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第二章 サイコパス覚醒
サイコパス絶体絶命
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外はもう真っ暗で、灯りが無いと何も見えない。
華那子の持つ、火魔法のランタンと火置を使い明るさを確保する。
とは言え、暗闇で作業していたので、5人共暗視や夜目のスキルは覚えていた。
中には猫目とか変わった物を覚えた奴もいる。
そして、人が居なくなったのを見嵌らってランタンを点けた。
まだ暗闇の世界に慣れていないから、特に麗華などは不気味がる。
「さて~ これからどうしよっか?」
『お嬢は何か考えがあるんかな?』
「特に無いけど、しばらくこの辺は離れよかと思っとるんよ」
ランタンを真ん中にして、5人は輪になって座っている。
「キャンプファイアーみたいやなぁ」
衣摩が素っ頓狂な事を言い出す。
「衣摩、もうビール冷えたやろ?出してきてくれんか?」
「あいよ~ 麗華ちゃん手伝ってな」
取り敢えずチルド砦に放り込んでいた酒類を触ってみると、とても良く冷えていた。
「ビール4つと、麗華ちゃんは何にする?」
『オイラも飲んでえぇんかー?』
「お酒は飲んだことあんの?」
『うんあるよ。でも甘いのんが好きやー』
「んじゃーほろ酔いの桃でもいっとくか」
『甘いノンも好っきやけど、においの強いお酒も好きやでー』
外に出て全員にビールを配り、衣摩の掛け声で乾杯をする。
「麗華は酒が呑めるんやな」
『ビールは美味しいとは思わんけど、バーボンは好っきやでー』
「バーボンなんてくっさいだけやん」
『焼酎も芋の臭いのが好きやわ』
『14歳でツウな酒の味を語れるって、おまえは凄いのぉ―』
「お酒は二十歳になってからやでー」
「あははははは! 人殺しは良くて、未成年の飲酒はあかんのか?」
「成長阻害が起こりやすいし、成長期の喫煙飲酒は肉体の正成長にも影響あるんやで」
「それは看護師の知識やろ?麗華は肉体進化しとるんやで?」
「いままでの人間の身体とはまったくちゃうぞー」
「ん~そういやーそうやねー」
「こんな世の中やー、未成年も老人も関係ないし、自分の生き様が法律や!」
「そうゆうこっちゃ」
「麗華は自分の好きなようにやりたいように生きたらえぇんやでー」
「うちらの仲間やからって、無理して人殺しせんでもえぇしな」
『・・・ それなんやけど』
『オイラ、恩人じゃろう、お父はんとお母はんと姉ちゃん殺したんや』
「・・・」
『自分が生き残るために、囮に使ったり盾にしたり・・・』
『結果、3人共死んでしもたんや』
「んでもその結果、おまえが生き残っとんやから、一体何があかんねん?」
「こんな世の中や、反省はしても後悔はすんな」
「明日がどうなるかもわからんのに、一々過去を引きずっとったら成る物も成らんようになるぞ」
「でもな、恨みだけは忘れるな、屈辱だけは忘れるな、そして感謝も忘れんようにしたらえぇ」
「その3人はお前を生かすために犠牲になったんや。深く感謝はしといたり、でも後悔は絶対にすんな、えぇな?」
麗華は理解もしたし納得もしているのだが、何か心にモヤモヤしたものが残った。
それは華那子に対する不信感とかでは無く、自分のやった行いに対する後悔であろう。
「麗華、お前にもっと力があれば結果は変わっとったやろ?]
