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君を絶対…
ギターなんていらない
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「航ちゃんは…見た目…は……普通、の……ちょっと…線が、細い…男の子…なのに…っ、すごく…強くて…怖くて………
私、や…おばあ様に……ちょっとでも…害が、あると…思ったら………簡単に…その人を……傷つけて…いた……」
ドクン、ドクン…と心臓が大きな音をたてる。手に汗が滲んで、ギュッと握りしめた。
「私…昔、男の…人達に……絡まれたことが…あって………
その時の…付き人…航ちゃん、だけだった…から……男の人達………暴力、振ろうとしてた……でも、航ちゃん…傷、1つ…負わなくて……
それ…どころか……っ、男の人…意識、なかった…のに…ずっと、ずっと…殴り続けて………」
ゆのかの小さな体は、震えた。あいるは、ゆのかをギュッと抱きしめた。
2人の様子を窺う。真剣な顔で、ゆのかの方を見ていた。
(言えるのは……ここまで。
これ以上、言ったら…きっと、心配されるし……万が一、“あの事”を言ってしまったら…幻滅される。)
ゆのかは、俯いた。
「航…ちゃんは……それぐらい、怖くて…容赦ない…人…なの……
でも…今、彼と、おばあ様は…家に…いなくて………その、隙…に…家出っ、して………いない今がっ…逃げる、チャンスで……
あの家に…居続ける、くらいなら…ギターも、何もかも…捨ててもいいって…思ったっ…だから、取りに帰る…必要、なんて……ないのっ……」
大切な人達との約束も、形見も…自分の命も
全てを捨ててでも………ゆのかは、家にいたくはなかった。
「私の…家出………聞きつけて、航ちゃん、もう…家に、帰ってるかも…しれない…………
だったら……ギター…なんて…いらない…」
部屋の中が、シン……と静まり返る。
(この沈黙が…きっと、2人の答え……
よかった…分かってくれたんだ…………)
ホッ…と小さな溜め息が出た。
「じゃあ、2人じゃなくて、俺が行くのはどう?」
ドアの方から、凛とした声が聞こえてきた。
(えっ……?)
3人は声の主の方に、すぐさま視線を向けた。
ドアに寄りかかっていたのは、うみと名乗ったあの男だった。
手にはなぜか、3つのおにぎりが乗った皿を持っている。その優れた容姿と似つかわしくなく、ゆのかは思わず男を凝視してしまった。
(私を、助けてくれた……“うみ”って名前の人……
なんで…おにぎり…?……って、いうか…今この人…とんでもないこと、言ってなかった…?!)
男は、テーブルの上に皿を置いた。そしてゆのかの傍に来て、その場でひざまずく。普通の女子なら“王子様みたい”とときめくような姿勢だが、ゆのかは固まったままだった。
「2人にギターを取りに行かせるのが嫌なんでしょ?じゃ、俺ならOKじゃん。」
「え…?
や……え…と……」
ただでさえ、口下手なゆのかが……初対面の、しかも強そうなオーラを放つ男相手に、“そういう意味じゃない”と否定することはできなかった。
「あー、たしかに!それ、アリだな!!
今、星とも話したけど……実はさ、あたし達のツラ、向こうにバレてる可能性あんだよ。
だからしくじるとか、そういう訳じゃねぇけど……禁海法もやってることだし、細心の注意は払っておきたいのが、ホンネでさぁ。
でも、うみが行ってくれんなら、マジでラッキー!!」
あいるは、よっしゃ!とガッツポーズをした。
(ちょっと待って…?あいるさんと星さん…一体、いつ話をしていたの…??
ていうか……今の話聞いても、ギターを取りに行くこと、諦めてなかったの?!!)
ゆのかは、どう突っ込んでいいのか分からず、“?”が頭の中に増えていく一方だった。
ゆのかがあいると星を説得しようと、頑張って話をしている時……なんと、あいると星は、ゆのかの目を盗んで、例のハンドサインを送りあい、ギター奪還の話をしていたのだった。
「俺らとしては有難いが、いいのか?」
「大丈夫だよ。」
それを知らないゆのかが混乱している隙に、話がどんどん進んでいく。部屋の空気はいつの間にか、うみがギターを取りに行くのが、当たり前のようになっていた。
「ね…ぇ……」
「ん?」
ようやく発せたゆのかの声に、うみが反応する。あいると星に話しかけたつもりだったゆのかは、少しだけ焦った。
(“ん?”じゃないよ…!
