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4. 最初の罪
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真実の愛。
天翔がこの言葉に振り回されるようになってからしばらく経った。スマートフォンで検索してみても、名言や創作物が出てくるだけで、真実の愛そのものが得られることはなかった。残念でもないし、当然の結果だと思った。インターネットで調べて見つかるのなら、魔女化する病に蝕まれた人が殺されることはない。
では、真実の愛とはいったい何なのだろうか。
そもそも、天翔には、愛に真実も嘘もないように思えていた。愛とは、おしなべて真実のものであり、唯一のものではないのだろうか。愛していると嘘をつくことはあっても、それは最初から愛していないのであって、嘘の愛とは言えないのではないだろうか。
愛と言って初めに思いつくのは、やはり恋愛だろう。悠未が今すぐ彼氏を作れば、魔女化する病の進行は抑えられるのだろうか。そんな簡単な話なら、もっと多くの人が助かるのではないだろうか。命と引き換えになれば、恋人を作るくらい誰にだってできることだろう。
では、恋愛ではないとしたら、次に来るのは家族愛だろう。悠未の家族は仲が良いし、両親は悠未を愛しているように見える。家族愛でも真実の愛と見なされるなら、魔女化する病は怖いものではない。だが、これも恋愛と同じで、誰一人として得られなかったものというわけではないはずだ。つまり、家族愛でもない。
あとは親愛。これも、今までに誰か一人くらいは得ているものだろう。そこまで考えて、天翔はいつも行き詰まっていた。真実の愛と、これらの愛に何の違いがあるのか、天翔には全然わからなかった。
学校から帰ってきて、真実の愛について考えていたら、いつのまにか日が落ちていた。暗くなっていた部屋に電気を点けて、夕飯を求めて冷蔵庫の中を見る。知っていたが、冷蔵庫の中は飲料と調味料しか入っていない。買い物に行っていないのだから当然だ。
今日は自炊する気にならず、コンビニエンスストアで買ってこようと思った。まだ制服姿だったので、先に着替えることにする。近所のコンビニエンスストアに行くだけであれば、スエット姿でも問題ないだろうと思い、自分の部屋に行って着替える。
財布とスマートフォンを持って出かけようとしたら、突然スマートフォンが震えた。画面を見ると、悠未からの着信だった。普段はメッセージアプリでやり取りをしているのに、どうして電話をかけてきたのだろうか。嫌な予感がした。
「どうした?」
天翔が電話に出ると、悠未の荒い息遣いが電話越しに伝わってきた。
「て、てんちゃん、助けて」
「どうした? どこにいる?」
「家に、家にいるの。お願い、助けて」
「すぐ行く。どうした?」
靴を履いて家を出る。悠未の家はすぐ隣だから、五秒もあれば辿り着く。
悠未の家は電気が点いていた。しかし、妙に静かだった。まるで誰もいないかのようだ。
「殺しちゃったの」
電話の向こうで、悠未が言った。天翔はスマートフォンを落としそうになった。
殺した? 何を? どうやって?
このまま電話で話を続けるくらいなら、家に踏み込んだほうが早い。天翔はそう断じて、急いで悠未の家に向かい、玄関のドアを開けた。
家に入って最初に感じたのは、異臭だった。生臭い、まとわりついてくるような臭いが家中に立ち込めていた。天翔は鼻を覆いたくなるような臭いに顔をしかめながら、電気が点いているリビングへと向かう。
そして、天翔を出迎えたのは、赤だった。その赤い部屋の真ん中で、悠未が座っていた。
「な……なんだよ、これ……!」
天翔は絶句した。悠未が泣きながら天翔のほうを見ていた。
「てんちゃん、どうしよう。ねえ、どうしたらいい?」
そこにあったのは、惨劇だった。
平和な時間が流れていたはずのリビングで、ソファに座っている父親の首は無かった。ぐしゃぐしゃに潰れた肉片がそこかしこに散らばっていた。そして、母親の首だけがソファのすぐ足元に転がっていた。母親の身体はずだずたに切り裂かれて、皮とほんの少しの肉だけで繋がっているような状態だった。
