憧れの異世界で極楽至上のハーレムを

ゆのや@1作品書籍化!!(予定)

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第1章――6 【 ニュースタイル/吸血鬼と双剣 】

第54話 退院。そしてハーレム?

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「どうだい、身体の具合は」
「少しずつ良くなってます。だいぶ動けるようにもなったし、動いた時の痛みももうほとんどありません」
「それならよかった。しかし悪いね。まだ入院中だというのに」
「いえいえい! それにこの話し合いは、僕も早くしておきたかったですから」
「そう言ってもらえるとこちらも助かるよ」

 退院の目途も付いてきた頃、本日病室を訪れてきたのは、シエルレントのギルドマスターだった。ちなみに彼の付き添いの衛兵は、病人の僕を気遣ってか今は病室の外で待機してくれている。

「それにしても、えらい見舞い品の量だな」
「あはは。色んな人がお見舞いに来てくれて、それでたくさん置いていってくれるんです」
「ふはっ。皆から慕われているんだな」

 ギルドマスターは口許を綻ばせたあと、僕に一礼をくれた。

「まずは感謝を。先の一件。キミの迅速な判断と勇気ある行動のおかげで、多くの者達が救われた。シエルレントを代表して、改めて感謝を」
「いやいやそんな感謝されるようなことはしてないですから! だから顔を上げてください。それに、救えなかった人たちもいます」
「……そうだな。たしかに、悔やむことも多いだろう。しかし、その犠牲を無駄にしない為にも、またキミの協力が必要だ」
「もちろんです。早く、この町が平和になって欲しいですから」

 ギルドマスターが今日ここに訪れたのはただ見舞いに来ただけじゃない。あの怪物と対峙した僕から、情報を得るためだ。

「それでは早速、尋問を始めさせてもらおう。あの日起きたことを、覚えている限りでいい。教えてくれるか?」

 僕はこくり、と頷くと、

「あの日はまず、悲鳴が聞こえたんです。方角は広場からの方で、そこから逃げてくる人たちを見てすぐに察しました。殺人鬼が現われたんだ、って」
「なるほど。その時キミはどこにいたのか教えてくれるか?」
「広場からさほど遠くない路上です。ええと、あ、そうだ。近くに雑貨屋がある地点です」
「雑貨屋か……名前は憶えてるか?」
「なんだっけなぁ。ペ、なんとかだったような」
「分かったよ。ペルティーだな」
「たぶんそれです」

 厳つい顔のギルドマスターの口から可愛らしい名前が挙がったので思わず拭きそうに(リリスは普通に「ハッ」と鼻で笑ったけど)なるのを堪えつつ、僕は首肯した。

「たしかにそこからなら噴水広場からはさほど遠くないな。それでキミは、なぜそこへ?」
「クエストを受けた帰り道だったんです」
「なるほど。それで、その帰り道に噴水広場の方から悲鳴が聞こえて、急いで駆けつけたと」
「そうです」
「……尋問中の所申し訳ないんだが、一つ聞いていいかな」
「なんでしょうか?」

 ギルドマスターは複雑な表情を僕に向けながら、こう訊ねた。

「キミは悲鳴が聞こえて駆けつけようとした時、キミも逃げようとは思わなかったのか? 既に話を聞いていたならば、自分が敵うような相手ではないことくらいは理解できていただろう。それを、わざわざ死に行くような真似をして、避難誘導に徹しようとは思わなかったのか?」

 ギルドマスターのその問いかけに、リリスは可笑しそうに鼻で笑って、僕は苦笑いを浮かべてこう答えた。

「確かに、一瞬悩みました。僕なんかが言った所で何もできずに殺されるのがオチだって」

 でも、

「少しでも誰かを助けられるかもしれない力を持っているのに、それを使わない選択肢は僕にありませんでしたから」
「――――」

 僕がそう答えると、ギルドマスターは沈黙してしまって、代りにリリスがやれやれと肩を竦めた。

「要するに、超が付くほどお人好しなのよ、この子は。見ず知らずの吸血鬼を捨て猫感覚で助けちゃうくらい」
「あはは。だって目の前に困ってる人がいたら放っておけないでしょ」
「それを自分の命と秤に掛けて他人の命を優先するのがおかしいって言ってるのよ。どんだけ善人なのよ貴方は」
「善人じゃないよ。善人じゃないから、善人らしいことをしたいんだ」
「やっぱり超が付くほどのおひと……いえここまで来るともうバカね。それも重症の。身体より頭の方を診察してもらうべきかしら」
「ひどい⁉ バカは言いすぎだよ!」

