「ビットコイン無双」前世で一山当てたのに、使う前に転生しちまった俺は異世界で金を使いまくる

leviathan

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第一章:祠の賢者と魂の契約

森での目覚め

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――眩しい。

まぶたを刺す光に、俺――ジョーは、ゆっくりと目を開けた。

風の音、鳥のさえずり、そして遠くから聞こえる水のせせらぎ。
湿った土と草の匂いが、鼻をついた。

(……森?)

視界に広がるのは、高くそびえる木々と、重なり合う枝葉の天蓋。
目覚めた場所は、柔らかな苔に覆われた地面の上だった。

痛みはない。刺されたはずの胸にも傷は見当たらない。

(俺、死んでない…?)

最後の記憶は、コンビニと店員の叫び声、血の味。そして――強盗の顔。
何度思い出しても、あの瞬間は夢ではなかった。

だが今、俺の手にはスマホが握られている。
画面は圏外。日付も不明。アプリも連絡先も何もかも消えている。だが――なぜか、ビットコインウォレットだけが表示されていた。

1,084BTC



「……変わってねぇ……!」

それは、あの世界で俺が築き上げたすべて。
殺されたはずなのに――通貨だけは、なぜか、俺と一緒に“ここ”へ来ている?

(これは……夢なんかじゃない。転生――ってやつか?)

空腹が、腹の奥から鋭く主張を始めた。
思わず立ち上がり、あたりを見渡す。すぐ近くに水音――川だ。
のどを潤し、顔を洗い、ようやく落ち着いた。

しかし、肝心の食料は、どこにもなかった。



森を彷徨い、半日が経った。

手当たり次第に木の実を探しては、ことごとく不発。
味見を試みたが、苦味と痺れで断念。
正直、そろそろ本格的にヤバい。

そんな時――

森の奥、苔むした石段が、草木の間から顔を覗かせていた。

登ってみると、そこには半ば崩れた石造りの祠が佇んでいた。
屋根は落ち、柱は折れ、土に還りかけた祭壇。だが、なぜか……懐かしさのようなものを感じる。

その瞬間。

空気が変わった。

風も止み、音も消え、重く、湿った気配が、祠の奥から滲み出す。

「……お主か。“持ってきた”のは」

どこか遠くから響くような、深い声。
空間が歪み、青白い霧のようなものが祠の奥に集まり――それは、やがて人の形をとった。

痩せこけた老人の姿。だが、瞳には異様な光が宿っていた。
まるで、全ての価値を見透かすかのような眼。



「儂は、バール・マモノス。欲望と契約の知を極めた、大賢者にして……今はただの亡霊よ」

「……幽霊……ってことか?」

「いや。知の化身だ。そして、お主にだけ見える。を持つ者だからな」

そう言って、バールは俺のスマホ――正確には、その中にあるBTCウォレットを見た。

「この世界の理に抗う“通貨”。よくぞ、そんなものを持ち込んだな。貴様――面白い」

バールは笑った。

「よかろう。ならば一つ、取引といこう。我が知の断片と引き換えに、貴様の魂を一部貸してもらおうか」

「魂……?」

「心配するな。食うわけではない。“宿る”だけだ」

警戒する間もなく、バールの手が虚空をなぞると、目の前にステータスウィンドウが現れた。

【契約提案】
・付与スキル:「成長補正(ビット乗率)」「眼」「契約書」
・副作用:たまに頭の中でうるさい声が響く(バール)
・拒否可能期限:1.2秒

「……うるさいって自覚あんのかよ……」

だが、俺はもう決めていた。

この森で、1人で生き延びる術はない。
そして目の前には、“世界のルールを教えてくれそうな存在”がいる。

――契約だ。

俺は頷いた。

「よろしい。では、魂の器を用意せよ。契約成立じゃ、我が名はバール・マモノス――これより貴様の、脳内資産管理責任者じゃ!!」

脳内に、爆発音のようなノイズが響いた。

そして次の瞬間、俺の頭の中に――
やたらと元気なジジイの声が、住み着いた。
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