騎士団長、狼王の花嫁になるーー拾った子犬はワーウルフの王子でした

鳥海あおい

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第一章 騎士団長と小狼

7.旅路へ

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数時間後、グレンとブルーは馬車上の人となっていた。
リーダ-らしい金茶色の髪の男に、自分たちと同行して欲しいと、丁重に頼まれたからだ。

依然彼らの正体不明ではあったが、礼儀正しい申し入れだったこと、また、断って村の中のこの場で彼らと何か事をかまえるよりはとグレンは了解した。よからぬことになれば途中で隙を見て逃げ出してしまえばいい。
家を失うのは残念だが、もし彼らが悪意のある者達だったば、最悪、戻らなければよいのだ。


グレンが馬車に乗ると、ブルーも男達に警戒して歯をむき出しながらも一緒について乗った。
そのぽんぽんと頭をたたいて安心させてやると、お座りしてグレンの足下にお座りした。
グレンが「待て」をしたので前足を揃えてじっとはしているが、すぐ飛びかかれるようい警戒している。

続いてリーダーの男も乗り込んでくると、馬車は動き出した。
しばらくは沈黙が続いたが、グレンのほうが口火をきった。

「・・・この馬車はどこに向かっているのですか?事情を聞かせていただけますか?」

「本当にいきなりかたじけない・・・同行いただけて本当に感謝しております」

男はどうやって話をきりだすべきか迷っていたようで、ほっとした表情を見せた。

「あの、犬を探していると聞いたのですが・・・というか、王子殿下というのは?」

「あの...犬ではなくて・・・狼です」

真面目な顔での第一声がこれだったので、グレンは思わず聞き返してしまった。

「狼?」

「犬じゃないんです。狼なんです!」

「・・・あ、はい」

ものすごく大事なことのように再度言われ、グレンは戸惑いながら頷いた。
確かに、ブルーの太い尻尾や大きな頭は狼といわれればそうかもと思ったが、それがそれほど重要なのだろうかと思う。
グレンの戸惑いを察したのか、男は咳払いすると、続けた。

「あ、失礼しました。この馬車はヴォルフランドに向かっています。我々はヴォルフランドの王直属の兵団で、私は隊長のステファンといいます」

グレンは冷静さを装い表面には出さなかったが、驚きを持ってその話を受け止めた。
ヴォルフランドは獣人国の中で自治権を持っている人狼ワーウルフ族の国である。
ワーウルフは人間の理知と狼の強さを持った屈強な獣人だが数はそれほど多くない。
また、平和を好むためにほとんど国から出ることないという。ゆえにヴォルフランド以外ではなかなか目にすることはない種族である。
珍しいその種族の傭兵をグレンは一度だけ見たことがあるが、何十人も相手に戦ってもものともしないパワー、人間離れしたす早さに畏怖を覚えたものだった。  
団長職にあったから、グレンもそれなりに腕に覚えがあるが、少なくとも戦いたくない相手だと思ったことは憶えている。
ワーウルフは人狼であるから立っていると人に似ているが、頭部と手足は狼という姿である。人間から見れば異形といえば異形なのだが、その強さもあり神々しいほどに美しく見えたものだった。

グレンは驚きとともに男ーーステファンを見た。
あのとき見たワーウルフとは違い、体格が大きいという以外は普通の人間に見える。

「・・・人狼ワーウルフ?」

「証拠をお見せしたほうがよろしいかな?」

半信半疑でいるとステファンがフードをとる。
変化はすぐにやってきた。
彼の髪がざわざわと伸び、顔からも毛が生えて覆い尽くしてゆく。金色の鋭い目は白目のない獣の目に、鼻と口が隆起し、耳がとがりを帯び、体はそのままあっというまに彼は直立した狼の姿に---人狼に変化した。

ヴヴ、と、ブルーが毛を逆立てて唸る中、グレンは呆気にとられて見ているしかできなかった。
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