 色々と言いすぎなリリスと口論していると、それまで沈黙していたギルドマスターがフッと笑った気がして、

「なるほどな。キミはそういう子だったか」
「ギルドマスター?」
「いや失礼。キミの行動理念は、とても立派だと思ったんだよ。ただ、キミのパートナーは苦労するだろうが」
「全く以てその通りよ。この子の無鉄砲には困らさせられるわ。……首輪リード付けておく必要があるかしら」
「男は誰だって無茶をしたくなるものだ。好きな相手が目の前にいるなら猶更」
「「…………」」

 僕だけじゃなくリリスまで押し黙らせるとは。このギルドマスター。中々に舌戦がうまい。

 リリスと僕は暫く気恥ずかしさから俯いて、やがてギルドマスターが微妙な空気を切り替えるようにコホン、と咳払すると、

「キミがあの〝魔物〟との戦闘に臨んだ経緯は理解した」
「魔物?」
「そうか。キミはまだそれについて知らなかった」

 ギルドマスターは僕の為に用意してくれたであろう資料を渡してくれると、

「キミが戦ったあの殺人鬼なる者だが、リリスのおかげでいくつか分かったことがある。魔物、というのがその内の一つだ」
「つまり、あれは人間じゃなかったということですか?」

 ギルドマスターは短く首肯した。

「リリスが戦闘を行った際に、ヤツから魔物特有の赤黒い血液を確認したそうだ。広場に残っていた血痕も含めて、我々はヤツを魔物と断定した」
「その割には、動きとか身体つきが人間ぽかったですけど」
「多くの目撃証言からもソレの容姿はこちらも把握済みだ。形そのものは人間と大差ないと。しかし、様々な点から見ても、魔物というのが合理的帰結だ」
「……うーん」
「腑に落ちてないようだな」

 ギルドマスターは僕の顔を見て嘆息を吐いた。

「直接ヤツと戦闘を行ったのは、キミとリリスだけだ。キミがヤツと戦って感じたことがあれば教えて欲しい」

 それじゃあ、と僕は未だにこの身体に刻み込まれてる、あの怪物との戦闘を思い出しながら答えた。

「アレの動きは、たしかに魔物然としたものでした。力と速さは人並み以上でしたが、攻撃の動きは単調……というよりパターン化されているものに見えました」

 リズムゲー、と言ってもこの世界の人たちには伝わらないだろう。

 あの時のアレの動きは、あらかじめプログラミングされたような、何かをなぞるような動きをしているように思えた。だからこそ、僕が攻撃を回避し続けたんだろうし。

「思考も限りなく魔物に近いとも思います。標的を定めたら、それ以外には目もくれず、僕だけを狙ってきましたし」
「そこまで出ているのに、ヤツが魔物ではないと思っているのか?」
「なんていえばいいんでしょうか」

 上手く言葉が出てこない。

 あの時、アイツと戦った時に感じた、強烈な違和感。ヤツの何を違和感と言わしめるのか。

『ヴオオオオオオオオオオ!』
「っ!」

 深く深く記憶を辿って、あの日の情景を……いや、あの時抱いた感情を思い起こす。その瞬間、全身の産毛を残らず総立たせる絶叫がよみがえって。

「……声」
「「声?」」 

 ぽつりと僕の呟いた単語に、ギルドマスターだけでなくリリスまでもが揃って首を捻った。

 僕は短く顎を引くと、

「アイツの、声です」
「アイツの声なら私も聞いたけど、それこそ魔物だったじゃない」

 いや違う。あれは。あれは……、

「アイツの声は、何か、すごくいきどおっているように感じたんです」
「……そう言われれば、確かにそんな風に聞こえたような気がしなくもないわね」
「だよね」

 ヤツと戦闘を行ったリリスもどうやら僕の言葉に共感するものがあったみたいだ。

「魔物にも感情があって、それがたまたまそれっぽく聴こえたのかもしれません。でも、あの時アイツと戦った時に聞いたあの声は、人の怒りのように聞こえました」
「……声、か」

 僕の言葉にギルドマスターは暫く顎に手を置いたまま黙考して、

「これからの捜査が魔物という体で進んでいくことには変わりはない。だが、その線も念頭に置くことを他の者達にも伝達しておこう」
「いいんですか? 確証も何もない、ただの勘なのに」
「確かに信用できる要素は少ない。だが、ヤツと直接剣を交えたキミが感じたことだ。信用なくとも、それだけで信じるに足るさ。なにせ俺たちは……」

 ギルドマスターはそこで一度言葉を区切ると、

自分テメーの勘を信じて戦ってきた、バカ野郎共なんだからな」

 その時、そう言ったギルドマスターの顔は、どんな冒険者にも負けない、己の矜持プライドを掛けて戦ってきた、一人の冒険者の顔をしていた。

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