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アル様にまず友達から始めることに合意させられました
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それからが大変だった。
プッツン切れた王子様を宥めるのも大変で。
でも、それよりも、A組の魔術担当のブロック先生が飛んできて、ぜひともやり方を教えて欲しいと頼まれた事のほうが大変だった。A組のブロック先生はこの国の魔術の研究者の第一人者だそうで、その人に注目されるだけでも大変なんだそうだ。
しかし、感覚でやっている私に再現など出来るわけもなかったし、実際に出来なかった。次にやる時はぜひともちゃんと見せてほしいと何度も懇願されたのだが・・・・。でも、絶対に二度と出来る気がしないんだけど。王子に嫌味言われたらまた出来るんだろうか?
「やっぱりコイツはティナの娘だった」
もう一人のバルテリンク先生は何かぶつぶつ言っていたのだが私にはよく聞こえなかった。
威張って自慢していた気障王子は、私の方が注目されたので、更に切れていた・・・・
「いやあ、さすがシルフィね。あの気障王子に仕返しするなんて、凄いわ」
更衣室で悪役令嬢のタチアナに感心されたんだけど、いや、やりたくてやったんじゃないから。たまたまだし、と言い訳しても聞いてくれなかった。
「おい、そこの女」
更衣室を出ると、取り巻きを連れて嫌味王子が仁王立ちしていた。
「次は絶対に負けないからな」
王子は声高々と宣言していたのだ。
「あら、ユリウス殿下。あんまりシルフィにかかわらないほうが良いのではなくて」
タチアナが前に出て言ってくれた。
「何故だ。タチアナ嬢」
「だってプレイボーイとして鳴らした貴方のお父様ですら、シルフィのお母様に必死にアプローチしたにもかかわらず、相手にもされなかったそうではないですか」
「なんと、その女はピンク頭の嘘つき女の娘か」
気障王子は前髪をかき分けていった。
「何なんですか。その嘘つき女というのは」
私がムッとして言うと
「父はそのピンク頭に『恋人になりたかったら、恋人の泉で掌にコインが乗ったら考える』と言われて必死に練習したそうだ。それでやっと出来るようになって、その女と一緒に行ったら、次はパフェを奢ってくれないと駄目だと言われて奢らされたんだ。挙句の果てに最後は図書館で恋人席に座らされて、『殿下は欲張りですね。恋人になるジンクスを3っつともやったら別れるしかないのですわ』と高笑いされて振られたそうだ。良いように使われたと言って怒っておられたぞ」
気障王子は言ってくれたけど、やっぱり昼休みに聞いた女の一人は母だったんだ、と私は思い知った。本当に母は何をやってくれているのか。更に油に火を注いじゃったじゃない!
私は頭を押さえたくなった。
「そうか。シルフイの母上はあのプレイボーイを手玉に取られたのだな」
いつの間にか後ろにアル様が立っておられた。
「き、貴様アルフォンス、この女と知りあいか。そういえば、我が父と同じで恋人の3っつのジンクスを制覇して女に振られたと聞いたぞ」
「俺はまだ振られておらんわ」
「いやいや、父に言わせると自分ですら振られたのだから、3っつもやっては絶対にいかんと父からはくれぐれも念押しされていたのだ。それをこの国の者が知らないとは笑止だな」
気障男は笑った。
「ふんっ、シルフィを馬鹿にしたくせに、火の玉を同じように天井に当てていた貴様に言われたくないわ」
「な、何だと」
気障王子とアル様は睨み合った。アル様がいくら高位貴族と言えども隣国の王子と喧嘩するのは良くないのではないか、と私は少しいらぬ心配をしていた。
「ふんっ、まあ良い。そこのピンク頭、次はかならず勝つからな」
一方的に宣言すると気障王子ご一行様はさっさと去っていった。
そして、アル様とクンラートとタチアナが残った。アル様には聞きたいことは色々あるけれど、でも、聞けない。アル様はお昼休みに私と付き合っているみたいなことを言われたけれど、私自身には、その事をはっきりと言われたこともない。
自分で少し気持ちの整理もしたいし、整理しないとちゃんと話せないと思うから、とりあえず今日は帰ろうと思った時だ。
「じゃあ、ちょっと用があるから」
タチアナは手を上げるとクンラートを連れて去っていったのだ。
えっ、いや、ちょっと待ってよ! そらあ、婚約者なんだからクンラートといちゃいちゃしたいのは判るけど。いや、待て、今まで上手く言っていなかったすはずなのだ。この二人は。それがこんな急に仲良くなるのか? さてはタチアナ図ったのよね・・・・
それがわかったのは二人が見えなくなってからだった。
ええええ、どうしたら良いの?
