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第四章
リーヴァ=リバーヴァ-02
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「クーリッヒ=ウー=ヴァンの物語を覚えているものは幸いである。心穏やかであろうから。こんばんは、皆さん。ご機嫌はいかがですか? ブレンドフィア=メンションです。さて今回の番組ではこの物語のヒロインであるリーヴァ=リバーヴァという少女についてお話していきましょう。彼女がレリーフや書簡などに登場したのは、ライヴ少年とほぼ同時期でした。それもそのはず、彼らは幼馴染であったと言われています。しかしながら、その出自ははっきりしており、父親と母親の名前までわかっています。これはライヴ少年とは対照的ですね。では何故、彼女についての記述が現代にまで遺されているのでしょうか?今回はその点にスポットライトを当てつつ、進めていきたいと思います…」
かつてデイーパ・ティイのあった遺跡にあるオベリスクに刻まれたレリーフは語る。ブラウ=レジスタルスによって帝国からディーパ・ティイが開放され、実に三回の第13騎士団本隊による奪還作戦が展開されたという。最初の一回はライヴ=オフウェイとの接触が目的であり、この目的は果たされた。二回目の奪還作戦では、アジ=ダハーカの戦力を図る目的があった。この作戦においては、出撃した騎士の名前にアムンジェスト=マーダー卿の名が刻まれている。そして、問題の三回目の作戦において、帝国軍は第13帝国騎士団の全力出撃があったと記されていた。
歴史家は問いかける。何故このような勿体ぶった攻め方をするのかと。
ここにひとつの説がある。
「それは軍団を指揮するアムンジェスト=マーダー卿の趣向によるものである、とする説です」
そのように語るのは、アンスタフト=ヒストリカ教授である。
「もしも帝国が本気でこの町を落とすつもりであれば、わざわざこのような手段は取らず最初から全力出撃すればいい。しかしわざわざある人物の名前を伝えるというワンクッションを置いています。それがリーヴァ=リバーヴァという少女の名前です。これはあくまで一つの仮説ですが、彼女の名を伝えることでブラウ=レジスタルス側を揺さぶったのではないでしょうか。その目的のひとつとして、ライヴ=オフウェイという少年の存在を歴史から消すことがあげられます。確かに戦法としては実にメッド=クラウンの異名をもつマーダー卿らしい戦略と言えるでしょう」
「しかし、残念なことにこの地域は既に酷い乾燥地帯になっており、オベリスクの破損の状態も酷い。そこで、地元民に口伝で伝えられている物語を通して、この物語を分析していこうというのが、私の研究です」
そう語るのが、ミンダーハイト=ギリアートン教授である。
「今を遡ること15年前に私はこの地を訪れ、ありとあらゆる口伝や言い伝えを収集してまいりました。また、風俗文化的な研究も推し進めてきました。そこで浮かび上がったのが、非常に面白い物語なのです」
◇ ◇ ◇ ◇
「なんなんだ、これは…!?」
俺はレクルート=ファハンの中で歯ぎしりした。装飾を施された敵のドラグナー・ファハンとヘイムダルが、ワラワラと俺の方へとやってくるのだ。これでは何度切り伏せてもキリがない。しかも、その一体一体が強いのだ。今までのように一撃で落とせるようなレベルの相手ではなかった。これでは一瞬たりとも気が抜けない。
今俺を取り囲んでいるのは機体番号13-S-05、13-S-03、13-S-06。俺はざっと周りを見渡すと、最も襲い掛かってきそうなS-03を指向した。で、近寄れないように一歩踏み込んで横に薙ぐ。S-03は俺に合わせるように一歩下がると、袈裟懸けに打ち込んできた。俺は横に薙いだ勢いもそのままに、横に転がり受け身を取る。大剣の切っ先はあくまでS-03に合わせ、ジリジリと間合いを計っていた。
突然、ちょうど背後にいたS-06が上段から襲ってきた。俺は待ってましたとばかりに、後ろへ体当たりをカマし、S-06の間合いの内から後方へ吹き飛ばす。俺の勢いは全てS-06が請け負ってくれたので、その場で大剣を構え直すと、ジリ… ジリ… と敵さんの包囲網の外へ出る。これで少なくとも背後を取られることはなくなった。未だ最も近くにいるS-03に突きを入れる。
S-03はその攻撃を左に弾いた。そして上段に構えるところを… 俺は弾かれた勢いで大剣を頭上で回し、袈裟懸けに斬りかかった。ほぼ同時にS-03のシュエートも振り下ろされる!
…一瞬の差だった。俺は左足のピックを使いダッシュローラーで超超信地旋回をかけ敵の真向を避けつつ、袈裟懸けをヒットさせていた。その剣を振り抜かず、腰だめに構えなおしてコクピットへと大剣を突き込む。…これで、一騎、沈黙! と同時にS-05が右側から腰溜めに突きかかってきた。俺は左足を軸に超信地旋回、その一撃を避けた勢いでシュエートが突き刺さったままのS-03をブチ当てる。S-03はシュエートから抜け、S-05は動かなくなったS-03とともに吹き飛ばされる。これで僅かの時間を稼げた。
後方に目をやる。S-06が左下段から襲い掛かってきていた! 俺は大剣を右肩に抱えるように構えると、そのまま袈裟を切りに行く。
『-甘いわ…!-』
「甘いのはどちらかな…?」
果たして。俺の大剣はS-06の鯉口に当たった。切り上げようとしていたS-06の剣の軌道が僅かに止まる。俺は大剣を腰溜めに構え直し一歩更に踏み込んで、これもコクピットへと突き刺した! これで、二騎目。今度は右足のピックを地面に突き立て、その場で超々信地旋回、大剣をS-06から抜きつつ、先程吹き飛ばしたS-05を指向する。
…いない。俺はふと、気配を感じ上を見た。上方から俺に剣を向けて突きかかってきていた。横に避けるには間に合わない!
俺は…、大剣を左に持ち替えて一歩踏み込み、左へと薙いだ。S-05はバランスを崩し肩口から地面へと叩きつけられる。そこを逃すほど俺は甘くない。剣の向きを下に構え直すと、勢いをつけて胴体を突いた! …これで三騎!
第二陣が襲い掛かってくる。俺はダッシュローラーの回転を上げ中央突破を仕掛けた。敵の剣撃を軽くいなしながら、敵中央を抜けると、両足のピックを突き立てて急停止、左足のピックを地面から抜いて超々信地旋回、前傾姿勢を取って右中段に構え突進する。俺を指向し方向を変え姿勢制御に手間取っているS-04の胴体を横に薙いだ。コクピットが破壊され、中の人が血まみれになって飛び出してくる。マトモに見ちった! 流石に今のは失敗したな… とか想いつつ、敵機体番号を確認。
沈黙したS-04、中段に構えているS-07、右上段に構えているS-02。いずれも俺の前面に展開している。これならまだやりやすい。俺は右手に大剣を持ち替えると、両手を開き、双方を牽制した。
左手にいるS-07が動いた! おそらく武器のないのを見ての行動だろう、上段から真向を狙ってくる。俺は左に向き直り、弧を描くように右手を後ろから前に回し込んだ。柄頭を頭上で握ると、振り下ろしてくるS-07の剣を軽く弾き、そのまま真向を切りに行く。…ヒット! 俺は剣がめり込んだS-07の頭から剣を引き抜くと、そのまま腰溜めに突進、コクピットを貫く。これで五騎目!
残ったS-02が警戒しながら持ち手を変える。俺は再び大剣をS-07から引き抜くと、右手に剣を持って再び両手を開いた。一歩、二歩… 俺は間合いを近づけていく。一歩、二歩… 敵さんもまた俺の足に合わせて後付さりする。
俺は再び大剣を両手に持ち替え、左腰溜めに構える。それに合わせて、S-02もまた柳に構えた。
敵さんの後ろから第三波が出撃したのが見える。そのスキを突いて、S-02が袈裟をキメにきた! 俺は突きがてらその剣を弾き、超信地旋回。その場でS-02の胴を薙いだ。その傷口から敵さんの身体が見える。俺は振り切った剣を円運動に任せて頭上から真向へと切り伏せた! これで、六騎目!
