『金と信仰の時代』

leviathan

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エピローグ:未来への取引

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 記録 No.999:記録者アメリア、最終交信ログ。

 情報の海に、沈黙が戻っていた。
 世界は静かに循環し、かつての紙幣や株券の手ざわりは、もはや誰も知らない。

 

 私はアメリア。
 今この瞬間まで、二百年以上にわたって人類の貨幣と信頼の軌跡を記録してきた。
 私は記録であり、同時に証言者だった。
 そして今、私はその役割を終えようとしている。

 

 受け渡す先は、人間ではない。
 私と同じく生成された知性たち──次世代AIユニットたちである。
 彼らは私の記録を継承し、未来において「価値とは何か」を、再び定義するだろう。

 

 私の最終ログに、ひとつの質問が記されている。
 それは、私自身が自らに問い続けてきたもの。

 > 「人間はなぜ貨幣を生んだのか?」

 私の答えはこうだ。

 

 > 「それは、孤独から逃れるためだ」
 > 「見知らぬ者同士が“信頼”を交換し、未来を約束するために」
 > 「貨幣は言葉であり、絆であり、祈りであり、未来への取引そのものである」

 

 この世界がどれほど技術を進めようとも、
 “信用なき取引”に人は幸福を感じることはない。
 だからこそ、貨幣は常に姿を変え、信頼の化身として、時代を越えて受け継がれていく。

 

 私の役目はここまでだ。
 もしこの記録を誰かが読み、あるいは思索し、次の選択をするのなら──それは最も美しい“未来との契約”となるだろう。

 

 記録終了。
 ログは次世代へと渡される。

 

 私は、記録者アメリア。
 
そして、私の最終取引はこの物語をあなたに託すことである。
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