アゲインスト・レグナ

神猫

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<Chapter1>始動

<1-6>特別実戦試験②

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桐嶋から奏翔が聞いた試験内容はこうだった。

まず、この学園が保有している私有地・・・本来はそこそこ大きい校庭があったはずの場所がさらに広くなっており、そこがある程度の広さで小分けされ、実戦訓練場となっているらしい。
試験では二人一組となって行われる。俺のパートナーとなるのは桐嶋らしい。
そしてその時、相手にするのは同じく魔物二体。
これをどれだけ危なげなく倒せるか。そしてその速さを測り、学年で順位付けされるようだ。

だが、当然奏翔には何かと戦った経験などない。
あるとすればせいぜい、子供の時の妄想の中くらいだ。
それに、体も全くと言っていいほど、鍛えていない。
要するに、だ。
しかし、これは試験であり、紙のテストと同じく逃げる方法などない。
なので、奏翔はどうやってもこの戦いに挑むしかなくなった。

そこまでを桐嶋から教えてもらうと、丁度、ホームルームの終わりのチャイムが鳴った。
そのチャイムを切り目に弘津先生、そして覚悟を決めた生徒達が教室を出て行った。

やるしかない・・・

そう意を決して、教室を出ようとした奏翔にもう廊下に出ていた桐嶋から待ったの声がかかる。
「あ、そうだ。奏翔、『天使』忘れてないだろうな?」
「・・・天使?」
「やっぱり忘れてるのか・・・もう奏翔は赤ちゃんと思って話した方がいいのか?」
そう桐嶋は小声で呟いた。

「ん?何か言ったか?」
「いや、何でもない!とにかく鞄の横についてるから取ってこいよ。それ無いと試験受けられないだろっと」
身体の向きを教室の方へと反転させられながらそう言われ、最後には背中を押される。

「じゃあ、俺は先に行ってるからなー」

そう言われてもな・・・

桐嶋の言う天使と言うものが全くわからず、ただ本人は聞き返す暇もなく先へと行ってしまったので、奏翔は言われた通り、自分の鞄を調べる。

「特に変わったものなんてついてな・・・これか?」
桐嶋の言う通り、自分でつけた覚えのない物がついていた。
ついていたものは燃える炎の形をしているが、色は対比的に薄暗い青色をしていた。
他についているものは特には見当たらないので、これが桐嶋のいう試験でのパスポートとなる物なのだろう。
だが・・・

これが本当に使ってやつなのか?

奏翔にはそのアクセサリーの物は『天使』という名前には似ても似つかないように思えた。

もっと天使っていうと翼があったり、頭に輪っかがあったり、何よりも人の形をしているんじゃないか?
それに、あの少女が自分の事を天使と言っていたけど・・・まさか俺、行く世界を間違えてたりしないよな?転移失敗とか・・・

そんな事を奏翔はいろいろと考えたが、結局。

・・・まあ、ないよな。
まず根本的に自分がどうこう考えたところで、現状が変わるわけがないので結局、身をゆだねることにした。

とりあえず、外すか。

そう思って、奏翔はアクセサリーを手に取り、引っ張る。
しかし・・・
「あれ・・・」

色々な方向から引っ張ってみるが、抜けない。
「・・・ってこれ、外すための穴がねぇじゃん!?」
どうするんだ?どっかに外すための穴が空くボタンでもあるのか?
こうか?いや、こうか?

どう引っ張ってみても、外すことができずに苦悶していると、いきなり奏翔の視界に手が飛び込んでくる。

「ちょっと貸りるね」

そう言って、アクセサリーを手に取ったのは、栗色の髪を短くまとめた女子生徒・・・蒼葉あおば 亜美つぐみだった。
蒼葉は前の世界でも奏翔と同じクラスメートであり、委員長をやっていた。
とても他人への思いやりが強く、可愛い容姿から誰も彼女が委員長をやることを咎める人も出ず、クラスのアイドル的存在の一人となっていた。
他の生徒はもうクラスにいないのに、ここにまだいるという事は、こちらの世界でも同じ役職についているんだろう。

相変わらず・・・本当に面倒見がいいな。

蒼葉を見ながらそう奏翔が考えているうちに、どうやら作業が終わったらしく、留め具から外れたアクセサリーを奏翔へと渡してくる。
「・・・はい!外れたよ」
何の含みもない笑顔で渡してくる蒼葉を見て、奏翔の鼓動は自然と早くなっていた。
「あ、あぁ・・・ありがとな」

これがラブレターだったら最高のシチュエーションなのに、と思う反面、もしそうだった場合、クラスの男子から血祭りにあげられそうだな・・・という事を数秒で考え、奏翔は心を落ち着かせる。

「そういえば、朝遅れて来ちゃったから言えてなかったけど、おはよう、天宮君」
確かに弘津先生が試験の説明が始まってから少しした時に、慌てて入って来てたな・・・
委員長という役回りのために、蒼葉が今までにほとんど遅れてくることなんてなかったので何かあったのかと奏翔は気になったが、まずは

「おはよう」
普通に挨拶をした。それから奏翔は気になったことを訪ねた。

「本当に慌ててクラスに入ってきてたけど、何かあったのか?」
「あはは・・・ちょっと色々あって、言うと恥ずかしい事だからあまり言えないというかなんというか・・・」

思いっきりごまかされた・・・

テンパり始めた蒼葉からの返答を聞いて、奏翔が内心残念に思っていると、蒼葉がおもむろに時計を指さした。
「・・・ってこんな話をしてる場合じゃないよ!?もう試験始まっちゃうから、ほら!鍵閉めるから急いでーっ!」
今度は蒼葉から背中を押され、教室を慌てて出る。

「ほら!ダッシュ!!」
出たと思ったら、蒼葉はすぐさま廊下を指さし、奏翔の次の行動を指示する。

「って廊下は走っちゃダメなんじゃないのか?」
「誰もいないからいいの!遅れるよりかマシでしょ!わかったらダッシュ!!」
「はいはい。わかりましたよー」
そう言って、奏翔は指令となった蒼葉の命令通り、走り出していく。

教室のドアに鍵をした蒼葉は、走る奏翔を見ながらこう呟いた。

「・・・本当に変わってないね、天宮君は」

その呟きは誰の耳にも、もちろん奏翔にも届くことはなかった。

そして、一度深呼吸をした蒼葉は
「待ってよーーーっ」
と言って奏翔の背中を追いかけていった。

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