厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第二章 サイコパス覚醒

サイコパス逃げる

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絶体絶命の状態から、少し希望の光が見えてきた。


私刑宣告してきた男が話し出す。

「確かにこいつら、しばいて犯して息の根止めてどっかに捨てようって話にはなっとったけどな」

いや、犯されるところやったんか・・・
女性も大勢おるのに?

そんな言葉尻を拾うほど余裕が出てきた。

すると、別のレベル付きの男が怒声を発する。

「こいつらがわしらに何したか知りもせんくせに、いちびってヒーロー気どんなよ」


よしよし、モール側の人間を悪者にすれば良い。
ここからは、しおらしくいくよ。

    「私らはなんもしてへんってゆぅとるやん。」

思惑が一致したのか、絵里が先に芝居をしだした。
前にも思ったけど、こいつってほんまに 役者やのぉ~。


 「おまえらのせいでレベル付きが3人以上も死んどうのに、しょーもない言い訳が通るか!」
   「あんたらが殺したんを見てた奴もおるんやからなー」

    「だから知らないって!」

うんうん、今のは可愛く言えたなぁ~
絵里の顔を見ると、訝し気な表情をしていた。
だが、この変な男には効果があったんじゃないかな?



「何かの勘違いって事もあるんだし、一度ちゃんと話を聞いた方が良いんじゃないですか?」



そうだーそうだー
ちゃんと話を聞いて誤解を解いてくれー
まぁ誤解じゃないけど(笑)



「なんの根拠も無しにゆぅとんちゃうんじゃ!」
「おかしぃ思ってからの1人目の男はまだ誰も見てへんかったから言い訳も経つけど」

「2人目はゴブリンもおらん状況で、明らかにお前らの前で死んだんやぞ?」
「3人目の女の子は、この娘《こ》が『おまえらに刺されて死んだ』って泣いとったわ」

「その前から、たかがゴブリンに何人も何人もレベル付きが殺されたんもおかしいやろ」

「それを問いただしたらお前らは逃げ出したんやろが!」



天敵スキルを持っとう奴がおったら、普通は逃げるやろ~
まぁ戦っても良かったんやけど?



「それなら、何があったのか詳しく聞かせてもらえませんか?」



お~聞け聞け!
まぁ聞いてもにわかには信じられんやろうけどな。
こ~んな可愛い娘が人殺しなんてするはずが無いやんな~

ってか、こいつって何様のつもりなんやろ?



「おい、おまえらがどこの誰かは知らんけど、なんでおまえらに話す必要があるんや?」
「あんたらに状況説明する義務もなんもあらへんやろ?」
「何様のつもりじゃ!」
「警察やとか言うんか?あぁ?」
「部外者は黙っとけや!!」


ん~ 敵ながら、こいつらの言う事は正しい。
どこの誰とも分からん奴に、なんで懇切丁寧に説明するんや。
レベルとステは高いけど、大したスキルも持ってないし、何を勘違いしとんやろ?
誰が聞いても『何様?』って思うやろうな~

まぁ良く居る、力を手に入れて勘違いする病気の奴・・・
まさにこいつがそうだ。



「それならば、こちらも力づくでも止めますよ」



お~やれやれ~
お互いに戦力減らしたら、こっちの餌にしたるぞー


いや、さすがに身内に止められたわ~。
当たり前か(笑)

