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第2話
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するとアデルは無表情のまま言った。
「はい、お嬢様。しかしお声を潜めた方がよろしいのでは? 王子に聞かれますよ?」
その言葉にマルチナは立ち止まった。
そして振り返るなり、アデルの頬を強く叩いた。
「うるさいッ! 侍女の癖に私に口答えしないでッ! 今日は絶対に失敗できないのよッ!? アンタはさっさと私の言う通りにしなさいッ!」
「はい、お嬢様。大変失礼致しました」
アデルはぶたれたにも関わらず表情を変えない。そしてマルチナはアデルの手を借り、準備を終えると広間へ戻った。その顔には美しい女神の笑みが戻っており、さっきの恐ろしさは消えている。やがてウォレス立ち合いの元、婚約者に相応しいかどうかの試験が始まった――
まずはマルチナはウォレスと共にダンスを踊った。その後は専門家が試験官となり、あらゆるマナーを身に着けているか試される。最後には知識と教養が備わっているかどうか、口頭試問をして終わりである。全てを終えた今、マルチナは満足していた。自分は美しいまでに完璧だったと悦に入っていた。
「ふむ、なるほど。流石はマルチナだな」
「お褒めに与り、光栄ですわ」
「謙遜することはない。ダンス、マナー、知識と教養、どれを取っても素晴らしい出来だった。自分でも分かるだろう?」
ウォレスの言葉を聞き、マルチナはにっこり微笑んだ。
彼も笑みを返し、意味ありげにこう言った。
「これはもう決まったな」
「ええっ……! ウォレス様っ……!?」
「僕はこれまで数十の家を巡ってきたが、ここで心が決まった」
マルチナが胸を高鳴らせる中、ウォレスは言い放った。
「――僕はこの家の侍女アデルを婚約者にしようと思う」
「はい、お嬢様。しかしお声を潜めた方がよろしいのでは? 王子に聞かれますよ?」
その言葉にマルチナは立ち止まった。
そして振り返るなり、アデルの頬を強く叩いた。
「うるさいッ! 侍女の癖に私に口答えしないでッ! 今日は絶対に失敗できないのよッ!? アンタはさっさと私の言う通りにしなさいッ!」
「はい、お嬢様。大変失礼致しました」
アデルはぶたれたにも関わらず表情を変えない。そしてマルチナはアデルの手を借り、準備を終えると広間へ戻った。その顔には美しい女神の笑みが戻っており、さっきの恐ろしさは消えている。やがてウォレス立ち合いの元、婚約者に相応しいかどうかの試験が始まった――
まずはマルチナはウォレスと共にダンスを踊った。その後は専門家が試験官となり、あらゆるマナーを身に着けているか試される。最後には知識と教養が備わっているかどうか、口頭試問をして終わりである。全てを終えた今、マルチナは満足していた。自分は美しいまでに完璧だったと悦に入っていた。
「ふむ、なるほど。流石はマルチナだな」
「お褒めに与り、光栄ですわ」
「謙遜することはない。ダンス、マナー、知識と教養、どれを取っても素晴らしい出来だった。自分でも分かるだろう?」
ウォレスの言葉を聞き、マルチナはにっこり微笑んだ。
彼も笑みを返し、意味ありげにこう言った。
「これはもう決まったな」
「ええっ……! ウォレス様っ……!?」
「僕はこれまで数十の家を巡ってきたが、ここで心が決まった」
マルチナが胸を高鳴らせる中、ウォレスは言い放った。
「――僕はこの家の侍女アデルを婚約者にしようと思う」
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