私…あれだけ……航ちゃんは怖い人って…言ってるのに!!)
なんて、出会ったばかりの男に言うわけにはいかず…遠回しに“行かないで”と言うことを伝えてみようと、ゆのかはあれこれ考えた。
「あ…の……っ…航ちゃ……私の、付き人……その…つ、強くて………冷…血…」
「ごめん。さっきこっそり君の話聞いちゃった。
だから、全部知ってるよ。怖い人なんでしょ?」
「?!!」
どうやらうみは、部屋の外で聞き耳を立てていたらしい。
だったら話は早いと、ゆのかはとっておきの脅し文句を思いつく。
「怪我、する…かも…し」
「それも聞いたって。聞いた上で、俺でいいじゃんって言ってるよ?」
うみは、のらりくらりとゆのかの反論をかわし遮った。
(見ず知らずの私が原因で…怪我していいわけないでしょ…?!)
後がなくなったゆのかは、ダメ元で助けを求めるようにあいると星を見た。
「安心しろって!うみ、強ぇからさ!」
「それなりに仕込んであるし、機転も利く。武器の扱いも慣れているから、問題はないはずだ。」
予想通り、ゆのかが求めていた返事と全然違うものが返ってきた。
(この人じゃ不安って、意味じゃないっ……行く気満々だから、止めて欲しいの…!
この人もこの人で……初対面の私なんかの宝物なんて、どうでもいいはずなのに……どうして危険を冒してまで、取り返そうとするの…?)
困ったゆのかは、口をキュッと結んだ。
「ゆのかが今まで、ツラい思いをしてきて…嫌な選択をしたことも、よく分かってるつもりだ。
だからこそ……あたし達は、宝物まで諦めて欲しくないんだよ。」
あいるに言われ、ゆのかは俯く。
大好きな家族の、唯一の形見。ギターを弾けば、遠く離れた名前も知らない場所にいる妹と、繋がっている気がした。
(私が逃げないように、おばあ様がギターを奪った時…体の一部が失われたくらい、悲しかったっけ……)
諦めたくはなかった。むしろ、喉から手が出るほど欲していた宝物だ。
「俺達なら、ギターを取り返すことくらい、造作もない。
ギターがどこにあるか、教えてくれないか?」
星の甘く、優しい言葉は…ゆのかの心を揺らした。
それでも、ギターに囚われ、家に縛られ、人を傷つけるくらいなら……ギターも命も捨てる覚悟で、ゆのかは家出をした。
(やっぱり……っ、私なんかのために…出会ったばっかりのこの人に、迷惑かけちゃ…駄目だよ……
ちゃんと…“行かないでください”って……お断りしよう……ちょっと、怖いけど…)
息を吐ききって、気持ちを整える。
「まーまー。じゃあ、こうしよっか。」
だが、ゆのかの思いは、うみの声に先回りされてしまった。
「俺、最近音楽にハマっててさ。ギター、超かっこいいじゃん?
だからギター、無事取ってきたら、俺にちょうだいよ。」
「え…?」
「君も、心残りって言う割には、いらなそうだし。俺が、君ん家に命懸けでギター取りに行くなら…それはもう、俺の物でよくない?」
ゆのかは、まさかうみから“ギターをちょうだい”なんて言われるとは、思ってもいなかった。
(いらない…なんて……そんなこと…なくて……
むしろ、欲しいんだけど………ずっとずっと、欲しかったんだけど………何の関係もない私のために、この人が危険を冒して、取りに行くのは……違う…よね。
それに…あの家に、置いておくぐらいなら…この人に引き取ってもらった方が…ギターも、幸せ……だろうし……)
考え込んでいると突然、ゆのかの左隣に、うみが座った。
「ひゃっ…」
完全に肩がくっつきそうなくらいの、至近距離。ベッドが沈み込む。バランスをとりながら、見上げると…うみはニヤリと笑っていた。
(近…い………え…………え…?)
それまでうみになかった、突然の馴れ馴れしい雰囲気に、ゆのかは飲まれてしまう。
「ちなみに俺、激しいロックが好きでさ。
楽器をぶっ壊すパフォーマンスがかっこよすぎて、それにすげぇハマってるの。」
爽やかに、強烈なことを言ううみに、ゆのかは目を丸くした。
「でもほら、楽器って高いじゃん?いちいち買って壊すのは、もったいないよね。
君がギターいらないって言うなら、ぶっ壊す練習用に欲しいんだけど、駄目かな。
もちろん、お金が必要なら、引き取り代でいくらかあげるよ。10万エイでどう?」
確かに、お金はいずれ必要になってくる。10万エイあれば、1ヶ月は暮らしていけるだろう。そもそも、ギターがうみの物になれば、ゆのかがとやかく言うことはできない。
うみの言っていることは、正しい。
だが、ゆのかは…どうしても、気持ちの整理がつかなかった。
(楽器を壊すパフォーマンスがあるのは…知ってる…けど………
知ってる……けど………お父さんの大切なギターが…壊される………?)
『お父さんは、どうしてギタリストになったの?』
『ギターが好きだから。ギターで、いろんな人を笑顔にしたかったんだよ。』
『へぇー…かっこいいね。』
『そんなこともねぇけどな。
でもギターがいたから…しんどい時も頑張れたし、お母さんとも仲良くなれたんだよ。』
『お父さんの…たからもの?』
『ああ。そうだな。
一番の友達で…相棒だ。』
愛おしそうにギターを触る父の顔が、ゆのかの頭の中で、ぐるぐる回る。
(私…っ、お父さんの…ギター……すごく…好きで………
壊されたら…もう二度と……お父さんのギター…戻ってこなくて………)
ギターを、捨てる気でいたはずなのに……ズキン、と胸が痛む。
(それに……もし、天国のお父さんが…“相棒”を壊されたことを知ったら……絶対、悲しむに決まってる…
ののかに再会した時……合わせる顔が…ない………)
何も言わないゆのかに、うみは、嬉しそうな顔をした。
私、や…おばあ様に……ちょっとでも…害が、あると…思ったら………簡単に…その人を……傷つけて…いた……」
ドクン、ドクン…と心臓が大きな音をたてる。手に汗が滲んで、ギュッと握りしめた。
「私…昔、男の…人達に……絡まれたことが…あって………
その時の…付き人…航ちゃん、だけだった…から……男の人達………暴力、振ろうとしてた……でも、航ちゃん…傷、1つ…負わなくて……
それ…どころか……っ、男の人…意識、なかった…のに…ずっと、ずっと…殴り続けて………」
ゆのかの小さな体は、震えた。あいるは、ゆのかをギュッと抱きしめた。
2人の様子を窺う。真剣な顔で、ゆのかの方を見ていた。
(言えるのは……ここまで。
これ以上、言ったら…きっと、心配されるし……万が一、“あの事”を言ってしまったら…幻滅される。)
ゆのかは、俯いた。
「航…ちゃんは……それぐらい、怖くて…容赦ない…人…なの……
でも…今、彼と、おばあ様は…家に…いなくて………その、隙…に…家出っ、して………いない今がっ…逃げる、チャンスで……
あの家に…居続ける、くらいなら…ギターも、何もかも…捨ててもいいって…思ったっ…だから、取りに帰る…必要、なんて……ないのっ……」
大切な人達との約束も、形見も…自分の命も
全てを捨ててでも………ゆのかは、家にいたくはなかった。
「私の…家出………聞きつけて、航ちゃん、もう…家に、帰ってるかも…しれない…………
だったら……ギター…なんて…いらない…」
部屋の中が、シン……と静まり返る。
(この沈黙が…きっと、2人の答え……
よかった…分かってくれたんだ…………)
ホッ…と小さな溜め息が出た。
「じゃあ、2人じゃなくて、俺が行くのはどう?」
ドアの方から、凛とした声が聞こえてきた。
(えっ……?)
