憧れの異世界で極楽至上のハーレムを

ゆのや@1作品書籍化!!(予定)

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第1章――1 【 自由奔放なパートナー/吸血鬼との旅 】

第8話 食堂【ビール】と看板娘カルラ

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「お待たせ」
「ううん。僕もさっき出たばかりだから。それより、どう? ジャージの方は」
「中々に着心地が良いわね」
「気に入ってくれたなら良かった」

 異世界にもシャワー(厳密には仕組みが似てる別物)があったことに驚きつつ、汚れた身体を洗い済ませた僕とリリスはエントランスに集合した。

「よしっ。それじゃあご飯食べに行きましょ!」
「おー!」

 分かりやすく興奮しているリリス。僕も異世界初の食事なこともあって高揚を抑えきれず、リリスの言葉に賛成と腕を突き上げた。

 そうして二人で一度宿屋【ラ・ルル】を出て、すぐ隣にあると言われる食堂へと向かって歩き出す。

「くんくん。すでにいい匂いがするね」
「そうね。どこも夕食時で、露店なんかはこの時間帯が稼ぎ時から一斉に活気づくのよ。大都市の市場はもっとすごいわよ」
「そうなんだ。いつか行ってみたいな」
「くすっ。そうね。いつか一緒に行きましょう」

 リリスとそんな他愛もないやり取りを交わしつつ、僕らはラ・ルルから徒歩数メートル先に横並ぶ食堂に着いた。

「食屋【ビール】。ここかしら?」

 当然僕は異世界文字がわからないので返答しようがな。

「まぁ、食屋って書いてあるから料理を出してるお店ではあるでしょ」
「そんなアバウトな……でも、受け付けの奥さんが隣にあるって言ってたし、ここで合ってるんじゃない?」
「まぁ、間違ってなら出直せばいいでしょ」

 それに店内ないからいい匂いがするし、男性らの大声と笑い声も聞こえてくる。

 いかにもな雰囲気をかもし出しているビールの扉を、リリスは「開けるわよ」と僕に一言告げて開けた。

「いらっしゃいませー!」

 扉を開けて一番に届いたのは、女性の高らかな挨拶だった。

 年齢は二十歳前後か。まだ垢抜けておらず愛らしい顔つきだ。琥珀こはく色の瞳に、赤茶色の髪をポニーテールにしてまとめていて、女性というより少女と呼んだ方がしっくりくる。

 入口の前で呆ける僕をリリスが手を引いて引き連れて店内に入ると、僕らに気付いた先ほどの少女がとことことやって来た。

「あら? この町じゃ見ない顔ね。もしかして冒険者? それとも旅人さん?」
「旅人。隣の宿に食堂があるって聞いてね。それで来てみたの」
「へえ! それじゃあ二人はラ・ルルの宿泊客なのね!」

 リリスの話を聞いて少女が嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。

「お母さんにはもう会った?」
「お母さん……ってことは、キミはあの宿の奥さんの娘さん?」

 僕の問いかけに少女はそうよ、と肯定して、

「私の名前はカルラ! このビールの看板娘! そして、あそこの厨房で忙しそうに料理を作ってるのが私のお父さん!」
「ほへぇ。家族で宿と料理店を経営してるんだ」
「えぇ。そうよ」

 少女、カルラは厨房で絶賛料理中の自分の父親を指さして紹介してくれた。カルラと同じ赤茶色の髪で、身長は僕より頭一個分以上高くて屈強な身体付きをしている大男といった見た目をしている。

 そんなカルラの父は、料理作りに集中しながら僕らに視線をくれた。

「いらっしゃい。カルラ。お客さんを好きな席に座らせてやれ」
「りょーかい。さ、お父さんの言う通り、好きな席に座って。お水持ってきてあげるから」
「ありがとう。カルラさん」
「カルラでいーよー」

 ひらひらと手を振って僕らから離れていくカルラさん。活発という言葉がよく似合う少女に手を振り返したあと、僕とリリスは席を見繕みつくろい始めた。

「ここにしましょうか」
「うん。そうだね」
「席はもう決めたみたいね。はい。お水」

 僕とリリスが選んだ席は店内の端。そこにカルラが水をいだコップを持ってきてくれて、丁寧に手元に置いてくれた。

 僕は「ありがとう」と一言とカルラにお礼を伝えると、運ばれた水を早速飲む。

「こくこく……んむ⁉ 美味しいね、この水!」
「本当ね。確かに美味しい」

 水を飲んで驚きに目を見開く僕とリリスを見て、カルラは嬉しそうに鼻をこすった。

「ふふん。そうでしょ。シエルレントの水は他の国と違ってミネラルが豊富でとても滑らかなの! どんな舌バカなお客さんでも他とシエルレントの水が違うって判るくらい、この町の水は美味しいのよ。特にその水で作ったワインやビールは格別で……」
「ビール! 是非飲ませて頂戴!」
「まいどあり~。ビール一つ」

