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愛おしい魔術士を手に入れる為、外堀埋めてたら逃げられかけました。
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俺には、愛してやまない幼馴染がいる。そんな彼の名前はルーク、俺と共に魔王を撃った魔術士だ。
俺たちは幼い頃から両親がおらず、小さな孤児院で暮らしていた。裕福ではなかったがシスターは優しかったし、他の子供達も皆良い子だった。
だがある日、俺が勇者に選ばれた。孤児院から離れなければならず、ルークとも生き別れになりそうだった。
だけど俺は我儘で、ルークを手放せなかった。半ば無理矢理共に旅立ち、魔王討伐を掲げ世界中を旅して回った。
そんな中で暗殺者のカトリーヌや、斥候のギブソンとも出会った。
俺たち四人は負け知らずで、何より魔術士のルークの活躍は目覚ましいものだった。もしルークがパーティーに居なければ、俺たちは魔王城に辿り着くことも出来ずに死んでいたと思う。
それは皆の共通認識だったが、ルークだけはずっと否定していた。
「そんな事ないよ。僕はただ、皆をサポートしてただけで…皆が強いから勝てたんだよ!」
そう言って笑うルークは、いつだって眩しかった。
時は経ち、俺たちは無事に魔王を討伐する事に成功した。喜びよりも安堵が勝った。誰も、誰も死なずに討伐できた。
五体満足で、無事に生きて帰ることができた。その日はたらふく酒を飲んで、気づけば朝だった。
だが、そこで一つの違和感。
俺は今まで、ルークと同室になった事がない。というのも、理性を失って無理矢理身体を繋げたりする事がないようにという判断があったから。
カトリーヌとギブソンはそんな俺を理解してくれて、宿に泊まる際は絶対にルークと同室にはさせなかった。
だがどうだ。今、俺の横で素っ裸で寝ているのはルークじゃないか。
「えっ、なん……は?」
動揺しまくった。もしかして、もしかするのか?
俺は遂に超えてはいけないラインを超えてしまったのか?ルークに聞かないとと思うけど、聞いて嫌われたらどうしようという自己保身も生まれてしまった。
聞きたい、聞きたくない。間違いって言われたらどうしよう。
結局俺は真実を確かめられぬまま、王都に戻った。
◇
その後は登城し、凱旋パレードを行い、色々目まぐるしく過ごしていた。
だけど同時に俺への縁談も持ち上がった。この国の唯一の王位継承権を持っている、マリア姫との縁談だ。
俺は王位なんてこれっぽっちも興味が無いし、姫様もそういった意味で好きではなかった。
姫様も俺の事を勇者としてしか見ていない。それに、好きな殿方がいるという。
ならば協力し合いこの縁談を破断させよう、そう誓い合った。姫様は戦友になった。
どうにかこうにか王を宥めすかし説得して、同時にルークを囲い込む準備を始めた。
俺には好きな相手がいる、それは勇者パーティーの仲間らしい。魔術が得意らしいと噂を流す。
王城には瞬く間に噂が尾鰭背鰭をつけて広まり、勇者ジャックと魔術士ルークは恋仲だと公然の秘密になった。
この噂は今や市井にも流れている。いや、俺が匂わせたんだけど…あまりにも上手くいきすぎて、逆に恐ろしいくらい。
俺は、ルークに好かれていると思う。だけど不安だから、地盤固めは怠れない。
「ちょっとジャック!あんた、ルークに逃げられるわよ!?」
順調だったはずの俺の道のりは、仲間であるカトリーヌのその一言でガラガラと崩れていった。
◇
カトリーヌの忠告を受けた後すぐ、ルークの家の近くに潜み見張っていた。
彼はおとなしそうに見えて案外行動派だ。普段は自信がなさそうにおどおどとしているけど、一度決心した事は決して曲げず即行動に移していく。
だからきっと、王都を離れるのもすぐだ。そう思い見張っていれば、3日目の明け方にルークは動いた。
玄関が開く前に仁王立ちし、今か今かと待ちわびる。
何故王都を出て行こうとするんだ?俺に、愛想が尽きたのか?幼い頃の約束を反故にするつもりか?