「力があれば4人が4人共生き残る道もあったはずや」
「お前に力が無かったから後悔するような結果になってしもたんやで?」
「もっともっと強うなれ、そして後悔なんぞ微塵も出てこない結果を出せる様になれや」
『絵里姉・・・』
「とは言え、麗華に殺意も悪意も無かったんやから、気にせんでもえぇんちゃうか?」
それを聞いて、ここぞとばかりに衣摩が言葉を発する。
「殺意や悪意があって人を殺すとな、殺人系の称号が付くんや」
「そうなって無いから、麗華ちゃんは殺そうと思ってご両親を犠牲にしたんちゃうって、みんなここにおる人はわかっとんで ニカッ」
「・・・」
「よっしゃよっしゃ、麗華はゆっくり考えたらえぇ」
「んでな、これからの方向性やけどなー、なんかえぇ意見あったらゆうてや」
『俺はまず自分のレベルをもっともっと上げたいのぉー』
「華那子とも、ゆぅとったんやけど、マンションの多い所に行こうかって」
『近場だと六アイか』
「ゆくゆくは東京まで行脚してもいいかもな」
『大阪から京都、滋賀、岐阜まで行って、名古屋に降りよか』
「金沢のおでん食べた~い」
「アホー、店開いとるかー(笑)」
「そうやんなぁ・・・」
「ちょっとだけ違和感ある事言ってもえぇか?」
「なんや?どないしたんや?」
「ここらは停電で真っ暗やけど、芦屋ら辺はなんか明るいやんか」
「こっから見える、大阪の南港辺りも明るいし、紀伊半島も明るい」
「天気がえぇのになんか知らん、霞みたいなんがずっと掛かっとるしな」
『まぁ俺は、まだ目覚めて数時間しか経っとらんからなー』
『なんで急にこんな世の中になったんか、みんなも分からんやろうけど、俺はもっと受け入れらんとあかんことが多すぎて頭が付いて行かんわ』
「ぼちぼちでえぇんやで」
『ありがとな、お嬢』
取り敢えず、絵里の違和感の話はスルーされたらしい。
5人が談話している場所を、少し離れた位置から様子を見ている人物が多数居る。
「裏に何人回った?」
「15人程行きました」
「でも、レベル無しも5人程居るので少し心配です」
「まぁ多分やけど、そっちには逃げんやろう」
「北側のボーリング場側にもジャンプスキル持ちが10人程待機してます」
「南側はフェンスやし、見通しの良い43号線には出ないやろう」
「向かいのコンビニの中に数人と路地にも数人バラバラに配置してます」
「もう少ししたら駅北の人らが、少数やけど応援に来てくれるから、しばし待機な」
「駐車場の出口付近の事故車両の陰に今、10人程隠れてます」
「入り口付近には?」
「そっちは今は少し手薄ですが、5人~6人くらいは隠れてると思います」
「国道の南側にも数人居ますし、国道の北側の歩道にも数人歩かせてます」
「その少数部隊全部が決行時間に入り口付近に集合する予定です」
「逃げ道は無いな・・・」
モールの仕切りをやっているトップグループが、華那子たちを私刑にする事を決定した。
避難所に居る避難民全員に事の顛末を説明し、有志を募り大捜索を敢行し、華那子たちを探し当てて今に至る。
中にはレベルが付いていないが、華那子たちの行動に憤慨し、どうしても許せないと言う人たちが続々と集まって居た。
集団心理もあるのだろうが、友人や知人を殺されたとなれば、黙っては居られないのだろう。
23時に決行!
