4 / 15
第4話
しおりを挟む
やがてわたくし達は貴賓室の椅子に落ち着きました。
国王陛下と王妃殿下は泣くのをやめてくれましたが、ガチガチに緊張しているようです。一方、グラキエス様は優雅にお茶を飲みつつ語り始めました。
「この国は妖精の恩恵と加護によって成り立っています。作物が実るのも妖精の力、魔物が侵入しないのも妖精の力。だからこそ、国王陛下と王妃殿下はその妖精の姫であるあなたを心から恐れていたのです。その気持ち、ご理解頂けるでしょうか?」
その言葉に、国王陛下と王妃殿下は激しく頷きます。
「その通り、儂は妖精姫様を恐ろしい方だと思っておりました……! その所為で、伯爵家の所業を知ることができず、大変申し訳なく思っております……!」
「ええ……! 姫様を苦しめた伯爵家の者達はすぐに処刑致しましょう……!」
「しょ、処刑!? いえ、それはしなくていいです!」
そう言うと、お二人は不安げに顔を見合わせました。わたくしが国王陛下に手紙を書いたのは、伯爵家の方達を叱ってほしいなと思ったからでした。しかし処刑してほしいとは思っていません。
「やはりリリウム様はお優しい。まあ、処刑などしなくてもリジューレ伯爵家は勝手に破滅して野垂れ死ぬでしょうけどね」
「うむ……そう言われれば、そうだな……」
「考えてみれば、それもそうね……」
グラキエス様の言葉に、国王夫妻は頷きます。確かに、わたくしが幸運を与えなくなった伯爵家は昔の状態に戻るでしょう。でももう手助けするつもりはありません。それより、自分の今後のことが気になります。
「あのう、話は変わりますが、わたくしに住む家を貸して頂けませんか?」
「住む家ですか……?」
「ここに住んで頂ければ……」
「宮廷ですか!? それはちょっと――」
狼狽えていると、グラキエス様が提案しました。
「では、フェジョン公爵家の養女になるのはどうです?」
「ああ、あの公爵家なら安心だな」
「そうね、あそこなら信頼できるわ」
わたくしは養女と聞いて、少し怖くなりました。
「で、でも……もう養女は……」
「大丈夫ですよ、リリウム様。フェジョン公爵夫妻は女の子が欲しくて養女を探していたところです。それにこれからも学園に通い続けるのでしょう? もしそうなら、公爵家に入った方が都合が良いはずです」
「確かに、学園には通い続けたいですね……」
「それでは、すぐに連絡致しましょう」
そして彼は公爵家と連絡を取ってくれました。公爵夫妻は養女が妖精姫だと知り、とても喜んでくれたそうです。何だか上手くやっていけそうな気がします。
こうしてわたくしはフェジョン公爵家の養女となりました。
今まで通り学園へ通えるのね、と胸を撫で下ろします。
翌日、元妹のロサが学園で問題を起こすとも知らずに――
国王陛下と王妃殿下は泣くのをやめてくれましたが、ガチガチに緊張しているようです。一方、グラキエス様は優雅にお茶を飲みつつ語り始めました。
「この国は妖精の恩恵と加護によって成り立っています。作物が実るのも妖精の力、魔物が侵入しないのも妖精の力。だからこそ、国王陛下と王妃殿下はその妖精の姫であるあなたを心から恐れていたのです。その気持ち、ご理解頂けるでしょうか?」
その言葉に、国王陛下と王妃殿下は激しく頷きます。
「その通り、儂は妖精姫様を恐ろしい方だと思っておりました……! その所為で、伯爵家の所業を知ることができず、大変申し訳なく思っております……!」
「ええ……! 姫様を苦しめた伯爵家の者達はすぐに処刑致しましょう……!」
「しょ、処刑!? いえ、それはしなくていいです!」
そう言うと、お二人は不安げに顔を見合わせました。わたくしが国王陛下に手紙を書いたのは、伯爵家の方達を叱ってほしいなと思ったからでした。しかし処刑してほしいとは思っていません。
「やはりリリウム様はお優しい。まあ、処刑などしなくてもリジューレ伯爵家は勝手に破滅して野垂れ死ぬでしょうけどね」
「うむ……そう言われれば、そうだな……」
「考えてみれば、それもそうね……」
グラキエス様の言葉に、国王夫妻は頷きます。確かに、わたくしが幸運を与えなくなった伯爵家は昔の状態に戻るでしょう。でももう手助けするつもりはありません。それより、自分の今後のことが気になります。
「あのう、話は変わりますが、わたくしに住む家を貸して頂けませんか?」
「住む家ですか……?」
「ここに住んで頂ければ……」
「宮廷ですか!? それはちょっと――」
狼狽えていると、グラキエス様が提案しました。
「では、フェジョン公爵家の養女になるのはどうです?」
「ああ、あの公爵家なら安心だな」
「そうね、あそこなら信頼できるわ」
わたくしは養女と聞いて、少し怖くなりました。
「で、でも……もう養女は……」
「大丈夫ですよ、リリウム様。フェジョン公爵夫妻は女の子が欲しくて養女を探していたところです。それにこれからも学園に通い続けるのでしょう? もしそうなら、公爵家に入った方が都合が良いはずです」
「確かに、学園には通い続けたいですね……」
「それでは、すぐに連絡致しましょう」
そして彼は公爵家と連絡を取ってくれました。公爵夫妻は養女が妖精姫だと知り、とても喜んでくれたそうです。何だか上手くやっていけそうな気がします。
こうしてわたくしはフェジョン公爵家の養女となりました。
今まで通り学園へ通えるのね、と胸を撫で下ろします。
翌日、元妹のロサが学園で問題を起こすとも知らずに――
938
あなたにおすすめの小説
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)
青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。
「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」
ですって!!
そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・
これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない)
前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。
【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています
春野オカリナ
恋愛
エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。
社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。
皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる