書きたいシーン

鎖箱

「アルファ」
「テノール」
「ベータ」
「クオーター」

鎖で縛られた箱の隙間から
互いの手だけが交差する。

相手の鎖を解く度に
自分の鎖も溶けていく。

何重にも束なった鎖は
それでも静かに減っているのだ。

合言葉は思いつく横文字。

「ネオン」
「ハッピー」
「レッド」
「ファイアー」

「イーテマーヴ」

解く手が止まる。

「今のは何」
「知ってるの？」
「知らないから聞いた」
「イーテマーヴはイーテマーヴだよ」
「何それ」
「知らないの？」
「知らないってば」

「シックス」
「続けないで」
「じゃないとお互いにここから出られないよ」

じゃらじゃら。
絡み合う言葉と交差する意思。

溜息と沈黙。

箱から伸びてた手が
また箱の中へ。

暗転。

「ニート」
「パワー」
「ワーク」
「シュール」

鍵は手で開けるのではない。

必要なのは、開ける意思だけ。

砕けるようにどんどん鎖は散っていく。

「ガンマ」
「ミート」
「リュック」
「セット」

大きく息を吸う。

分かる。
解る。
分かるから。

最後の言葉は
きっとおなじ。

「「イーテマーヴ」」