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13:失せ物探し
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ザックとアルフォンスは、今日の昼に帰国した。案の定ザックがギャン泣きし、俺から引き剥がすのに一苦労したけれど。
可愛い弟との別れは俺も寂しかったけど、二度と会えない訳じゃない。
俺が母国へ帰れば、またすぐに会える。まぁ、アルフォンスと第一王子は直ぐに帰らせてくれなさそうではあるけれど。
早く呪いをかけている犯人が捕まって欲しいと思う反面、この件が終わってもこの国に残りたいとも思う。
それくらいヴィンスの隣は心地良くて、この短期間で俺が物凄く心を開いている自覚もあった。
「…あれ?」
ふと、指輪に触れようとする。だけど指先には固い感触が当たらなくて、慌てて手を確認した。
ない。さっきまでちゃんと有ったはずなのに、母上の形見の指輪がなくなっている。
さぁっと血の気が引いていく。そんな、俺と母上の唯一の繋がりを失くしてしまうなんて。
俺は慌てて上着を羽織り、ランプを持って部屋を後にした。
「…お願い、見つかってくれ」
夕食の時にはあった。だから、その後部屋に戻るまでの道のりで落としたんだと思う。
一旦夕食を取ったホールまで戻り、ランプを翳しながら廊下をゆっくりと進む。
今は真夜中だから、もし指輪が落ちていればランプの光に反射するはずだ。
見つかれ、見つかれと切に祈りながらゆっくりと足を進める。
部屋までの距離が半分になった時点で、屈めていた身体を起こして背を伸ばした。
ふと、少し離れた所から此方に近づいて来る足音が聞こえる。見回りの騎士だろうか?もしかしたら、指輪を拾ってくれているかもしれない。
パタパタと足音を立てながら俺も歩き出した。
「…シル?こんな時間にどうしたんだ」
「ヴィンスこそ。あ、そうだ…この辺に、指輪落ちてなかった?水晶が嵌めてあるんだけど」
そう言うとヴィンスはあぁ、と声を上げ胸ポケットを探った。
スッと差し出された手を見ると、そこには俺が探していた指輪がある。良かった、ヴィンスが拾っててくれたのか。
ほっと息を吐き出すと、ゆるりと首を傾げたヴィンスが問いかけて来る。
「…これは、誰かから貰ったのか?夜中に探しに来る程、大事な物みたいだが」
そう言ったヴィンスは何処か残念そうな、拗ねているような…不思議な顔をしていた。
心なしか耳もしょげるように垂れている気がする。俺は数回瞬きをして、問いに対する回答を口にした。
これは亡くなった実母の形見で、お守りにしている事。普段つけないから失くした事に気づかず、焦ってしまった事も。
それを聞くと、ヴィンスの表情は少し明るくなった。
「そうか、シルの母君の…拾っておいて良かった。そんなに大事な物だとは知らず、渡すのが遅くなってすまない」
「いや、気にしないで。落とす俺が悪いし…拾ってくれてありがとう、ヴィンス」
そう言って笑えば、ヴィンスはふっと目元を緩めた。
月明かりに照らされるヴィンスの白銀の毛並みと、黄色の双眸。それが余りにも美しく見えて、思わず見惚れてしまう。
…俺の、大事な人。今朝のザックとの会話が蘇り、どくりと心臓が跳ね上がる。
いつまでもヴィンスを見つめたままの俺を不思議に思ったのか、軽く肩を揺すられた。
「っご、ごめん。余りにもヴィンスが綺麗で…って、俺、何言ってんだ。気にしないで、はは…」
焦る余り、思っていた事を口も出してしまう。
慌てて取り繕ったけれど、誤魔化しきれていない。乾いた笑いを溢しながら視線を逸らすと、ヴィンスが俺の手を取った。
そのまま優しく握り込まれ、持ち上げられる。
あ、と間抜けな声が出た。気付けばヴィンスの唇が、手の甲に押し付けられていて。
「~っえ、その、ヴィンス…?」
ちゅっと小さく鳴ったリップ音。ヴィンスの意図が読めなくて、困惑する。
でもそれ以上に込み上げて来る熱い何か。どくどくと心臓が激しく脈打つ。これ、駄目だ。
優しい眼差しで俺を見つめたヴィンスは、手を取ったままその場に跪いた。昔本で読んだ事がある、騎士の誓いの様に。