これではキリがない! 俺は一時後退して周囲を見渡す。他の連中は…!?
やはり、苦戦しているようだ。俺は…
ダッシュローラーを全力回転させ、今度は第三陣の元へと向かうと、そのまま進路を左へ! 第三陣も俺を追いかけてくる。その様子を確認すると、近くにいるフラウの元へと向かった。俺はフラウを指向している一騎に腰溜めた剣で後ろからの一撃を加え、旋回を繰り返しながらそのまま突き刺した剣を引き抜いた。そして、フラウの後ろにつく。
「フラウ、無事か!?」
『-なんとかね、でもこれでは消耗戦だわ!-』
「それに何だよ、この強さ! いつもより勝手が違うぞ!」
『-そりゃね、本陣が出張ってきてるから…!-』
「これはいっちょ、仕掛けた方がいいかな?」
『-危険よ! そんなことでもしたら…-』
「けどさ、このままだと力尽きたほうが負けるぜ!」
『-無謀よ! いくらライヴでも敵いっこないわ!!-』
「やってみなくちゃわからない、ってね!」
おれは八騎目を切り伏せると、大音声で吠えた!
「ヤァヤァ遠からんものは音にも聞け、近からんものは目にも見よ! 我こそはライヴ=オフウェイ、我に挑まんとする益荒男は何処!」
『-…何、それ-』
…フラウ、こういうのは冷静に見られると辛いモノがあってだな…。
『-…面白い、イキの良いのが混じっているではないか…-』
明らかにヘイムダルとは異なるドラグナーが現れた。ヘラクレスオオカブトを思わせる顔にスタイリッシュな甲殻生物の体躯。
『-我が名はアムンジェスト=マーダー、ドラグナー:オフィツィーア・ベクツェを駆るもの。その紋章は”踊る人形”! さぁ、相手に異存はあるまい? 良ければかかってこられよ-』
「…相手に異存なし! いざ…ッ!!」
少なくとも、これで全体の戦闘は止められたはずだ。誰もが俺達を見つめている。もしこれで勝利できれば、どのように不利な条件下でも形勢逆転がありうる。俺はオフツィーア=ベクツェを見据えると、その方向へと歩み始めた。敵さんもまた、戦場の中央へと足を運ぶ。そして互いの間合いで足を止めた。
さて… 今のところ剣を抜いていないにも関わらず、全く敵さんにスキはない。これはデキる…! 俺は剣を握り直した。そして、上段に構える。マーダーはスラリと大剣を抜くと、両手を開いてみせた。その大剣は俺のよりも長く、重そうだった。俺の構えは上段から右下段へ。マーダーもそれに合わせて右下段へと構えをスライドさせる。
ジリ… ジリ… 俺達は構えを変化させながら、時計回りで移動していた。
『-フン…!-』
マーダーが大剣を裏からぐるりと回し、上段からの一撃を食らわせてきた。間合いを詰めるのが速い! 俺は下段からその剣を弾いた。…重い! 次の展開へ移れない…! 俺はダッシュローラーをフル回転させて間合いを取ると、再び膠着状態へと持ち込んだ。重い空気が一帯を支配する。ジリ… ジリ… 俺は自身の間合いを徐々に詰めていった。
「ダァ…ッ!」
今度は俺が突きを放った。あれだけ重い剣裁きだ、おそらくは、これで次のアクションを起こせるハズ…!
しかし、マーダーはその手元をクルッと回した。ヤバい! これは巻き上げだ!? 俺は突いた剣をその流れに任せ、超信地旋回でグルッと回り逆袈裟を狙った。だが、マーダーは僅か一歩下がっただけでその剣をかわし、俺の大剣を地面に叩きつける。
そのまま俺の剣を押さえ込むと、マーダーは右手を大剣から放し、踏み出して俺を殴りつけた! ヒット!!