二人きりにされて、私は固まってしまった。
「シルフィ、すまない。実は恋人の泉のコイン投げは知っていてやった」
アル様がいきなり謝られた。
「そうだったんですね。私何も知らなくて。前もって教えて頂けたら良かったのに」
私は少しムッとして言った。
「ごめん。だって、前もって知っていたらやってくれなかったろう」
アル様が言われる。
「まあ、だってアル様の正体は教えて頂いていないですけど、高位貴族の方だと思いますし、平民の私では到底釣り合わないと思います」
私は正直に言った。
「えっ、そうか、そうだよね」
アル様は戸惑われたみたいだった。アル様は何に戸惑ったんだろう?
「じゃあ、シルフィ、まずは俺と友だちになってくれないか?」
「アル様とお友達にですか? でもお貴族様と友達なんて」
「何言っているんだよ。公爵令嬢のタチアナ嬢とは友達になったんだろう。じゃあ俺とも友だちになってくれても良いんじゃないか?」
「あれはその半分脅されて」
私は言い訳する。
「良いじゃないか。まず友達からということで。だって、俺は君に連れられて恋人席にも座らされたんだよ。友達くらいなってくれてもバチは当たらないと思うけど」
「えっ、いえ、すいません。私何も知らなくて」
「だから、ね! 良いだろう?」
下から見上げるように頼んでくるアル様に私は抵抗できなかった。
まあ、私も知らないとは言えアル様を必ず恋人になる席に座らせたと言う負い目もあるのだ。
私は仕方なしに頷くしかなかったのだ。
プッツン切れた王子様を宥めるのも大変で。
でも、それよりも、A組の魔術担当のブロック先生が飛んできて、ぜひともやり方を教えて欲しいと頼まれた事のほうが大変だった。A組のブロック先生はこの国の魔術の研究者の第一人者だそうで、その人に注目されるだけでも大変なんだそうだ。
しかし、感覚でやっている私に再現など出来るわけもなかったし、実際に出来なかった。次にやる時はぜひともちゃんと見せてほしいと何度も懇願されたのだが・・・・。でも、絶対に二度と出来る気がしないんだけど。王子に嫌味言われたらまた出来るんだろうか?
「やっぱりコイツはティナの娘だった」
もう一人のバルテリンク先生は何かぶつぶつ言っていたのだが私にはよく聞こえなかった。
威張って自慢していた気障王子は、私の方が注目されたので、更に切れていた・・・・
「いやあ、さすがシルフィね。あの気障王子に仕返しするなんて、凄いわ」
更衣室で悪役令嬢のタチアナに感心されたんだけど、いや、やりたくてやったんじゃないから。たまたまだし、と言い訳しても聞いてくれなかった。
「おい、そこの女」
更衣室を出ると、取り巻きを連れて嫌味王子が仁王立ちしていた。
「次は絶対に負けないからな」
王子は声高々と宣言していたのだ。
「あら、ユリウス殿下。あんまりシルフィにかかわらないほうが良いのではなくて」
タチアナが前に出て言ってくれた。
「何故だ。タチアナ嬢」
「だってプレイボーイとして鳴らした貴方のお父様ですら、シルフィのお母様に必死にアプローチしたにもかかわらず、相手にもされなかったそうではないですか」
「なんと、その女はピンク頭の嘘つき女の娘か」
気障王子は前髪をかき分けていった。
「何なんですか。その嘘つき女というのは」
私がムッとして言うと
「父はそのピンク頭に『恋人になりたかったら、恋人の泉で掌にコインが乗ったら考える』と言われて必死に練習したそうだ。それでやっと出来るようになって、その女と一緒に行ったら、次はパフェを奢ってくれないと駄目だと言われて奢らされたんだ。挙句の果てに最後は図書館で恋人席に座らされて、『殿下は欲張りですね。恋人になるジンクスを3っつともやったら別れるしかないのですわ』と高笑いされて振られたそうだ。良いように使われたと言って怒っておられたぞ」
気障王子は言ってくれたけど、やっぱり昼休みに聞いた女の一人は母だったんだ、と私は思い知った。本当に母は何をやってくれているのか。更に油に火を注いじゃったじゃない!
