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亡き親友の忘れ形見と再会

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ドンとなった友明は、その2時間ほどの間に、色々な人と会話を交わした。
日本から『御』に付いて来た男性は、どことなく康介に似ている。
思わず、その名を口にしていた。
 「こう、す……け」
それを聞いた男性は複雑そうな表情をしていた。
 「トモ兄は、いつまでもお父ちゃんの事を思ってるんだね。嬉しいな。でも、なんか複雑な気分だ……」
トモ兄に、お父ちゃんって……。
って、まさか……。
思い当たった友明は優しく言ってきた。
 「優介か。康介かと思ってしまったよ。よく似てる」
自分の名前を呼んでくれて嬉しくなった優介は、友明に抱きついた。
 「トモ兄っ!」
よしよし……、と友明は優介を優しく背中をポンポンと叩いていた。
 「元気そうだな。どうだ、サトルとの生活は?」
 「うん。サトルさんも優しいし、楽しいよ」
 「それは良かったな」
 「御は、大学に行かせてくれたんだ。せめてもの恩返しを、これからしていこうと思ってるんだ」
 「良かったな。御は厳しいが、頑張ってる人間が好きな人だ。贔屓する時もあるが、目を掛けた人間には、とことん目を掛けてくれるからな。これからも頑張れよ」
 「うん。トモ兄も、元気で頑張ってね」

友明は溜息を吐いて、優介の頭をグリグリとしていた。
 「優介! お前は、何度言えば分かるんだっ。『うん』ではなく、『はい』だろっ!」
 「はいっ!ごめんなさいっ!」

あはははっ……と笑いながら、サトルは口を挟んでくる。
 「まるで、あの時と一緒だね」
 「サトルさん。あの時って?」

サトルは、ボスから優介を剥がしながら言ってきた。
 「優介が、うちに初めて来た時。君は『うん』のオンパレードで、ボスに頭をグリグリされて、今と同じことを言われ、君も、あの時と同じ言葉を返した」

御も、口を挟んできた。
 「ああ……。たしかに、そうだったな。皆で笑ったもんだ」

友明は、とんでもない事を言ってきた。
 「お前は、あれから20年近く経っても、変わってないってことか」
 「いやいや、変わったよ。好きな人も出来て、マナーとかも習って……。あ、そうだ。背も伸びたよ」

それを聞いた友明とサトルは、同時に溜息を吐いた。
友明が、
 「そういや、天然なところは、しっかりと天然なままだな」
サトルは、こう応じた。
 「大らかになった、と言って欲しかったな」

トモが小声でサトルに言う。
 「で、優介の身体を開発して、自分のモノにしたって事か?」
それを聞き、サトルは真っ赤になった。
 「なっ! なんて事をっ……。ボスッ!」


ハハハッ……と笑いながら、その場を後にした友明は、食い物ブースに移って行った。
 「腹が減ったぁ。何があるかな、何が残ってるかな」
と、歌う様に呟きながら。


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