蒼き炎の神鋼機兵(ドラグナー)

しかのこうへい

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第六章

踊る人形-06

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「総員、シュタークフォート城から脱出!」
俺は号令をかけた。そして続けざまに言った。
「城壁を伝って、ガイスト・カノンを各個撃破!」

パリ…パ・パ・パリッ… パン!
城の外では、空気が引き裂かれるような音が三度聞こえている。俺達はシュタークフォート城のベルクフリートの上を凝視した。アギルの読み通り、オフツィーア・ベクツェが城を狙っていた。この男はどこまで破滅的なんだ? 俺はマーダーに通信を試みた。
「…マーダー、もう終わりだよ。そういう行為をやめて、投降を勧めるぜ」
『-…抜かすがいい。要は、戦の最後の瞬間に勝っていればよかろうなのだ。さぁ、宴を始めようぞ…!-』
「総員撤退! 全力で城から離れろ!」

ドォォオ… ン!
…やりやがった! ダズアルト砦は土煙を上げ、炎を上げながら崩壊していく。爆風が煉瓦を巻き上げ、逃げ遅れた退避中のドラグナーの手足をもぎ取り、各部位を確実に破壊していった。
「マァァァ…ダァァァァ…!!」
俺は腹の底から怒りに打ち震えた。ブースターをふかし、土煙の中へジャンプ! スタビライザーのスラスターを調整しながらジグザグに飛んで見せる。そして、着地。また再びジャンプ! こうして、俺は知ることになった。爆心地の酷い有様を。カメラを赤外線モードに切り替えてみる。石造りの建物を一瞬で吹き飛ばした件の一発は、大地を大きく抉ってなお、煉瓦をも溶かすほどの坩堝と化していた。

「どこだ、マーダー! 姿を見せやがれ!」
『-コレはなかなかおもしろい光景ではないか。儂のいた世界では、このようなモノ見ることなぞ叶わなんだわ!-』
俺は温度の低い、まだ崩れていない足場を見つけ降り立った。よくよく見ると、そういった場所が何箇所か見受けられる。
「”儂のいた世界”…? おまえ、まさか?」
『-そうよ、お前と同じさね。なかなか滑稽だったぞ、再び人生をやり直すというものは-』
「その結果が、この始末かよ!?」
『-何を言う。最高の芸術ではないか!-』
俺は叫びながら、慎重に周囲を見渡した。この熱による蒸気と土煙の中の何処かに、ヤツはいる。
『-後漢フォウハンではまだ、やり尽くさぬままに凶刃に倒れてしまったがね-』
「フォウ…ハン…?」
『-なに、お前にとっては大昔の話よ。どうせ何世紀も後から来たのであろう、お前は-』
「…ジーベン・ダジールか…」
『-お前も儂と同類よ。見せてもらったぞ、殺戮という名の芸術を-』
「お前と同じにするな!」
『-…何を言う。見事な戦いっぷりではないか。有無を言わさず急所を一撃。その遺体を見ても眉ひとつ動かさぬ豪胆ぶり…-』
「…どこに、いやがる…?」
『-人間は所詮、儂の人生を彩る画材に過ぎぬ-』
パリ… パリッパリッ… パン… パリッ…
空気の爆ぜる音が響いてきた。俺は上を見上げた!
『-お前も儂の作品となれ、わっぱ…-』

砲門が煌めいた。間を置かず轟音が鳴り響き、火柱が上がった。土煙は竜巻のように渦を巻き、炎を孕んで周囲を焼き尽くしてゆく。その光景は、さながら地獄絵図だった。
『-ハァッハッハッハ… 流石に直撃となれば、童も生きてはおるまい-』
大地は更に大きく穿たれ、俺のいた足場も瞬時に蒸発。真っ赤に焼け爛れドロドロと化したマグマの様相となっていた。オフツィーア・ベクツェは”坩堝”の縁に降り立つと、手にしたディグロウサ・ガイスト・カノンを傍らに放り投げた。そして、颯爽と立ち去ろうとした。

『-おのれ…!-』
『-良くもボクのライヴ君を…!-』
ラウェルナとラーヴァナが一気に間合いを詰め、踊りかかった。マーダーは突き出されたスピアを左腕で軽く弾き、ラーヴァナの右足を掴む。そして、ブンと振り回すと、ラウェルナへとぶつけた。フラウは構えた盾でラーヴァナを受け流すと、右半身を突き出して上段から剣を振るった。マーダーは左手でその剣を掴むと、グイッと剣を引き上げ右腕のパイルバンカーを繰り出した。フラウもまた盾でニードルを右に受け流すと、手にしていた剣を手放し、フックを噛まし上段からのパイルバンカー! しかし、マーダーはそれすらも体当たりでニードルを後方へかわしラウェルナを弾き飛ばした。間髪をいれず、ガイスト・カノン三連射! アギルだった。しかし、信地旋回でそれを避ける。

『-小賢しいのォ…!-』
そして一気に間合いを詰めたのがバイコーンだった。中段に構え、一息でコクピットを狙う。マーダーは右足のピックを立て超信地旋回、その勢いを行かせて左回し蹴りを喰らわした。その左足のピックが受け身を取ったバイコーンの両腕に深い傷を刻み込む。しかし、マーンもそれだけでは済まさなかった。ダメージを受けた両腕を中心に両足をぐるりと回転させ、ブースターも吹かせてキックを入れる。勿論、ピックは立てていた。その攻撃すらマーダーは軽く半身をかわすだけで凌ぎ、左腕によるアッパーでバイコーンを引かせた。マーンと入れ替わりに間合いに入ったのがシュタークのダグザードだった。現在のその巨大なアックスを横に薙ぐ。流石のマーダーも重量級のこの攻撃を受け流せなかったらしく、両腕のハンディ・カノンで受け身を取る。

