俺も仕事でなかったらこんなところに来ていないよ!
 余程そう言い放ちたかったが、俺はここはぐっと我慢した。

「はい、これ」
 その少女が持っていた初級ポーションの瓶詰めの箱を渡してくれた。

「えっ? でも、良いのか、勝手に渡してくれて」
 俺は戸惑ったが、
「要らないの?」
「いや、そういう訳では……」
 俺は慌てた。
「でも、下っ端の君が勝手に俺に融通をしてくれても良いのかなと」
「下っ端って、煩いわね。私がその下っ端聖女のパウリーナです」
「えっ、君が?」
 そう言われて俺はその子の頭の先からつま先まで改めてみた。
「どうせ、あなたも私がちびだから信用できないとでも言うんでしょう」
「違う、違う、あまりにも若いから驚いたんだよ。何しろ大聖堂の初級ポーションの大半はパウリーナ様が作っていると聞いたから」
 俺は驚いて必死に言い訳した。
 確かにちびだけど、俺はこの子が俺と同い年だと聞いていたから驚いたのだ。
 俺はなんとかその小さい聖女様の機嫌を直してもらってポーションを持って帰った。
 
 俺はそれからも何度か大聖堂に仕入れに来たが、パウリーナには驚かされぱなしだった。
 パウリーナは聖女達が小さな鍋でポーションを調合するのを巨大な大鍋に椅子を持ってきて撹拌棒でかき回しながらポーションを造るのだ。
 ポーションは初級中級上級まであるのだが、彼女の造るのは初級だけなのだが一度に100本も作ってくれる。忙しい時はそれを10回とか平気でやってくれる。ほとんど一人で初級ポーションを作成していた。
 高々初級ポーションと侮るなかれ。当然初級よりは中級、中級よりは上級の方が材料費は高くなり使う魔力量も多くなるのだが費用のアップに比べると手間暇などはそこまで差は大きくは無い。彼女なら平気で上級ポーションでも、100本くらいは作れそうだ。

「パウリーナ! アルハンドラ様があなたの屑ポーションがほしいっておっしゃっていらっしゃったから10本もらっていくわよ」
 他の聖女達が入れ替わり立ち替わり、パウリーナの初級ポーションを取っていく。
 その度にパウリーナの在庫がなくなるから、新たに作ることになるのだが、パウリーナは嫌な顔一つせずにその分を新たに作っていた。
「おい、良いのかリーナ! あいつらにただでやって。あいつらも初級くらい自分で作れば良いんじゃないのか」
 俺はパウリーナと親しくなって、いつの間にかリーナ呼びにしていた。

「良いんです。皆お忙しそうだし」
「忙しいって雑談するのに忙しいんじゃないのか? いつも暇そうにしているぞ」
 俺が文句を言うと、
「私はこれくらいでは全然疲れていないし。それに、私は元々孤児院出身だから貴族の出の聖女様達には逆らえないんですよね」
 リーナは笑って答えてくれたが、それはまた違うと思うんだが……
 まあ、リーナがそれで良いというのならば見ているしかないのか?
 俺は今ひとつ納得は行かなかった。


 そんな、リーナがその日は目に涙を浮かべてポーションを作っていた。
「おい、どうしたんだ、リーナ?」
 俺が驚いて聞くと、なんとベルタから学園に行くのを辞退しろと命じられたらしい。
「いやいや、それって、王妃様からの命令だろう。それを辞退するなんて無理だぞ」
「でも、辞退しろって言うんだもの」
 リーナは泣きながら言ってくれたんだけど……聖女が泣きながら作るポーションって良くないんじゃないかと思って後で一本失敬して飲んだら、ものすごく悲しくなって目から涙が止まらなくなったんだけど……
 ええええ! こんなのを売っていいのか?
 いや、待てよ、涙が止まらなくなるポーションとか付加価値をつけて売ってみるか? 

「判った。俺の知り合いが学園にいるからそちらから話してもらうように頼んでやるよ」
 あんまりこういうことはしたくなかったが、リーナを泣かす奴は許せなかった。

「えっ、そんなことが出来るんですか?」
「ああ、だから、泣くのは止めろよ」
俺が慰めて言うと、
「判りました。期待しないで待ってます」
「おいおい、期待しろよ!」
 リーナの泣き笑いの顔に向けて俺は思わず叫んでいた。
 しかし、リーナは半信半疑みたいだった。

 あのな!
 副作用が大きくなる可能性があるからあんまり使いたくなかったが、俺はとっておきの手を使うことにしたのだ。
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