私は頭を押さえたくなった。
「そうか。シルフイの母上はあのプレイボーイを手玉に取られたのだな」
いつの間にか後ろにアル様が立っておられた。
「き、貴様アルフォンス、この女と知りあいか。そういえば、我が父と同じで恋人の3っつのジンクスを制覇して女に振られたと聞いたぞ」
「俺はまだ振られておらんわ」
「いやいや、父に言わせると自分ですら振られたのだから、3っつもやっては絶対にいかんと父からはくれぐれも念押しされていたのだ。それをこの国の者が知らないとは笑止だな」
気障男は笑った。
「ふんっ、シルフィを馬鹿にしたくせに、火の玉を同じように天井に当てていた貴様に言われたくないわ」
「な、何だと」
気障王子とアル様は睨み合った。アル様がいくら高位貴族と言えども隣国の王子と喧嘩するのは良くないのではないか、と私は少しいらぬ心配をしていた。
「ふんっ、まあ良い。そこのピンク頭、次はかならず勝つからな」
一方的に宣言すると気障王子ご一行様はさっさと去っていった。
そして、アル様とクンラートとタチアナが残った。アル様には聞きたいことは色々あるけれど、でも、聞けない。アル様はお昼休みに私と付き合っているみたいなことを言われたけれど、私自身には、その事をはっきりと言われたこともない。
自分で少し気持ちの整理もしたいし、整理しないとちゃんと話せないと思うから、とりあえず今日は帰ろうと思った時だ。
「じゃあ、ちょっと用があるから」
タチアナは手を上げるとクンラートを連れて去っていったのだ。
えっ、いや、ちょっと待ってよ! そらあ、婚約者なんだからクンラートといちゃいちゃしたいのは判るけど。いや、待て、今まで上手く言っていなかったすはずなのだ。この二人は。それがこんな急に仲良くなるのか? さてはタチアナ図ったのよね・・・・
それがわかったのは二人が見えなくなってからだった。
ええええ、どうしたら良いの?
二人きりにされて、私は固まってしまった。
「シルフィ、すまない。実は恋人の泉のコイン投げは知っていてやった」
アル様がいきなり謝られた。
「そうだったんですね。私何も知らなくて。前もって教えて頂けたら良かったのに」
私は少しムッとして言った。
「ごめん。だって、前もって知っていたらやってくれなかったろう」
アル様が言われる。
「まあ、だってアル様の正体は教えて頂いていないですけど、高位貴族の方だと思いますし、平民の私では到底釣り合わないと思います」
私は正直に言った。
「えっ、そうか、そうだよね」
アル様は戸惑われたみたいだった。アル様は何に戸惑ったんだろう?
「じゃあ、シルフィ、まずは俺と友だちになってくれないか?」
「アル様とお友達にですか? でもお貴族様と友達なんて」
「何言っているんだよ。公爵令嬢のタチアナ嬢とは友達になったんだろう。じゃあ俺とも友だちになってくれても良いんじゃないか?」
「あれはその半分脅されて」
私は言い訳する。
「良いじゃないか。まず友達からということで。だって、俺は君に連れられて恋人席にも座らされたんだよ。友達くらいなってくれてもバチは当たらないと思うけど」
「えっ、いえ、すいません。私何も知らなくて」
「だから、ね! 良いだろう?」
下から見上げるように頼んでくるアル様に私は抵抗できなかった。
まあ、私も知らないとは言えアル様を必ず恋人になる席に座らせたと言う負い目もあるのだ。
私は仕方なしに頷くしかなかったのだ。
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