妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~

サイコちゃん

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第4話

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 まさか妹が執心している王子様のハーレムに入ることになるなんて――そう思いながら、アナベルは花が咲き乱れる中庭を歩いていた。もしこの事実をイザベルが知ったら、きっと恐ろしい手段に出る……そんな不安が胸を支配する。今後、彼女は何が何でもファースに会いにくるだろう。その時、このハーレムの存在を知られたらどうなるのか、想像したくもない。
 王子が枷を嵌めないと公言しているハーレムは平和そのものだった。女性達は誰しも気安く話しかけてくれるし、優しくしてくれる。世話役達もよく気が利き、悪さしてくることもなかった。そしてアナベルが売られてきた事情を話すと、皆揃って同情してくれる。だからこそイザベルの所為でこの平和を壊したくない、彼女はそう強く願っていたのだった。

「あら、アナベル、おはよう。私達と一緒に散歩しましょう?」
「アナベルったら本当に可愛いわね。後で髪を結ってあげるわ」
「ミーファ、ユイラ……」

 そこに現れたのは褐色の肌をしたミーファとユイラであった。
 アナベルはハーレムの人気者だったが、特にこの二人とは仲が良かった。

「それにしても、あなたの妹は酷いわよね。もし復讐するなら、手伝うわよ?」
「私も手伝いたいわ。アナベルを苦しめる奴は許せないもの」
「そ、そんな……あの子はとても恐ろしいのよ……! 危険だわ……!」
「大丈夫よ! 私は弓の名手なのよ?」
「私は武術ができるわよ?」

 そう言ってふたりは笑みを見せる。ハーレムを構成する女性達は才色兼備――それに尽きた。ファースは芸のない女性が嫌いらしく、必ず一芸に秀でた美女を選んでいた。そのため弓の名手ミーファと武術の達人ユイラはここへ迎えられたのだった。

「ありがとう……二人共……」

 今まで得られなかった仲間の温かさにアナベルは涙を滲ませる。
 その時、遠くの建物からサレクがこちらへ向かってくるのが見えた。

「サレクさん、どうかしたんですか?」
「ファース様がお呼びです。すぐにいらして下さい」

 アナベルの胸に一抹の不安が過った――



。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。。・゚・。



「君の妹、イザベルが親善交流のためにこの国へ来るらしい」

 その言葉にアナベルは目の前が真っ暗になった。
 平和は終わった……妹に滅茶苦茶にされる……そんな恐怖で一杯になる。
 しかしファースはそんなアナベルをよそに微笑を浮かべると、こう告げたのだ。

「僕はイザベルをこのハーレムに案内しようと思っている」
「そ、そんな……そんなことしたら、妹は何をするか……!」
「大丈夫だよ、アナベル。僕が色々と手を打っておく。君はただ僕の傍で、にっこり微笑んでいるがいい。いいかい? 決して泣いちゃいけないよ?」

 そしてイザベルが砂漠の国へやって来る日が訪れた――
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