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ヒーローが、来た
11:いつの日か必ず(Side:ダニエル)
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照明でキラキラと輝くプラチナブロンドの髪に映えるその色に、呆然と言葉を失った。見事としか言いようのないシルバーの細工は、恐らく王都随一と言われる宝飾品店のもの。
翼を模した細工の至る所に輝く黒色の宝石。それはミーシャ様の隣に立ち、愛おしそうに笑顔を向ける彼の色そのもの。
自身の色を持つ装飾品を贈り、受け取って貰う。貴族間でのその行為は、お互いを思い合う恋人同士だと言うことを示唆する。そう、恋人同士だ。
招待客がミーシャ様の頭で輝く髪飾りを見る度、隣に立つリディエル様を見てヒソヒソと色めきだった声で囁く。
中には私と同じように呆然と立ち尽くしている人もいた。恐らく、ご兄弟のどちらかに近づこうとしていた貴族たちだろう。
普段の私であればそんな彼らに同情の眼差しを向けていたであろうけれど、それどころじゃなかった。何故なら、自身も彼らと同じ境遇にあったからだ。
ミーシャ・ルリアン様。私は、幼く小さい彼に愚かにも恋をしていた。いや、今尚恋焦がれている。
初めて彼を見たあの日、彼の周りの空間だけとても神聖に見えた。まるで、天使が地上に舞い降りたような。そんな、錯覚。
ふらふらと吸い寄せられるように彼に近づくと、澄んだアクアマリンの瞳と視線が絡んだ。その瞬間全身に電流が走ったような衝撃を受け、彼が発した言葉に思考回路が完全に止まる。
『……かっこいい』
子供らしく幼さの残るソプラノボイスが紡いだ言葉は、私自身を褒める台詞。彼の兄から発せられる殺気すらどうでもよくなってしまうほど、私は彼の言葉に浮かれきっていた。
そして愚かにも錯覚をした。私は、彼の懐に入ることの出来得る人間だと。私は、彼の特別になる事が出来るかもしれないと。
あまりにも浅はかな考えに、今になって吐き気が込み上げてくる。烏滸がましい。私が、ミーシャ様の特別になれるだなんて。
そう気がついた頃には何もかもが終わっていた。私は公爵家の子息であるミーシャ様に自家主催のお茶会で正式な手順も踏まずに求婚し、挙句礼儀知らずだとミーシャ様自身から断ってもらう事も出来ずに終わった。
その話はすぐに両家の当主へと伝わり、今現在私は侯爵領行きの馬車の中でぼんやりと今までの事を振り返っている。父から下された処分は、意外にも領地での謹慎処分のみ…まぁ、無期限ではあるが。
でも何故か、ミーシャ様との文通は禁止されはしなかった。自らその件について言及して、改めて禁止にされたらたまらないので何も聞いていない。だから父がうっかりで禁止にしていないのか、態と禁止にしていないのかは分からない。
まだ、ミーシャ様との縁は完全に断ち切られている訳ではない。まぁ、私からの手紙に返事が返ってくるとは限らないけれど、それでも僅かな繋がりだけは確保する事ができた。それが、どれほど幸せな事か。
恐らくこの謹慎は、私が領地で何か功績を上げれば解かれることになっている。それが領地経営などの頭脳面か、他国からの攻撃を防ぐ肉体面かは分からない。けれど、私としては武功を収めたいと思っている。
ミーシャ様と結ばれる事は難しいどころか無理であろう事は理解した。けれど、お傍に居ることを諦めたわけじゃない。公爵家直属の騎士団はとても厳しく、生半可な覚悟で入団できない事は分かっている。然し、あの騎士団は平民貴族問わず実力さえあれば入団できる。そして、騎士団内で実力を認められれば公爵やご子息の警護を任されることも。
そう、実力さえあればミーシャ様の護衛になれる道が拓けるのだ。幸いにも、公爵家か罰としてら求められたのは領地内での無期限謹慎。その中にミーシャ様との接触禁止は含まれていない。往生際が悪いと思われるかもしれないが、私には良くも悪くもミーシャ様しか見えていない。幸いと言っていいのか、私は侯爵家の次男。兄は既に次期侯爵として領地内の政治を任されているので、私の未来はある意味でとても自由なのだ。
「…私は必ず、貴方の傍に戻ります。必ず、何年かかろうとも」
そう呟き、拳を硬く握り締める。次に顔を合わせる時、ミーシャ様はどれほど美しく成長なされているのだろうか。もしかしたら既に、リディエル様と婚約して…最悪、結婚されているかもしれない。いや、最悪などとは失礼だ。幾ら私がリディエル様を嫌っていようと、ミーシャ様の選択を否定する事は許されない。
あぁ、ミーシャ様。私の天使。どうか、どうか私に今一度チャンスをください。必ず貴方と、貴方の大切なものを命に代えても守って見せます。貴方を害するもの全て、私が…必ずや、全て切り伏せて見せますとも。
