データな彼女は、いじめられっ子。

小住人(こすみひと)

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噂話を信じたという結果

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「…………話ってなに?」

 明らかにテンションが低い。もしかしたらこれから起こることを理解しているのだろうか。緊張が走る。何とも言えない雰囲気だ。

「……あの、俺、ずっと前から…………」

 その時だった。

 ガサガサッ。

 後ろの木陰から確かに何かがいるような音。
 しかし、それどころじゃない。今は集中だ。そう思った俺は千冬のほうを見る。
 すると、額に汗が滲み出ている。体調でも悪いのだろうか。

「千冬……?」

「春樹が……」

「俺が?」

 震える声で俺の名前を呼ぶ。千冬は後方に目を向けているようだ。何か恐ろしいものでも見たかのように。
 俺も後ろを振り返る。
 すると、そこにはカメラを向けてこちらを覗く三人の男子生徒がいた。誰かは分からないし、何のためにこんなことをしているのかも分からないが、それでも何か良くないことが起こる予感はしている。

「春樹が、こんなことするとなんて思ってなかった……!」

 その瞬間千冬は走り出した。
 何がどうなったんだ。
 追いかけるべきか、いや、冷静になれ。千冬の何かしらの誤解はいつでも解ける。それより、あの男たちは何者なのか、それの方が重要だ。

「おい! お前たちは誰だ」

 その声に男たちは立ち上がる。一人だと思ったが、三人もいた。その顔はあまり知らないが、見覚えはある。きっと、同級生たちだけど、他クラスだろう。

「いや、我らは、ただ、千冬ちゃんの告白シーンをこのカメラに抑えようと……」

「はぁ! 告白シーン?」

「俺らは千冬ちゃんのファンクラブの会員なんだ、別に疚しい気持ちはない」

 ファンクラブだとしたら、疚しい気持ちはあるだろうと思いつつ、同時に、それだけのことか思ってしまった。
 千冬のあの焦り方は尋常じゃない。何か、これから恐ろしいことが起こるような切羽詰まった表情だった。
 それに春樹が、こんなことするなんて思っていなかった。というセリフがどうも、引っかかる。
 まだまだ、謎はある。こいつらは俺の告白を何故知っていたのだろか。亮介が広めたのだろうか。それはないだろう、あいつはそういうとこで口は堅い。
 じゃ、俺らの話を盗み聞きしていた誰かがいたのだろうか。
 取り敢えず聞いてみるか。

「カメラの件は置いておくとして、告白のこと誰から聞いたんだ?」

「……天上さんだよ、ほら、お前のクラスのイケイケな女子の」

天上スミレ。やはりこいつが関わっていたか。
千冬を陰からいじめている奴らのリーダー的存在で、陽キャ臭が遠くの方でもぷんぷん匂う、俺が苦手なタイプの女子だ。てか、千冬をいじめている時点でくそ女だ。そいつが関わっているとなると裏で何かがあったことに間違いない。
ん。
そういや、俺は体育館裏での告白を選んだのって、確か…………。

なるほどな。
全てが繋がった。

「取り敢えず、あいつらを探し出すか……」

 俺は天上スミレ並びに雫を探し出すことにした。


「あなた達でしょう!」
「はぁ? 何のことかわからないけど? そうやって根拠もないのに、決め付けるの、うざすぎ」
「…………春樹はあんなことしない」
「あー、春樹ね、春樹くんはね、千冬を犯したいって叫びながら出て行ったよ、教室を」
「そんな人じゃないよ春樹は!」
「それはどうかなー?」
「もう許さない!!」


 どこにいるのだろうか。察しが付く場所は周った。
 てか、もう、帰っているんじゃないか、そもそも。
 うーん。あと探してない場所か、屋上とかか。

「おう、春樹何してんだ?」

 そこにはバスケットボールを持ったは亮介が汗だくで立っていた。

「亮介こそ、何してるんだ? バスケ部じゃないだろう?」

「あぁ、違う違う。これは助っ人だよ、うちのバスケ部女子にも勝てない弱小らしくてさ、女子との模擬戦に出てくれって頼まれたんで、春樹の告白が終わるまで試合して時間潰そうと……って俺の話はどうでも良いんだ、で、結果はどうだった?」

「亮介、実はな…………」

 さっきまでのことを簡潔にでも丁寧に要点だけ抑えて説明した。

「……それは、裏があるな、それもスミレが犯人だろう、ほぼ確で」

「だよな、それで、スミレがまだ、校舎に残ってるなら、話を聞こうかなって」

「あー、見てないんだが、どの辺り探したんだ?」

 おおよそ想像できるところは探したことを亮介に伝える。

「お、それなら、あそこはまだだな」

「それってどこ……?」

「それはな…………だよ」

「……まじか」

 確かにそこは探していないが、倫理的に大丈夫だろうか。いや、でも、それどころじゃないんだ。今は一刻も早く、あいつらを探さなくては。


「うぜ!」
「許さない……」
「千冬てめぇー! 離せよ!」
「スミレ、これ!」
「ナイス! くらえ!!」
 ドス。その鈍い音は廊下を響いた。
「……これは流石にやばくない?」
「…………え、私は知らないから、帰る!」
「ちょ、雫待てよ! 私も帰る!」


 後はここか。
 亮介が言っていた、まだ、探してない場所。
 それは女性用更衣室。そりゃそうだ。探すわけない。でも、相手は女だ、ここに居ても全くな可笑しなことではない。

「…………よし、入るか」
 
 扉に手を掛けたその時、誰かが飛び出してきた。
 天上スミレだ。目が合った。が、何を焦っているのか、足早に走り去っていった。後ろに雫も含め二人の女がいる。みな、血の気が引いた真白な顔をしていた。

「……何なんだよ、一体」

 女子更衣室はドアが全開になっている。 
 嫌な予感がした。更衣室内で何かがあった。俺は恐る恐る、中を覗く。
 
「千冬…………!」

 そこには頭から血を流した、千冬が倒れていた。
 俺はこの時、どうすればよかったのだろうか。
 もう、パニックで、冷静さなんて微塵もなかった。
 この後は本当に散々だった。俺が犯人扱いを受け、停学処分となり、千冬は不登校になった。俺の心は病み、何も信じられなくなっていった。

 引き籠って、一週間、まともな飯を食べていない。

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