作戦として、そう決めてある。
現在時間は22時45分。
各配置人員の中には、必ず腕時計持ちが1人以上は居る。
裏口の搬入口辺りに居る連中が、数か所ある入り口にそれぞれ集まり出した。
北側の連中も、スーパーの駐車場とボーリング場を隔てている壁の裏側に整列している。
東側に散回していた連中もぼちぼちとスーパーの駐車場に寄ってきている。
北側の方から数人のレベル付きが現れた。
「こんばんわー」
「こんばんはー わざわざすいませんねー」
「いやいや、こっちにも被害が及んだらと思うと、もう居ても経ってもいられなくてね」
「ほんと、助かります」
「ちょい待て・・・」
唐突に華那子が皆の話を遮る。
スーパーの周りだけ気配探知を掛けていたモノに、数人の怪しい奴が引っかかった。
「あかん!囲まれとるぞ」
絵里が華那子の言葉を聞いてすぐに索敵で辺り一帯を知らべてみた。
「風馬、麗華、おまえらは念のために中に入っといてくれ」
『いやお嬢、俺も行くわ』
『うちも大丈夫や』
「あほか!おまえらは足手まといなんじゃ!入っとれ!!!」
『『わ、わかった・・・』』
華那子には仲間を想う気持ちが強くなってきている。
戦闘になると、まだ二人は心許ない。
華那子はランタンを消した。
「テリトリー」
風馬と麗華を中に入れてゲートを閉じる。
「西の裏側は出入り口を固められとんな」
「北側にも数人おるぞ」
「衣摩まで中に入れると、余計な詮索されそうやしな」
「退路を断たれたら、かなわんし」
「戦いになった時に、2人じゃちょいキツイしなー」
「いざとなったら、鎌に乗って屋根の上まで登らせればいいか」
「んでも、戦うにも人数が多すぎるよなー」
「ざっと見て、40~50以上はおりそうや」
「1対5くらいなら負ける気がせんけど、多対数の攻撃スキルが無いもんなぁ」
「まぁ絵里一人でも3分の1は軽くいけるやろうけど、最後はチーンやろな」
「チーンって、仏壇の鈴の音かぃ(笑)」
ふざけていても絵里は索敵を切らさない。
華那子も索敵と遠隔視を駆使して、包囲網の穴を探す。
「南側が薄そうやな」
「駐車場の入り口の辺に数人おるだけか」
「でもフェンス超えんとあかんし、43号線は見通し良すぎて逃げにくいわな」
「そやから手薄なんやろ」
「でも逃げおおせる確率が高いんは南やな」
「衣摩!シャキッとせんかい」
「だって、怖いもん・・・」
「怖いんはしゃあないけど、ビビって身体が動かんなんてのが一番あかんぞ」
「一回、深呼吸しとけ」
「もしも戦いになったら、衣摩は左、絵里は右でうちは真ん中から行くぞ」
「まずは場所取りからやな」
「そうやな、後ろから攻撃されんような位置取りを見つけんとな」
華那子たちはゆっくりと南東の駐車場の入り口方向に歩を進めた。
しかし、入り口の所にも結構な数の人が居る。
国道沿いからも増援の連中が集まって来ていた。
「いよいよ集結してきよったな」
絵里が索敵で見張っていたが、南以外の全方向から人が駐車場に集まり出した。
そして華那子たちを中心に、続々と討伐部隊が輪郭を縮めていく。
駐車場の入り口から外に出れなかったので、後ろ向きに警戒しながら南に下がっていく。
南側のフェンスまで数メートルの所まで来た時に、一人の男が大声で怒鳴る。
「もう終わりじゃー逃げられんぞ!」
華那子と絵里は後ろ向きで歩いてたので、そいつらを視認していたけれど、衣摩は普通に前向きで歩いてたところに、急に後ろから怒鳴られたので驚いて悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
衣摩が大声で悲鳴を上げながら、両耳を押さえ、膝から崩れ落ちた。
(チッ!やっぱりこいつも中に入れとけば良かった)
華那子は、まずは時間稼ぎと様子見で、目の前の男と話し出す。
「そんなに人を集めて、うちらになんの用があるんかな?」
「もうえぇんや。お前らの言い訳も言い逃れも聞くことは無い」
「いきなり襲ってきて、それは無いんちゃうかー?」