ガッ… という金属がめり込む音が鳴り響いた。ダグザードはそのアックスを力の限り振り抜いた。マーダーは後ろに飛んでダメージ・コントロールを図る。ズズズ… と土煙を上げてオフツィーア・ベクツェは後退した。間髪をいれず、再びガイスト・カノンの猛攻! 今回は避ける余裕がなかったようだ。オフツィーア・ベクツェのパーツが次々と破壊される。
『-ぐぬぅ…-』
マーダーは呻いた。更にダメ押しの、ダグザードの一撃! 上段から十分に重量の乗ったアックスが振り下ろされる…!

パァア… ン!
オフツィーア・ベクツェの両腕から、巨大な光の爪が現れた。
『-甘い… 甘いのだよ…-』
マーダーは両腕の光の爪でダグザードの攻撃を受けると、そのままアックスを焼き切った。瞬時に立ち上がったマーダーは振り回した左腕をダグザードのコクピットに突き立てようとした。

轟音三発、アギルの三度目のガイスト・カノンだった。その弾丸はオフツィーア・ベクツェのハンディ・カノンを完全に破壊、マーダーはこれをパージして爆風から身を守る。爆風に当てられ三歩、後ずさったダグザードと入れ替わりに、ヘリンのベスティアがランスを突き出した! マーダーは右腕の”爪”でランスを受け流した。ヘリンのランスはその熱によって溶け、半分から先を失った。

間髪をいれずに、再びラーヴァナが上空からスピアを突き出した。マーダーは体をかわしてその胴体を掴み、大地に叩きつける。こうしてラーヴァナは沈黙した。

ラウェルナがシールド・アタックをかけた! その瞬間、マーダーは右腕の”爪”を盾に深々と突き立てる。

…しかし、時既に遅し。その光の”爪”は効力を失いかけており、ラウェルナまで届かなかったのだ。フラウは勢いを殺さず、盾を捨てて、中段から切先を突き立てた! ラウェルナの剣は右腕のハンディ・カノンを破壊し、通り過ぎていった。否、過ぎようとしたのだ。ラウェルナは背面のブースターを掴まれると、思い切り大地に叩きつけられた。そしてマーダーは足のピックを立てると、コクピットめがけ踏みつけようとした。

再四のガイスト・カノン! その弾丸は足のピックを完全破壊し、オフツィーア・ベクツェの右足の機能を完全に奪った。だが、それでもなおラウェルナを踏みつける。これで、ラウェルナも沈黙した。

『-さっきから小煩い…!-』
マーダーは腰のマガジンを取り出すと、マガン・カドゥガンに向けて放り投げた。アギルはそのマガジンを一瞬、指向した。
次の瞬間、オフツィーア・ベクツェの大剣が飛んできた。アギルは回避しようとした、が、手遅れだった。大剣は深々とマガン・カドゥガンの腰を砕き、稼働不可能に貶めた。

ヘリン、マーン、シュタークは間合いを取り直し、膠着状態に陥った。

…パリパリパリ…
太陽の方角から、大気を爆ぜる音が響いてきた。

ヘリン、マーン、シュタークは一斉に、マーダーに踊りかかった。
マーダーはヘリンの剣を叩き落とし、マーンの剣を弾き飛ばしてコクピットへフックの一撃をキめ、シュタークの巨大な剣を受け流すとその背中からパイルバンカーの一撃を御見舞した。

『-ぐはぁぁぁあ!?-』
間髪をいれず、マーダーの悲鳴が周囲に響き渡った。オフツィーア・ベクツェの右肩口から腰にかけて、大剣が突き刺さっている。その大剣を握っていたのは…

…俺だ!

俺は落下の勢いを殺さぬまま、全騎重と自由落下速度を上乗せして、マーダーに一撃を加えたのだった。剣の一撃と体当たりを喰らったマーダーは膝を折り大地を舐め、そして、俺もまた大地に叩きつけられた。

俺はゆっくりと立ち上がりオフツィーア・ベクツェに突き立った大剣を抜くと、とどめを刺すべくコクピットに切っ先を向ける。その剣の先には、大きく目を見開いたマーダーの姿があった。
『-まだだ、まだ終わらぬよ…!-』
俺が剣を突き立てる瞬間、左腕のパイルバンカーが射出された。弾かれた大剣は虚しく地面に吸い込まれていく。ニードルが突き出したままの左腕を薙いできた。大剣が… 抜けない。俺は瞬時に大剣を手放すと、その身体を思い切り仰け反った。ニードルがキャノピーに当たり、ヒビが入る。と同時に、マーダーはブースターを噴射。俺の足元からスルリと抜け出した。

『-フフフ… よくぞここまで儂を追い詰めたものだ。追い詰めただけでなく、儂の右腕と右足を奪っていくとはな。かの呂布奉先でも、不意打ちなしに儂を倒せなんだ。フハハハハ… コレだから戦争はやめられぬのよ!-』

そう言い放つとマーダーは撤退信号を上げ、敵の友軍のクアットに捕まって飛び去った。
幸い… というか、シェスターやフラウ、アギルに大きな怪我はなく、2週間の休養を必要とするだけですんだ。
こうして、ダズアルト砦での戦いはなんとか俺達の勝利で幕を閉じたのだった。
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