リビング全体を赤く染めているのが両親の血液だと気づくのに時間がかかった。リビングに入ると異臭はいっそう強くなった。この異臭は両親の遺体から発せられているのだ。
悠未の両手は血で真っ赤に染まっていた。その手で涙を拭ったからか、頬にも赤い線が残っていた。
何かの間違いだ。自分は夢を見ているのだ。天翔はそう信じようとしたが、弾かれたように悠未が抱きついてきて、これは現実だと思い知った。
「てんちゃん、ねえ、どうしよう、どうしたらいいの?」
「な、何があったんだ。誰がこんなことを」
「わたしがやったの。でも、こんなつもりじゃなかった」
殺しちゃったの。悠未は確かにそう言った。天翔は悠未の肩を掴み、その双眸をじっと見つめた。悠未の瞳には涙が溜まっていて、また一筋零れ落ちていった。
「どうやって? どうしてこんなことを?」
「お父さんが。お父さんが、てんちゃんと付き合うのはやめなさいって」
「そんなの、前から言われてたことだろうが」
天翔の記憶では、今に始まったことではないはずだ。悠未の両親は天翔と離れるように言い続けてきた。それで親子喧嘩になったことも少なくない。今更こんな事態になるような話題ではないと思っていた。
けれど、悠未は泣きながら説明した。
「違うの! お父さんが、てんちゃんは悪い奴だから縁を切れって! お母さんも同じ気持ちだ、あの子は不良だからって言うから! てんちゃんのこと何も知らないくせにって思って、そしたら、こうなっちゃったの!」
「魔法を、使ったのか?」
「わかんない。わかんないの。でも、かぁっとなって、死んじゃえばいいんだって思った」
悠未は天翔の身体を抱きしめた。天翔は悠未を落ち着かせるように背中を撫でてやった。
魔法でやったのなら、この惨状も説明できる。人力では、悠未の力では到底成し得ない殺人だった。どんな切れ味の良い刃物を使ったとしても、ここまで小さな肉片を作ることはできないだろう。骨でさえ紙切れのように切り裂かれていた。
天翔は不思議と現状を受け入れることができた。悠未が取り乱しているのなら、自分がしっかりしなければならないという気持ちが湧いてきた。
どうする。まずは警察に連絡するのが正解だろう。だが、どう説明する? 悠未が魔法を使ってしまってこうなった、などと説明しても信じてもらえるだろうか。天翔でさえ、最初は魔法の存在を信じられなかったのだから、警察だって同じではないだろうか。
それに、警察に連絡してしまえば、犯人である悠未は逮捕されてしまうだろう。どうやって殺したにせよ、犯人は悠未なのだ。その後、厳しい取り調べを受けるに決まっている。魔法などという妄想を話す犯人をどのように扱うのか、天翔は考えたくもなかった。きっと精神鑑定が行われることだろう。それは、悠未にとって辛いものではないだろうか。
ならば。天翔は自分を落ち着かせるように深呼吸した。
「悠未。俺の話を聞け」
天翔は悠未の身体を抱きしめたまま、ゆっくりと話す。
「まず血を洗い流してこい。それから着替えて、二泊分くらいの着替えを鞄に詰めろ」
「て、てんちゃん? どうするの?」
「逃げるんだよ。いいか、できるだけ早くしろ」
天翔の決断は、逃亡だった。そうすることが悠未のためになると思った。捕まって酷い仕打ちを受けるくらいなら、山奥にでも逃げ込んで過ごすほうがよいように思えたのだ。
まだ混乱している悠未の両肩を掴み、天翔はまっすぐ悠未の瞳を見つめた。
「俺も準備してくる。終わったら戻ってくるから、お前はまず血を洗い流せ」
「う、うん、わかった。お父さんと、お母さんはどうするの?」
「もうどうにもならねえだろ。いいから、お前は自分のやることだけを考えろ」
「わ、わかった。シャワー浴びてくるね」
悠未はぱたぱたと走っていく。天翔も赤黒い空間から立ち去って、自分の部屋に急ぐ。天翔の服にも血が付いてしまったから、天翔も着替えなければならなかった。
逃げると言っても、どこへ? どこなら安心して過ごすことができる?
いや、先にこの死体を隠さなければならないのか? 隠すといっても、どうやって?