「理由は聞いてもえぇかな?」
「理由は、おまえらの人殺しに対して私刑を宣告する」
「はっ 無茶苦茶な理由やな」
「こんな時勢やけど、証拠でもあんのか?」
「証拠とか必要なんか?お前らがやったと言う事実だけでいいんやで」
そんなやり取りをしていると、どこからともなく人が降って沸いてきたように現れた。
1人、また1人、そして10人くらいの集団が華那子とモールの連中の間に降り立つ。
「おいおい」
「なんしとんじゃー」
最初に降り立った男女がそう言うと、モール側の人間も驚いて問いかける。
「お、おまえらどっから沸いてきた?」
だがそいつらは答えず、さらにモール側の人間に噛みつく。
「ここから悲鳴が聞こえてきたのですが?」
「おまえら~ゴンタするんはえ~けど、女の子に悪戯すんのは許されへんどー」
「それも大勢で寄ってたかって」
これは・・・
絵里と目が合い、お互いに小さくコクリと頷く。
勘違いさせとけ~
華那子の持つ、火魔法のランタンと火置を使い明るさを確保する。
とは言え、暗闇で作業していたので、5人共暗視や夜目のスキルは覚えていた。
中には猫目とか変わった物を覚えた奴もいる。
そして、人が居なくなったのを見嵌らってランタンを点けた。
まだ暗闇の世界に慣れていないから、特に麗華などは不気味がる。
「さて~ これからどうしよっか?」
『お嬢は何か考えがあるんかな?』
「特に無いけど、しばらくこの辺は離れよかと思っとるんよ」
ランタンを真ん中にして、5人は輪になって座っている。
「キャンプファイアーみたいやなぁ」
衣摩が素っ頓狂な事を言い出す。
「衣摩、もうビール冷えたやろ?出してきてくれんか?」
「あいよ~ 麗華ちゃん手伝ってな」
取り敢えずチルド砦に放り込んでいた酒類を触ってみると、とても良く冷えていた。
「ビール4つと、麗華ちゃんは何にする?」
『オイラも飲んでえぇんかー?』
「お酒は飲んだことあんの?」
『うんあるよ。でも甘いのんが好きやー』
「んじゃーほろ酔いの桃でもいっとくか」
『甘いノンも好っきやけど、においの強いお酒も好きやでー』
外に出て全員にビールを配り、衣摩の掛け声で乾杯をする。
「麗華は酒が呑めるんやな」
『ビールは美味しいとは思わんけど、バーボンは好っきやでー』
「バーボンなんてくっさいだけやん」
『焼酎も芋の臭いのが好きやわ』
『14歳でツウな酒の味を語れるって、おまえは凄いのぉ―』
「お酒は二十歳になってからやでー」
「あははははは! 人殺しは良くて、未成年の飲酒はあかんのか?」
「成長阻害が起こりやすいし、成長期の喫煙飲酒は肉体の正成長にも影響あるんやで」
「それは看護師の知識やろ?麗華は肉体進化しとるんやで?」
「いままでの人間の身体とはまったくちゃうぞー」
「ん~そういやーそうやねー」
「こんな世の中やー、未成年も老人も関係ないし、自分の生き様が法律や!」
「そうゆうこっちゃ」
「麗華は自分の好きなようにやりたいように生きたらえぇんやでー」
「うちらの仲間やからって、無理して人殺しせんでもえぇしな」
『・・・ それなんやけど』
『オイラ、恩人じゃろう、お父はんとお母はんと姉ちゃん殺したんや』
「・・・」
『自分が生き残るために、囮に使ったり盾にしたり・・・』
『結果、3人共死んでしもたんや』
「んでもその結果、おまえが生き残っとんやから、一体何があかんねん?」
「こんな世の中や、反省はしても後悔はすんな」
「明日がどうなるかもわからんのに、一々過去を引きずっとったら成る物も成らんようになるぞ」
「でもな、恨みだけは忘れるな、屈辱だけは忘れるな、そして感謝も忘れんようにしたらえぇ」
「その3人はお前を生かすために犠牲になったんや。深く感謝はしといたり、でも後悔は絶対にすんな、えぇな?」
麗華は理解もしたし納得もしているのだが、何か心にモヤモヤしたものが残った。
それは華那子に対する不信感とかでは無く、自分のやった行いに対する後悔であろう。
「麗華、お前にもっと力があれば結果は変わっとったやろ?]