俺はその勢いに負けて、弾き飛ばされそうになる。それを旋回しながら勢いを殺し、三度間合いを取り直した。だが、その手には既に剣はなく、俺の剣は大地に突き立ったままだった。
『-決まった…かな…?-』
「まだまだァ!」
おれはファハンのパイルバンカーを展開すると、利き手を軸に構え直した。
『-ふむ、フフ… ハッハッハ…! これは面白い小僧だ。それも若さか-』
「?」
『-今回はお前の顔に免じて引いてやろう、死に返りの少年よ。また再び戦場で見えようぞ-』
「死に帰り…魂の入れ替えじゃないのか…?」
『-しかし、だ。我もただでは帰ることは出来ぬ。お前の大事な物は既にこの手にある! 取り戻したくば、我が元へと再び来ることだ!-』
いま、なんて言った?
”取り戻したくば…”
まさか…!!
『-総員、撤退!-』
「ま、待て! もしかして…」
『-ああ、そうだよ、少年。リーヴァ=リバーヴァとかいう少女は我が手中にある。早く取りに来ねば、…知らんぞ。フフフ… ハッハッハ…!-』
「リーヴァを何故? 一体何の関係があって彼女を拐うようなことを!?」
『-わからぬか? 主は鮮烈なほどに強すぎたのよ。恨むなら、その目立ちすぎる性癖を呪うが良い…-』
俺の顔から血の気が引いていくのがハッキリとわかった。俺のせいで…。また、俺のせいで…。
『-何をしている、ライヴ! まずはヤツの言っていることが本当かどうかを確認すべきではないか?-』
フラウが俺の元へとやって来た。彼女のドラグナー:ラウェルナも相当の深手を追っている。彼女もかなり厳しい戦いをこなしてきたのだろう。俺は頷くと、キャンプのある森の中へとダッシュローラーを全開にした。そして、そこで見たものは、全壊した病院キャンプの跡…。そして、強襲を受けて死んだ患者たちの姿だった。
…落ち着け、落ち着け、落ち着け…。
俺は自分に言い聞かせるように、同じ言葉を繰り返していた。
ドラグナーから降りる。そして、倒れているひとりひとりに声をかけて回った。しかし…。
誰ひとりとして、リーヴァの行方を知るものはいなかったのである。
かつてデイーパ・ティイのあった遺跡にあるオベリスクに刻まれたレリーフは語る。ブラウ=レジスタルスによって帝国からディーパ・ティイが開放され、実に三回の第13騎士団本隊による奪還作戦が展開されたという。最初の一回はライヴ=オフウェイとの接触が目的であり、この目的は果たされた。二回目の奪還作戦では、アジ=ダハーカの戦力を図る目的があった。この作戦においては、出撃した騎士の名前にアムンジェスト=マーダー卿の名が刻まれている。そして、問題の三回目の作戦において、帝国軍は第13帝国騎士団の全力出撃があったと記されていた。
歴史家は問いかける。何故このような勿体ぶった攻め方をするのかと。
ここにひとつの説がある。
「それは軍団を指揮するアムンジェスト=マーダー卿の趣向によるものである、とする説です」
そのように語るのは、アンスタフト=ヒストリカ教授である。
「もしも帝国が本気でこの町を落とすつもりであれば、わざわざこのような手段は取らず最初から全力出撃すればいい。しかしわざわざある人物の名前を伝えるというワンクッションを置いています。それがリーヴァ=リバーヴァという少女の名前です。これはあくまで一つの仮説ですが、彼女の名を伝えることでブラウ=レジスタルス側を揺さぶったのではないでしょうか。その目的のひとつとして、ライヴ=オフウェイという少年の存在を歴史から消すことがあげられます。確かに戦法としては実にメッド=クラウンの異名をもつマーダー卿らしい戦略と言えるでしょう」