色んな言葉が思い浮かんでは消えて、また思い浮かんで。それでもルークを俺に縛り付けるには理由不足で、上手く説得できる気がしない。
お互い好きあっていると思ってた。だけど、それは間違っていたのだろうか?
「え、なんで…ここに、」
「カトリーヌに言われて、この間から家を見張ってた。まさか、本当に王都から出て行くつもりか?」
ガチャリと扉が開いた後、俺の顔を確認したルークは驚いたように目を見開く。
黒曜石のような黒い瞳が、朝日にきらきらと輝いていてとても綺麗だった。だけど、雰囲気は最悪だ。
ルークは直ぐに眉間にしわを寄せて不機嫌そうだし、俺は俺で動揺していた。本当に、旅支度をしていたから。
ショックだった。ずっと一緒にいた幼馴染が、俺の元を黙って離れていこうとしていた事実が。
「そうだよ。王都を出て、一人で生きていく…魔王討伐も終わったし、僕が王都に留まる理由はもう無い」
「忘れたのか?ずっと一緒にいようって、俺と約束したじゃないか」
幼い頃、孤児院で暮らしていた時の約束。そんな昔の話を持ち出すなんて、我ながら卑怯だ。
己を卑下しつつ、じっとルークの目を見つめる。彼の良心に訴えかければ、少しは時間が稼げるかもしれないと期待して。
すっと目を細めたルークの口が、動こうとした。この先の言葉が予測できてしまって、聞きたくなくて口を塞ごうと動きかけた。
だけど、そんな乱暴な事は出来なくて。
「…そんな約束、したっけ?」
「ルーク…!」
ぐさり、心臓に刃が付きたてられたような衝撃が走る。
きっと今、俺の顔は酷い事になっているだろう。苦しい、辛い。ルーク、お願いだから俺を捨てないでくれ。
身動き一つ取れなかった。指先すら動かせなくて、ルークの言葉が心の奥の深いところまで刺さって抜く事が出来なくて。
あぁ、遂にルークに捨てられてしまったんだと。
「うっ…!」
「ルーク!?おい、大丈夫か!?」
いつの間にか俺の横をすり抜けていたらしいルークが、苦しげに呻きながら蹲る。
柄にもなく動揺しまくっていた俺はどうして良いか分からなくて、必死に鞄の中を探るルークを見守っていた。
とさり、鞄の中から水筒を取り出した際に一緒に落ちてしまった手帳を拾い上げる。表紙には、母子手帳の四文字が書いてあった。
一瞬で頭が真っ白になる。母子?だれが?ルークが?
めまぐるしく脳が回転し、ルークが王都を出ようとしていた理由に思い至った。これだ。ルークは誰かとの子を妊娠して、そのせいで王都を出て行こうとしている。
父親は一体誰だ?ギブソンは婚約者と一緒に実家の領地を統治しているからありえない。相手は俺か、もしくは…王城で仲良さそうに離していた騎士団の誰かか。
身体がカッと熱くなる。許さない、俺意外の誰かを選びもせずに逃げようだなんて。
「…ルーク、どういうことだ?」
「え?…あっ、それ、は」
思っていたより低い声が出た。あぁ、俺本気で怒ってるんだ。
何処か他人事のように考えつつ、怯えたように俺を見上げるルークを見つめる。不意に立ち上がったかと思えば、手帳を取り返そうと向かってきた。
俺が避けると、バランスを崩したルーク。咄嗟に抱きとめ支えると、ルークの瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
…そこまで、子供の父親の事を。
「っやだ、ジャック!返して!」
「ちゃんと話してくれるまで返さない。誰の子だ?父親のせいで王都を出ようとしてるんだな?」
「ち、父親は言えないし、妊娠と王都を出る事は関係ない!」
明らかな嘘に、今度は俺がうろたえる番だった。
ルークはいつだってどんなときだって、俺に嘘をついたりしなかった。
幼い頃だって、他の子に冗談っぽい嘘をついたことはあるけれど、俺相手にはただの一度もない。
そこまで、子供の父親を愛しているのだろうか。
「ルーク、お願いだから父親を教えてくれ。そうじゃなきゃ俺は、っ…」