僅かに揺れる馬車の中で、改めてミーシャ様への忠誠を心の中で固く誓った。
翼を模した細工の至る所に輝く黒色の宝石。それはミーシャ様の隣に立ち、愛おしそうに笑顔を向ける彼の色そのもの。
自身の色を持つ装飾品を贈り、受け取って貰う。貴族間でのその行為は、お互いを思い合う恋人同士だと言うことを示唆する。そう、恋人同士だ。
招待客がミーシャ様の頭で輝く髪飾りを見る度、隣に立つリディエル様を見てヒソヒソと色めきだった声で囁く。
中には私と同じように呆然と立ち尽くしている人もいた。恐らく、ご兄弟のどちらかに近づこうとしていた貴族たちだろう。
普段の私であればそんな彼らに同情の眼差しを向けていたであろうけれど、それどころじゃなかった。何故なら、自身も彼らと同じ境遇にあったからだ。
ミーシャ・ルリアン様。私は、幼く小さい彼に愚かにも恋をしていた。いや、今尚恋焦がれている。
初めて彼を見たあの日、彼の周りの空間だけとても神聖に見えた。まるで、天使が地上に舞い降りたような。そんな、錯覚。
ふらふらと吸い寄せられるように彼に近づくと、澄んだアクアマリンの瞳と視線が絡んだ。その瞬間全身に電流が走ったような衝撃を受け、彼が発した言葉に思考回路が完全に止まる。
『……かっこいい』
子供らしく幼さの残るソプラノボイスが紡いだ言葉は、私自身を褒める台詞。彼の兄から発せられる殺気すらどうでもよくなってしまうほど、私は彼の言葉に浮かれきっていた。
そして愚かにも錯覚をした。私は、彼の懐に入ることの出来得る人間だと。私は、彼の特別になる事が出来るかもしれないと。
あまりにも浅はかな考えに、今になって吐き気が込み上げてくる。烏滸がましい。私が、ミーシャ様の特別になれるだなんて。
そう気がついた頃には何もかもが終わっていた。私は公爵家の子息であるミーシャ様に自家主催のお茶会で正式な手順も踏まずに求婚し、挙句礼儀知らずだとミーシャ様自身から断ってもらう事も出来ずに終わった。
その話はすぐに両家の当主へと伝わり、今現在私は侯爵領行きの馬車の中でぼんやりと今までの事を振り返っている。父から下された処分は、意外にも領地での謹慎処分のみ…まぁ、無期限ではあるが。
でも何故か、ミーシャ様との文通は禁止されはしなかった。自らその件について言及して、改めて禁止にされたらたまらないので何も聞いていない。だから父がうっかりで禁止にしていないのか、態と禁止にしていないのかは分からない。
まだ、ミーシャ様との縁は完全に断ち切られている訳ではない。まぁ、私からの手紙に返事が返ってくるとは限らないけれど、それでも僅かな繋がりだけは確保する事ができた。それが、どれほど幸せな事か。
恐らくこの謹慎は、私が領地で何か功績を上げれば解かれることになっている。それが領地経営などの頭脳面か、他国からの攻撃を防ぐ肉体面かは分からない。けれど、私としては武功を収めたいと思っている。
ミーシャ様と結ばれる事は難しいどころか無理であろう事は理解した。けれど、お傍に居ることを諦めたわけじゃない。公爵家直属の騎士団はとても厳しく、生半可な覚悟で入団できない事は分かっている。然し、あの騎士団は平民貴族問わず実力さえあれば入団できる。そして、騎士団内で実力を認められれば公爵やご子息の警護を任されることも。
そう、実力さえあればミーシャ様の護衛になれる道が拓けるのだ。幸いにも、公爵家か罰としてら求められたのは領地内での無期限謹慎。その中にミーシャ様との接触禁止は含まれていない。往生際が悪いと思われるかもしれないが、私には良くも悪くもミーシャ様しか見えていない。幸いと言っていいのか、私は侯爵家の次男。兄は既に次期侯爵として領地内の政治を任されているので、私の未来はある意味でとても自由なのだ。
「…私は必ず、貴方の傍に戻ります。必ず、何年かかろうとも」
そう呟き、拳を硬く握り締める。次に顔を合わせる時、ミーシャ様はどれほど美しく成長なされているのだろうか。もしかしたら既に、リディエル様と婚約して…最悪、結婚されているかもしれない。いや、最悪などとは失礼だ。幾ら私がリディエル様を嫌っていようと、ミーシャ様の選択を否定する事は許されない。
あぁ、ミーシャ様。私の天使。どうか、どうか私に今一度チャンスをください。必ず貴方と、貴方の大切なものを命に代えても守って見せます。貴方を害するもの全て、私が…必ずや、全て切り伏せて見せますとも。
僅かに揺れる馬車の中で、改めてミーシャ様への忠誠を心の中で固く誓った。
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