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第四章
9.牢からの脱出
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ステファンはグレンに声をかけると、鉄格子の鍵の部分にとりかかった。
無骨でかぎ爪のあるワーウルフの手がカギ束の中から器用に一つ一つ鍵をさして牢の鍵を探してゆく。
急なステファンの訪いに頭がついていかず、グレンはしばしそのガチャガチャいう手元をじっと見つめた。
「グレン殿を助けるのに隙をうかがってましたが、ちょうど見張りが手薄になったので。今のうちに」
「ありがと・・・う」
前にステファンが来てくれた時にそんな話をしていたのを思い出し、そして、はっとする。
「そういえば、薬は---」
「これを」
そう言うと、すかさずステファンは薬草の入った袋を懐から出した。
グレンは受け取ると即座に出して口に入れて嚥下した。
かなり不安があったので、安堵しながら水で流し込むと慣れきった特有のいがらっぽさが口内に残った。そういえば既視感がある感覚。
意識下にあったおぼろげな記憶がゆらゆらとあがってきそうになるが、それが何かと掴もうとするとまた揺らいで消えてしまう。
もどかしいような気持ちで記憶をたどっていると、ようやく鍵がわかったらしいステファンが安堵したように肩から力を抜く。
ガキン、と、鍵がひらく音がした。そして解錠。
キイイ、と軋みをあげながら牢の出口が開いた。
不意に与えられた自由に半信半疑でいると、ステファンが手かせのほうの鍵にとりかかる。
「熱が?」
「いや…。熱…はあるが、たぶんそっちの熱じゃない。この前捕まる時に傷をおって」
「なるほど。それはよかった。発情期に影響されないほうが逃げるのに都合がよい」
「逃げる…」
「ここにいたら、グレン殿がどんな目にあわされるかわからない。手薄なうちに逃げたほうがいい。しばらくどこかに潜伏できればそのほうがよい。レオン殿の居所は?」
「レオンの今の居所はわからないんだ…エリクシールに向かったのではないかと思う。陰謀の証拠を持って戻ってくると言っていたが…」
「あれから向かったとして騎竜の脚でもまだ道程の途中でしょうね…」
かちゃん、と音をたたて、ここ数日自分の身体の一部のようになっていた手枷が床に落ちた。
こわばった肩を、グレンはぐるぐる回した。
熱による関節の痛みがまだある気がしたが拘束がなくなればはるかに楽になった。
「ロイド王は?まさか亡くなったりはしていないだろうか。シエルはどうしている?ぶじか?」
グレンは今まで知ることができなかった状況を矢継早に確認した。
「王は亡くなってはいないが、まだ意識が戻られていない。殿下は、王の代理でずっと忙しくされていて…心中はグレン殿を気にかけられていると思いますが、なかなか身動きできない状況で…」
「シエルに会う事は出来るかな」
「そんな事より急いでここから出るのが先決です!グレン殿の無事がなにより大事です」
「…でも」
直接クライヴのことを話しておきたいが、結局のところステファンに伝言でシエルに伝えてもらうしかないのかもしれない。
しかし、元々ここに残ったのは、シエルの安否が不安だったからなのと、シエルの立場をより悪くしないためである。今、ステファンの提案通りにここから逃亡するべきなのか否かグレンは踏み切れないでいた。
そんな煮えきれない様子のグレンにステファンが向けた視線は苛立たしさでなく、ひたむきなほどの優しさのこもったそれだった。
「…私だけでなく、何よりシエル様があなたの無事を望んでいます。その気持ちをくんであげてください。グレン殿がシエル殿を大事に思って守りたいと思っているように、シエル殿もグレン殿を同じように思っているはずですから」
「ーーそう、なんだろうか」
「そうです!さあ、いきましょう」
重く根をはやしたようだったグレンの脚はようやく動いた。
無骨でかぎ爪のあるワーウルフの手がカギ束の中から器用に一つ一つ鍵をさして牢の鍵を探してゆく。
急なステファンの訪いに頭がついていかず、グレンはしばしそのガチャガチャいう手元をじっと見つめた。
「グレン殿を助けるのに隙をうかがってましたが、ちょうど見張りが手薄になったので。今のうちに」
「ありがと・・・う」
前にステファンが来てくれた時にそんな話をしていたのを思い出し、そして、はっとする。
「そういえば、薬は---」
「これを」
そう言うと、すかさずステファンは薬草の入った袋を懐から出した。
グレンは受け取ると即座に出して口に入れて嚥下した。
かなり不安があったので、安堵しながら水で流し込むと慣れきった特有のいがらっぽさが口内に残った。そういえば既視感がある感覚。
意識下にあったおぼろげな記憶がゆらゆらとあがってきそうになるが、それが何かと掴もうとするとまた揺らいで消えてしまう。
もどかしいような気持ちで記憶をたどっていると、ようやく鍵がわかったらしいステファンが安堵したように肩から力を抜く。
ガキン、と、鍵がひらく音がした。そして解錠。
キイイ、と軋みをあげながら牢の出口が開いた。
不意に与えられた自由に半信半疑でいると、ステファンが手かせのほうの鍵にとりかかる。
「熱が?」
「いや…。熱…はあるが、たぶんそっちの熱じゃない。この前捕まる時に傷をおって」
「なるほど。それはよかった。発情期に影響されないほうが逃げるのに都合がよい」
「逃げる…」
「ここにいたら、グレン殿がどんな目にあわされるかわからない。手薄なうちに逃げたほうがいい。しばらくどこかに潜伏できればそのほうがよい。レオン殿の居所は?」
「レオンの今の居所はわからないんだ…エリクシールに向かったのではないかと思う。陰謀の証拠を持って戻ってくると言っていたが…」
「あれから向かったとして騎竜の脚でもまだ道程の途中でしょうね…」
かちゃん、と音をたたて、ここ数日自分の身体の一部のようになっていた手枷が床に落ちた。
こわばった肩を、グレンはぐるぐる回した。
熱による関節の痛みがまだある気がしたが拘束がなくなればはるかに楽になった。
「ロイド王は?まさか亡くなったりはしていないだろうか。シエルはどうしている?ぶじか?」
グレンは今まで知ることができなかった状況を矢継早に確認した。
「王は亡くなってはいないが、まだ意識が戻られていない。殿下は、王の代理でずっと忙しくされていて…心中はグレン殿を気にかけられていると思いますが、なかなか身動きできない状況で…」
「シエルに会う事は出来るかな」
「そんな事より急いでここから出るのが先決です!グレン殿の無事がなにより大事です」
「…でも」
直接クライヴのことを話しておきたいが、結局のところステファンに伝言でシエルに伝えてもらうしかないのかもしれない。
しかし、元々ここに残ったのは、シエルの安否が不安だったからなのと、シエルの立場をより悪くしないためである。今、ステファンの提案通りにここから逃亡するべきなのか否かグレンは踏み切れないでいた。
そんな煮えきれない様子のグレンにステファンが向けた視線は苛立たしさでなく、ひたむきなほどの優しさのこもったそれだった。
「…私だけでなく、何よりシエル様があなたの無事を望んでいます。その気持ちをくんであげてください。グレン殿がシエル殿を大事に思って守りたいと思っているように、シエル殿もグレン殿を同じように思っているはずですから」
「ーーそう、なんだろうか」
「そうです!さあ、いきましょう」
重く根をはやしたようだったグレンの脚はようやく動いた。
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