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第二話

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ハイ皆さん、ご無沙汰でございます。
モエラニアです。
14歳になりましたー。
なんとまあ、今日は学園の入学式ですー。
初日テストあるんですよ、やばない?
結果発表は明日。
だから、入学して次の日、びりを取ったら退学。
うわー、絶対やだー。
もちろん、準備万全だけどね。
この半年間、大学受験するかのように頑張った。
三教科だけれど、一度前世でやったし、問題は応用が半分だから簡単に勉強できたわけじゃない。
お父さまがかてきょ(無駄なところに金使う余裕ないんで)になってくれて、効率よく勉強できたっ!
だから、ぜーーーったい、ビリは取らない。
むしろ、一位取ってアンナに高らかに宣言する予定。
モブ舐めるな!!!ってね。


入学式の長ったらしい話を聞き終えて教室へ行く。
私は、Aクラスだった。
ちなみにヒロインはまだ見てないし、殿下も見てないけど、同じクラスだろう。
自由席と言うことで、無難に一番後ろの一番窓側。
隣は誰が座るんだろう。
可愛い女の子とか、とりあえず仲良くなれそうな人がいいな・・・あ・・・ん?!
ぎょっとしていると、隣に、ある人物が座った。
ぼちぼち入ってきたクラスメイトがこちらに視線を送る中、彼はニコリと言う。

「はじめまして、モエラニア嬢。」

私は慌てる。
なぜ・・・・な、ぜ?!
ヒロインの隣に座るはずでしょ!!
たまたま隣になるイベント作ったスタッフ出てきてよ!!
って、いかんいかん。
挨拶をしなくては。

「は、はじめまして。エルローク殿下・・・」

恐る恐る見あげると、にっこりと笑う。
うっ、顔がいい!
そしてもって、心臓に悪い・・・・
その時、ヒロインが入ってきた。
私の知ってる通り、一番前の席に座る。
私は彼女を見て唖然とする。
わ、わ、わあ・・・・美人すぎるでしょう!!!
他の男子生徒も、ぼぉーっと眺めてるみたいだし・・・・
で、殿下、どうかヒロインである、アリアトミーさんの隣へ行ってあげて下さい・・・
殿下って後ろの席好きなんですか、じゃあ私が席選び失敗したなあ。
なんといっても、目立つし!!!
高等部に上がりたいとは言ったけど、目立ちたいとは一言も言っていない!
なぜなら・・・・

「ねえ見て。殿下の隣、下っ端貴族のユーズルの娘ではなくって?」
「そうね。殿下もお優しいこと。」
「どうせすぐいなくなるわよ。家庭教師を雇うお金も余っていないみたいだから。」
「ふふっ、楽しみですわ。」

くすくすと笑うお二人さん。
殿下は困ったような顔をしてくれたけれど、私が黙っているわけない。
思ったことはすぐ言うタイプ。
言わなきゃすっきりしないのが、今の、モエラニア、なのだから。
あの二人は聞こえないと思って言っているのだろうか。
私はすくっと立ち上がった。

「お二人とも全部聞こえてましたよ。」

クラスはしいん、と静かになる。
二人は慌てて顔を見合わせて、反論しようとする。
にしても、さすが令嬢。
美人すぎでは?

「そ、そんなの事実を言っただけでしょう・・・・!」

いやまあ、事実っすけどね。
私だからよかったけど、他の人の悪口とか言ったら、プライド高い人が多いからただじゃすまないと思いますよ?

「事実でも何でも。例えその人が気に入らなくても、堂々とそんなこと言ってはいけませんよ。」
「なっ・・・・」

生意気な・・・とでも言おうとしたのだろう。
私は我慢ならず、被せるように言う。

「せっかくお綺麗でかわいくて美人なんですから、性格も天使にしましょう。絶対モテるよ!」

最後の方は私の欲が入っていたのか、つい、ですますつけ忘れた・・・・
クラスのみんなも、驚いて私を見る。
二人も、まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのか、茫然としている。
私は首を傾げた。
あれ、二人とも、鏡見たことないのかな?
それとも、この世界ではこれが普通?
美人すぎなのには、さすがに気づいてるものでしょ?!
謎の沈黙が流れる中、殿下がフォローしてくれる。

「モエラニア嬢の言う通りだね。せっかくの家柄にも泥を塗ることになるよ?」

にこりという殿下に対して、二人は、も、申し訳ありません!と私たちから一番遠いところにすわる。
それを機に、みんなも席に座ったり、おしゃべりし始めたり・・・・
私は殿下にぺこりと頭を下げる。

「殿下、助かりました。ありがとうございます。」

殿下は苦笑する。

「最初は力になれなくてごめん。かっこいいなと思った。こちらこそありがとう。」

ん?
ありがとう?
というか、曲がりなりにも令嬢にカッコイイと言う言葉は、誉め言葉なのか?
それとも、女らしくないとディスられている・・・・?

「よかったら、仲よくしてくれないかな。」

うっ・・・
まぶしい笑顔が心臓に直撃する。
ここでの答え方はただ一つ。
よろしくお願いしますだ・・・!
どうしよう。
殿下にはヒロインと結びついてもらわないと・・・イベントとか私には荷が重い!
そ、それに・・・変に殿下と仲良くしたら目付けられそうだし!
ああ、こゆときにヒロインがいてくれれば・・・!

「エ、エル様と呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか?!」

う、わあ、しまったぁーーーー!!
つい頭をぐるぐると考えていたら、ヒロインのセリフを言ってしまった・・・
しかも、このセリフ、殿下と仲良くなった後に言うやつなんですけどーー!!
殿下は相変わらずきょとんとしているし。
終わった。
私の人生、終わった・・・

「エル・・・ああ、僕の最初の名前を取ったんだね。」

左様でございます・・・
殿下は何か言いたげだったけど、ニコリと微笑んでくれた。

「わかった。エルでいいよ。じゃあ君のことは、モエ嬢と呼ばせてもらうね。」

気が利きますね、ありがとうございます。
そして待ちに待ったテストが始まった。
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