今日、私は死にます。

赤八汐カケル

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奇跡

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私は今日死にます。

私が死んだ日はシュガーパウダーのように甘く粉のような雪が降っている日だった。

「今年もサンタさん来てくれるかな?来てくれるといいな!」
いつも寝ている間に来るから今年は寝ないで待っていようと心に決めていた。

今年で7歳になった私は布団の中で窓を眺めて密かにサンタクロースがくることを待っていた。

そんな私は拘束型心筋症で運悪く稀血のボンベイ型で移植手術ができなくなってしまったである。
稀血のボンベイ型は三十万人に一人と言われている。したがって寿命が尽きるのをただ待つしかない少女であるということだ。

私は心をウキウキさせながら窓を眺めていると空に何か飛んでいるのが見える。飛行機でも、ヘリコプターでもなさそうだ。空に飛んでいる物体はどんどんとこちらに向かってくるので、怖くなって布団を体に被せた。

窓を開けて誰かが入ってきた。冷気が入り込んで凄く寒い。

恐る恐る布団から顔を出すと、大きなトナカイと赤い服を着て長い白髭を生やしたサンタクロースがプレゼントを置いて窓から飛び立とうとしていた。

私は急いで呼び止めた。

「サンタさん待って!!!」

サンタクロースは窓に足をかけたまま少女の方を驚いた様子でみた。そして、ニコッと微笑んでまた、動き出そうとしていた。

「わ、わたし、プレゼントはいらないの、私に明日は来ないから」

サンタクロースは飛び立つのをやめて、少女の横に来て静かに言った。

「確か、君はこのプレゼントが欲しいって手紙で書いてくれたよね?それなのにプレゼントはいらないのかい?それに、なんで、明日がこないなんて寂しいことが言えるんだい?」
サンタクロースはとっても優しい声だったが、表情は何とも言えない寂しい表情を浮かべていた。

「だって、私の体だもん、わかるよ明日死ぬことぐらい」

「それにプレゼントは私のじゃなくてお母さんのなの、ほら、大人にはサンタさん来ないでしょ?」
私は優しくサンタクロースに微笑んでそう言った。

「あとね私、生まれてからずっと病気なの、だからね、毎日お母さんが泣きながらごめんねって誤ってくれるだ、もっと丈夫な子に産んであげられなくてごめんねって……」
私の目から大粒の涙がこぼれ落ちていく

「だから、お母さんにこのプレゼントをしてあげたいの」

「でも、なんで、青いバラをプレゼントするんだい?」
サンタは首を傾げて私に聞いてきた。

「青いバラにはね、存在しない、奇跡っていう花言葉があるの」
「私が元から存在していないという奇跡が起こればいいなって思って……」

「君はそれでいいのかい?」
真っ直ぐ私を見て尋ねた。

「良くないよ、いいはずがない……でも、お母さん、いつも私を見て辛そうな顔するし、私が存在しなければもっと幸せになれたと思う…」

サンタは首を横に振って言った。
「違う、そういうことを聞いてるんではない、このプレゼントをあげてお母さんは喜んでくれると思うのかい?ということを聞いているんだよ」


私は暫く考えてサンタクロースの質問に答えた。
「喜んでくれないと思う…」

雪雲が無くなり、月明かりが病室に差し込んでサンタクロースの優しい表情がはっきりと見えた。

「そっか、それじゃあプレゼントは何がいいと思う?」
とても嬉しそうに聞いてきた。

「手紙かな?」

「そっか、手紙か!いいじゃないか!じゃあ、私がこの青いバラで奇跡を起こしてあげるよ。」

そう言って、長方形の箱から青いバラを取り出して、もう一度箱にしまった。そして、その箱を私に渡して、開けてみてと目で訴えかけてきたので渋々開けると、そこには、青く美しいレター用紙と青いバラが書かれた万年筆だった。

でも、私は自分の手で書けないため、サンタクロースに代筆してもらうことになった。

「世界一のお母さんへ

この手紙を読んでいる頃には、私は生きていないと思いますので、最初で最後の手紙を書かせてもらいます。私はお母さんの子に生まれて凄く幸せでした。
 だって、いつも私のためにお見舞いに来てくれるし、絵本だって読み聞かせてくれて、元気がないときは元気づけてくれた。
 私よりもお母さんの方が辛くて苦しいのに、それを我慢して笑顔でいてくれて、私のために泣いてくれた。
そんな凄く優しくて最高のお母さんの子供に生まれてとても幸せでした。私を愛してくれて、産んでくれてありがとう。大好きだよ、メリークリスマス

                              世界一お母さんのことが大好きな幸子より」

私は手紙を書き終わる頃には静かに永遠の眠りについていた……


















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