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第4話
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エイリスは抵抗したが、王子は力でねじ伏せてくる。
嫌悪と快楽が入り混じり、エイリスは泣き出しそうだった。
私は……かつて王子が好きだった……――
でもこんなのは……――
霞む意識の中で、王子が自分の胸に手を伸ばしたのが分かった。
しかし手が触れる寸前、剣が抜かれる音がした。
「そこまでです。それ以上、我が姫君に触れれば、殺します――」
「ぐっ……貴様……」
ようやく王子の口づけから解放され、エイリスは周囲を見渡した。
そこには剣を首に突きつけられた王子――そして剣を持った従者コーディがいた。
コーディは剣をゆっくり動かし、エイリスから王子を引き剥がす。
やがて扉の前まで移動させられた王子はこう喚いた。
「言っておくがな、誘ったのはそいつだぞ! その女は俺のことを……」
「馬鹿なことを。エイリス様はあなたのような人間など相手にしません」
「チッ……! またの機会に会おう、エイリス」
「そんな機会は永久に訪れません」
それだけ言うと、王子は部屋を出ていった。
コーディはすぐに剣を仕舞うと、エイリスへ跪いた。
従者コーディ――彼はエイリスに忠誠を誓う美しき青年である。
金髪碧眼の彼は王子よりも王子らしい、エイリスはそう思っていた。
「ありがとう。助かったわ、コーディ」
「いいえ、礼には及びません……我が姫君……」
俯くコーディの顔を覗くと、怒りに震えているのが分かった。
それを見たエイリスの胸が締め付けられる。
彼はきっと私の唇があの粗野な王子に奪われたことを怒っているのだ。
もしかして彼は私のことを――
しかし今はそれよりも気になることがある。
王子が私へ触れるなんて有り得ないと思った――しかし今それは達成された。
体の奥底から溢れてくる感覚が、エイリスの期待を湧かせていた。
「ところでコーディ。あなた、怪我はない?」
「怪我……ですか?」
「ええ、かすり傷でいいのだけど」
「かすり傷なら今朝、仕事の途中で負いましたが……」
コーディは恥ずかしそうに腕を捲り、エイリスに見せる。
そこには赤い引っかき傷がいくつか走っていた。
きっと木の枝にでも引っ掛けたのだろう。
エイリスは息を飲むと、その傷に手を翳して聖力を流した。
「あ、ああ……温かい……」
「ええ、いいわ。もう治っているわよ」
「治って……?」
コーディが自らの腕を見ると、そこに引っかき傷はなかった。
すべすべとした白い肌があるばかりで、傷跡すらない。
「ひ、姫君……! これは……!?」
「聖女の力のひとつ、治癒よ。私は――聖女の力を取り戻したの」
エイリスは自らの従者を見詰め、にっこりと微笑んだ。
あえて試してみなくとも、他の力も同様に使えることが感覚的に解る。
私はもう欠陥聖女じゃない。
完全な聖女なのだ――
嫌悪と快楽が入り混じり、エイリスは泣き出しそうだった。
私は……かつて王子が好きだった……――
でもこんなのは……――
霞む意識の中で、王子が自分の胸に手を伸ばしたのが分かった。
しかし手が触れる寸前、剣が抜かれる音がした。
「そこまでです。それ以上、我が姫君に触れれば、殺します――」
「ぐっ……貴様……」
ようやく王子の口づけから解放され、エイリスは周囲を見渡した。
そこには剣を首に突きつけられた王子――そして剣を持った従者コーディがいた。
コーディは剣をゆっくり動かし、エイリスから王子を引き剥がす。
やがて扉の前まで移動させられた王子はこう喚いた。
「言っておくがな、誘ったのはそいつだぞ! その女は俺のことを……」
「馬鹿なことを。エイリス様はあなたのような人間など相手にしません」
「チッ……! またの機会に会おう、エイリス」
「そんな機会は永久に訪れません」
それだけ言うと、王子は部屋を出ていった。
コーディはすぐに剣を仕舞うと、エイリスへ跪いた。
従者コーディ――彼はエイリスに忠誠を誓う美しき青年である。
金髪碧眼の彼は王子よりも王子らしい、エイリスはそう思っていた。
「ありがとう。助かったわ、コーディ」
「いいえ、礼には及びません……我が姫君……」
俯くコーディの顔を覗くと、怒りに震えているのが分かった。
それを見たエイリスの胸が締め付けられる。
彼はきっと私の唇があの粗野な王子に奪われたことを怒っているのだ。
もしかして彼は私のことを――
しかし今はそれよりも気になることがある。
王子が私へ触れるなんて有り得ないと思った――しかし今それは達成された。
体の奥底から溢れてくる感覚が、エイリスの期待を湧かせていた。
「ところでコーディ。あなた、怪我はない?」
「怪我……ですか?」
「ええ、かすり傷でいいのだけど」
「かすり傷なら今朝、仕事の途中で負いましたが……」
コーディは恥ずかしそうに腕を捲り、エイリスに見せる。
そこには赤い引っかき傷がいくつか走っていた。
きっと木の枝にでも引っ掛けたのだろう。
エイリスは息を飲むと、その傷に手を翳して聖力を流した。
「あ、ああ……温かい……」
「ええ、いいわ。もう治っているわよ」
「治って……?」
コーディが自らの腕を見ると、そこに引っかき傷はなかった。
すべすべとした白い肌があるばかりで、傷跡すらない。
「ひ、姫君……! これは……!?」
「聖女の力のひとつ、治癒よ。私は――聖女の力を取り戻したの」
エイリスは自らの従者を見詰め、にっこりと微笑んだ。
あえて試してみなくとも、他の力も同様に使えることが感覚的に解る。
私はもう欠陥聖女じゃない。
完全な聖女なのだ――
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