「力があれば4人が4人共生き残る道もあったはずや」
「お前に力が無かったから後悔するような結果になってしもたんやで?」
「もっともっと強うなれ、そして後悔なんぞ微塵も出てこない結果を出せる様になれや」
『絵里姉・・・』
「とは言え、麗華に殺意も悪意も無かったんやから、気にせんでもえぇんちゃうか?」
それを聞いて、ここぞとばかりに衣摩が言葉を発する。
「殺意や悪意があって人を殺すとな、殺人系の称号が付くんや」
「そうなって無いから、麗華ちゃんは殺そうと思ってご両親を犠牲にしたんちゃうって、みんなここにおる人はわかっとんで ニカッ」
「・・・」
「よっしゃよっしゃ、麗華はゆっくり考えたらえぇ」
「んでな、これからの方向性やけどなー、なんかえぇ意見あったらゆうてや」
『俺はまず自分のレベルをもっともっと上げたいのぉー』
「華那子とも、ゆぅとったんやけど、マンションの多い所に行こうかって」
『近場だと六アイか』
「ゆくゆくは東京まで行脚してもいいかもな」
『大阪から京都、滋賀、岐阜まで行って、名古屋に降りよか』
「金沢のおでん食べた~い」
「アホー、店開いとるかー(笑)」
「そうやんなぁ・・・」
「ちょっとだけ違和感ある事言ってもえぇか?」
「なんや?どないしたんや?」
「ここらは停電で真っ暗やけど、芦屋ら辺はなんか明るいやんか」
「こっから見える、大阪の南港辺りも明るいし、紀伊半島も明るい」
「天気がえぇのになんか知らん、霞みたいなんがずっと掛かっとるしな」
『まぁ俺は、まだ目覚めて数時間しか経っとらんからなー』
『なんで急にこんな世の中になったんか、みんなも分からんやろうけど、俺はもっと受け入れらんとあかんことが多すぎて頭が付いて行かんわ』
「ぼちぼちでえぇんやで」
『ありがとな、お嬢』
取り敢えず、絵里の違和感の話はスルーされたらしい。
5人が談話している場所を、少し離れた位置から様子を見ている人物が多数居る。
「裏に何人回った?」
「15人程行きました」
「でも、レベル無しも5人程居るので少し心配です」
「まぁ多分やけど、そっちには逃げんやろう」
「北側のボーリング場側にもジャンプスキル持ちが10人程待機してます」
「南側はフェンスやし、見通しの良い43号線には出ないやろう」
「向かいのコンビニの中に数人と路地にも数人バラバラに配置してます」
「もう少ししたら駅北の人らが、少数やけど応援に来てくれるから、しばし待機な」
「駐車場の出口付近の事故車両の陰に今、10人程隠れてます」
「入り口付近には?」
「そっちは今は少し手薄ですが、5人~6人くらいは隠れてると思います」
「国道の南側にも数人居ますし、国道の北側の歩道にも数人歩かせてます」
「その少数部隊全部が決行時間に入り口付近に集合する予定です」
「逃げ道は無いな・・・」
モールの仕切りをやっているトップグループが、華那子たちを私刑にする事を決定した。
避難所に居る避難民全員に事の顛末を説明し、有志を募り大捜索を敢行し、華那子たちを探し当てて今に至る。
中にはレベルが付いていないが、華那子たちの行動に憤慨し、どうしても許せないと言う人たちが続々と集まって居た。
集団心理もあるのだろうが、友人や知人を殺されたとなれば、黙っては居られないのだろう。
23時に決行!
