騎士団長、狼王の花嫁になるーー拾った子犬はワーウルフの王子でした

鳥海あおい

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第一章 騎士団長と小狼

5.狩りへ

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それからほどなくしての晴れたある日、グレンは弓を持って山に登っていた。

青い空にはほとんど雲もなく、天気が崩れる心配がなさそうなのを確認する。
ブルーは家に置いてきた。不満そうに唸っていたがやはり狩りに連れて行くにはまだ小さすぎると思ったのだ。

この村では狩りをする人はほとんどいないらしいが、動物はけっこう生息しているらしいと聞いた。
小さなものだとウサギ、イタチや狐、大きい獲物は鹿などもいるらい。
果物やキノコ、薬草も生えているので、下見のつもりだったグレンはついついゆっくり採取しながら山を登っていった。食卓は賑やかになりそうだったが、なかなか動物には出会えない。
何匹か鳥を射るのには成功したが、拾うのに難儀したので、やはりブルーを連れてくればよかったと早速後悔した。

(動物を仕留めるにもブルーが追ってくれれば効果的に仕留められるな)

訓練はしないといけないかもしれないが、ブルーは賢いし言葉をよく聞き分けるからきっとあっという間に猟犬としての仕事も覚えてしまうだろうと思う。

(あいつを連れてきてやればよかった)

そんなことを思う。
いつも足下にくっついて跳ねるように歩く毛玉のようなのがいないと、グレンはさみしくてたまらなかった。
よく考えると拾った日から片時も離れたことがなかった。

山の地形を確認しながら道なき道をすすんでいたのだが、少し開けたところに出て休憩しようと倒木に座ったところでグレンは凍り付いた。

小熊が2匹、グレンのほうを見ていた。
小さくて可愛い。
可愛い・・・が、小熊がいるということは親熊も近くにいることは間違いなく、グレンはぞっとした。

(この山に熊がいるなんて、油断してしまった!)

熊は危険な動物であるが、備えもなく、グレンは今日は弓しか持ってきていない。
腕力があるから強弓ではあるが、その威力だけでは小熊ならともかく、親熊を仕留めるのは難しいだろう。
グレンは急いでその場を離れようと立ち上がったが、時すでに遅しだった。
藪をならしてひときわ黒く大きな熊がグレンをめがけて歩いてくる。
小熊がいるので、いつもよりさらに凶暴になっていることを察知し、グレンはごくりと息をのんだ。
静かに弓に矢をつがえて構える。
突進されたらひとたまりもない。
だが、矢くらいでは体にあてても突進をとめられないどころか、逆上させてしまうだろう。
目を狙うしかない・・・と思って慎重に狙いを定める。 
熊が唸りながら威嚇してくると、背中を汗がつたった。


弓を引き絞りながらグレンは熊がこのまま去ってしまうことを祈ったが、熊は対峙したまま動かなかった。
弦をひいた指が震える。

その拮抗を覆したのはいきなり飛び出してきた黒い影だった。
まるで疾風のようなそれは、熊とグレンの間に立ちふさがった。

「ブルー!!」

グレンはおもわず叫んだ。
驚いた表紙に弦を押さえる手が緩んで矢を落としそうになってしまう。
ブルーは家の中においてきたはずだが、どうにかしててか出てきて匂いをたよりにおいついてきたのだろう。

「ブルー、下がれ!!」

叫んだがブルーはちらりとグレンを見ると、熊に向かってウー、と威嚇の唸り声をあげた。

首と背中の毛が逆だって、唇がまくりあがり、小さいが白い鋭い牙が見える。
小さな目によらずこわい唸り声に驚いたのか、いきなりとびでてきたことにびっくりしたのか、熊は後ずさった。
そして、小熊をともなって藪の中へと消えていった。

緊迫がとけ、グレンはほっとして、弓を下ろした。
そのとたん、ブルーが飛びついてくる。
ワンワンと泣きながら手を甘噛みしたり、服を加えてひっぱったりひとしきり暴れてから、頭をすりつけてくる。

「ごめんごめん、おいていったから怒ってるのか?」

耳の後ろをかいてやると、太いしっぽがふさふさと揺れた。
きゅーん、と鼻を鳴らして答えてくる。

「きてくれて本当に助かったよ。守ってくれてありがとうな」

グレンを守ろうと、自分の何倍も大きな熊にも勇敢に立ち向かう姿に、グレンは思わずぐっときてしまい、さらにブルーが可愛くてたまらなくなった。

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