数々の疑問に苛まれながら、天翔はボストンバッグに着替えを詰め終える。自分の服も動きやすいものに着替えて、再び悠未の家に戻る。
天翔が戻ってくると、ちょうど悠未がシャワーを浴び終えたところだった。悠未はシャツワンピースに着替えていた。手などに付いていた血は洗い流されて、洗い立ての服を着てしまえば、見た目には人を殺したとはわからない。
「てんちゃん、早いね。わたし、これから荷物準備するね」
「早くしろよ。二泊分くらいでいいから」
「うん。なんだか、旅行みたいだね」
悠未は今の状況にそぐわない笑みを見せた。天翔には笑って返す余裕がなかった。
これは旅行ではない。逃避行だ。ゆっくり観光している暇はないし、観光地に行くはずがない。どうして悠未はこんなに呑気なのか。天翔は焦燥感で心が焼かれそうだった。
もう一度現場に戻ってくる。もはや慣れた異臭と、赤黒い光景。これを隠すのは無理だ。発見されないことを祈るしかない。すぐに発見されるだろうが、それまでにできるだけ遠くに逃げなければならない。
天翔はリビングから出て、その光景に蓋をするようにドアを閉めた。これ以上自分にできることはないと思った。それよりも、早く悠未と合流してこの家から出ることを考えるほうがよいだろう。
悠未は何をしているのだろうか。焦れて、天翔は二階にある悠未の部屋まで行った。
「あっ、てんちゃん。ねえ、制服じゃないほうがいいよね?」
悠未はのんびりと服を選んでいた。クローゼットや引き出しから引っ張り出された服が散らばっている。天翔は頭を抱えたくなった。どうして悠未は緊張感も焦燥感もないのだろうか。
「できるだけ大人っぽい格好にしろよ。補導されたら終わりなんだからな」
「そっか。じゃあ、ロングスカートにしよっかな」
「何でもいいから早くしろ。あと一分」
「ええ? そんなぁ」
「あと一分で下りてこいよ。下で待ってる」
「はぁい。頑張る」
天翔は一階に戻り、玄関で待つことにした。二階に行ったからか、あの異臭がまた天翔の鼻をつく。天翔にこれが現実だと教え込んでくる。
逃げる。どこへ? 車を運転できるわけでもないのに、どうやって? 今日の夜を越せる場所さえ思いついていないのに、どうやって逃げるというのか。いや、逃げるという選択肢は正しいのだろうか。一度逃げてしまえば、もう逃げる以外の選択肢はなくなってしまうのではないか。かえって自分たちの首を絞めることにならないだろうか。
黙って待っていると、いくつもの解決できない疑問が湧いてくる。誰かに正解へと導いてほしかった。これが正しい選択肢だと教えてほしかった。
程なくして悠未がボストンバッグを持って下りてくる。バッグはそれなりに膨らんでいて、天翔が思っているよりも大きな荷物だった。しかし、今から荷物を減らせと言うのも時間がかかってしまう気がして、天翔はその言葉を飲み込んだ。
「行くぞ。スニーカーにしろよ」
「うん。歩きやすい靴だよね」
悠未は履き慣れたスニーカーを履く。これからたくさん歩くということは理解しているようだったが、やはりどうにも緊張感がなかった。親を殺したという動揺さえ、今では治まっているようだった。
天翔は不思議に感じたが、逃げることを優先した。玄関のドアを開けて、外に出る。暗くなってきているとはいえ、まだそこまで寒さは感じられない。
「鍵かけてくれ。留守を装ってもらう」
悠未が鍵をかけるのを確認して、天翔は夕闇の中を歩き出した。悠未も横に並ぶ。
とにかくこの家から離れなければならない。死体が見つかる前に、とにかく遠くへ行かなければならない。となれば、やはり電車を利用することになる。車を利用できればよかったのに。
「てんちゃん、どこに行くの?」
悠未の声は明るかった。逃げているという実感がないのだろうか。まるで、何事もなくただ二人で出かけているかのようだった。
