13 / 31
花火
しおりを挟む
マルクが戻ってこないのを不思議に思った諒一は、まだジェットで言い争ってるのかなと思い、翌日の便で日本に戻る決心をした。
「お爺様。明日の便で、日本に帰ろうと思います」
「そうか。達者でおれよ」
「ありがとうございます。恐らく、もう来ないと思います。なにしろ、私も年を取ったので、お爺様と会うのは、今日が最後になるかと思います」
その時、音がした。
ドンッ!
音は続いて聞こえてくる。
ドンッ、ドンッ!
ドドンッ!!
「ん? あれは、花火の音ですか? こんな時間に……」
「花火? もう正月は過ぎてるし、大体今は朝」
「何の音でしょうかね?」
なにやらザワザワと騒がしい。
パイロットリーダーが駆け足で来る。
「御。御寛ぎのところ、申し訳ありません」
リーダーの顔が青褪めている。
「何があった? ジェットが爆発したのか?」
「いえ、ジェットよりドーベルマンが放し飼い状態になっております。どうやら人肉を欲しているようで、パイロットやリペアマンが何人も犠牲に……」
なっ!?
今度はフランツの慌てた声が聞こえてくる。
「御、大変です。マルク様が」
「フランツ、どうした?」
「マルク様が……、これを……、マルク様が……」
フランツが持ってる物を見ると、御はフランツに聞いた。
「ドーベルマンか?」
「おそらくダイナマイトかと……。ダイナマイト特融の臭いが、奥の格納庫の方に……。それに、焦げた肉の塊も散らばってます」
「あいつは外だけでなく、内でも敵が多いからな」
「ドーベルマンの方は、どうしましょう?」
御は、即答で返した。
「ドーベルマンにアレを与えてやってくれ」
「全滅させるのですか?」
「エドが来た」
「え?」
「自分の屋敷に残ってるのを迎えに来た、と言ってきた。5匹共エドに甘えていたよ」
「御……」
「フランツ、全滅ではないよ。5匹はパースに行った。ここに残ってる彼等に、今までよく頑張ったと言ってやりたい。アレを、彼等に与えてやってくれないか。方法は任す」
「分かりました」
そして、御はパイロットリーダーにも言った。
「リーダー。主のいないジェットは直さなくても良い」
「畏まりました」
諒一は、声に出していた。
「お爺様。それでは、先ほどの音は……」
「諒一。あの音は花火だよ。マルクが打ち上げた花火だ」
諒一の目には、涙が溢れていた。
自分にも欲はあった。いつかは、お爺様の跡を継いで、『御』になるという欲が。
でも、70歳を過ぎると飛行機事故で亡くなるかもしれない、という気持ちが出てきたのだ、
そうなると、日本から出ようという気は失せてきたのだ。
「マルク……」
諒一は泣いていた。
昔、まだドイツに居た頃の自分に、マルクは優しく、色々と教えてくれた。
そんなにも年齢が離れていないので、叔父と甥という関係ではなく、兄弟感覚でいたものだ。
その様子を、御は見ていた。
「諒一。マルクの為に涙を流してくれるのか。ありがとう」
「だって……、こんな……、こんなのは嫌です」
ふっ……。
「お爺様。明日の便で、日本に帰ろうと思います」
「そうか。達者でおれよ」
「ありがとうございます。恐らく、もう来ないと思います。なにしろ、私も年を取ったので、お爺様と会うのは、今日が最後になるかと思います」
その時、音がした。
ドンッ!
音は続いて聞こえてくる。
ドンッ、ドンッ!
ドドンッ!!
「ん? あれは、花火の音ですか? こんな時間に……」
「花火? もう正月は過ぎてるし、大体今は朝」
「何の音でしょうかね?」
なにやらザワザワと騒がしい。
パイロットリーダーが駆け足で来る。
「御。御寛ぎのところ、申し訳ありません」
リーダーの顔が青褪めている。
「何があった? ジェットが爆発したのか?」
「いえ、ジェットよりドーベルマンが放し飼い状態になっております。どうやら人肉を欲しているようで、パイロットやリペアマンが何人も犠牲に……」
なっ!?
今度はフランツの慌てた声が聞こえてくる。
「御、大変です。マルク様が」
「フランツ、どうした?」
「マルク様が……、これを……、マルク様が……」
フランツが持ってる物を見ると、御はフランツに聞いた。
「ドーベルマンか?」
「おそらくダイナマイトかと……。ダイナマイト特融の臭いが、奥の格納庫の方に……。それに、焦げた肉の塊も散らばってます」
「あいつは外だけでなく、内でも敵が多いからな」
「ドーベルマンの方は、どうしましょう?」
御は、即答で返した。
「ドーベルマンにアレを与えてやってくれ」
「全滅させるのですか?」
「エドが来た」
「え?」
「自分の屋敷に残ってるのを迎えに来た、と言ってきた。5匹共エドに甘えていたよ」
「御……」
「フランツ、全滅ではないよ。5匹はパースに行った。ここに残ってる彼等に、今までよく頑張ったと言ってやりたい。アレを、彼等に与えてやってくれないか。方法は任す」
「分かりました」
そして、御はパイロットリーダーにも言った。
「リーダー。主のいないジェットは直さなくても良い」
「畏まりました」
諒一は、声に出していた。
「お爺様。それでは、先ほどの音は……」
「諒一。あの音は花火だよ。マルクが打ち上げた花火だ」
諒一の目には、涙が溢れていた。
自分にも欲はあった。いつかは、お爺様の跡を継いで、『御』になるという欲が。
でも、70歳を過ぎると飛行機事故で亡くなるかもしれない、という気持ちが出てきたのだ、
そうなると、日本から出ようという気は失せてきたのだ。
「マルク……」
諒一は泣いていた。
昔、まだドイツに居た頃の自分に、マルクは優しく、色々と教えてくれた。
そんなにも年齢が離れていないので、叔父と甥という関係ではなく、兄弟感覚でいたものだ。
その様子を、御は見ていた。
「諒一。マルクの為に涙を流してくれるのか。ありがとう」
「だって……、こんな……、こんなのは嫌です」
ふっ……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる