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1章:駆け出しテイマーの歩み方
19. 転送屋の罠
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戦闘の疲れが抜けていき、よっこいしょと立ち上がった時ふと私はギンジさんに疑問を投げかけた。
「そういえば、この猿って何て名前なんですか?」
「ん? いや、知らねぇな。前聞いた気がするが忘れちまった」
「……え?」
「俺は鑑定スキル持ってねぇんだ。だから相手の名前とかは分からねぇ。まぁ、強さとか特性は挑めば分かるから問題ねぇんだけどな」
駄目だこの戦闘狂。ロコさんに頭をスパンっと叩いてもらわないと。
そんな話をしながら私は名も知らぬ猿と戦い続けた。
戦闘を繰り返す度に少しずつスキル値が上がってきているようで、本当に少しずつだが戦闘に余裕が出てくる。苦しい戦いの連続だけど、成長効率という点においてはギンジさんのお勧めなだけはある。
「もう少し進むと壁の色が濃くなってくるポイントに行き着く。その先は複数の猿が同時に襲ってくるから、そこまで行ったら折り返しだ」
「いずれその先にも行くんですか?」
「当然だ。ここはソロで鍛えるには丁度いい場所だからな。自分のスキル値を考慮しながらソロでどんどん先へ進んでいけ。まぁ、少なくとも、機動力スキルと回避スキルが30もあればこの先には行けるだろ」
そんなこんなでギンジさんの言うポイントまで行き着いた私達は、そこから折り返して来た道を戻る。
猿のリポップ時間は早いようで、戻る際も猿との戦闘が連続した。そしてやっとの思いで出口である。
「やっと出口だぁ~。もう暫く猿は見たくないです」
「何言ってんだ。時間があれば極力毎日ここに通え。テイマーとしてやっていくにしても、自分自身がある程度強くならないと遠くまで冒険なんて無理だぞ」
「う~ん、そうですね。レキとの楽しい冒険のためにも、もっと強くならないと」
「今着けてる手枷と足枷があれば基礎スキルは比較的速く成長するから、後は只管洞窟の奥を目指して戦っていけばいい」
「奥、猿の集団に襲われるとか怖いですね……ちなみにこの手枷と足枷っていくらぐらいする物なんですか? 強敵と戦ったにしても成長速度がかなり速かったように感じられたんですけど」
「ん? 1つ800k程だな」
「800k!つまり2つで160万!?」
ちなみにkとは1000の単位を表し、[1k=1000G]になる。つまり800kと言うのは80万Gでそれを2つで160万Gだ……ちなみに私の今の所持金が1,500Gである。
ちなみのちなみにkの次がmになり、160万は1.6mと表す。
「このグレードでこの相場ってだけで、その上位装備のスキル値60まで対応可能な枷は1つで2m。更にスキル値90まで対応した枷なら1つ6mはするな」
「ちなみにギンジさんは全部持ってるんですか?」
「勿論持ってるぞ。ただ、もう必要なくなったから倉庫で埃被ってるんだけどな」
「スキルが30超えたらすぐにお返ししますね!」
「おう、お前さんがすぐにそんくらい強くなるのを楽しみにしてるぞ。その後の枷も用意して待ってるからな」
暫くは手枷足枷と離れられないようだ。
枷は自由に付け外し出来るが、装備するとデバフで体の感覚が変わってしまい戦闘に不利になるから普段から装備しておけとのこと。
ギンジさんもスキル値が低い時は常に枷を装備していたらしいが、入れ墨をした半裸のおじさんが鎖付きの手枷足枷をしていたら、それは完全に罪人に見えたことだろうなと想像する。
「あ、そういえば帰りってどうするんですか? 何か転移アイテムが有るんでしょうか?」
「転移アイテムは存在するが俺は持ってないな」
「それじゃあ、ここから歩きで帰る感じですか?」
「いや、俺の場合は腹切りって技能でプライベートエリアまで死に戻りする。お前さんの場合はポーション無しで猿と戦って死ぬ感じだな」
「……はい?」
この戦闘狂は今何と言った?
聞き間違いで無ければ、猿と戦って死んで来いと言われたような気がする。
「ちなみに他の方もそうしてるんですか?」
「いや、大体の奴は転移屋で売ってる帰還結晶ってアイテムを使って帰るな」
「じゃぁ、そのアイテム買いましょうよ!なんで態々死に戻りしないといけないんですか!!」
「帰還結晶は1つ1,000Gするぞ? お前さん懐にあんま余裕無いんだろ?」
「うっ!」
「デスペナは満腹度0と一時的な全基礎スキル値の低下デバフだ。訓練を終えた後なら何の問題もねぇから心配すんな」
何という暴論。確かに効率的ではあるけれど、テレビゲームではなくリアルな体験が出来るフルダイブゲームで好き好んで死にたくはない。
ちなみにギンジさんはステータス差の大きい敵との戦闘の方が成長速度が速くなるという仕様を逆手にとって、故意にデスペナを受けた状態で強敵と戦ってスキル上げをしていたそうだ……ギンジさん、マジ戦闘狂。
ということで今日はここで現地解散し、私は1人で猿の元へと向かい必死に戦って3匹目で死に戻りすることになった。
――うぅ、やっぱり死に戻りはあんまり気分がいいものじゃない。
その日の収益は、ドロップ品の納品クエストと残りアイテムの売却で過去最高額である12,000Gとなった。
ソロでやる場合はギンジさんからのポーション支援も無いから収入は大きく下がるとは思うけど、それでも転移代の1,000Gは稼ぎ出せるだろう……たぶん!
