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<Chapter1>始動
<1-10>惨敗
しおりを挟む何だろう・・・
なぜか体がぽかぽかして、とても気持ちいい。
そして体に何か柔らかい物が・・・
眠っていた奏翔がゆっくりと目を開けると、視界に入ったのは・・・胸の上で寝ている蒼葉だった。
ああ、なるほど。だから心地いいのか~
「・・・ってうわぁ!?」
自分の置かれている現状に気が付いた奏翔は驚きの声を上げる。
「な、な、なんで蒼葉さんが俺の胸の上に!?てか俺の上半身なんで裸なんだ!?」
お、俺が寝ている間に一体何があったんだ!?まさか、やってはいけない何かを既にしちまったってのか!?
「ん・・・」
突然の出来事に大慌てする奏翔の声を聴いて、胸の上にいる蒼葉が目を覚ます。
「あ・・・天宮君、おはよぉ」
「おはよう・・・じゃなくて一体何で蒼葉さんは何で俺の上で寝ていらっしゃったのですか?」
「ん?・・・えっと、気持ちよかったよぉ」
「感想!?ってそれは、眠ったのが?それとも既にしてしまったのか!?」
「ん~うるさい・・・すぅ・・・」
「いやいや、また寝ようとするな!起きてくれ!蒼葉さん!そしてこの状況を説明してくださいっ!?」
再び眠ろうとする蒼葉を奏翔が肩を持ち、必死に起こそうとしている時に、悲劇は起きた。
「ったく、うるさいぞ・・・保健室は静かに使ってく・・れ・・」
保健室のドアが空き、そこから一人の女性の先生が入ってくる。
だが、その歩みは一歩目にして止まった。
理由は明白、ベッドの上にいる二人を見たからである。
「あ~・・・ごゆっくり」
その女性は何もなかったかのようにドアを再び閉めた・・・
「ってちょっと待ってぇぇぇえええ!?」
*****
「本当に、一時はどうなるかと思った・・・」
保健室を出て、廊下を歩いている奏翔は非常に・・・主に精神的に疲れていた。
「全く、そうだね~」
その横では、未だに眠気の抜け切れていない蒼葉がホワンホワンとしながら歩いている。
あの後、すぐさま蒼葉を起こし、俺が何であんな状態になったのかを聞き、それを先ほどの女性の先生へと伝えたが、その先生はその事を聞いても微笑ましい物を見ているような目で見ていたので、実際には伝わっていないような形で、一応、事なきを得た。
ちなみに蒼葉が寝ていたのは、俺の治療をしたからであったらしく、このホワンホワンした状態でさらっと
「あ~、そういえば天宮君の肋骨とか、バキッバキに折れまくってたね」
と平然と言われたときには本当に驚いたな・・・
と心の中で呟いた。
「でも本当にありがとな・・・保健室の先生が他にかかりきりだったから、自分から治療してくれたんだろ?試験もあったのに・・・」
「いや、大丈夫だよ。私のパートナーが丁度、水魔法得意だったから、意外と早く終わっちゃって・・・それに、困った時はお互いさま、でしょ?」
人さし指を立てて、フォローする蒼葉を見て再び奏翔はどきりとする。
「にしても、弘津先生の優しさも体外だよね」
「ああ・・・まあ、でもあれがあの人なりの気遣いってやつなんだろうな・・・」
試験が開始される前、弘津先生は簡単だの、単純だのいっていたが、あれは俺たちが安心して試験を受けられるために言ったことであり、実際、かなり安心して試験に臨めた。けれどあのゴーレムは一度敵と認識させた相手を木っ端みじんにするまで止まらない・・・言わば本当の魔物と言ってもいいほどの代物だったようだ。だが、あれが魔法で呼び出せる中でも一番弱いらしいので、仕方のないことだったのだろう。
そこまで奏翔が考えていると、ふと気になったことがもう一つ思い浮かぶ。
「そういえば・・・俺の試験ってどうなりました?」
「えっと・・・途中中断で評価とランキング範囲外みたい・・・」
・・・やってしまった。
あれほど1位を取ることに魂を燃やしていた桐嶋が、今度は怒りに燃えていないか奏翔は心配になる。
「ま、まあ桐嶋君ならきっと許してくれるって・・・多分」
そんな引き攣った顔で言われても、全く説得力ないんですが・・・
しかし、他に行くところもないので奏翔は蒼葉とともに教室へと向かった。
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