どこに行くのか。それは天翔にもわからなかった。
「電車に乗る。駅に行くぞ」
「はぁい」
駅に行って、電車に乗って、それから? 天翔はその問いに答えられなかった。ただ、この場所から離れることだけを考えていた。
大通りに出ると、パトカーが目の前を通っていった。天翔はぎくりとしたが、呼び止められるはずもなく、パトカーは交差点の向こうへと消えていく。今はまだ追われる立場ではないが、時間の問題だろう。大通りを歩くのは避けたほうがよいかもしれないと思った。防犯カメラの映像などから、自分たちの足取りを辿られてしまう可能性が高い。
そこで、天翔はふと気づいた。
「悠未、魔法ってどこまで使えるんだ?」
「ん? どういうこと?」
「例えば、防犯カメラに俺たちの姿が映らないようにすることはできるのか?」
天翔の問いに、悠未は曖昧に頷いてみせた。
「できなくはないと思うけど、どこに防犯カメラがあるかわかんないと無理だよ」
「じゃあ、駅の改札とか、ホームとか、あるってわかってる場所ならできるのか?」
「うぅん、駅に着いたらやってみるね」
「ああ。悪いけど、お前が頼りなんだ」
天翔がそう言うと、悠未は嬉しそうに頬を緩ませた。
馬鹿正直に逃げる必要などないのだ。こちらは既に殺人者なのだから、逃げる時に罪を犯しても気にすることはない。どうせ捕まったら終わりなのだから、魔法をどんどん使って逃げればよい。魔法があれば、追跡を妨害することなど容易いはずだ。魔法を効果的に使えるように悠未を誘導してやればよい。そう考えると、天翔にも少し余裕が出てきた。
駅までは大通りを通って十五分程度だ。街灯に明るく照らされると、自分の顔が見られていそうで嫌だった。天翔は俯きがちになりながら早足で駅を目指す。
「てんちゃん、早いよ。もうちょっとゆっくり歩いて」
悠未が小走りになって天翔の手を掴んだ。天翔ははっとして、悠未の手を握り返した。
「悪い。急ぎすぎだな」
焦って悪目立ちするのもよくない。天翔は星が散らばる空を一度仰ぎ見て、悠未の歩く速度に合わせるようにする。ひどくゆっくりに感じられたが、それでも悠未にとっては早足なのだろうと自分を納得させた。
駅が近づくと、人の数も多くなってくる。誰かが自分を覚えていたら。そう思うだけで天翔は焦燥感に駆られた。早く、早く、どこかに逃げなければ。
駅に着く。天翔は駅の構内には入らず、その横に悠未を連れてきた。悠未は天翔の行動が理解できず、不思議そうに尋ねた。
「てんちゃん、行かないの?」
「先に防犯カメラを潰してほしい。エスカレーターに付いてるだろ」
改札に繋がるエスカレーターには、盗撮防止用の防犯カメラが付いている。天翔はそれを嫌った。できることなら全ての防犯カメラを潰してしまいたかった。自分たちの痕跡が残るのは好ましくないと思っていた。
悠未は少し悩んでから、指先をくるくると動かした。
「あ、いけるかも。これで、こうして、こう!」
悠未の指先が淡く光る。指先に灯った光球は天翔と悠未の周りを飛び、弾けて消えた。
しかし、何かが変わったようには見えなかった。天翔は不安になり、悠未に問うた。
「今、何をしたんだ?」
「防犯カメラがわたしたちを認識しないようにしたの。これで、カメラには映らないはず」
「そんなことできんのかよ。万能だな」
「えへへぇ、すごいでしょう?」
悠未は得意げな顔をしていた。天翔も頷き、悠未の機転を褒める。
「助かる。これでどこに逃げたかはわからねえはずだ」
「うん。それで、どこに行くの?」
それが最大の問題だった。天翔には、どこに逃げたらよいのかは皆目見当もつかない。かと言って、目的もなく電車に乗るのは命取りだろう。時間を浪費してしまう。
天翔は少しだけ考えてから、悠未に答えた。