最初に来た女性が『うちらが介入する話とちゃうんちゃう?』って言ってる。
確かにな~ この子の言う事が正しいとうちは思う。



「でも、困ってる女性が目の前に居るのに、知らん顔は出来ないやん?」



そやで~
困っとう困っとう、逃げられんで困っとうよ~

いやいや、この面白い男の話を聞いとう場合じゃないわ・・・


華那子は右足の爪先で衣摩のお尻をクイクイっと持ち上げてみる。
へたり込んで呆けていた衣摩が、振り返り華那子の顔を見上げる。

意思が通じない事にイラっとした顔を衣摩に向けて、きつく睨んだ。
その顔を見てやっと意図を察して立ち上がる。

華那子は、一発蹴り上げたかったがそれすら時間の無駄である。



「それでも、女性を助けるんは男の役割やろ」



仲間からも散々うちらを助ける事を否定されてイラっとしてるんやろうな。
とんでもない事を言い出した。

思わず吹き出しそうになったけど、我慢した。
絵里も、我慢している顔を人に見られないように首を横に向ける。

ほんまはもっとこの男のを聞いていたいが、今は逃げる事が先決や。


華那子はスッと衣摩と絵里の前に移動した。
そして、前から見えないように、背中にテリトリーのゲートを開く。


すぐに意味を理解した絵里は、呆けてる衣摩をゲートに押し込んだ。
そして自分も急いで中に飛び込む。


2人の気配が消えた事を確認して、華那子はゲートを閉じ、少しフェンス側に寄っていく。

目の前では、変な勘違い男が仲間に散々叩かれている。
大炎上の男に感謝の気持ちをほんの少しだけ向けて、華那子は軽くしゃがみ込み脱出の為の準備を整える。


国道43号線の真上を阪神高速3号神戸線は走っている。
高さは国道からの垂直距離で12m~15mちょいくらいかな?
ここからの距離も入れれば30m~40mは最低飛ばないと高速道路上に降り立つ事は多分難しい。

だが、幸いな事に、この大型スーパーの横くらいには、西行きも東行きも緊急避難待機場所があるため、通常の道幅よりもかなり南北にせり出している。

ちょっとだけ西寄りには歩道橋も掛かっている。
歩道橋に降りられれば選択肢も増えるが、そこに降りる事は難易度が高くなる。



実際には、30mも飛べればギリギリ行けるだろう。

こいつらの話が終わってしまうとチャンスも無くなるので、隙を見て飛んでみた。


真っ暗な中、勢いよく飛び上がっても、下では大勢が言い合いをしているため、華那子の跳躍に気づく人間は誰も居なかった。



少し高く飛びすぎたようで、距離が足りず、高速道路の上に届かなさそうである。
 (うっわ~ これは困ったー)

上空で華那子は思案するが、今更どうこう出来る事は無い。
空中で平泳ぎのように手足を動かしてみたけど、変化はあまり無い。

でも、このままでは国道の方に降りてしまう。
それは悪手だ。

いや、一旦国道に降りて再度高速道路の上まで飛べばいいか。
よしっ。


下を見たら故障車も事故車も無いので、後は着地の衝撃だけだ。
阪神高速の路面が見える事から、地面からの高さは30m位は飛び上がっているか。

着地で下手をすれば骨折とか逃げられなくなる可能性も高い。
 (困った困った)

どうやっても高速道路に届かない。
それならと華那子は思い切った手段を取った。

「テリトリー」

空中にゲートを開き、その中に飛び込んだ。


ゴロゴロゴロと転がりながら中に降り立った。

 『『「おおおおおおおおおおおおおおおお」』』
 「華那子―無事やったかー」

テリトリーの中では、華那子の姿を見て大騒ぎになる。
だが、そんな悠長な事はしていられない。

「衣摩ー大鎌出してうちを乗せて出ろー」
  「ん?どしたん~」
「説明は後じゃー!言われたらサッサとせんかい!ダボッ!」
「麗華は浮遊のスキルを完全にマスターしとけー」

  「"亮"」

衣摩が前で後ろに華那子がまたがり、ゲートを出ていく。

  「ヒェッ!」
衣摩はゲートの外に出て驚く。
そこは地面から20m以上の高さの空中だった。

「そのまま高速道路に乗ってしまえ」

ゆっくりと方向転換して高速道路の路面にそっと降りる。

「降りんでもえぇ~」
「そのまま大阪方面に飛んでいけ~」
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