俺の手を額に付け、ヴィンスはゆっくりと口を開いた。
可愛い弟との別れは俺も寂しかったけど、二度と会えない訳じゃない。
俺が母国へ帰れば、またすぐに会える。まぁ、アルフォンスと第一王子は直ぐに帰らせてくれなさそうではあるけれど。
早く呪いをかけている犯人が捕まって欲しいと思う反面、この件が終わってもこの国に残りたいとも思う。
それくらいヴィンスの隣は心地良くて、この短期間で俺が物凄く心を開いている自覚もあった。
「…あれ?」
ふと、指輪に触れようとする。だけど指先には固い感触が当たらなくて、慌てて手を確認した。
ない。さっきまでちゃんと有ったはずなのに、母上の形見の指輪がなくなっている。
さぁっと血の気が引いていく。そんな、俺と母上の唯一の繋がりを失くしてしまうなんて。
俺は慌てて上着を羽織り、ランプを持って部屋を後にした。
「…お願い、見つかってくれ」
夕食の時にはあった。だから、その後部屋に戻るまでの道のりで落としたんだと思う。
一旦夕食を取ったホールまで戻り、ランプを翳しながら廊下をゆっくりと進む。
今は真夜中だから、もし指輪が落ちていればランプの光に反射するはずだ。
見つかれ、見つかれと切に祈りながらゆっくりと足を進める。
部屋までの距離が半分になった時点で、屈めていた身体を起こして背を伸ばした。
ふと、少し離れた所から此方に近づいて来る足音が聞こえる。見回りの騎士だろうか?もしかしたら、指輪を拾ってくれているかもしれない。
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「…シル?こんな時間にどうしたんだ」
「ヴィンスこそ。あ、そうだ…この辺に、指輪落ちてなかった?水晶が嵌めてあるんだけど」
そう言うとヴィンスはあぁ、と声を上げ胸ポケットを探った。
スッと差し出された手を見ると、そこには俺が探していた指輪がある。良かった、ヴィンスが拾っててくれたのか。
ほっと息を吐き出すと、ゆるりと首を傾げたヴィンスが問いかけて来る。
「…これは、誰かから貰ったのか?夜中に探しに来る程、大事な物みたいだが」
そう言ったヴィンスは何処か残念そうな、拗ねているような…不思議な顔をしていた。
心なしか耳もしょげるように垂れている気がする。俺は数回瞬きをして、問いに対する回答を口にした。
これは亡くなった実母の形見で、お守りにしている事。普段つけないから失くした事に気づかず、焦ってしまった事も。
それを聞くと、ヴィンスの表情は少し明るくなった。
「そうか、シルの母君の…拾っておいて良かった。そんなに大事な物だとは知らず、渡すのが遅くなってすまない」
「いや、気にしないで。落とす俺が悪いし…拾ってくれてありがとう、ヴィンス」
そう言って笑えば、ヴィンスはふっと目元を緩めた。
月明かりに照らされるヴィンスの白銀の毛並みと、黄色の双眸。それが余りにも美しく見えて、思わず見惚れてしまう。
…俺の、大事な人。今朝のザックとの会話が蘇り、どくりと心臓が跳ね上がる。
いつまでもヴィンスを見つめたままの俺を不思議に思ったのか、軽く肩を揺すられた。
「っご、ごめん。余りにもヴィンスが綺麗で…って、俺、何言ってんだ。気にしないで、はは…」
焦る余り、思っていた事を口も出してしまう。
慌てて取り繕ったけれど、誤魔化しきれていない。乾いた笑いを溢しながら視線を逸らすと、ヴィンスが俺の手を取った。
そのまま優しく握り込まれ、持ち上げられる。
あ、と間抜けな声が出た。気付けばヴィンスの唇が、手の甲に押し付けられていて。
「~っえ、その、ヴィンス…?」
ちゅっと小さく鳴ったリップ音。ヴィンスの意図が読めなくて、困惑する。
でもそれ以上に込み上げて来る熱い何か。どくどくと心臓が激しく脈打つ。これ、駄目だ。
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俺の手を額に付け、ヴィンスはゆっくりと口を開いた。
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