「新幹線に乗る。切符買いに行くぞ」
「新幹線! わたし乗るの初めてなんだぁ」
悠未の呑気な発言は無視して、天翔は悠未を連れて駅の窓口に向かう。窓口は幸いにも空いていて、すぐに二人分の切符を買うことができた。駅員は二人の様子を怪しむこともなく、事務的に対応していた。駅員の記憶に残らないことを祈りながら、天翔は窓口を離れる。
悠未は窓口の駅員のほうを見ていたが、天翔が新幹線の切符を渡すと、切符を物珍しそうに眺めた。初めて手にする切符に、悠未は興奮していた。
「こんな感じなんだね、切符って」
「なくすなよ。改札出る時に使うし、新幹線乗ってる間にも見せるかもしれねえからな」
「大丈夫だよぉ、そんな子どもじゃないんだからね」
「そうかよ。行くぞ」
天翔は悠未の手を引いて、駅の改札を抜ける。二人の逃避行の始まりだった。
天翔がこの言葉に振り回されるようになってからしばらく経った。スマートフォンで検索してみても、名言や創作物が出てくるだけで、真実の愛そのものが得られることはなかった。残念でもないし、当然の結果だと思った。インターネットで調べて見つかるのなら、魔女化する病に蝕まれた人が殺されることはない。
では、真実の愛とはいったい何なのだろうか。
そもそも、天翔には、愛に真実も嘘もないように思えていた。愛とは、おしなべて真実のものであり、唯一のものではないのだろうか。愛していると嘘をつくことはあっても、それは最初から愛していないのであって、嘘の愛とは言えないのではないだろうか。
愛と言って初めに思いつくのは、やはり恋愛だろう。悠未が今すぐ彼氏を作れば、魔女化する病の進行は抑えられるのだろうか。そんな簡単な話なら、もっと多くの人が助かるのではないだろうか。命と引き換えになれば、恋人を作るくらい誰にだってできることだろう。
では、恋愛ではないとしたら、次に来るのは家族愛だろう。悠未の家族は仲が良いし、両親は悠未を愛しているように見える。家族愛でも真実の愛と見なされるなら、魔女化する病は怖いものではない。だが、これも恋愛と同じで、誰一人として得られなかったものというわけではないはずだ。つまり、家族愛でもない。
あとは親愛。これも、今までに誰か一人くらいは得ているものだろう。そこまで考えて、天翔はいつも行き詰まっていた。真実の愛と、これらの愛に何の違いがあるのか、天翔には全然わからなかった。
学校から帰ってきて、真実の愛について考えていたら、いつのまにか日が落ちていた。暗くなっていた部屋に電気を点けて、夕飯を求めて冷蔵庫の中を見る。知っていたが、冷蔵庫の中は飲料と調味料しか入っていない。買い物に行っていないのだから当然だ。
今日は自炊する気にならず、コンビニエンスストアで買ってこようと思った。まだ制服姿だったので、先に着替えることにする。近所のコンビニエンスストアに行くだけであれば、スエット姿でも問題ないだろうと思い、自分の部屋に行って着替える。
財布とスマートフォンを持って出かけようとしたら、突然スマートフォンが震えた。画面を見ると、悠未からの着信だった。普段はメッセージアプリでやり取りをしているのに、どうして電話をかけてきたのだろうか。嫌な予感がした。
「どうした?」
天翔が電話に出ると、悠未の荒い息遣いが電話越しに伝わってきた。
「て、てんちゃん、助けて」
「どうした? どこにいる?」
「家に、家にいるの。お願い、助けて」
「すぐ行く。どうした?」
靴を履いて家を出る。悠未の家はすぐ隣だから、五秒もあれば辿り着く。
悠未の家は電気が点いていた。しかし、妙に静かだった。まるで誰もいないかのようだ。
「殺しちゃったの」
電話の向こうで、悠未が言った。天翔はスマートフォンを落としそうになった。
殺した? 何を? どうやって?