3人は声の主の方に、すぐさま視線を向けた。
ドアに寄りかかっていたのは、うみと名乗ったあの男だった。
手にはなぜか、3つのおにぎりが乗った皿を持っている。その優れた容姿と似つかわしくなく、ゆのかは思わず男を凝視してしまった。
(私を、助けてくれた……“うみ”って名前の人……
なんで…おにぎり…?……って、いうか…今この人…とんでもないこと、言ってなかった…?!)
男は、テーブルの上に皿を置いた。そしてゆのかの傍に来て、その場でひざまずく。普通の女子なら“王子様みたい”とときめくような姿勢だが、ゆのかは固まったままだった。
「2人にギターを取りに行かせるのが嫌なんでしょ?じゃ、俺ならOKじゃん。」
「え…?
や……え…と……」
ただでさえ、口下手なゆのかが……初対面の、しかも強そうなオーラを放つ男相手に、“そういう意味じゃない”と否定することはできなかった。
「あー、たしかに!それ、アリだな!!
今、星とも話したけど……実はさ、あたし達のツラ、向こうにバレてる可能性あんだよ。
だからしくじるとか、そういう訳じゃねぇけど……禁海法もやってることだし、細心の注意は払っておきたいのが、ホンネでさぁ。
でも、うみが行ってくれんなら、マジでラッキー!!」
あいるは、よっしゃ!とガッツポーズをした。
(ちょっと待って…?あいるさんと星さん…一体、いつ話をしていたの…??
ていうか……今の話聞いても、ギターを取りに行くこと、諦めてなかったの?!!)
ゆのかは、どう突っ込んでいいのか分からず、“?”が頭の中に増えていく一方だった。
ゆのかがあいると星を説得しようと、頑張って話をしている時……なんと、あいると星は、ゆのかの目を盗んで、例のハンドサインを送りあい、ギター奪還の話をしていたのだった。
「俺らとしては有難いが、いいのか?」
「大丈夫だよ。」
それを知らないゆのかが混乱している隙に、話がどんどん進んでいく。部屋の空気はいつの間にか、うみがギターを取りに行くのが、当たり前のようになっていた。
「ね…ぇ……」
「ん?」
ようやく発せたゆのかの声に、うみが反応する。あいると星に話しかけたつもりだったゆのかは、少しだけ焦った。
(“ん?”じゃないよ…!
私…あれだけ……航ちゃんは怖い人って…言ってるのに!!)
なんて、出会ったばかりの男に言うわけにはいかず…遠回しに“行かないで”と言うことを伝えてみようと、ゆのかはあれこれ考えた。
「あ…の……っ…航ちゃ……私の、付き人……その…つ、強くて………冷…血…」
「ごめん。さっきこっそり君の話聞いちゃった。
だから、全部知ってるよ。怖い人なんでしょ?」
「?!!」
どうやらうみは、部屋の外で聞き耳を立てていたらしい。
だったら話は早いと、ゆのかはとっておきの脅し文句を思いつく。
「怪我、する…かも…し」
「それも聞いたって。聞いた上で、俺でいいじゃんって言ってるよ?」
うみは、のらりくらりとゆのかの反論をかわし遮った。
(見ず知らずの私が原因で…怪我していいわけないでしょ…?!)
後がなくなったゆのかは、ダメ元で助けを求めるようにあいると星を見た。
「安心しろって!うみ、強ぇからさ!」
「それなりに仕込んであるし、機転も利く。武器の扱いも慣れているから、問題はないはずだ。」
予想通り、ゆのかが求めていた返事と全然違うものが返ってきた。
(この人じゃ不安って、意味じゃないっ……行く気満々だから、止めて欲しいの…!
この人もこの人で……初対面の私なんかの宝物なんて、どうでもいいはずなのに……どうして危険を冒してまで、取り返そうとするの…?)
