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第7話
「は? 何を言っているんだい?」
ファースが問うと、イザベルは愉快そうに肩を揺すった。
そしてしなを作りながら、彼に流し目を送る。
「ふふん……駄目な男だと思ったけど、この私の価値を分かってるじゃない……」
その態度にファースは呆れ返った。この女は暑さで頭がやられているのかもしれない、本気でそう思った。しかし彼女が言わんとしていることを聞いてやるのも必要だろう。彼は気持ちを切り替えると、ひとり楽し気なイザベルに向かって尋ねた。
「……ちょっと君の言っている意味が分からないんだが、理解できるように説明してくれるかい?」
するとイザベルは口の片端を持ち上げて、語り始めた。
「ふん、全部全部この私を手に入れるための計画なんでしょう? ハーレムなんて汚らわしい場所に招いたのも、不細工な姉を使って嫉妬させたのも、あんな写真で国にいられなくしようとしたのも……私をハーレムに入れて独占するためよね!」
その発言にファースも、アナベルも、聞いていた全員が固まった。
なぜこの女はこんなにも自分の都合の良いように解釈できるのだろうか――誰しもがそう思っていた。
「そりゃあ、そうよね! 私という人間は美女でありながら聖女――国の宝よ! ここまでしなきゃ、祖国を捨ててこんな砂漠の国に嫁ぐはずないものね! ファース様、あなたの計画は成功したわ! ハーレムに入ってやろうじゃない!」
場はしんと静まり返っていた。
ただひとりファースだけがゆっくりと口を開く。
「……ほう? 僕のハーレムに入りたいと?」
「ええ、入ってやってもいいわ。ただし、一番の寵姫としてね」
「なるほど、それが君の希望か。でも僕のハーレムに入るのはとても難しいんだ。条件として美女であること、そして一芸に秀でていることが必須だ」
「あらあら、それなら私にうってつけだわ! 私はこの通りの美人だし、聖女の力も有り余っているものね?」
イザベルは姉を見下しながら、そう言い放った。その言葉を聞いたファースはそっと手を上げる。それはミーファとユイラに手を離せという合図だった。二人は一瞬躊躇ったが、すぐに指示通りにする。すると解放されたイザベルは満足そうな笑みを浮かべて、こう言った。
「ようやく素直になったのね。さあ、私をハーレムに……」
「それではイザベル様。ひとつ試験をしよう」
「試験? 何よ、それ?」
「もし君が聖女の力を発揮できたなら、ハーレムの寵姫にする。しかし君がただの女だったら、この写真と共に国へ送り返す。いいね?」
「ファース様は本当に素直じゃないのね! でも面白いわ! やってやるわよ!」
そしてイザベルがハーレムへ入るための試験が始まった。
彼女は広間の中央に立ち、周囲ではファースとアナベル達が見守る。
イザベルは今までとは打って変わって神妙な面持ちを見せると、両手を伸ばした。
「聖女には奇跡を起こす力があるわ。貧民へ金貨の雨を降らせ、無罪の人間を牢から消し去り、遠い未来を言い当てる……そんなありとあらゆる奇跡を起こすことができるの。だから私は今、この砂漠の国に恵みの水を湧かせましょう――」
次の瞬間――
イザベルの手から水が溢れた。
それは次々と溢れ、彼女の服を濡らしていく。
「そ、そんな……これは奇跡だわ……!」
「あなたの妹、本物の聖女だったの……!?」
ミーファとユイラが動揺しながら、アナベルを見る。
妹の起こした奇跡を目にしたアナベルは驚きの表情で固まっていた。
まさかイザベルが聖女の力に目覚めていたなんて――そう思いつつ恐怖に震える。
一方、ファースと傍らに立つサレクは目を細め、その技を見詰めていた。
ファースが問うと、イザベルは愉快そうに肩を揺すった。
そしてしなを作りながら、彼に流し目を送る。
「ふふん……駄目な男だと思ったけど、この私の価値を分かってるじゃない……」
その態度にファースは呆れ返った。この女は暑さで頭がやられているのかもしれない、本気でそう思った。しかし彼女が言わんとしていることを聞いてやるのも必要だろう。彼は気持ちを切り替えると、ひとり楽し気なイザベルに向かって尋ねた。
「……ちょっと君の言っている意味が分からないんだが、理解できるように説明してくれるかい?」
するとイザベルは口の片端を持ち上げて、語り始めた。
「ふん、全部全部この私を手に入れるための計画なんでしょう? ハーレムなんて汚らわしい場所に招いたのも、不細工な姉を使って嫉妬させたのも、あんな写真で国にいられなくしようとしたのも……私をハーレムに入れて独占するためよね!」
その発言にファースも、アナベルも、聞いていた全員が固まった。
なぜこの女はこんなにも自分の都合の良いように解釈できるのだろうか――誰しもがそう思っていた。
「そりゃあ、そうよね! 私という人間は美女でありながら聖女――国の宝よ! ここまでしなきゃ、祖国を捨ててこんな砂漠の国に嫁ぐはずないものね! ファース様、あなたの計画は成功したわ! ハーレムに入ってやろうじゃない!」
場はしんと静まり返っていた。
ただひとりファースだけがゆっくりと口を開く。
「……ほう? 僕のハーレムに入りたいと?」
「ええ、入ってやってもいいわ。ただし、一番の寵姫としてね」
「なるほど、それが君の希望か。でも僕のハーレムに入るのはとても難しいんだ。条件として美女であること、そして一芸に秀でていることが必須だ」
「あらあら、それなら私にうってつけだわ! 私はこの通りの美人だし、聖女の力も有り余っているものね?」
イザベルは姉を見下しながら、そう言い放った。その言葉を聞いたファースはそっと手を上げる。それはミーファとユイラに手を離せという合図だった。二人は一瞬躊躇ったが、すぐに指示通りにする。すると解放されたイザベルは満足そうな笑みを浮かべて、こう言った。
「ようやく素直になったのね。さあ、私をハーレムに……」
「それではイザベル様。ひとつ試験をしよう」
「試験? 何よ、それ?」
「もし君が聖女の力を発揮できたなら、ハーレムの寵姫にする。しかし君がただの女だったら、この写真と共に国へ送り返す。いいね?」
「ファース様は本当に素直じゃないのね! でも面白いわ! やってやるわよ!」
そしてイザベルがハーレムへ入るための試験が始まった。
彼女は広間の中央に立ち、周囲ではファースとアナベル達が見守る。
イザベルは今までとは打って変わって神妙な面持ちを見せると、両手を伸ばした。
「聖女には奇跡を起こす力があるわ。貧民へ金貨の雨を降らせ、無罪の人間を牢から消し去り、遠い未来を言い当てる……そんなありとあらゆる奇跡を起こすことができるの。だから私は今、この砂漠の国に恵みの水を湧かせましょう――」
次の瞬間――
イザベルの手から水が溢れた。
それは次々と溢れ、彼女の服を濡らしていく。
「そ、そんな……これは奇跡だわ……!」
「あなたの妹、本物の聖女だったの……!?」
ミーファとユイラが動揺しながら、アナベルを見る。
妹の起こした奇跡を目にしたアナベルは驚きの表情で固まっていた。
まさかイザベルが聖女の力に目覚めていたなんて――そう思いつつ恐怖に震える。
一方、ファースと傍らに立つサレクは目を細め、その技を見詰めていた。
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