「しかし、残念なことにこの地域は既に酷い乾燥地帯になっており、オベリスクの破損の状態も酷い。そこで、地元民に口伝で伝えられている物語を通して、この物語を分析していこうというのが、私の研究です」
そう語るのが、ミンダーハイト=ギリアートン教授である。
「今を遡ること15年前に私はこの地を訪れ、ありとあらゆる口伝や言い伝えを収集してまいりました。また、風俗文化的な研究も推し進めてきました。そこで浮かび上がったのが、非常に面白い物語なのです」
◇ ◇ ◇ ◇
「なんなんだ、これは…!?」
俺はレクルート=ファハンの中で歯ぎしりした。装飾を施された敵のドラグナー・ファハンとヘイムダルが、ワラワラと俺の方へとやってくるのだ。これでは何度切り伏せてもキリがない。しかも、その一体一体が強いのだ。今までのように一撃で落とせるようなレベルの相手ではなかった。これでは一瞬たりとも気が抜けない。
今俺を取り囲んでいるのは機体番号13-S-05、13-S-03、13-S-06。俺はざっと周りを見渡すと、最も襲い掛かってきそうなS-03を指向した。で、近寄れないように一歩踏み込んで横に薙ぐ。S-03は俺に合わせるように一歩下がると、袈裟懸けに打ち込んできた。俺は横に薙いだ勢いもそのままに、横に転がり受け身を取る。大剣の切っ先はあくまでS-03に合わせ、ジリジリと間合いを計っていた。
突然、ちょうど背後にいたS-06が上段から襲ってきた。俺は待ってましたとばかりに、後ろへ体当たりをカマし、S-06の間合いの内から後方へ吹き飛ばす。俺の勢いは全てS-06が請け負ってくれたので、その場で大剣を構え直すと、ジリ… ジリ… と敵さんの包囲網の外へ出る。これで少なくとも背後を取られることはなくなった。未だ最も近くにいるS-03に突きを入れる。
S-03はその攻撃を左に弾いた。そして上段に構えるところを… 俺は弾かれた勢いで大剣を頭上で回し、袈裟懸けに斬りかかった。ほぼ同時にS-03のシュエートも振り下ろされる!
…一瞬の差だった。俺は左足のピックを使いダッシュローラーで超超信地旋回をかけ敵の真向を避けつつ、袈裟懸けをヒットさせていた。その剣を振り抜かず、腰だめに構えなおしてコクピットへと大剣を突き込む。…これで、一騎、沈黙! と同時にS-05が右側から腰溜めに突きかかってきた。俺は左足を軸に超信地旋回、その一撃を避けた勢いでシュエートが突き刺さったままのS-03をブチ当てる。S-03はシュエートから抜け、S-05は動かなくなったS-03とともに吹き飛ばされる。これで僅かの時間を稼げた。
後方に目をやる。S-06が左下段から襲い掛かってきていた! 俺は大剣を右肩に抱えるように構えると、そのまま袈裟を切りに行く。
『-甘いわ…!-』
「甘いのはどちらかな…?」
果たして。俺の大剣はS-06の鯉口に当たった。切り上げようとしていたS-06の剣の軌道が僅かに止まる。俺は大剣を腰溜めに構え直し一歩更に踏み込んで、これもコクピットへと突き刺した! これで、二騎目。今度は右足のピックを地面に突き立て、その場で超々信地旋回、大剣をS-06から抜きつつ、先程吹き飛ばしたS-05を指向する。
…いない。俺はふと、気配を感じ上を見た。上方から俺に剣を向けて突きかかってきていた。横に避けるには間に合わない!
俺は…、大剣を左に持ち替えて一歩踏み込み、左へと薙いだ。S-05はバランスを崩し肩口から地面へと叩きつけられる。そこを逃すほど俺は甘くない。剣の向きを下に構え直すと、勢いをつけて胴体を突いた! …これで三騎!