懇願するように声を絞り出す。ちゃんと教えてもらえなければ、俺はルークを諦めきれない。
この子の父親が俺だったらどれ程いいだろうか。そんな期待を寄せてしまう。俺なら、ルークが産んだ子供なら誰が父親でも愛してやれる。
ルークと一緒に三人で、幸せな家庭を築いていきたいのに。その資格すらないと言われているようで、心が引き裂かれそうだった。
「…この子の、父親は…その、」
ルークが迷いながら口を開く。恐る恐る、何かに怯えながら必死に伝えようとする彼を、急かすわけでもなく見守った。
きっとこのまま待っていれば、ルークは本当のことを教えてくれる筈だ。
うろうろと視線を泳がせるルークから、視線を逸らさずじっと見つめる。今ここで目を逸らしてしまったら、二度と話してくれない気がしたから。
暫く考え込みように黙ったルークは、再びおずおずと口を開いた。
「…ジャック、」
「あぁ、なんだ?」
「この子の、父親は…君なんだ、ジャック」
一番欲しかったその言葉に、一瞬頭の中が真っ白に染まる。
数秒か、はたまた数分か。フリーズしていた俺の脳は急速に回り出し、いつの間にかルークを抱き上げていた。
嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい!俺と、俺とルークの赤ちゃんは宿っていたなんて!なんて言ったらいいか分かんなくて、もにょもにょと口が動く。
俺はなんて幸せ者なのだろうか。あぁ、今日は人生の中で一番幸せな日だ!
「ほ、本当に?本当に俺とルークの赤ちゃん?」
「う、うん…本当。僕、ジャック以外とした事ないし…」
「夢みたいだ。俺と、俺とルークの赤ちゃん…!」
またルークの口から真実を聞きたくて、疑ってもないのに問い返してしまう。
あぁ、本当の夢みたいだ。いや、夢じゃないんだけど!もしこれが夢になってしまったら、俺は今度こそ絶望してしまうだろう。
ぎゅう、俺より小さい身体を抱きしめる。ルークの体温が、鼓動が…全て愛おしくて、あったかい。
俺が絶対幸せにする。ルークも、お腹の子も…家族を知らない俺達だけど、絶対あったかい家庭を築くんだ。
俺はそう心の中で決意した。その後泣き出してしまったルークを慰めるのには結構な時間がかかった。
俺たちは幼い頃から両親がおらず、小さな孤児院で暮らしていた。裕福ではなかったがシスターは優しかったし、他の子供達も皆良い子だった。
だがある日、俺が勇者に選ばれた。孤児院から離れなければならず、ルークとも生き別れになりそうだった。
だけど俺は我儘で、ルークを手放せなかった。半ば無理矢理共に旅立ち、魔王討伐を掲げ世界中を旅して回った。
そんな中で暗殺者のカトリーヌや、斥候のギブソンとも出会った。
俺たち四人は負け知らずで、何より魔術士のルークの活躍は目覚ましいものだった。もしルークがパーティーに居なければ、俺たちは魔王城に辿り着くことも出来ずに死んでいたと思う。
それは皆の共通認識だったが、ルークだけはずっと否定していた。
「そんな事ないよ。僕はただ、皆をサポートしてただけで…皆が強いから勝てたんだよ!」
そう言って笑うルークは、いつだって眩しかった。
時は経ち、俺たちは無事に魔王を討伐する事に成功した。喜びよりも安堵が勝った。誰も、誰も死なずに討伐できた。
五体満足で、無事に生きて帰ることができた。その日はたらふく酒を飲んで、気づけば朝だった。
だが、そこで一つの違和感。
俺は今まで、ルークと同室になった事がない。というのも、理性を失って無理矢理身体を繋げたりする事がないようにという判断があったから。
カトリーヌとギブソンはそんな俺を理解してくれて、宿に泊まる際は絶対にルークと同室にはさせなかった。
だがどうだ。今、俺の横で素っ裸で寝ているのはルークじゃないか。
「えっ、なん……は?」
動揺しまくった。もしかして、もしかするのか?
