厄災の街 神戸

第三章 健斗と美咲と新たな出会い

論争

飛翔クランの全員が戻ってきたので、健斗は思い出したようにルームの中の人らを外に呼び出した。

ルームの中から咲姫のパーティーメンバーが先に降りて来て、その後に千里と咲宙はなびと子熊二人と黒いオオカミが降りて来る。
それを見て、みんな驚くかと思ったら案外平然と見ていた事に健斗達は怪訝な顔をした。

ルームの中を一通り片付けてから最後にルナが降りてくる。

『ただいま帰ったでぇ～』
『ちー子は真人に迷惑かけてへんかったかぁ？』
『おわぉ～』

娘の眷属であるツー子を見て、母ルナはかなり驚いた。

「千枝お母さん、見てみて～この子はうちの眷属のツーコって言うねん」

『ほぉ～ボアオークかぁ・・・』
　「ハハヨ　ヨロシク」

『おっ？喋るんやな？』
ツー子が喋る事にあまり驚かない母ルナにちょっと首を傾げた千枝だった。

『あぁこっちの子熊さん達も進化して喋るようになったからな』

「「「「「　進化ぁ～？」」」」」

「咲空うちのシュヴァは進化したけど、喋るようにはならなんだ」
　「クォ～ン」
申し訳なさそうにシュヴァルツが答えた。
咲空がシュヴァルツの頭をナデナデすると尻尾を振って喜ぶ。



「サバイバーお肉焼けたで～」
「美咲まぁ腹減っとるやろうから、先に食べよか」

先ほどから良い匂いで、何人かのお腹がグゥグゥ鳴っていた。

『おおおおお！！！美味い！！！』
　『ほんま美味しいよぉ～』

健斗もストライプボアのお肉の美味しさに驚いている。

「統括者本当に美味しい肉ですな～」
「健斗これはストライプボアって言うイノシシの魔獣です」
「剣術女それをここのクランで捌さばいて食べれるようにしたんですか？」

「大工そうですよ、今、うちのクランで解体スキル持ちが6人になっとるよ」
「サバイバー調理のスキル持ちも大幅に増えて、あとは定期的に食用魔獣を狩れたら良いかなと思ってます」
「中華コックあとは米と野菜ですな～」
「サバイバーそれも、ビルやマンションの屋上に大規模な菜園を作ろうと思ってます」

「健斗あっそうそう、お母ちゃんが異空間収納覚えたから大量に在庫出来るようになったで」

「「「「「　おおおおおおおおおおおおおおおっ！」」」」」
「サバイバーそれはとても有意義な遠征でしたね～」

「健斗それと刀も大量に仕入れて来たよ」

「健斗お～い美咲～　ちょっと手伝って～」
「咲姫私が手伝いますよ？」
「健斗うん、ちょっとあいつと挨拶しといてくれへんかな」
「健斗俺の相棒やから、初眷属の咲姫とも仲良くして欲しいしな」
「健斗それと、改築したルームを見せたいしｗ」

ルームを開き、咲姫を先に入れておく。

「美咲ほ～い、なんしたらえぇん？」
「健斗刀を出して、欲しい人に配ろうと思ってな」

2人でゲートをくぐっていった。




少し向こうでは、神成しんじょう親子を中心に、千里や星城姉妹と軽業師や眷属を持った人達が集まって進化の話に華が咲いていた。

『でもやっぱり眷属はリトルや麗里みたいに服は着た方がえぇよなぁ』
「軽業師んじゃ～後でみんなで服を見に行こうか」
「千里だよなぁ、下着や着替えも欲しいし、生理用品も無いし、拠点決まったら色々と仕入れに行くか～」
「咲空お母ちゃんの倉庫に店ごと放り込んだら早いなｗ」
「全員はははははは」

「阿斗ハヤテにリボン付けたいなぁ」
　「ヌシサマヨ　ソレハ　コトワル」
「全員あはははははは」

知らない人が居ると、咲空さくらの姉、咲宙はなびはとても無口で静かだ。




健斗がルームに入ってしまったが、三ノ宮クランとサバイバー達、こちらに合流してきた久夛良木くたらぎ阿斗あとや母ルナ、千里とかと飛翔クランのまとめ役とで今後の事に着いて激論が始まった。
だが、皆顔は楽しそうで生き生きとしている。

