書きたいシーン

nanao78

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黒子

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「井上さん、またズレてますよ」

「カツラじゃねーよ」

「じゃ、なくて」と口の横をツンとする。

正直少しトキめいた、いや、恥ずかしい。

「井上さんの黒子、毎回違う場所にあるんですよ」

「そんな話があるか」

「昨日は目尻にあったし、一昨日は額にあってインド人みたいになってました」

「インド人のは黒子じゃない。チャクラと言って神聖なものだ」

「その話、オチあります?」

日差しから逃れたビルの隙間、自分の黒子を触ってみる。

気にしたことがなかった。

というか、俺は鏡が嫌いなんだ。

「真島さ、今日の飲み会行くの?」

「え、何ですか急に。行くに決まってますよ」

「行くに決まってるのか。でも真島、酒飲めないじゃん」

真島は帽子を少し深くさげ、夏の暑さに抵抗して小声で。

「井上さんと飲むの、好きですから」

「そうか」

タバコに火をつける。

小さく吸って、濁った煙を吐き出す。

社交辞令でもいい。

勘違いでもいい。

俺は、少し幸せになった。

「井上さん、またズレてますよ」

「ほっとけ。気まぐれなんだよ」
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