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第三話
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アリアはイェールに犯されて身籠っていた。
では、なぜ魔法判定ではイェールが嘘を吐いていないと出たのか。
怒り心頭の国王は息子を呼び出して、説明を求める。
「違うんです、お父上! 俺はあの日酔っ払っていて、アリアとウィリアを間違えたんです! あの二人はそっくりでしょう!? だから俺はずっとウィリアと寝たと思っていたんです! 俺がそう思い込んでいたから、魔法判定で“嘘を吐いていない”と出たんですね! い、いいえ……俺はウィリアと日常的に浮気なんてしていません……! 本当に出来心だったんです……!」
しかしその後の魔法判定で、イェールはウィリアと浮気していたと判明する。
その結果を受けて、王家はセントウルズ家にまで調査の手を広げた。
セントウルズ家の侍女レナの証言。
「おっしゃる通り、私はウィリア様付きの侍女です……。ええ、私は王家に手紙を送る手伝いをさせられました……。妹のウィリア様は姉のアリア様の筆跡そっくりの手紙を書き、それを王家に届けろとおっしゃったのです……。はい、私はウィリア様が眠っている間、書きかけの手紙を読みました……。そこには“私、アリアはイェール様に犯された。妊娠したので責任を取ってくれ”と書かれてありました……。あのう、私は罰せられるでしょうか……?」
王家の人々は苦々しい思いで、こう考えた。
きっと姉アリアは妊娠の詳細を妹ウィリアにだけ打ち明けたのだ。
そして妹はその情報を利用し、姉を追い詰めるために手紙を出したのだ、と。
これまでの証言はアリアの完全無罪の証明であった。
可哀想なアリアは婚約者と実の妹に裏切られていた。
さらにイェールに犯され、身籠り、ウィリアに陥れられたのだ。
そんな彼女のお腹にいるのは勇者と聖女の血を受け継ぐ尊き御子――まさか。
「ああ、きっと聖女様と勇者様の血を引く子供が怒っているのだ……! 愚かなイェールとウィリアの異常はその子が引き起こしている“呪い”に違いない……! 即刻、アリアを国に連れ戻し、心からの謝罪をさせよう……!」
国王は慌てて、そう決断する。
しかしその頃――アリアは隣国の王族となっていた。
隣りのセクト国には占術に長けた第一王子エンティがおり、この事態を予期していた。彼は国外追放されたアリアを保護し、すぐさま王族にする手続きを踏んだのだ。そのような立場にあるアリアを連れ戻すことは、ヴント国王でも不可能である。
それならせめてもと、国王はイェールとウィリアを隣国へ送り込んだ。
そして心身が傷付いたアリアへ、心からの謝罪をさせようとした。
しかしイェールとウィリアが誠意を見せることはなかった。
それどころか、被害者のアリアへ暴言を吐いたのだ――
では、なぜ魔法判定ではイェールが嘘を吐いていないと出たのか。
怒り心頭の国王は息子を呼び出して、説明を求める。
「違うんです、お父上! 俺はあの日酔っ払っていて、アリアとウィリアを間違えたんです! あの二人はそっくりでしょう!? だから俺はずっとウィリアと寝たと思っていたんです! 俺がそう思い込んでいたから、魔法判定で“嘘を吐いていない”と出たんですね! い、いいえ……俺はウィリアと日常的に浮気なんてしていません……! 本当に出来心だったんです……!」
しかしその後の魔法判定で、イェールはウィリアと浮気していたと判明する。
その結果を受けて、王家はセントウルズ家にまで調査の手を広げた。
セントウルズ家の侍女レナの証言。
「おっしゃる通り、私はウィリア様付きの侍女です……。ええ、私は王家に手紙を送る手伝いをさせられました……。妹のウィリア様は姉のアリア様の筆跡そっくりの手紙を書き、それを王家に届けろとおっしゃったのです……。はい、私はウィリア様が眠っている間、書きかけの手紙を読みました……。そこには“私、アリアはイェール様に犯された。妊娠したので責任を取ってくれ”と書かれてありました……。あのう、私は罰せられるでしょうか……?」
王家の人々は苦々しい思いで、こう考えた。
きっと姉アリアは妊娠の詳細を妹ウィリアにだけ打ち明けたのだ。
そして妹はその情報を利用し、姉を追い詰めるために手紙を出したのだ、と。
これまでの証言はアリアの完全無罪の証明であった。
可哀想なアリアは婚約者と実の妹に裏切られていた。
さらにイェールに犯され、身籠り、ウィリアに陥れられたのだ。
そんな彼女のお腹にいるのは勇者と聖女の血を受け継ぐ尊き御子――まさか。
「ああ、きっと聖女様と勇者様の血を引く子供が怒っているのだ……! 愚かなイェールとウィリアの異常はその子が引き起こしている“呪い”に違いない……! 即刻、アリアを国に連れ戻し、心からの謝罪をさせよう……!」
国王は慌てて、そう決断する。
しかしその頃――アリアは隣国の王族となっていた。
隣りのセクト国には占術に長けた第一王子エンティがおり、この事態を予期していた。彼は国外追放されたアリアを保護し、すぐさま王族にする手続きを踏んだのだ。そのような立場にあるアリアを連れ戻すことは、ヴント国王でも不可能である。
それならせめてもと、国王はイェールとウィリアを隣国へ送り込んだ。
そして心身が傷付いたアリアへ、心からの謝罪をさせようとした。
しかしイェールとウィリアが誠意を見せることはなかった。
それどころか、被害者のアリアへ暴言を吐いたのだ――
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