作戦として、そう決めてある。
現在時間は22時45分。
各配置人員の中には、必ず腕時計持ちが1人以上は居る。
裏口の搬入口辺りに居る連中が、数か所ある入り口にそれぞれ集まり出した。
北側の連中も、スーパーの駐車場とボーリング場を隔てている壁の裏側に整列している。
東側に散回していた連中もぼちぼちとスーパーの駐車場に寄ってきている。
北側の方から数人のレベル付きが現れた。
「こんばんわー」
「こんばんはー わざわざすいませんねー」
「いやいや、こっちにも被害が及んだらと思うと、もう居ても経ってもいられなくてね」
「ほんと、助かります」
「ちょい待て・・・」
唐突に華那子が皆の話を遮る。
スーパーの周りだけ気配探知を掛けていたモノに、数人の怪しい奴が引っかかった。
「あかん!囲まれとるぞ」
絵里が華那子の言葉を聞いてすぐに索敵で辺り一帯を知らべてみた。
「風馬、麗華、おまえらは念のために中に入っといてくれ」
『いやお嬢、俺も行くわ』
『うちも大丈夫や』
「あほか!おまえらは足手まといなんじゃ!入っとれ!!!」
『『わ、わかった・・・』』
華那子には仲間を想う気持ちが強くなってきている。
戦闘になると、まだ二人は心許ない。
華那子はランタンを消した。
「テリトリー」
風馬と麗華を中に入れてゲートを閉じる。
「西の裏側は出入り口を固められとんな」
「北側にも数人おるぞ」
「衣摩まで中に入れると、余計な詮索されそうやしな」
「退路を断たれたら、かなわんし」
「戦いになった時に、2人じゃちょいキツイしなー」
「いざとなったら、鎌に乗って屋根の上まで登らせればいいか」
「んでも、戦うにも人数が多すぎるよなー」
「ざっと見て、40~50以上はおりそうや」
「1対5くらいなら負ける気がせんけど、多対数の攻撃スキルが無いもんなぁ」
「まぁ絵里一人でも3分の1は軽くいけるやろうけど、最後はチーンやろな」
「チーンって、仏壇の鈴の音かぃ(笑)」
ふざけていても絵里は索敵を切らさない。
華那子も索敵と遠隔視を駆使して、包囲網の穴を探す。
「南側が薄そうやな」
「駐車場の入り口の辺に数人おるだけか」
「でもフェンス超えんとあかんし、43号線は見通し良すぎて逃げにくいわな」
「そやから手薄なんやろ」
「でも逃げおおせる確率が高いんは南やな」
「衣摩!シャキッとせんかい」
「だって、怖いもん・・・」
「怖いんはしゃあないけど、ビビって身体が動かんなんてのが一番あかんぞ」
「一回、深呼吸しとけ」
「もしも戦いになったら、衣摩は左、絵里は右でうちは真ん中から行くぞ」
「まずは場所取りからやな」
「そうやな、後ろから攻撃されんような位置取りを見つけんとな」
華那子たちはゆっくりと南東の駐車場の入り口方向に歩を進めた。
しかし、入り口の所にも結構な数の人が居る。
国道沿いからも増援の連中が集まって来ていた。
「いよいよ集結してきよったな」
絵里が索敵で見張っていたが、南以外の全方向から人が駐車場に集まり出した。
そして華那子たちを中心に、続々と討伐部隊が輪郭を縮めていく。
駐車場の入り口から外に出れなかったので、後ろ向きに警戒しながら南に下がっていく。
南側のフェンスまで数メートルの所まで来た時に、一人の男が大声で怒鳴る。
「もう終わりじゃー逃げられんぞ!」
華那子と絵里は後ろ向きで歩いてたので、そいつらを視認していたけれど、衣摩は普通に前向きで歩いてたところに、急に後ろから怒鳴られたので驚いて悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
衣摩が大声で悲鳴を上げながら、両耳を押さえ、膝から崩れ落ちた。
(チッ!やっぱりこいつも中に入れとけば良かった)
華那子は、まずは時間稼ぎと様子見で、目の前の男と話し出す。
「そんなに人を集めて、うちらになんの用があるんかな?」
「もうえぇんや。お前らの言い訳も言い逃れも聞くことは無い」
「いきなり襲ってきて、それは無いんちゃうかー?」
「理由は聞いてもえぇかな?」
「理由は、おまえらの人殺しに対して私刑を宣告する」
「はっ 無茶苦茶な理由やな」
「こんな時勢やけど、証拠でもあんのか?」
「証拠とか必要なんか?お前らがやったと言う事実だけでいいんやで」
そんなやり取りをしていると、どこからともなく人が降って沸いてきたように現れた。
1人、また1人、そして10人くらいの集団が華那子とモールの連中の間に降り立つ。
「おいおい」
「なんしとんじゃー」
最初に降り立った男女がそう言うと、モール側の人間も驚いて問いかける。
「お、おまえらどっから沸いてきた?」
だがそいつらは答えず、さらにモール側の人間に噛みつく。
「ここから悲鳴が聞こえてきたのですが?」
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パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
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パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
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