第二陣が襲い掛かってくる。俺はダッシュローラーの回転を上げ中央突破を仕掛けた。敵の剣撃を軽くいなしながら、敵中央を抜けると、両足のピックを突き立てて急停止、左足のピックを地面から抜いて超々信地旋回、前傾姿勢を取って右中段に構え突進する。俺を指向し方向を変え姿勢制御に手間取っているS-04の胴体を横に薙いだ。コクピットが破壊され、中の人が血まみれになって飛び出してくる。マトモに見ちった! 流石に今のは失敗したな… とか想いつつ、敵機体番号を確認。
沈黙したS-04、中段に構えているS-07、右上段に構えているS-02。いずれも俺の前面に展開している。これならまだやりやすい。俺は右手に大剣を持ち替えると、両手を開き、双方を牽制した。
左手にいるS-07が動いた! おそらく武器のないのを見ての行動だろう、上段から真向を狙ってくる。俺は左に向き直り、弧を描くように右手を後ろから前に回し込んだ。柄頭を頭上で握ると、振り下ろしてくるS-07の剣を軽く弾き、そのまま真向を切りに行く。…ヒット! 俺は剣がめり込んだS-07の頭から剣を引き抜くと、そのまま腰溜めに突進、コクピットを貫く。これで五騎目!
残ったS-02が警戒しながら持ち手を変える。俺は再び大剣をS-07から引き抜くと、右手に剣を持って再び両手を開いた。一歩、二歩… 俺は間合いを近づけていく。一歩、二歩… 敵さんもまた俺の足に合わせて後付さりする。
俺は再び大剣を両手に持ち替え、左腰溜めに構える。それに合わせて、S-02もまた柳に構えた。
敵さんの後ろから第三波が出撃したのが見える。そのスキを突いて、S-02が袈裟をキメにきた! 俺は突きがてらその剣を弾き、超信地旋回。その場でS-02の胴を薙いだ。その傷口から敵さんの身体が見える。俺は振り切った剣を円運動に任せて頭上から真向へと切り伏せた! これで、六騎目!
これではキリがない! 俺は一時後退して周囲を見渡す。他の連中は…!?
やはり、苦戦しているようだ。俺は…
ダッシュローラーを全力回転させ、今度は第三陣の元へと向かうと、そのまま進路を左へ! 第三陣も俺を追いかけてくる。その様子を確認すると、近くにいるフラウの元へと向かった。俺はフラウを指向している一騎に腰溜めた剣で後ろからの一撃を加え、旋回を繰り返しながらそのまま突き刺した剣を引き抜いた。そして、フラウの後ろにつく。
「フラウ、無事か!?」
『-なんとかね、でもこれでは消耗戦だわ!-』
「それに何だよ、この強さ! いつもより勝手が違うぞ!」
『-そりゃね、本陣が出張ってきてるから…!-』
「これはいっちょ、仕掛けた方がいいかな?」
『-危険よ! そんなことでもしたら…-』
「けどさ、このままだと力尽きたほうが負けるぜ!」
『-無謀よ! いくらライヴでも敵いっこないわ!!-』
「やってみなくちゃわからない、ってね!」
おれは八騎目を切り伏せると、大音声で吠えた!