 ビールという単語を聞いた瞬間、リリスの表情ががらりと変わった。目をキラキラとさせて飛びつくようにビールを注文し、カルラはそんなリリスに満面の笑みで応じた。……なるほど。たしかにあの奥さんの娘さんだ。まいどあり~、の言い方とその時の笑顔がそっくりだった。

「貴方は? ビール飲む?」
「ううん。僕は要らない。そもそもまだ飲める歳じゃないしね」
「あらそうなの」
「センリ。貴方いくつなのよ」
「17だよ」
「なんだ17だったのね。ならセンリもお酒飲めるじゃない」

 え、と驚く僕にリリスが教えてくれた。

「この世界じゃ17は立派な大人よ。飲酒の解禁も17から」
「そうだったんだ」
「ま、私からしたら17なんてまだまだ全然ガキんちょだけどねー」
「一体何歳なのさリリスは」
「さぁ。100年生きた辺りから歳を数えるの止めたわ」
「100歳⁉ え、リリスっておばさ……」
「誰がババアよ!」
「いはいはいは!」

 さらりとリリスに驚愕の事実を告げられて、僕は愕然と目を剥く。うっかり失言してまった口は、怒ったリリスの制裁を受けてしまった。

 リリスが僕の両頬をわりと強めに引っ張っていると、僕らの会話を聞いていたカルラが「おや」と声を上げて、

「アナタ、魔族だったのね」
「……なんか文句ある?」

 わずかに剣幕を帯びたリリスの問いかけに、しかしカルラはあっけらかんとした態度で答えた。

「ぜーんぜん。今時魔族なんて珍しくもないしね。この町にも色々な魔族が住んでるし、お店にだってよく魔族のお客さん来るのよ」
「……ふーん」

 興味を示すようでそうとも感じられない曖昧あいまいな息を吐くリリス。それからリリスは僕の頬からぱっと手を離すと、手元に置いてあるコップを手に取ってぐいっとあおった。

「たまにあるのよ。魔族は入れない、ニンゲン専用の店が」
「シエルレントにそんなお店はないから安心して。ここじゃ魔族も人間も亜人も変わらず皆平等よ」
「……そ」
「むしろ今じゃ魔族の方が親切なくらいだわ! このお店にいる酔っ払いはたまに店の備品壊すし!」

 そう言ってカルラが酔っ払いたちに向かって指を指した。酔っ払いたちは呂律の回らない口で「らんらとー!」とカルラに反発するも、このお店の看板娘はむしろあっかんべーと挑発するように返した。

「ね。あんなアホな酔っ払いたちがいる所なんだから、魔族がいるくらいで全然ビビったりしないわよ。それにお父さんにも私にも魔族の友達がいるし」
「……ふ。いい町ね。ここは」
「でしょう? 気に入ったら旅の休憩地点と言わず是非住んでね。シエルレントはいつでもアナタたちを歓迎するわ」
「くすっ。ありがとう」

 どうやらすっかり意気投合したらしい二人は、お互いに微笑みを交換し合う。

「そうだっ。二人とも、今後このお店の常連さんになってくれる予感がするし、名前教えてよ!」
「リリス」
「僕はセンリ」
「リリスとセンリね。これからよろしく!」

 白い歯をせて笑うカルラが僕たちの前に拳を突き出した。僕とリリスは目配せすると、思わず微笑をこぼして、

「「よろしく」」

 突き出された拳に、僕とリリスはこつん、と己の拳をぶつけ合った。

 ***

「お待ちどう様~。店主オーナー特製、『日替わり肉のガーリックステーキ』だよ!」
「きたきたあ! くぅぅぅ! 見るからに食欲をそそるわね!」

 カルラからオススメのメニューを聞いて、それを注文して数十分後。僕らの目の前にそれはそれは空腹の胃を刺激する肉の塊が目の前に運ばれてきた。

 熱々の鉄板の上で肉から溢れた油がおどっていて、香辛料とガーリックの強烈な匂いが湯気を伝って鼻孔をくすぐってくる。

 数時間も何も口にしていない今の僕とリリスにとってその香りは理性を失わせるには十分で、お互い無意識に口から涎を垂らしていた。

「「い、いただきます……っ‼」」

 ぎゅるぅぅぅ、とお腹が大きく鳴って、僕たちは「ごくりっ」と生唾を呑み込む。

 味わいたい理性と貪りたい理性がせめぎ合って震えだす手でナイフとフォークを握って、荒い息を繰り返しながら肉を切っていく。

 そして、一口大に切った肉を刺したフォークを僕とリリスは焦燥感に駆られるまま口に運び――

「「んっっっまああああああ―――――――いっ⁉」」

 そのあまりの美味しさに叫んでしまった僕とリリスを、カルラや店内にいた人たちは嬉しそうに眺めていた。



食堂【ビール】
ラ・ルルの隣に構える冒険者御用達の食堂。店主はミリシャの旦那であるマルダン。
鮮度と質の高い肉を売りにしており、特に【日替わり肉のガーリックステーキ】が人気。これを食べに遠くの町から来る冒険者もいるとかいないとか。
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