婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?

サイコちゃん

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第五話

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 アリアが出産した時点で、ウィリアは妊娠四ヶ月目だった。つまり体の異常が治った頃に、ウィリアはイェールの子供を身籠ったのだ。そしてセクト国で“神人”たる子が産まれたという知らせを聞き、ウィリアは気を良くした。姉の子供がそうなら、自分の子供も同じに違いない、そう思ってニタニタと笑う。

「早く生まれていらっしゃい、私の“神人”ちゃん……うふふ……」

 アリアがいない今、イェールの婚約者の座はウィリアのものだった。しかし不祥事を起こしたため、イェールは王位継承権を失っていた。だが、自分が素晴らしい子を産んだら、きっと国王はその意志を変えるだろう。いや、それどころか、自分が女王になれるかもしれない――ウィリアはそう踏んでいた。






 そして六ヶ月後、ウィリアはお産で死にかけていた。

 信じられないほどの痛み、狂いそうなほどの苦しみ……それが彼女を苛んでいた。
 ウィリアは苦痛の八つ当たりとして産婆を叩き、罵り、ひとりの男の子を出産した。
 しかしその子を見るなり、産婆は大声を上げる。

「これはッ……人間じゃありませんッ……! 魔族の子供ですッ……!」

 ウィリアは愕然とし、首を捩って我が子を見た。

「う、うそ、嘘嘘嘘嘘……どうして“神人”じゃないの……――」

 浅黒い肌、牙の生えた口、真っ赤な瞳……どう見ても魔族である。
 ウィリアが失神すると同時に、魔族の子は不気味に微笑んだ。

 その赤子は宙に浮かび上がると、宮廷を造り替えていく。庭園に生えた薔薇が巨大化して、禍々しい玉座を作る。地面から枝を出した魔樹が壁や床を突き抜けて、宮廷を絡めていく――やがてヴント国の宮廷は魔が支配する領地となった。

 それを目にした王都民は悲鳴を上げて逃げていく。
 国王も、イェールも、王族達も、ただただ立ち尽くしかない。

「これは……どういうことなのだ……――」
「陛下……! たった今、重要な知らせが入りました……!」

 その時、セクト国の第一王子エンティの訪問の知らせが入った。彼はヴント国宮廷に起きた異常事態を説明できるという。国王達はエンティからの説明を求めて、宮廷から離れた公爵家にて話しを聞くことにしたのだ。






「残念ですが、ウィリア様の産んだ子は魔王です」


 エンティはそう切り出すと、溜息を吐いた。
 その場にいた者達は衝撃的な事実に目を瞠る。

 そしてエンティは少々込み入った話をすると前置きして、話しを続けた。

「数百年前、ヴント国の勇者と聖女に手により、魔王は二つに裂かれて死にました。しかし二つに分かれた魔王の魂は、戦いで力の弱まった勇者と聖女の中に潜み、復活の機会を狙っていたのです。……ですが、“聖なる魂”が、その悪しき計画に気付きました。その魂は聖女の血に潜み、魔王を倒すべく機会を狙っていたのです。その聖なる魂の宿主となったのが、我が妻アリアです。そして魔王の魂の宿主となったのが、イェール様とウィリア様です」

 エンティは黙り込むイェールと宮廷から救出されたウィリアを一瞥する。

「魔王は二人の子供となることで、裂かれた魂を融合させて復活しようとしました。ですから、イェール様とウィリア様の浮気で子供ができていたら、大変なことになっていたのです。しかしそれよりも先に、聖なる魂は生命を得ることに成功しました。聖なる魂、つまりオパールはアリアのお腹の中から魔王復活を妨害したのです」

 そこでエンティは国王を見た。
 敬意すら含まない冷えた視線である。

「ヴント国王陛下、これがどういう意味か分かりますか?」
「ど、どういう意味とは……? どういうことです……?」

 その答えに、エンティは目を細める。

「イェール様に現れた勇者の印とウィリア様を染めた聖女の青味はオパールの守護魔法です。オパールは勇者と聖女の力を増幅させて、二人が魔王の親にならぬよう守護していたのです。……あなたはそれを何だと判断しました?」

 国王の表情が、激しく引き攣る。
 そしてタラタラと冷や汗を流し始めた。

 あの怪奇現象を“呪い”と断じたのは、間違いだったのだ――
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