このまま電話で話を続けるくらいなら、家に踏み込んだほうが早い。天翔はそう断じて、急いで悠未の家に向かい、玄関のドアを開けた。
家に入って最初に感じたのは、異臭だった。生臭い、まとわりついてくるような臭いが家中に立ち込めていた。天翔は鼻を覆いたくなるような臭いに顔をしかめながら、電気が点いているリビングへと向かう。
そして、天翔を出迎えたのは、赤だった。その赤い部屋の真ん中で、悠未が座っていた。
「な……なんだよ、これ……!」
天翔は絶句した。悠未が泣きながら天翔のほうを見ていた。
「てんちゃん、どうしよう。ねえ、どうしたらいい?」
そこにあったのは、惨劇だった。
平和な時間が流れていたはずのリビングで、ソファに座っている父親の首は無かった。ぐしゃぐしゃに潰れた肉片がそこかしこに散らばっていた。そして、母親の首だけがソファのすぐ足元に転がっていた。母親の身体はずだずたに切り裂かれて、皮とほんの少しの肉だけで繋がっているような状態だった。
リビング全体を赤く染めているのが両親の血液だと気づくのに時間がかかった。リビングに入ると異臭はいっそう強くなった。この異臭は両親の遺体から発せられているのだ。
悠未の両手は血で真っ赤に染まっていた。その手で涙を拭ったからか、頬にも赤い線が残っていた。
何かの間違いだ。自分は夢を見ているのだ。天翔はそう信じようとしたが、弾かれたように悠未が抱きついてきて、これは現実だと思い知った。
「てんちゃん、ねえ、どうしよう、どうしたらいいの?」
「な、何があったんだ。誰がこんなことを」
「わたしがやったの。でも、こんなつもりじゃなかった」
殺しちゃったの。悠未は確かにそう言った。天翔は悠未の肩を掴み、その双眸をじっと見つめた。悠未の瞳には涙が溜まっていて、また一筋零れ落ちていった。
「どうやって? どうしてこんなことを?」
「お父さんが。お父さんが、てんちゃんと付き合うのはやめなさいって」
「そんなの、前から言われてたことだろうが」
天翔の記憶では、今に始まったことではないはずだ。悠未の両親は天翔と離れるように言い続けてきた。それで親子喧嘩になったことも少なくない。今更こんな事態になるような話題ではないと思っていた。
けれど、悠未は泣きながら説明した。
「違うの! お父さんが、てんちゃんは悪い奴だから縁を切れって! お母さんも同じ気持ちだ、あの子は不良だからって言うから! てんちゃんのこと何も知らないくせにって思って、そしたら、こうなっちゃったの!」
「魔法を、使ったのか?」
「わかんない。わかんないの。でも、かぁっとなって、死んじゃえばいいんだって思った」
悠未は天翔の身体を抱きしめた。天翔は悠未を落ち着かせるように背中を撫でてやった。
魔法でやったのなら、この惨状も説明できる。人力では、悠未の力では到底成し得ない殺人だった。どんな切れ味の良い刃物を使ったとしても、ここまで小さな肉片を作ることはできないだろう。骨でさえ紙切れのように切り裂かれていた。
天翔は不思議と現状を受け入れることができた。悠未が取り乱しているのなら、自分がしっかりしなければならないという気持ちが湧いてきた。
どうする。まずは警察に連絡するのが正解だろう。だが、どう説明する? 悠未が魔法を使ってしまってこうなった、などと説明しても信じてもらえるだろうか。天翔でさえ、最初は魔法の存在を信じられなかったのだから、警察だって同じではないだろうか。
それに、警察に連絡してしまえば、犯人である悠未は逮捕されてしまうだろう。どうやって殺したにせよ、犯人は悠未なのだ。その後、厳しい取り調べを受けるに決まっている。魔法などという妄想を話す犯人をどのように扱うのか、天翔は考えたくもなかった。きっと精神鑑定が行われることだろう。それは、悠未にとって辛いものではないだろうか。
ならば。天翔は自分を落ち着かせるように深呼吸した。
「悠未。俺の話を聞け」
天翔は悠未の身体を抱きしめたまま、ゆっくりと話す。
「まず血を洗い流してこい。それから着替えて、二泊分くらいの着替えを鞄に詰めろ」
「て、てんちゃん? どうするの?」
「逃げるんだよ。いいか、できるだけ早くしろ」
天翔の決断は、逃亡だった。そうすることが悠未のためになると思った。捕まって酷い仕打ちを受けるくらいなら、山奥にでも逃げ込んで過ごすほうがよいように思えたのだ。
まだ混乱している悠未の両肩を掴み、天翔はまっすぐ悠未の瞳を見つめた。
「俺も準備してくる。終わったら戻ってくるから、お前はまず血を洗い流せ」
「う、うん、わかった。お父さんと、お母さんはどうするの?」
「もうどうにもならねえだろ。いいから、お前は自分のやることだけを考えろ」
「わ、わかった。シャワー浴びてくるね」
悠未はぱたぱたと走っていく。天翔も赤黒い空間から立ち去って、自分の部屋に急ぐ。天翔の服にも血が付いてしまったから、天翔も着替えなければならなかった。
逃げると言っても、どこへ? どこなら安心して過ごすことができる?
いや、先にこの死体を隠さなければならないのか? 隠すといっても、どうやって?