俺は遂に超えてはいけないラインを超えてしまったのか?ルークに聞かないとと思うけど、聞いて嫌われたらどうしようという自己保身も生まれてしまった。
聞きたい、聞きたくない。間違いって言われたらどうしよう。
結局俺は真実を確かめられぬまま、王都に戻った。
◇
その後は登城し、凱旋パレードを行い、色々目まぐるしく過ごしていた。
だけど同時に俺への縁談も持ち上がった。この国の唯一の王位継承権を持っている、マリア姫との縁談だ。
俺は王位なんてこれっぽっちも興味が無いし、姫様もそういった意味で好きではなかった。
姫様も俺の事を勇者としてしか見ていない。それに、好きな殿方がいるという。
ならば協力し合いこの縁談を破断させよう、そう誓い合った。姫様は戦友になった。
どうにかこうにか王を宥めすかし説得して、同時にルークを囲い込む準備を始めた。
俺には好きな相手がいる、それは勇者パーティーの仲間らしい。魔術が得意らしいと噂を流す。
王城には瞬く間に噂が尾鰭背鰭をつけて広まり、勇者ジャックと魔術士ルークは恋仲だと公然の秘密になった。
この噂は今や市井にも流れている。いや、俺が匂わせたんだけど…あまりにも上手くいきすぎて、逆に恐ろしいくらい。
俺は、ルークに好かれていると思う。だけど不安だから、地盤固めは怠れない。
「ちょっとジャック!あんた、ルークに逃げられるわよ!?」
順調だったはずの俺の道のりは、仲間であるカトリーヌのその一言でガラガラと崩れていった。
◇
カトリーヌの忠告を受けた後すぐ、ルークの家の近くに潜み見張っていた。
彼はおとなしそうに見えて案外行動派だ。普段は自信がなさそうにおどおどとしているけど、一度決心した事は決して曲げず即行動に移していく。
だからきっと、王都を離れるのもすぐだ。そう思い見張っていれば、3日目の明け方にルークは動いた。
玄関が開く前に仁王立ちし、今か今かと待ちわびる。
何故王都を出て行こうとするんだ?俺に、愛想が尽きたのか?幼い頃の約束を反故にするつもりか?
色んな言葉が思い浮かんでは消えて、また思い浮かんで。それでもルークを俺に縛り付けるには理由不足で、上手く説得できる気がしない。
お互い好きあっていると思ってた。だけど、それは間違っていたのだろうか?
「え、なんで…ここに、」
「カトリーヌに言われて、この間から家を見張ってた。まさか、本当に王都から出て行くつもりか?」
ガチャリと扉が開いた後、俺の顔を確認したルークは驚いたように目を見開く。
黒曜石のような黒い瞳が、朝日にきらきらと輝いていてとても綺麗だった。だけど、雰囲気は最悪だ。
ルークは直ぐに眉間にしわを寄せて不機嫌そうだし、俺は俺で動揺していた。本当に、旅支度をしていたから。
ショックだった。ずっと一緒にいた幼馴染が、俺の元を黙って離れていこうとしていた事実が。
「そうだよ。王都を出て、一人で生きていく…魔王討伐も終わったし、僕が王都に留まる理由はもう無い」
「忘れたのか?ずっと一緒にいようって、俺と約束したじゃないか」
幼い頃、孤児院で暮らしていた時の約束。そんな昔の話を持ち出すなんて、我ながら卑怯だ。
己を卑下しつつ、じっとルークの目を見つめる。彼の良心に訴えかければ、少しは時間が稼げるかもしれないと期待して。
すっと目を細めたルークの口が、動こうとした。この先の言葉が予測できてしまって、聞きたくなくて口を塞ごうと動きかけた。
だけど、そんな乱暴な事は出来なくて。
「…そんな約束、したっけ?」
「ルーク…!」
ぐさり、心臓に刃が付きたてられたような衝撃が走る。
きっと今、俺の顔は酷い事になっているだろう。苦しい、辛い。ルーク、お願いだから俺を捨てないでくれ。
身動き一つ取れなかった。指先すら動かせなくて、ルークの言葉が心の奥の深いところまで刺さって抜く事が出来なくて。
あぁ、遂にルークに捨てられてしまったんだと。
「うっ…!」
「ルーク!?おい、大丈夫か!?」
いつの間にか俺の横をすり抜けていたらしいルークが、苦しげに呻きながら蹲る。
柄にもなく動揺しまくっていた俺はどうして良いか分からなくて、必死に鞄の中を探るルークを見守っていた。
とさり、鞄の中から水筒を取り出した際に一緒に落ちてしまった手帳を拾い上げる。表紙には、母子手帳の四文字が書いてあった。
一瞬で頭が真っ白になる。母子?だれが?ルークが?
