夢の音を奏でます！〜第1話 始まりの唄〜

プロローグ

大国トワと禁海法

　ここではない、はるか遠い軸の異なる世界に、1つの大きな国がありました。
　国の名前は、“トワ”。
　この国には、5000を越える様々な州があります。

　遠い昔、幾千もの小さな国が争い、やがて1つの広大で平和な国となったのです。


　トワには、たった1人のお姫様がいました。
　優しく、明るく、賢く、そして美しいお姫様は、この国で最も強いと言われている剣士と結婚しました。

　剣士だった王はいつでも、お姫様のことを想い
　また、お姫様も、いつだって王のことを想っていました。

　やがて、月日は過ぎ、可愛らしい王子が誕生しました。

　お姫様は、幸せな、幸せな日々を、過ごしていました。



　しかし、そんな幸せは、ある日突然なくなってしまいました。
　ある日、トワの王は、産まれたばかりの王子と共に、海へ出掛けました。

　ですが、太陽が1番高くに昇っても
　日が沈み、月が顔を出しても、2人は帰ってきません。
　家来達が、どんなに捜しても、2人は姿を現しませんでした。


　そして、太陽が再び昇る頃、ようやく2人が見つかりました。
　しかし、お姫様が駆けつけた頃には、もう、何もかも遅かったのです。

　2人は冷たくなって、浜辺に打ち上げられていました。



　お姫様は、悲しみました。
　愛する夫と、まだ産まれたばかりの息子は
　“海”と呼ばれる場所に住む悪魔に、連れ去られ、命を失ってしまいました。

　お姫様は、海を、呪い、恨みました。

　新しく王になった男がいました。男は、変わり果てたお姫様を哀れに思い、

“禁海法きんかいほう”

という法律を、つくりました。
　海を封鎖し、1歩でも砂浜に、足を踏み入れた者には、罰を与えるという法律です。


　この法律によって、トワの国民は

『国の宝である前王と王子を奪った海は、汚らわしく、恐ろしいものである』

と、海を憎み、排除すべきものだと、考えるようになりました。


　こうして、新たな王のおかげで、海に復讐を果たせたトワの姫は、幸せになりましたとさ。