困ったゆのかは、口をキュッと結んだ。
「ゆのかが今まで、ツラい思いをしてきて…嫌な選択をしたことも、よく分かってるつもりだ。
だからこそ……あたし達は、宝物まで諦めて欲しくないんだよ。」
あいるに言われ、ゆのかは俯く。
大好きな家族の、唯一の形見。ギターを弾けば、遠く離れた名前も知らない場所にいる妹と、繋がっている気がした。
(私が逃げないように、おばあ様がギターを奪った時…体の一部が失われたくらい、悲しかったっけ……)
諦めたくはなかった。むしろ、喉から手が出るほど欲していた宝物だ。
「俺達なら、ギターを取り返すことくらい、造作もない。
ギターがどこにあるか、教えてくれないか?」
星の甘く、優しい言葉は…ゆのかの心を揺らした。
それでも、ギターに囚われ、家に縛られ、人を傷つけるくらいなら……ギターも命も捨てる覚悟で、ゆのかは家出をした。
(やっぱり……っ、私なんかのために…出会ったばっかりのこの人に、迷惑かけちゃ…駄目だよ……
ちゃんと…“行かないでください”って……お断りしよう……ちょっと、怖いけど…)
息を吐ききって、気持ちを整える。
「まーまー。じゃあ、こうしよっか。」
だが、ゆのかの思いは、うみの声に先回りされてしまった。
「俺、最近音楽にハマっててさ。ギター、超かっこいいじゃん?
だからギター、無事取ってきたら、俺にちょうだいよ。」
「え…?」
「君も、心残りって言う割には、いらなそうだし。俺が、君ん家に命懸けでギター取りに行くなら…それはもう、俺の物でよくない?」
ゆのかは、まさかうみから“ギターをちょうだい”なんて言われるとは、思ってもいなかった。
(いらない…なんて……そんなこと…なくて……
むしろ、欲しいんだけど………ずっとずっと、欲しかったんだけど………何の関係もない私のために、この人が危険を冒して、取りに行くのは……違う…よね。
それに…あの家に、置いておくぐらいなら…この人に引き取ってもらった方が…ギターも、幸せ……だろうし……)
考え込んでいると突然、ゆのかの左隣に、うみが座った。
「ひゃっ…」
完全に肩がくっつきそうなくらいの、至近距離。ベッドが沈み込む。バランスをとりながら、見上げると…うみはニヤリと笑っていた。
(近…い………え…………え…?)
それまでうみになかった、突然の馴れ馴れしい雰囲気に、ゆのかは飲まれてしまう。
「ちなみに俺、激しいロックが好きでさ。
楽器をぶっ壊すパフォーマンスがかっこよすぎて、それにすげぇハマってるの。」
爽やかに、強烈なことを言ううみに、ゆのかは目を丸くした。
「でもほら、楽器って高いじゃん?いちいち買って壊すのは、もったいないよね。
君がギターいらないって言うなら、ぶっ壊す練習用に欲しいんだけど、駄目かな。
もちろん、お金が必要なら、引き取り代でいくらかあげるよ。10万エイでどう?」
確かに、お金はいずれ必要になってくる。10万エイあれば、1ヶ月は暮らしていけるだろう。そもそも、ギターがうみの物になれば、ゆのかがとやかく言うことはできない。
うみの言っていることは、正しい。
だが、ゆのかは…どうしても、気持ちの整理がつかなかった。
(楽器を壊すパフォーマンスがあるのは…知ってる…けど………
知ってる……けど………お父さんの大切なギターが…壊される………?)
『お父さんは、どうしてギタリストになったの?』
『ギターが好きだから。ギターで、いろんな人を笑顔にしたかったんだよ。』
『へぇー…かっこいいね。』
『そんなこともねぇけどな。
でもギターがいたから…しんどい時も頑張れたし、お母さんとも仲良くなれたんだよ。』
『お父さんの…たからもの?』
『ああ。そうだな。
一番の友達で…相棒だ。』
愛おしそうにギターを触る父の顔が、ゆのかの頭の中で、ぐるぐる回る。
(私…っ、お父さんの…ギター……すごく…好きで………
壊されたら…もう二度と……お父さんのギター…戻ってこなくて………)
ギターを、捨てる気でいたはずなのに……ズキン、と胸が痛む。
(それに……もし、天国のお父さんが…“相棒”を壊されたことを知ったら……絶対、悲しむに決まってる…
ののかに再会した時……合わせる顔が…ない………)
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