数々の疑問に苛まれながら、天翔はボストンバッグに着替えを詰め終える。自分の服も動きやすいものに着替えて、再び悠未の家に戻る。
天翔が戻ってくると、ちょうど悠未がシャワーを浴び終えたところだった。悠未はシャツワンピースに着替えていた。手などに付いていた血は洗い流されて、洗い立ての服を着てしまえば、見た目には人を殺したとはわからない。
「てんちゃん、早いね。わたし、これから荷物準備するね」
「早くしろよ。二泊分くらいでいいから」
「うん。なんだか、旅行みたいだね」
悠未は今の状況にそぐわない笑みを見せた。天翔には笑って返す余裕がなかった。
これは旅行ではない。逃避行だ。ゆっくり観光している暇はないし、観光地に行くはずがない。どうして悠未はこんなに呑気なのか。天翔は焦燥感で心が焼かれそうだった。
もう一度現場に戻ってくる。もはや慣れた異臭と、赤黒い光景。これを隠すのは無理だ。発見されないことを祈るしかない。すぐに発見されるだろうが、それまでにできるだけ遠くに逃げなければならない。
天翔はリビングから出て、その光景に蓋をするようにドアを閉めた。これ以上自分にできることはないと思った。それよりも、早く悠未と合流してこの家から出ることを考えるほうがよいだろう。
悠未は何をしているのだろうか。焦れて、天翔は二階にある悠未の部屋まで行った。
「あっ、てんちゃん。ねえ、制服じゃないほうがいいよね?」
悠未はのんびりと服を選んでいた。クローゼットや引き出しから引っ張り出された服が散らばっている。天翔は頭を抱えたくなった。どうして悠未は緊張感も焦燥感もないのだろうか。
「できるだけ大人っぽい格好にしろよ。補導されたら終わりなんだからな」
「そっか。じゃあ、ロングスカートにしよっかな」
「何でもいいから早くしろ。あと一分」
「ええ? そんなぁ」
「あと一分で下りてこいよ。下で待ってる」
「はぁい。頑張る」
天翔は一階に戻り、玄関で待つことにした。二階に行ったからか、あの異臭がまた天翔の鼻をつく。天翔にこれが現実だと教え込んでくる。
逃げる。どこへ? 車を運転できるわけでもないのに、どうやって? 今日の夜を越せる場所さえ思いついていないのに、どうやって逃げるというのか。いや、逃げるという選択肢は正しいのだろうか。一度逃げてしまえば、もう逃げる以外の選択肢はなくなってしまうのではないか。かえって自分たちの首を絞めることにならないだろうか。
黙って待っていると、いくつもの解決できない疑問が湧いてくる。誰かに正解へと導いてほしかった。これが正しい選択肢だと教えてほしかった。
程なくして悠未がボストンバッグを持って下りてくる。バッグはそれなりに膨らんでいて、天翔が思っているよりも大きな荷物だった。しかし、今から荷物を減らせと言うのも時間がかかってしまう気がして、天翔はその言葉を飲み込んだ。
「行くぞ。スニーカーにしろよ」
「うん。歩きやすい靴だよね」
悠未は履き慣れたスニーカーを履く。これからたくさん歩くということは理解しているようだったが、やはりどうにも緊張感がなかった。親を殺したという動揺さえ、今では治まっているようだった。
天翔は不思議に感じたが、逃げることを優先した。玄関のドアを開けて、外に出る。暗くなってきているとはいえ、まだそこまで寒さは感じられない。
「鍵かけてくれ。留守を装ってもらう」
悠未が鍵をかけるのを確認して、天翔は夕闇の中を歩き出した。悠未も横に並ぶ。
とにかくこの家から離れなければならない。死体が見つかる前に、とにかく遠くへ行かなければならない。となれば、やはり電車を利用することになる。車を利用できればよかったのに。
「てんちゃん、どこに行くの?」
悠未の声は明るかった。逃げているという実感がないのだろうか。まるで、何事もなくただ二人で出かけているかのようだった。
どこに行くのか。それは天翔にもわからなかった。
「電車に乗る。駅に行くぞ」
「はぁい」
駅に行って、電車に乗って、それから? 天翔はその問いに答えられなかった。ただ、この場所から離れることだけを考えていた。