お腹も膨れた所で、咲空さくらは姉と千枝や真人と一緒に、咲姫さきのパーティーメンバに風纏と眷属契約、その他の簡単な魔法を指導し始めた。
眷属契約は三ノ宮クランの人達も覚えたいとか言ってたので、贄にえが見つかれば呼ぶつもりだ。



コンビニ跡の屋上では酒盛りをする人が増えて宴会状態だった。



皆がそれぞれの時間を過ごしている。





ルームの中に入った美咲は、その大変貌に驚きの色を隠せない。
少しウロウロとした後に叫んだ言葉。

「美咲お、お、お、お、」
「お風呂ぉぉぉぉぉぉ～～～」
「ト、トイレ～」
「ベッドも一杯あるわ～」
「ドラム式の洗濯機まで2台もあるし・・・」

「・・・」

「なんか、いつの間にかレベルが28にもなっとるし・・・」
「な～んかムカつくのぉ～」

健斗のステータスを覗き見して、その上昇数値に美咲は嫉妬した。

「健斗ボス級を2体倒したし、美味しいレベリング集団が居たし、ポーアイの浜側の病院地帯はゴブリンが大湧きしてたしな」
「健斗まぁ最初のボスで死に掛けたけどｗ」
「美咲そのまま死んどったら笑えたのに」

「咲姫美咲さん、初めまして、健斗さんの眷属になった陽風はるかぜ咲姫さきと申します」
「美咲眷属ぅぅぅ？」

「健斗色々あってな、咲姫に眷属になってもろたんよ」
「美咲色々ってなんやねん」

「咲姫ちょっと"運"って話なんで、説明が難しいんですけど」
「健斗ん～多分説明しても他人には理解出来んやろうと思う」
「美咲ほぉ～ほぉ～二人だけの秘密ってか？」

「健斗そんなんとちゃうけど、ほんまに説明が難しいんや」
「咲姫言い方は変かも知れないんですけど、天啓とでも言うか・・・」

「美咲ふ～ん、なんかよぅわからんわ」
「まぁなんや知らんけど、仲間が増えったって事やな？」
「健斗うんまぁそんなとこかな？」

「美咲うちは二石ふたついし美咲、　で？これから行動共にするんか？」
「健斗いや、咲姫のパーティーにはちょっとレベルを上げてもらって伝道師みたいなことをやって貰おうと思ってるんよ」
「健斗それかどっかでクランみたいなもんを作って貰うか」

「美咲んで、健ちゃんはこれからどうするつもりなん？」
「健斗取り敢えず垂水に行ってから考えようかなと思ってる」

2人の会話に咲姫が割って入って来る。

「咲姫垂水へは何をしに行くんですか？」
「健斗会社の営業部がJR垂水駅の北にあるんよ」
「何がどうなってるかは全く分からないけど、一応社員だからね」

「美咲会社自体、あるかどうかも分からんけどなぁｗ」
「健斗それはそうやけど、大阪と連絡が取れんから行かなしゃぁないかな」

「咲姫どれくらいで帰られるのですか？」
「健斗まぁ2～3日ってとこかな？」
「咲姫その後はどうしたら良いですか？」
「健斗その後か～・・・」

「健斗予定では、ポーアイとか六アイとかの人工島を正常に出来たらなぁて思ってる」

「美咲ん～？それやったら咲姫さんにクランとか作らせてクランごと行動するの？」
「健斗それは難しいかなぁ～」

「美咲おいっ、健ちゃん、また適当に始めたな？」
「イチビるんは勝手やけど、無責任に他人を巻き込んだらあかんで？」

そのやり取りを聞いて咲姫は疑問に思っていた事を美咲に聞いた。

「咲姫健斗さんってやっぱりイチビリなんですか？」
「なんか、ルナさんや咲空さん達が声を揃えてイチビリやって言ってるから」

「美咲あはははははは～　みんな良く分かっとる～(笑)」

「健斗そんなつもりは無いんやけど・・・」

「美咲おせっかいでイチビリで考えなしで行動するから、結構トラブるんよなぁ」
「健斗そ、そんな事は無いと思うけど・・・」
「美咲いままでどんだけうちがケツ拭いて来たか(笑)」
「咲姫健斗さん・・・」

咲姫はとても残念な人を見る様な目つきで、深く深くため息を吐き健斗を見つめた。