モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
6 / 64

悪役令嬢に虐められていたところを王太子殿下に助けてもらいました

 私は入学式の行われる講堂へ足下が定まらずふらふら歩いていた。
 私はこの物語の王子様のエドガルド様にヒロインの代わりにお姫様抱っこされてあまりのことに茫然自失していた。
 でも、エドガルド様は本当に見目麗しかったな!
 私を見つめるエドガルド様の顔が神々しかった!
 私は前をよく見ていなかったのだ。

 ドン!
 いきなり、人にぶつかっていた。

「ご、ごめんなさい!」
 男はぎろりと私を睨んだが、その顔を見て私はぎょっとした。
 その緑髪と目の覚めるような青い目は小説に出てきた隣国の王子バルトロメーオ様だった。

「気をつけろよ」
 男はそう言うと去って行った。

 私はほっと息をしていた。
 バトルロメーオ様は気が強くて有名なのだ。下手したら無礼打ちにされていたかも……

 でも、バトルロメーオ様とぶつかったって、確かヒロインも入学式でバトルロメーオ様とぶつかるのだ。その後にいろいろあって仲良くなっていくんだけどってちょっと待って!
 何で? 何で平民のモブですら無い私がバトルロメーオ様と知り合うのよ?
 まあ、ぶつかっただけだけど……
 私は少し考え込んだ。

 いかんいかん!
 これから入学式だ。
 私は頭を振って歩き出した。

 入学式の講堂に入る前にその講堂の前でクラス分けの発表があった。
 紙が張り出されている。
 私はその中で自分の名前を探してのだ。

 聖マリアンネ王国の王立学園は16歳になる年齢から18歳まで3学年。前世の日本の高校と同じだ。クラスは一学年全部で4クラス、AクラスからDクラスまである。基本はAから身分順だ。
ヒロインは平民のくせに何故かAクラスだったけれど、私はもぶですらない平民だから当然Dクラスのはずだ。

「あれ? ないんだけど……」
 私はDクラスの上から下まで自分の名前を探したがなかった。
「変だな」
 次のCクラスも探したけれど、無かった。
 私は焦りだした。
 やはりシスターベルタが手を回して私の進学を無しにしたんじゃないだろうか?
 私はとても不安になってきた。

 まあ平民のモブですら無い私がBなんて無いとは思うけれど、ダメ元で見てみようとBクラスも探すが……当然無かった。
 もう最悪だ。
 私は泣きそうになった。

 終わった。やっぱりモブですら無い私が王立学園に来る事なんて無理だったんだ。

 ああああ、エドガルド様とヒロインの愛のシーン、もっと見たかったな!
 私がヒロインの代わりにエドガルド様に助けられたから、天罰が下ったんだろうか?
 でも、あれは不可抗力だ。
 というか、ヒロインがスタスタ歩いて行くから悪いんじゃ無いの?
 そう不満げに思ったけれど、もう遅かった。

 まあ、ヒロインの代わりにエドガルド様に助けて頂いたからそれで良しとするしか無いのか?
 エドガルド様の顔、美しかったな!
 私は思い出し笑いしていた時だ。

ドン!
「邪魔よ、お退き!」
「ギャッ!」
 私は後ろから押されて掲示してあるボードに頭から激突していた。
「痛い!」
 顔を押えて押した奴らを振り返ると、そこにはアレハンドラ様とその取り巻き聖女軍団がいた。

「本当にもう。王妃様のお情けで学園に入れたからってでかい顔しているんじゃ無いわよ」
取り巻き下っ端の男爵令嬢のサラに言われた。
「私の前に現れるなって言ったでしょう!」
アレイダ様が私を睨み付けた。
「ところでパウリーナは何クラスだったのかしら?」
「平民の出来損ないはDクラスに決まっていますわ」
サラの言葉に私の胸がズキリと痛んだ。
どこにも無かったなんて言えない。

「まあ、枯れても聖女ですから、仕方なしにCクラスにでも、入れてもらったんじゃありませんこと?」
デボラ子爵令嬢が笑って言ってくれたけれど、Cクラスにも無かったわよ!
「えっ、ひょっとして聖女ということでお情けでBクラスに入れてもらったのかしら」
 アレハンドラ様の取り巻き筆頭のエビータ伯爵令嬢が笑ってくれた。
 私は下唇を噛んだ。