大通りに出ると、パトカーが目の前を通っていった。天翔はぎくりとしたが、呼び止められるはずもなく、パトカーは交差点の向こうへと消えていく。今はまだ追われる立場ではないが、時間の問題だろう。大通りを歩くのは避けたほうがよいかもしれないと思った。防犯カメラの映像などから、自分たちの足取りを辿られてしまう可能性が高い。
そこで、天翔はふと気づいた。
「悠未、魔法ってどこまで使えるんだ?」
「ん? どういうこと?」
「例えば、防犯カメラに俺たちの姿が映らないようにすることはできるのか?」
天翔の問いに、悠未は曖昧に頷いてみせた。
「できなくはないと思うけど、どこに防犯カメラがあるかわかんないと無理だよ」
「じゃあ、駅の改札とか、ホームとか、あるってわかってる場所ならできるのか?」
「うぅん、駅に着いたらやってみるね」
「ああ。悪いけど、お前が頼りなんだ」
天翔がそう言うと、悠未は嬉しそうに頬を緩ませた。
馬鹿正直に逃げる必要などないのだ。こちらは既に殺人者なのだから、逃げる時に罪を犯しても気にすることはない。どうせ捕まったら終わりなのだから、魔法をどんどん使って逃げればよい。魔法があれば、追跡を妨害することなど容易いはずだ。魔法を効果的に使えるように悠未を誘導してやればよい。そう考えると、天翔にも少し余裕が出てきた。
駅までは大通りを通って十五分程度だ。街灯に明るく照らされると、自分の顔が見られていそうで嫌だった。天翔は俯きがちになりながら早足で駅を目指す。
「てんちゃん、早いよ。もうちょっとゆっくり歩いて」
悠未が小走りになって天翔の手を掴んだ。天翔ははっとして、悠未の手を握り返した。
「悪い。急ぎすぎだな」
焦って悪目立ちするのもよくない。天翔は星が散らばる空を一度仰ぎ見て、悠未の歩く速度に合わせるようにする。ひどくゆっくりに感じられたが、それでも悠未にとっては早足なのだろうと自分を納得させた。
駅が近づくと、人の数も多くなってくる。誰かが自分を覚えていたら。そう思うだけで天翔は焦燥感に駆られた。早く、早く、どこかに逃げなければ。
駅に着く。天翔は駅の構内には入らず、その横に悠未を連れてきた。悠未は天翔の行動が理解できず、不思議そうに尋ねた。
「てんちゃん、行かないの?」
「先に防犯カメラを潰してほしい。エスカレーターに付いてるだろ」
改札に繋がるエスカレーターには、盗撮防止用の防犯カメラが付いている。天翔はそれを嫌った。できることなら全ての防犯カメラを潰してしまいたかった。自分たちの痕跡が残るのは好ましくないと思っていた。
悠未は少し悩んでから、指先をくるくると動かした。
「あ、いけるかも。これで、こうして、こう!」
悠未の指先が淡く光る。指先に灯った光球は天翔と悠未の周りを飛び、弾けて消えた。
しかし、何かが変わったようには見えなかった。天翔は不安になり、悠未に問うた。
「今、何をしたんだ?」
「防犯カメラがわたしたちを認識しないようにしたの。これで、カメラには映らないはず」
「そんなことできんのかよ。万能だな」
「えへへぇ、すごいでしょう?」
悠未は得意げな顔をしていた。天翔も頷き、悠未の機転を褒める。
「助かる。これでどこに逃げたかはわからねえはずだ」
「うん。それで、どこに行くの?」
それが最大の問題だった。天翔には、どこに逃げたらよいのかは皆目見当もつかない。かと言って、目的もなく電車に乗るのは命取りだろう。時間を浪費してしまう。
天翔は少しだけ考えてから、悠未に答えた。
「新幹線に乗る。切符買いに行くぞ」
「新幹線! わたし乗るの初めてなんだぁ」
悠未の呑気な発言は無視して、天翔は悠未を連れて駅の窓口に向かう。窓口は幸いにも空いていて、すぐに二人分の切符を買うことができた。駅員は二人の様子を怪しむこともなく、事務的に対応していた。駅員の記憶に残らないことを祈りながら、天翔は窓口を離れる。
悠未は窓口の駅員のほうを見ていたが、天翔が新幹線の切符を渡すと、切符を物珍しそうに眺めた。初めて手にする切符に、悠未は興奮していた。
「こんな感じなんだね、切符って」
「なくすなよ。改札出る時に使うし、新幹線乗ってる間にも見せるかもしれねえからな」
「大丈夫だよぉ、そんな子どもじゃないんだからね」
「そうかよ。行くぞ」
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