「そういえば、この猿って何て名前なんですか?」
「ん? いや、知らねぇな。前聞いた気がするが忘れちまった」
「……え?」
「俺は鑑定スキル持ってねぇんだ。だから相手の名前とかは分からねぇ。まぁ、強さとか特性は挑めば分かるから問題ねぇんだけどな」
駄目だこの戦闘狂。ロコさんに頭をスパンっと叩いてもらわないと。
そんな話をしながら私は名も知らぬ猿と戦い続けた。
戦闘を繰り返す度に少しずつスキル値が上がってきているようで、本当に少しずつだが戦闘に余裕が出てくる。苦しい戦いの連続だけど、成長効率という点においてはギンジさんのお勧めなだけはある。
「もう少し進むと壁の色が濃くなってくるポイントに行き着く。その先は複数の猿が同時に襲ってくるから、そこまで行ったら折り返しだ」
「いずれその先にも行くんですか?」
「当然だ。ここはソロで鍛えるには丁度いい場所だからな。自分のスキル値を考慮しながらソロでどんどん先へ進んでいけ。まぁ、少なくとも、機動力スキルと回避スキルが30もあればこの先には行けるだろ」
そんなこんなでギンジさんの言うポイントまで行き着いた私達は、そこから折り返して来た道を戻る。
猿のリポップ時間は早いようで、戻る際も猿との戦闘が連続した。そしてやっとの思いで出口である。
「やっと出口だぁ~。もう暫く猿は見たくないです」
「何言ってんだ。時間があれば極力毎日ここに通え。テイマーとしてやっていくにしても、自分自身がある程度強くならないと遠くまで冒険なんて無理だぞ」
「う~ん、そうですね。レキとの楽しい冒険のためにも、もっと強くならないと」
「今着けてる手枷と足枷があれば基礎スキルは比較的速く成長するから、後は只管洞窟の奥を目指して戦っていけばいい」
「奥、猿の集団に襲われるとか怖いですね……ちなみにこの手枷と足枷っていくらぐらいする物なんですか? 強敵と戦ったにしても成長速度がかなり速かったように感じられたんですけど」
「ん? 1つ800k程だな」
「800k!つまり2つで160万!?」
ちなみにkとは1000の単位を表し、[1k=1000G]になる。つまり800kと言うのは80万Gでそれを2つで160万Gだ……ちなみに私の今の所持金が1,500Gである。
ちなみのちなみにkの次がmになり、160万は1.6mと表す。
「このグレードでこの相場ってだけで、その上位装備のスキル値60まで対応可能な枷は1つで2m。更にスキル値90まで対応した枷なら1つ6mはするな」
「ちなみにギンジさんは全部持ってるんですか?」
「勿論持ってるぞ。ただ、もう必要なくなったから倉庫で埃被ってるんだけどな」
「スキルが30超えたらすぐにお返ししますね!」
「おう、お前さんがすぐにそんくらい強くなるのを楽しみにしてるぞ。その後の枷も用意して待ってるからな」
暫くは手枷足枷と離れられないようだ。
枷は自由に付け外し出来るが、装備するとデバフで体の感覚が変わってしまい戦闘に不利になるから普段から装備しておけとのこと。
ギンジさんもスキル値が低い時は常に枷を装備していたらしいが、入れ墨をした半裸のおじさんが鎖付きの手枷足枷をしていたら、それは完全に罪人に見えたことだろうなと想像する。
「あ、そういえば帰りってどうするんですか? 何か転移アイテムが有るんでしょうか?」
「転移アイテムは存在するが俺は持ってないな」
「それじゃあ、ここから歩きで帰る感じですか?」
「いや、俺の場合は腹切りって技能でプライベートエリアまで死に戻りする。お前さんの場合はポーション無しで猿と戦って死ぬ感じだな」
「……はい?」
この戦闘狂は今何と言った?
聞き間違いで無ければ、猿と戦って死んで来いと言われたような気がする。
「ちなみに他の方もそうしてるんですか?」
「いや、大体の奴は転移屋で売ってる帰還結晶ってアイテムを使って帰るな」
「じゃぁ、そのアイテム買いましょうよ!なんで態々死に戻りしないといけないんですか!!」
「帰還結晶は1つ1,000Gするぞ? お前さん懐にあんま余裕無いんだろ?」
「うっ!」
「デスペナは満腹度0と一時的な全基礎スキル値の低下デバフだ。訓練を終えた後なら何の問題もねぇから心配すんな」
何という暴論。確かに効率的ではあるけれど、テレビゲームではなくリアルな体験が出来るフルダイブゲームで好き好んで死にたくはない。
ちなみにギンジさんはステータス差の大きい敵との戦闘の方が成長速度が速くなるという仕様を逆手にとって、故意にデスペナを受けた状態で強敵と戦ってスキル上げをしていたそうだ……ギンジさん、マジ戦闘狂。
ということで今日はここで現地解散し、私は1人で猿の元へと向かい必死に戦って3匹目で死に戻りすることになった。
――うぅ、やっぱり死に戻りはあんまり気分がいいものじゃない。
その日の収益は、ドロップ品の納品クエストと残りアイテムの売却で過去最高額である12,000Gとなった。
ソロでやる場合はギンジさんからのポーション支援も無いから収入は大きく下がるとは思うけど、それでも転移代の1,000Gは稼ぎ出せるだろう……たぶん!
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