めまぐるしく脳が回転し、ルークが王都を出ようとしていた理由に思い至った。これだ。ルークは誰かとの子を妊娠して、そのせいで王都を出て行こうとしている。
父親は一体誰だ?ギブソンは婚約者と一緒に実家の領地を統治しているからありえない。相手は俺か、もしくは…王城で仲良さそうに離していた騎士団の誰かか。
身体がカッと熱くなる。許さない、俺意外の誰かを選びもせずに逃げようだなんて。
「…ルーク、どういうことだ?」
「え?…あっ、それ、は」
思っていたより低い声が出た。あぁ、俺本気で怒ってるんだ。
何処か他人事のように考えつつ、怯えたように俺を見上げるルークを見つめる。不意に立ち上がったかと思えば、手帳を取り返そうと向かってきた。
俺が避けると、バランスを崩したルーク。咄嗟に抱きとめ支えると、ルークの瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
…そこまで、子供の父親の事を。
「っやだ、ジャック!返して!」
「ちゃんと話してくれるまで返さない。誰の子だ?父親のせいで王都を出ようとしてるんだな?」
「ち、父親は言えないし、妊娠と王都を出る事は関係ない!」
明らかな嘘に、今度は俺がうろたえる番だった。
ルークはいつだってどんなときだって、俺に嘘をついたりしなかった。
幼い頃だって、他の子に冗談っぽい嘘をついたことはあるけれど、俺相手にはただの一度もない。
そこまで、子供の父親を愛しているのだろうか。
「ルーク、お願いだから父親を教えてくれ。そうじゃなきゃ俺は、っ…」
懇願するように声を絞り出す。ちゃんと教えてもらえなければ、俺はルークを諦めきれない。
この子の父親が俺だったらどれ程いいだろうか。そんな期待を寄せてしまう。俺なら、ルークが産んだ子供なら誰が父親でも愛してやれる。
ルークと一緒に三人で、幸せな家庭を築いていきたいのに。その資格すらないと言われているようで、心が引き裂かれそうだった。
「…この子の、父親は…その、」
ルークが迷いながら口を開く。恐る恐る、何かに怯えながら必死に伝えようとする彼を、急かすわけでもなく見守った。
きっとこのまま待っていれば、ルークは本当のことを教えてくれる筈だ。
うろうろと視線を泳がせるルークから、視線を逸らさずじっと見つめる。今ここで目を逸らしてしまったら、二度と話してくれない気がしたから。
暫く考え込みように黙ったルークは、再びおずおずと口を開いた。
「…ジャック、」
「あぁ、なんだ?」
「この子の、父親は…君なんだ、ジャック」
一番欲しかったその言葉に、一瞬頭の中が真っ白に染まる。
数秒か、はたまた数分か。フリーズしていた俺の脳は急速に回り出し、いつの間にかルークを抱き上げていた。
嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい!俺と、俺とルークの赤ちゃんは宿っていたなんて!なんて言ったらいいか分かんなくて、もにょもにょと口が動く。
俺はなんて幸せ者なのだろうか。あぁ、今日は人生の中で一番幸せな日だ!
「ほ、本当に?本当に俺とルークの赤ちゃん?」
「う、うん…本当。僕、ジャック以外とした事ないし…」
「夢みたいだ。俺と、俺とルークの赤ちゃん…!」
またルークの口から真実を聞きたくて、疑ってもないのに問い返してしまう。
あぁ、本当の夢みたいだ。いや、夢じゃないんだけど!もしこれが夢になってしまったら、俺は今度こそ絶望してしまうだろう。
ぎゅう、俺より小さい身体を抱きしめる。ルークの体温が、鼓動が…全て愛おしくて、あったかい。
俺が絶対幸せにする。ルークも、お腹の子も…家族を知らない俺達だけど、絶対あったかい家庭を築くんだ。
俺はそう心の中で決意した。その後泣き出してしまったルークを慰めるのには結構な時間がかかった。
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