「まあ、パウリーナの名前はどこにも無かったの?」
 嬉しそうにエビータが聞いてくれた。
 私はその言葉に下を向くしか出来なかった。
 もう最悪だ。

「パウリーナも可哀相に! 所詮平民のあなたでは学園に来るのが認められなかったということね」
喜々としてアレハンドラ様が言ってくれた時だ。

「た、大変です。アレハンドラ様。パウリーナの名前がAクラスにあります」
取り巻きの一人が大声で叫んでくれた。
「えっ?」
「嘘!」
私は慌てて、前にいるエビータを弾き飛ばす勢いで、その子の前に飛んで行った。
Aクラスの最後に私の名前がはっきりと書かれていた。

「ほ、本当だ!」
 良かった。私は自分の名前を見つけられてほっとした。これで学園に確かに入学できる!
 私が喜びで胸が一杯になった時だ。

「ちょっとパウリーナ! どういう事よ! 私達と同じAクラスなんて!」
 私の後ろからアレハンドラ様が怒鳴り込んできたんだけど、
「本当に信じられませんわ!」
 横でエビータまでが鋭い視線で睨み付けてきた。
「あなたどんな手を使ったのよ」
「信じられないわ。私達がBクラスなのに!」
 サラが文句を言ってきた。
 後できちんと見たらアレハンドラ様始めエビータや聖女の半分がAクラスだった。そして、残りの半分がBクラスだったのだ。本来は平民で下っ端聖女の私はBクラスのはずなのに、何故かA組に名前があった。

「そんなこと言われても私が決めた訳では……」
 私は戸惑ってしまった。


「何を騒いでいる!」
 私達の後ろから氷のように冷たい声がした。そこにはエドガルド様が凍てつくような視線を向けてこちらを睨んでいた。
「まあ、これはエドガルド様ではありませんか」
 アレハンドラ様はそんな視線を物ともせずに目を輝かせてエドガルド様にすり寄った。
「お前は誰だ? 俺はお前に名前呼びするのを許した覚えは無いが」
「申し訳ありません。私ミラネス侯爵の娘のアレハンドラと申します」
 慌てて、アレハンドラが優雅に挨拶した。
「ああ、聖女のミラネス侯爵令嬢か」
「まあ、エドガルド様。私をご存じですのね」
「ふんっ。側近から聞いたことがあるだけだ。そのミラネス侯爵の娘ともあろう者が騒ぎを起こすとはどういう事だ?」
「いえ、殿下と同じクラスに平民の女がいるとわかりましたので、ふさわしくないのでは無いかと指摘していたのです」
 アレハンドラ様は私を見てくれた。
「クラス分けは学園が決める事でその方等がつべこべと言うことではない。それにこのパウリーナは母上が気に入った聖女だと聞いたぞ。その方は我が母の意向に逆らうのか」

 ええええ!
 私、王妃様のお気に入りなの?
 それに今エドガルド様が何と私の名前を呼んで頂けたんだけど。
 信じられない!
 モブですら無い私の名前をエドガルド様が覚えていらっしゃるなんて!
 私はうれしさに爆発しそうになった。

「いえ、そのようなことは滅相もございません」
 アレハンドラ様は悔しそうな顔を私に向けてきた。これはまた後で愚痴愚痴言われるパターンだ。
 少し憂鬱になったけれど、今はそれどころでは無かった。
その時に入学式の開始の予鈴が鳴った。
「時間ですので失礼いたします」
 アレハンドラ様は取り巻き共を連れて慌てて体育館の中に入っていった。

「殿下、重ね重ね助けて頂いてありがとうございました」
 私は名前呼びしないように注意してエドガルド様にお礼を言った。
「ふんっ、別に大したことでは無い」
 そう言うと、あっさりとエドガルド様は体育館の中に入っていった。
 でも、庇ってもらって感激した私は、その凜々しい後ろ姿をいつまでも見ていたのだった。
*******************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
王太子に二度も助けられて、何故か同じAクラスになった平民パウリーナでした
感想 15

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。