「ヤァヤァ遠からんものは音にも聞け、近からんものは目にも見よ! 我こそはライヴ=オフウェイ、我に挑まんとする益荒男は何処!」
『-…何、それ-』
…フラウ、こういうのは冷静に見られると辛いモノがあってだな…。
『-…面白い、イキの良いのが混じっているではないか…-』
明らかにヘイムダルとは異なるドラグナーが現れた。ヘラクレスオオカブトを思わせる顔にスタイリッシュな甲殻生物の体躯。
『-我が名はアムンジェスト=マーダー、ドラグナー:オフィツィーア・ベクツェを駆るもの。その紋章は”踊る人形”! さぁ、相手に異存はあるまい? 良ければかかってこられよ-』
「…相手に異存なし! いざ…ッ!!」
少なくとも、これで全体の戦闘は止められたはずだ。誰もが俺達を見つめている。もしこれで勝利できれば、どのように不利な条件下でも形勢逆転がありうる。俺はオフツィーア=ベクツェを見据えると、その方向へと歩み始めた。敵さんもまた、戦場の中央へと足を運ぶ。そして互いの間合いで足を止めた。
さて… 今のところ剣を抜いていないにも関わらず、全く敵さんにスキはない。これはデキる…! 俺は剣を握り直した。そして、上段に構える。マーダーはスラリと大剣を抜くと、両手を開いてみせた。その大剣は俺のよりも長く、重そうだった。俺の構えは上段から右下段へ。マーダーもそれに合わせて右下段へと構えをスライドさせる。
ジリ… ジリ… 俺達は構えを変化させながら、時計回りで移動していた。
『-フン…!-』
マーダーが大剣を裏からぐるりと回し、上段からの一撃を食らわせてきた。間合いを詰めるのが速い! 俺は下段からその剣を弾いた。…重い! 次の展開へ移れない…! 俺はダッシュローラーをフル回転させて間合いを取ると、再び膠着状態へと持ち込んだ。重い空気が一帯を支配する。ジリ… ジリ… 俺は自身の間合いを徐々に詰めていった。
「ダァ…ッ!」
今度は俺が突きを放った。あれだけ重い剣裁きだ、おそらくは、これで次のアクションを起こせるハズ…!
しかし、マーダーはその手元をクルッと回した。ヤバい! これは巻き上げだ!? 俺は突いた剣をその流れに任せ、超信地旋回でグルッと回り逆袈裟を狙った。だが、マーダーは僅か一歩下がっただけでその剣をかわし、俺の大剣を地面に叩きつける。
そのまま俺の剣を押さえ込むと、マーダーは右手を大剣から放し、踏み出して俺を殴りつけた! ヒット!!
俺はその勢いに負けて、弾き飛ばされそうになる。それを旋回しながら勢いを殺し、三度間合いを取り直した。だが、その手には既に剣はなく、俺の剣は大地に突き立ったままだった。
『-決まった…かな…?-』
「まだまだァ!」
おれはファハンのパイルバンカーを展開すると、利き手を軸に構え直した。
『-ふむ、フフ… ハッハッハ…! これは面白い小僧だ。それも若さか-』
「?」
『-今回はお前の顔に免じて引いてやろう、死に返りの少年よ。また再び戦場で見えようぞ-』
「死に帰り…魂の入れ替えじゃないのか…?」
『-しかし、だ。我もただでは帰ることは出来ぬ。お前の大事な物は既にこの手にある! 取り戻したくば、我が元へと再び来ることだ!-』
いま、なんて言った?
”取り戻したくば…”
まさか…!!
『-総員、撤退!-』
「ま、待て! もしかして…」
『-ああ、そうだよ、少年。リーヴァ=リバーヴァとかいう少女は我が手中にある。早く取りに来ねば、…知らんぞ。フフフ… ハッハッハ…!-』
「リーヴァを何故? 一体何の関係があって彼女を拐うようなことを!?」
『-わからぬか? 主は鮮烈なほどに強すぎたのよ。恨むなら、その目立ちすぎる性癖を呪うが良い…-』
俺の顔から血の気が引いていくのがハッキリとわかった。俺のせいで…。また、俺のせいで…。
『-何をしている、ライヴ! まずはヤツの言っていることが本当かどうかを確認すべきではないか?-』
フラウが俺の元へとやって来た。彼女のドラグナー:ラウェルナも相当の深手を追っている。彼女もかなり厳しい戦いをこなしてきたのだろう。俺は頷くと、キャンプのある森の中へとダッシュローラーを全開にした。そして、そこで見たものは、全壊した病院キャンプの跡…。そして、強襲を受けて死んだ患者たちの姿だった。
…落ち着け、落ち着け、落ち着け…。
俺は自分に言い聞かせるように、同じ言葉を繰り返していた。
ドラグナーから降りる。そして、倒れているひとりひとりに声をかけて回った。しかし…。
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微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
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